約10万人の来場者を集めた『行方不明展』ついに大阪で開幕、架空の「痕跡」に何を感じるか

2025.8.13
レポート
アート

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行方不明展 大阪 2025.7.25(FRI)~9.28(SUN) 谷口悦第2ビル1階

7月25日(金)より、本町駅直結の谷口悦第2ビルで『行方不明展 大阪』が開幕した。闇、怪談作家・梨、TVプロデューサー・大森時生が手がける同展覧会は、これまでに東京と愛知で開催し約10万人が来場、SNSでも話題になり、書籍化するまでに広がりを見せた。同展は、タイトル通り「行方不明」に関係する展示がされているのだが、何を感じるか、どんな記憶が呼び起こされるかは、人それぞれ。ホラーではないが、個人的にはじわり、ぞわりとくる展示もあった。気になる人はぜひ一度足を運んでみてほしい。

あらゆる「行方不明」に出会う

「行方不明」とは、「どこへ行ったかわからないこと、出かけたまま帰ってこず、行き先や居場所がわからない状態」。それは日常との境界にある。失踪、蒸発、神隠し、色々な言い方をするが、きっと大なり小なり「確かにあった・いたはずなのに、いなくなった」という不思議な体験をした人もいるのではないだろうか。

大阪・本町のオフィス街の一角。会場の入口には行方知れずの人を探すビラがびっしりと貼られている。くしゃくしゃだったり、泥水のようなものがかかっていたり。日本では年間8万件の行方不明者の届け出があるというが、それを想起させるような圧倒的な量のビラからは、ただごとではない空気が漂ってくる。鑑賞者は少し不穏な気持ちを抱きながら会場に足を踏み入れるだろう。

会場内は【身元不明「ひと」の行方不明】【所在不明「場所」の行方不明】【出所不明「もの」の行方不明】【真偽不明「記憶」の行方不明】の4つのセクションにわかれている。鑑賞者は、展示された「ある現象」や「痕跡」や「情報」を通して、「もし『これ』が実際に起こるとしたら、人はどのように振る舞うのか」を追体験できる。

家族の捜索を依頼する貼り紙、行方不明者が遺した手記や手紙、誰も住んでいないはずの空き家から発見されたペットボトル、都市伝説にまつわる写真、防犯カメラの映像など、さまざまな形の展示物に遭遇した時、一体何を見つめるのか。

もちろん展示内容は全てフィクションだ。しかし展示物のリアルさ、生々しさから「そこ」にいたはずの「誰か」や「何か」の気配を感じ取ることができる。

商店街から撤去されて廃棄予定だった公衆電話は中に入れるし、ある住宅から見つかった香水は実際に匂いを嗅ぐことができる。キャプションを読みながら「この人はここで何をしようとしたんだろう」「どこに行きたかったんだろう」など、自ずと「行方不明になった対象」への想いを巡らせてしまう。

会場の給湯室や大阪会場から追加されたトイレをはじめ、「まさか、もしかして」と違和感を感じた場所を恐る恐る見てみると、展示物が現れることもある。また、展示説明のない状態で突如現れるものたちも。「これ」が「ここ」にある「意味」をつい考えてしまう。

背筋の凍るようなホラー体験が待っていたり、不可解事件の背景が暴かれたり、お化け屋敷のようなドキドキやスリルが味わえたりするわけではない。鑑賞者が生きてきた中で見聞きした記憶や知見をもとに、ざわつく感情や不気味で後味の悪い感覚、あるいは恐怖、好奇心、懐かしさが引き出されたりする。感じ方は本当に十人十色。鑑賞者と世界の間に投げ込まれるものを前にして、どう振る舞うかだ。

ゆえに、『行方不明展』は前情報なしで行くことを強くおすすめしたい。誰かの感想やフィルターで前提を作らず、実際に目や耳にしたものを自分の感性と感覚で受け取り、想像や記憶をめぐらせてほしい。

『行方不明展 大阪』は9月28日(日)まで、谷口悦第2ビル1階で開催中。会場では、書籍をはじめ、展示物のガチャガチャなどグッズも販売している。

取材・文=久保田瑛理 撮影=川井美波(SPICE編集部)

イベント情報

『行方不明展 大阪』
会期:2025年7月25日(金)~9月28日(日)10時~19時※最終入場18時30分
会場:谷口悦第2ビル1階(大阪市中央区久太郎町3丁目5-26)
   Osaka Metro本町駅12番出口すぐ
料金:
 平日入場券 2,200円(大人)/1,600円(小中高生)
主催:テレビ大阪株式会社、株式会社ディヴォ―ション
企画:梨、株式会社闇、大森時生(テレビ東京)
お問い合わせ:テレビ大阪事業局「行方不明展」事務局
TEL:06-6947-1912(平日10時~17時)
Mail:yukuefumeiten_osaka@tv-osaka.jp
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