タンブッコ(パーカッション・アンサンブル)
タンブッコ
新たな“音楽の地平線”を求めて
衝撃的なパフォーマンスで聴衆を魅了、グラミー賞ノミネートも4度というメキシコの世界的打楽器アンサンブル「タンブッコ」が、2015年の日本ツアーと平行して録音された新アルバム『カフェ・ジェゴッグ』をマイスター・ミュージックより発表する。
タンブッコは1993年、メキシコ大学で学んだ奏者4人で結成。打楽器のためのオリジナル作品からクラシックの古典や前衛音楽までを“叩きこなす”一方、様々なジャンルの名手との共演にも積極的。映画『007 スペクター』に音楽で参加を果たすなど、新機軸も開拓している。アーティスティック・ディレクターのリカルド・ガヤルドは「ソロで活動していたものの、どうしても室内楽のプロジェクトに挑戦したくてグループを始めました。グループ名は、メキシコの作曲家カルロス・チャベスが64年に書いた、有名な打楽器のための作品から採りました」とグループ結成当時を振り返る。
新アルバムは、バッハからライヒ、邦人作曲家による現代作品まで、彩り豊かな7曲を収録。
「クラシック音楽の演奏家とその聴衆は、もっと音楽の多様性を認識する必要があります。演奏のみならず、どう聴くかも含め、我々は様々なジャンルの音楽に影響を受けているからです。このアルバムでは、タンブッコがどんな音楽から想像力を得たのかを表現しました。打楽器の豊かなサウンドを通じて、新たな“音楽の地平線”を発見してもらえれば幸いです」
さらに、「音楽に国境はない」と強調。邦人作曲家の紹介にも積極的で、当盤にも武満徹「雨の樹」と三木稔「マリンバ・スピリチュアル」の2作品が収められている。
「武満の作品には、豊かな色彩感や喚情的な音風景があり、三木の作品には、原始的な響きと祭りのようなリズムが存在する。私たちは作曲家独自の表現言語と、その創作課程について、きちんと理解するように務めています」
そして、アルバム・タイトルにもなったのが、名古屋音大の常設ガムラン・アンサンブル「スカルサクラ」との共演によるガヤルドの自作だ。
「私は金属製のガムランしか知りませんでしたが、今回の録音に使用したのは、竹製の『ガムラン・ジェゴッグ』です。2013年に来日した際に、名古屋音大でこの素晴らしい楽器とアンサンブルに出会ったことが、私に新作のアイディアを与えてくれました。また、打楽器アンサンブルの録音は非常に難しいのですが、私たちは今回のサウンドにとても満足しています」
「自分たちが培ってきたものを、若い世代と分かち合いたい」とガヤルド。そんな彼らの夢をきいてみた。
「新たな地平線、試み、そして創造…常に探検をしなくてはいけません。打楽器こそ、私たちの全て。それは出発点であり、終着点であり、道であり、その道を走るための車でもあります。音楽の無限の可能性を、聴衆のみなさんと分かち合う。それが、タンブッコの夢です」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)