古着マーケット『フルフリ』をカルチャーにしたい――イベント代表・朝倉強&マーケティング担当・小西渓太インタビュー

2025.9.22
インタビュー
イベント/レジャー

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東京ビッグサイトにて10月4日(土)、5日(日)の2日間で開催される『フルフリ』。全国の個人店が多く集まる(海外からの参加もあり!)個性の祭典として注目の古着のマーケット。年に一度、下北沢ADRIFTで開催されていたイベントが、2024年11月開催の『VINTAGE MARKET』となり、『フルフリ』と名称を変え2025年は新たな挑戦へ。新世代の古着屋が仕掛けるイベント開催に込めた思いや、今年の注目ポイント、さらには今後の展望について、イベント代表/事務局長・朝倉強(古着83)さんとマーケティング担当・小西渓太(MUJIN)さんにインタビュー!

――まずイベント名が変わった理由を教えてください。どのような狙いがあったのでしょう?

小西:SEO的な観点です。

朝倉:英語の『VINTAGE MARKET』では別のイベントに検索で勝てないと分かったので、変えようかと話している時に、(小西)渓太さんが「『フルフリ』って語呂よくない?」と思いついて。古着のフリマで『フルフリ』。誰にでも分かるキャッチ―なネーミングを思い付くセンスは流石だなと思いました。

小西:分かりやすいし、キャッチー。名前を見ただけでも“古着のフリマ”のイベントと分かるものにしたかったので。

朝倉:イベントの内容的にも『フルフリ』のほうがしっくりくると思いました。ちょっと気の利いた普段使いの古着を探しにくるお客さんが多いので、そういった実態に照らし合わせると、『VINTAGE MARKET』よりは『フルフリ』のほうが近いかなという感じです。

――名前が変わったことで、ターゲット層などにも変化はあるのでしょうか。

小西:昨年は3,000円〜20,000円くらいの価格帯の商品を揃えるお店が多かったのですが、今年からは挑戦として高価格帯のヴィンテージを持っているお店や海外のディーラーなどを招待して、幅広い層に来場していただきたい、そういった層を獲得していこうという狙いがあります。値段のレンジを上げてお客さんの層、年齢のパイを広げていきたいと思っています。

――店舗に足を運ぶ方と、イベントに足を運ぶ方では購入金額や購買アイテムなどに違いがあったりするのでしょうか? どういった方が『フルフリ』のような古着イベントの大きな会場に足を運ばれているのでしょう。

朝倉:イベントに参加する店舗さんは、この日のために集めた商品を持ってきている感じがあります。「いいものを持って行こう!」と気合を入れて参加している印象があって、結果ラインナップもいい感じになるんです。いい商品が集まれば、自然と購入率も上がります。

――高いものも売れるようになると。

小西:その通りです。昨年も結構売れちゃってました(笑)。

朝倉:古着のイベントは安売りタイプや値段がめちゃくちゃ高いヴィンテージの展覧会のようなタイプが結構多くて。『フルフリ』のように珍しいもの、ちょっと気の利いたもの、普段使いできそうなものをちょうどいい価格で買える、というようなお店が集結するイベントはなかなかない。というよりほとんどないです。お客さん一人一人のスタイルに個性豊かな古着屋が向き合って、いい商品を買ってもらう。僕たちにしかできないイベントの狙いの一つです。

小西:大手ではなく小さい“個”のお店がいっぱい集まって大きくなるみたいなイメージのイベントをやっています。

――参加するお店はどのように決められているのでしょうか?

小西:彼(朝倉)のセンスです!

朝倉:ほぼ独断です(笑)。ありがたいことに「出たい!」という店舗さんも増えていて……。

小西:年々、増えています。

朝倉:そういった店舗さんの声に応えるために、規模を拡大していかなければならないという状況です。イベント自体が大きくなる可能性はあると思うし、大きくしていきたいと思っています。そしてすでに開催されているイベントと“共催”して、古着でカルチャーを作りたいという思いがあります。

