FIVE NEW OLD バンドの個性と瞬発力を見せつけたツアーファイナル、SixTONESに提供した「Takes Two」セルフカバーも披露
FIVE NEW OLD
15th Anniversary Tour FINAL「FiNO is」-New Chapter-
2025.9.15 東京国際フォーラム ホールC
サポートにキーボード奏者とサックス、トランペット、トロンボーンからなるホーン隊を迎え、オンステージしたFIVE NEW OLDの4人がこの日、1曲目に選んだのは、ゴスペルの影響が滲むポップロックナンバー「Breathin’」だった。
「始めようぜ、東京!」
そう声を上げたHIROSHI(Vo, Gt)に応えるように、歪ませた音色を巧みにミュートしながらWATARU(Gt, Key)が奏でたリフも観客の耳を惹くという意味でキャッチーだったが、この曲の一番の聴きどころはやはりサビでHAYATO(Dr)が炸裂させたラウドなドラムだったと思う。その瞬間、ライブが始まる時特有の緊張が解け、バンドと観客の気持ちがたちまちひとつになった。HAYATOがフィルの直前に加えるスネアロールがめちゃめちゃかっこいい。
気付けば、総立ちになった観客が手を振っている。
「会いたかったぜ!」
再びHIROSHIが声を上げながら、ステージの8人は「By Your Side」と「Don’t Be Someone Else」――ともにアーバンなポップロックナンバーをたたみかけるように繋げ、ホールを揺らしていく。「Don’t Be Someone Else」は大胆にグリッサンドを交えながら、カウンターメロディーを奏でたり、スラップを閃かせたりと1番と2番でフレーズの違いも楽しませるSHUN(Ba)のベースプレイも聴きどころ。そして、HIROSHIの「Hands up!!」に観客が手を挙げるだけではなく、ハンドクラップで応え、序盤から生まれた熱狂が物語っていたのは、FIVE NEW OLDのライブバンドとしての瞬発力の高さと、バンドを熱烈に歓迎した観客の熱い思い。
9月15日(月)に東京国際フォーラム ホールCで開催された『15th Anniversary Tour FINAL「FiNO is」-New Chapter-』はそんなふうに、3月の恵比寿ガーデンホールを皮切りに、6月から全国各地を回ってきたツアーの大団円にふさわしい光景をいきなり見せつけながら始まった。この日、バンドが2時間に及ぶ熱演とともに演奏したのは、結成15周年のタイミングでリリースした初のベストアルバム『FiNO is』から選んだ14曲を含む新旧の全19曲だった。
前述の3曲も含め、アーバンなポップロックというFIVE NEW OLDのバックボーンを改めて印象づけた前半戦。「グルーブを作っていこう」と語りかけたHIROSHIに応えるように観客が始めたハンドクラップとともにジャムセッション風に繋げ、グルーヴィーなサウンドで観客の体を揺らしていった「Hole」と、そこから繋げたアップテンポかつダンサブルな「Gotta Find A Light」では、「みんなと一緒に作っていきたい。一緒に音楽を奏でたい」という言葉通り、「みんなの番!」とHIROSHIがシンガロングのきっかけを作りながら、観客を演奏に巻き込んでみせる。
SixTONESに提供したミドルバラード「Takes Two」のセルフカバーもそんな前半戦の聴きどころだったと思う。しかし、それ以上にソウルフルなバラード「In/Out」が個人的には特に印象に残っている。なぜなら、WATARUがピアノを奏でたこの曲のゴスペル風のハーモニーワークを聴き、この「In/Out」をはじめ、FIVE NEW OLDのサウンドに滲むゴスペルのエッセンスこそが同じようにアーバン、あるいはシティポップとタグ付けされるバンドたちとは一線を画するFIVE NEW OLDならではの魅力だということを改めて確信したからだった。観客のハンドクラップもちゃんと裏拍を取ったゴスペル風というところが心憎いではないか。そんなところにもバンドと観客がひとつになっていることを感じて、ちょっと胸が熱くなる。
中盤のパートでは、アーバンなポップロックだけにとどまらない一面もアピールする。HIROSHIもギターを弾いた「Summertime」と「Fast Car」は、ともにオルタナな感性が滲むギターロックナンバーなのだが、前者はタイトにリズムを刻みながら、絶妙に跳ねるSHUNのベースプレイがアクセントに。その2曲で高音弦の鳴りを強調しながらWATARUがパワーコードで奏でたリフも聴きどころだった。
