波多野睦美、西山まりえに聞く『奇妙なマザーグースの話』の見どころ
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建て替えのため4月から休館中の神奈川県民ホールは、音楽絵本『奇妙なマザーグースの話』〜「怖い」「奇妙」な歌で元気になる!?〜 を2025年9月27日(土)松田町生涯学習センター、9月28日(日)清川村生涯学習センターで開催する。
「ハンプティ・ダンプティ」や「ロンドン橋おっこちた」で親しまれるイギリスで何世紀にもわたり親から子へ伝承されてきた童謡『マザーグース』。18世紀の出版当時は、木版の挿絵で、残酷な物語も優しい風合いの本になっていた。この公演では、木版で製作した絵に言葉をつけて、絵本をみているような世界を再現する。絵本仕立ての映像と字幕をまじえ、西山まりえによる古楽器演奏と、波多野睦美の原語(英語)による歌&日本語のリーディングが奇妙な世界を紡ぎ出す。
出演者2人が語る、『奇妙なマザーグースの話』の見どころとは?
――今回の「音楽絵本」とはどのようなスタイルの公演ですか?
波多野:巨大な絵本のページを、生の音楽と一緒にめくっていくようなコンサートです。ステージに大きく映し出される山福朱実さんの絵は、歌のために一つ一つ描かれたもので、独特の魅力を放ちながら客席のみなさんへ語りかけてくれます。
――今回の公演で使用するヴァージナルやハープなど、珍しい古楽器の特徴や魅力は?
西山:約300 - 400年前の楽器を奏でます。ヴァージナルはイングランド、スコットランドやフランドル地方(現在のベルギーとオランダ)で愛された、長方形型の楽器、ミュゼラーとも呼びます。有名な画家、フェルメールの絵画にもよく登場します。
ハープも昔のバロック時代のモデルです。まだレバーや足ペダルが発明されていない時代ですので、半音を上げ下げする機能がついていません。そのため、通常はハープは弦が1列に張られていますが、このバロック・ハープには3列あります。ピアノでいう白鍵列の2列の間に黒鍵列が真ん中に1列、合計3列!たくさん弦があるので、弾いていると、まるで弦の森を歩いているような不思議な感覚になります。
ヴァ―ジナル
バロック・ハープ
――演奏者として、この「音楽絵本」の世界で大切にしていることは?
西山:ひとつひとつ「クセつよ」キャラクターのマザーグースの音楽絵本です。お客様にはごく短い言葉の中から各シーンをイメージしていただきたいので、シンプルな作りを目指していますが、それだけではなくリズムを持って小気味よくしたり、あるいはアルペッジョを使って間合いをとったり、物語の中で心地よい空間を作るよう工夫をしています。
――マザーグースには“怖い”“不思議”といった側面もありますが、その魅力をどのように感じていますか?
波多野:「怖い」と感じることは、ある意味のエネルギーというか、「生きている実感」だと思うんです。マザーグースには、実際に起こった事件や事故が元になった歌もたくさんあり、それらに対する怖さや、理不尽さに対するモヤモヤを、歌で消化していった、そんな人々の強さを感じるからです。
――波多野睦美さんの歌との共演で、演奏者として感じる面白さや挑戦はありますか?
西山:古き時代の英語の達人です。そして日本語の朗読も絶品です。どこをとってもセンスの光る方ですので、とても楽しみです。
――英語原語で歌うとき、特に大切にしていることや楽しさはどんな点でしょうか?
波多野:リズムの楽しさです! 切れ味よく言葉を発音することで、言葉で遊んでいる感覚があるんです。
――普段の子守唄や童謡と、この舞台で聴くマザーグースの歌の違いは?
波多野:マザーグースには、数え歌や悪口歌などたくさんのジャンルがありますが、その中から特に「怖さ」を感じる歌を選んだのがこの舞台です。本当にたくさんあるんですよ。SNSのなかった時代、事件や事故を歌にして伝えていったのは「マザーグース」に限りませんが、短くシンプルなメロディのマザーグースは怖さと同時に、コミカルな雰囲気もありますね。
――古楽を始めて聴く方でも“ここを聴いてみると楽しい”というポイントはありますか?
西山:昔の人も今と同じ人間です。音楽は昔の人にとっても、愛を表現したり、祈りであったり、踊って奏でるという「楽しみ」でした。古代から、音楽は人間にとって寄り添い続け、エネルギーを感じ、元気になったり、癒されたり、共感したり、なくてはならないものです。この物語をご自由に感じとっていただけましたら嬉しいです。
――最後に、今回の公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
波多野:松田町と清川村の、自然豊かな、美しい土地で歌えるのは本当にうれしいことです。みなさまとリラックスした時間を持てますように。お会いできるのを楽しみにしています!
西山:私はこのマザーグースを演奏できて、とても楽しく、ぜひとも皆様にもお聞きいただきたく、また音楽や朗読と合わせて、素敵な版画絵もとても効果的です。耳で、目で、想像して、どうぞ昔のイングランドの物語をお楽しみください。
公演情報
2025年9月27日(土)14:00開演 松田町生涯学習センター 大ホール
2025年9月28日(日)14:00開演 清川村生涯学習センター せせらぎ館 みどりホール
一般:2,000円 U24(24歳以下):500円
※0〜3歳は膝上鑑賞無料(席が必要な場合はU24