――カルチャーにするというのが今後の目標の一つなのですね。

朝倉:古着の面白さは膨大な選択肢から一人一人のスタイルに合うものを選んでいくところ。それが、僕が感じている古着屋巡りの楽しさです。

小西:古着好きと言っても、みんなそれぞれ好きなタイプが違うし、スタイルも違うから面白いよね。

朝倉:それこそが古着屋巡りの面白さ。「古着って何が面白いの?」ということの原体験だと思っています。同じ古着好きでも本当に好みはバラバラ。店舗の売上を伸ばすには、バラバラで多種多様な好みに合うような商品を揃える必要があります。バイヤーとしての力量も上がっていく、その体験はすごく楽しいです。

――売る側もどんどん古着の良さ、魅力に取り憑かれていくという感じですね。

朝倉:そうですね。高くて価値のあるものを所有して「すごいんだぞ!」もいいけれど、自分が普段着るもの、自分に合うものを見つけて、服を楽しんでほしいと思っています。

小西:たくさんの人に来てもらって、楽しんでもらいたいというのが一番の願いです。このイベントをきっかけに古着を好きになる人たちがもっと増えたらいいなという目的を持って集客をしています。

――価格のレンジを上げて幅広い層に来てもらうというお話もありましたが、TikTokやInstagramに絞っての告知をされています。メインターゲットはやはり若い世代になるのでしょうか? イベントに足を運ぶというフットワークの軽さもポイントになるのかなと。

小西:やっぱり服に一番お金を使うのは20代というのが肌感であります。そこを軸に、ずっと古着が好きな年配の方たちまで幅広く来てもらえるのが理想です。

――若い世代は、お金の使い方にシビアだと言われていますが、マーケティング、集客のコツはあるのでしょうか?

小西:TikTokやInstagramに絞ったマーケティングを行った結果、若い層を獲得できています。少し前まではフリーマーケットで、とにかく安いものを買う、みたいな傾向があったのですが、最近は古着ブームやヴィンテージブームでSNSにも情報が溢れているし、知識の普及などをしている印象があります。安ければいい、という感覚は薄れていて、価値や商品のクオリティを追い求めるような感じになっています。服が本当に好きな人は特にそういう傾向にあると思います。

朝倉:服が好きになればなるほど、注文が多くなるんです(笑)。

――バイヤーとしては大変になるのでは?

朝倉:でもそれが楽しいんですよね。僕も服が大好きだからよく分かります。ちょっと丈が長いから、ポッケが浅いから、買わないとか(笑)。

小西:そうだよね。

朝倉:2017年から2018年くらいにオーバーサイズが流行ったヴィンテージブームがありました。その頃僕も古着屋を開業したのですが、その時期に古着の魅力にハマって今も古着好きとして残っている層のこだわりは、どんどん強くなっていると思います。まさに僕がそうなので(笑)。

――数年単位でブームがやってくるからこそ、イベントなどで傾向をチェックするのもいいかもしれないですね。『フルフリ』の特長にもなると思うのですが、レイアウトはどのようになっているのでしょう? オススメの巡り方などがあれば教えてください。

朝倉:店舗のレイアウトはそれぞれのお店におまかせですが、『フルフリ』としては会場を4つに分けて配置しています。「ヴィンテージサイド」「ベーシックサイド」「デザインサイド」「グッズ」です。

2024年の様子

――グルっと巡るとトータルコーディネートができそうです。こだわりが強い方が多いので、トータルコーディネートとしてアイテムを選び抜くには、かなり時間もかかりそうですが(笑)。今回は2日間あるので、それも可能かと。

朝倉:会場をビッグサイトに移して2回目の開催です。2日間開催は未知の世界ですが、これまでのイベントの伝統も守りつつ、大きくなっていくための結果を残したいと思っています。

――今出ました『フルフリ』の伝統とはどういったものなのでしょう?

朝倉:下北沢のADRIFTでやっていた頃からクーポンを配っています。ちょっとお得に買い物ができるのでぜひ使ってほしいです。

――どのような形で配っているのですか?

朝倉:紙です!

――そこはアナログなんですね。

朝倉:イベントが終わった後に、店舗さんがどれだけ売れたのかを紙のクーポンを手に報告してくれるんです。

2024年に配られたクーポン

――どれだけお客さんが来たのかが目で分かるようになっているのですね。店舗さん同士の刺激にもなりそうです。

朝倉:店舗さんともちゃんとコミュニケーションを取りたくて。「売れましたか?」という僕の問いかけに「こんなに売れましたよ!」とクーポンの束を振ってくれる。「あざっす!」みたいな会話があるのがイベントをやる喜びでもあります。古着を好きな人たち(店舗)とか古着屋をカッコよくやりたい、という若者が最後までこだわり抜いているイベントというところは特に大事にしています。

――そのほか、今年の注目ポイントはありますか?

