TAIRIKインタビュー 『ららら♪プレミアムコンサート Vol.2 Duo Fest. ~ Beyond Classics ~』に向けて
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TAIRIK
ユニット「TSUKEMEN」のメンバーとして17年、クラシックの枠を超えた表現を追求してきたTAIRIK。ヴァイオリンとの出会い、「TSUKEMEN」命名の秘話から現在までを語るロングインタビューから、今年11月に東京文化会館大ホールで行われる人気デュオ4組が登場する『ららら♪プレミアムコンサートVol.2 Duo Fest.』への出演の話を抜粋して紹介する。
※クラシックコンサートWEBマガジン『ららら♪クラブ』TAIRIKインタビューより抜粋
―― いよいよ2025年11月12日(水)に東京文化会館で行われる『ららら♪プレミアムコンサート』についてうかがっていきます。今回は「デュオが集う」という企画で出演されますが、共演される水谷さんとの出会いやエピソードがあれば教えてください。
水谷とは桐朋音大で出会いました。最初のレセプションのときに、ギル・シャハムの話で盛り上がったのがきっかけです。そこからずっと仲が良くて、授業も一緒に受けて、音楽の話もたくさんしました。まさに切磋琢磨した仲間です。 僕は大学卒業後「TSUKEMEN」を始めて、クラシックの王道からは少し離れた道を進みましたが、水谷はまっすぐクラシックの世界を歩み、群馬交響楽団や東京交響楽団のコンマスを経て、いまでは東京都交響楽団のコンサートマスターに。その出世ぶりが本当にうれしいです。 大学卒業後は別々の道を歩んでいましたが、TSUKEMENの弦楽コンサートで水谷にコンマスをお願いしたことで、久しぶりに音楽の現場で再会しました。その後、自主企画で「異種格闘技」的なデュオシリーズを始めて、ヴァイオリン×チェロ、ヴァイオリン×能楽師、ヴァイオリン×絵画などさまざまな組み合わせを試すうちに、水谷との「ヴァイオリン×ヴァイオリン」のデュオも実現しました。そして、レコード会社のプロデューサーが「CD出そうよ」と言ってくれて、「MIZUTANI×TAIRIK」というユニットが誕生したのです。 いまでは年に1〜3回ほど、2時間の本番を目標に活動しています。別々の場所に足を置きながらも、こうして一緒に演奏できる関係が続いているのは本当にありがたいです。
―― 今回の演奏予定曲に《モルダウ》が入っているのを見て驚きました。ヴァイオリン2本でどんなアレンジになるのでしょうか?
今回アレンジをお願いしたのは長生淳さんという方で、いい意味で“変態”なアレンジをしてくれる方です(笑)。アレンジャーさんも、原曲を忠実に再現するタイプもいれば遊び心を加えるタイプもいますが、今回は後者ですね。 水谷はオーケストラで本物の《モルダウ》を弾いているので、本人もお客さんもそのイメージがありますよね。それに人数も音数も多いオーケストラに対して、たったふたりだけの編成では当然ながらとても太刀打ちできません。だからこそ、ふたりでしか出せない《モルダウ》を作らなきゃいけない。これまでとは違う、新たな《モルダウ》の姿を見せられたらと思っています。
―― オリジナル曲「ロック・ヴィオラ」も演奏されるそうですね。これはどんな編成ですか?
もともとはヴィオラ1本のために作った曲ですが、今回はヴァイオリンとヴィオラ用にアレンジしたバージョンを演奏します。水谷にも付き合ってもらって、オリジナル曲を披露する予定です。
―― 聴きどころはどんなところですか?
この曲は、内容を考えるというより、ただ感じてほしい作品です。前情報なしで、身を委ねて聴いてもらえたらうれしいですね。
―― ヴァイオリン2本の編成は難しいと思うのですが、どんな点が難しく、どんな魅力がありますか?