朝倉:海外のディーラーを何店舗か誘致しています。来年以降はもっと増やしたいので、今年の反応も楽しみです。タイ、マレーシアのディーラーさんが参加予定です。

小西:タイは古着文化がすごいらしいですね。

朝倉:タイは古着の聖地です。世界中のあちこちへ仕入に行くのですが、今後はヨーロッパからも誘致できたらと思っています。海外のディーラーってすごく珍しいものを持っている方が多いので、僕もお客さんとして買いに行きたいと思っています。狙いは定めてある感じです(笑)。仕入先や自分がお客さんとして訪れたお店で「実は日本で古着屋をやっていて……」みたいな話をするところから、現地で入手したいいものを送ってもらうみたいな繋がりもできていて。

――店舗さんに対しても、お客さんに対しても、直接の繋がり、コミュニケーションをすごく大事にしている印象があります。

朝倉:結局は足でやらなきゃ! と思っています。直接話をして、握手して、参加してもらうみたいなことも多いです。そういったやりとりもオンラインで手軽にできる時代ですが、仕入れも自分の目で見ないと気が済まないし、コミュニケーションも同じです。非効率かもしれないけれど、その非効率さこそが差別化になると思っています。お客さんと直接会話をして、何を欲しがっているのか、求めているのか、機微にちゃんと気づきたい。そういう細かいことは直接対峙しないと分からないことだから、そういうことを反映させるために、非効率でも型にはめずにやっていきたいです。

――手間も楽しみながらやっている感じがします。

朝倉:とはいえ、間口は広げたいので。そこは渓太さんにお任せして……。

――お二人のバランスがよいので、そういった役割分担もしっかりできている感じですね。

小西:砕けて言うと僕はぶっちゃけ、このイベントだけは大手に勝ちに行きたいという気持ちでやっています。日本で古着のイベントと言えば『フルフリ』と言われるくらいのブランド力とブランド色をつけていきたい。そのポジションまでは持っていきたいと思っています。

――具体的な時期の構想のようなものはありますか?

小西:何年後みたいな考え方よりも、毎年絶対勝ちたいし、勝っていく気持ちでやっています。

朝倉:今のところ、毎年デカくなっているので近づいている感覚もあります。

小西:今年は初となる2日間開催なので、しっかり結果を出して、来年はより大きいフロアとか、さらにフロアを広くできたらいいと思っています。そうすれば、東京以外のエリアでの開催も見えてくるかなと。

朝倉:大きくしたいけれど、乱発はしたくない気持ちもあって。例えば『フルフリ』は年一の秋の開催。夏とかにはTシャツに絞った……といった形で開催数を増やすということは考えています。

小西:Tシャツのイベントとかは結構盛り上がります。

朝倉:僕たちのマーケティング力とこだわりを持ってすれば、面白いものができると思っています。

小西:こだわりは社長(朝倉)に任せて、僕はいかに拡大させていくかを考えていきたいと思っています。

朝倉:古着の業界でSNSやらせたら右に出るものはいない。バズらせるのは本当に上手い。爆発力ではどこにも負けないと思うので、頼りつつ、任せつつ、こだわりながらやっていきたいです!

小西:このイベントは体験型。ディグる行為が好きな若い子には刺さると思うので、参加者にはいろいろな間口があるけれど、コアな層も含めて幅広く認知されるようにすること。それが僕の役割なので、集中したいと思っています。

朝倉:とにかく気軽に足を運んでほしいと思います。高校生は500円ですし、パンフレットにはクーポンも付いています。クーポンでお得な買い物も楽しめますし、古着好きな人はなんだかんだ雑誌育ちなので、パンフのような紙ものも楽しんでもらえるかなと期待しています!

取材・文:タナカシノブ

 

イベント情報

『フルフリ supported by Pickyou』

■日程:2025年10月4日(土)、5日(日)
■会場:東京ビッグサイト 西1ホール
:1日券(一般):¥1,000/1日券(高校生以下):¥500
通し券(一般):¥1,500/通し券(高校生以下):¥1,000

 
運営:Vintage Market 実行委員会 FURUGI83 OLD GREEN MUJIN
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