ピアノが入らず弦2本だけなので、音色や掛け合い、緩急、対比、心の落差などをしっかりつけないと単調になってしまう。だからこそ、飽きさせない工夫が必要です。でもその分、繊細な表現や掛け合いが際立つので、そこが魅力でもありますね。
―― 今回は4組のデュオが出演しますが、こういった演奏会はどう思われますか?
いや、まず石田さんたち、ピアノ入ってるじゃん! って思いました(笑)。デュオじゃないじゃん! って本番でも言おうかなと思ってます。 すごくおもしろい企画ですよね。出演者のヴァイオリンのカラーも、選曲も表現も全然違うので、弦楽器の魅力を知るには最高の機会です。トップクラスの演奏家たちの違いを一度に味わえるのは、なかなかないですからね。
『ららら♪プレミアムコンサート Vol.2 Duo Fest.~Beyond Classic~』
―― ららら♪プレミアムコンサートはトークも魅力のひとつですが、今回はどうでしょう?
司会的なこともお願いされてますが、どうなるかはまだ未定です。水谷と一緒に話すと、いつも収拾がつかなくなるんですよ(笑)。 でも、そういう自然体のやりとりも僕たちのスタイルです。トークに関しては「何も決めない」という決めごとがあるので、どうなるかは毎回お楽しみです。
―― TSUKEMENではトークの役割は決まっているのですか?
17年の活動を経て、だんだん固まってきましたね。僕とKENTAがボケて、SUGURUが突っ込むという構図です。自覚はないんですけど、最近はそう見られてるみたいですよ(笑)。
―― 今回の公演はTAIRIKさんのまた違った一面が見られそうですね。また今後の活動や夢について教えていただけますか?
今回のようなデュオ企画に呼んでいただけたこと自体が驚きでした。水谷とは、ただ上手に弾くというだけでなく、「このふたりの空気感」「交わったときの音」を聴いてもらいたいです。ここでしか生まれない魅力を広げていきたいと思っています。 そして、TSUKEMENとしては……武道館にチャレンジしたいです!
―― ここまでたくさんの楽しいお話をありがとうございました。最後に、コンサートにいらっしゃる方々へメッセージをお願いします。
今回のようにすてきな演奏家が一堂に会して、ヴァイオリンや弦楽器の魅力に浸れる機会は、なかなかありません。それぞれが短い持ち時間で全力を出し切るので、これもひとつの魅力ですね。 聴き方も、みなさんそれぞれ自由でいいと思います。「この人が良かった」「この曲が印象的だった」など、どんな感想でも構いません。この試みを温かく受け止めて、感じ取っていただけたら、こんなにうれしいことはありません。
取材・文=尾崎羽奈
インタビュー情報
公演情報
日時 11月12日(水) 19:00開演(18:00開場)
会場 東京文化会館 大ホール
【DOS DEL FIDDLES with SENOO】
石田泰尚[Vn.] × 﨑谷直人[Vn.] with 妹尾武[Pf.]
水谷晃[Vn.] × TAIRIK[Vn. Va.]
成田達輝[Vn.] × LEO[箏]
佐藤晴真[Vc.] × 小林海都[Pf.]
【DOS DEL FIDDLES with SENOO】
クライスラー:ジプシー奇想曲
妹尾武:永遠に ほか
【MIZUTANI×TAIRIK】
スメタナ:連作交響詩《我が祖国》より〈モルダウ〉
TAIRIK:ロックビオラ ほか
【NARITA×LEO】
吉松隆:双魚譜
坂本龍一:Solitude ほか
【SATO×KOBAYASHI】
ラヴェル:《ヴァイオリンソナタ ト長調》より第2楽章〈Blues〉
ヴィエニャフスキ:スケルツォ・タランテラ Op.16 ほか
全席指定:S席7,800円 A席6,800円 A席5,800円
TEL:03-3402-5999(月・水・金 12:00~15:00)