そして、HIROSHIとWATARUがサンプリングパッドを操った「One By One」はドラムンベースなビートを同期で鳴らしながら、トラックメイキングのおもしろさを生のバンドサウンドに落とし込み、基本のスタイルにこだわらないバンドのオープンマインドを印象づける。エキセントリックなHIROSHIのパフォーマンスにはちょっとびっくりさせられた。
再びホーン隊を迎え、ライブは後半戦に。
ゴスペルを取り入れるという意味でバンドのターニングポイントになったかもしれない「Ghost In My Place」、そこから観客のシンガロングとともになだれこんだ「What’s Gonna Be?」をはじめ、アーバンなポップロックというバンドのバックボーンを今一度印象づけながら、手数の多いドラムがアップテンポの演奏にタテノリを加えた「Sunshine」に繋げ、ステージの8人の演奏は前半戦以上に熱を帯びている。
「気付いたら(今回のツアーの途中に)16年目に入っていました。『FiNO is』という物語がもうすぐ終わるんですけど、この物語を終わらせることに僕自身、こだわりを持っていました」
そんなふうに語り始めたHIROSHIが観客に伝えたのは、15年の集大成とも言えるこのツアーファイナルのタイトルに新章を意味する「New Chapter」という言葉を加えた真意だった。
「FIVE NEW OLDの音楽を大切に思っている気持ちを、たくさんSNSで言葉にしてもらって、自分たちの音楽が誰かの人生に花を咲かせていたんだと思えました。誇りでもあるし、だからこそ次に向かっていきたいという思いが強くなりました。ベストアルバムを出せるバンドになれてよかったと思うと同時に、後ろばかり振り返っているのはイヤだとも思いました。未来がどんなものか全然わからないけど、この音楽が鳴りやまないかぎり、みんなと一緒にいい未来が作れると思うから、ちゃんと終わらせて、まっさらな未来に、みんなと思いがけない何かを描いていきたいと思います」(HIROSHI)
たぶん、この日一番伝えたいことを言葉にしてからのラスト2曲。HIROSHIのアコースティックギターの弾き語りにメンバーたちが音を重ねていったバラードの「Moment」、そしてそこから「今日一緒に過ごした時間が明日からの新しいあなたの彩りになりますように」というHIROSHIの言葉とともに繋げたミドルバラード「Please Please Please」は、ともにメンバーたちがそれぞれの思いを重ねるように一音一音に熱を込めながらの披露となった。
そして、観客もまた思いを重ねるように歌った「Please Please Please」のシンガロングの中、ギターソロを轟音で奏でたWATARUをはじめ、メンバー全員で渾身の演奏を繰り広げ、エンディングを迎えたが、「New Chapter」と謳っているのだから、もちろんこれで終わりじゃない。
本編で着ていた、揃いのスーツから新しいアー写の衣装に着替えて、オンステージしたアンコールは早速、新曲「Smile」を初披露して、観客を歓ばせる。最後に笑っていたら人生は勝ちというHIROSHIの人生観を歌ったというポップロックナンバーは、やはりゴスペルのエッセンスが滲むところがFIVE NEW OLDらしい。WATARU、SHUN、HAYATOがHIROSHIの歌に重ねるハーモニーもアンセミックだ。この時、初めて聴いたにもかかわらず、ハンドクラップで応えた観客にHIROSHIが快哉を叫ぶ。
「みんなの対応力に驚いた!」
そして、来年1月に横浜と大阪のBillboard Liveでライブを行うことと、4月から全国8カ所を回るワンマンツアーを開催することを発表すると、「ツアーがあるってことは……。たぶんアルバムが出るんじゃない?(笑) 出るでしょう。作ります。いい音楽を届けます!」とHIROSHIがフライング。それもまたライブならでは。「次の未来の約束」という言葉をHIROSHIは使っていたが、16年目に突入したFIVE NEW OLDがすでにNew Chapterを進め始めていることを、観客に伝えずにいられなかったのだろう。
「未来のことを心配したり、過去の後悔を振り返ったりすると、人は不安になるらしい。大事なのは、今ここにいる自分。その今をあなたと味わい尽くしたいと思います!」(HIROSHI)
最後はバンドらしく終わりたいという思いを込め、メンバー4人だけで演奏したラストナンバーは、「Rhythm of Your Heart」。WATARUのコードカッティングにHIROSHIがミュートしながら鳴らしたリズムギターを重ねるオルタナ風のギターロックナンバーは、観客を跳ねさせたバスドラのキックに加え、タムとシンバルでビートを作ったサビのドラムプレイも聴きどころだった。
この日、改めて感じたのだが、FIVE NEW OLDの個性を際立たせているという意味では、曲に滲むゴスペルのエッセンスのみならず、曲によっては振りかぶるようにドラムを叩くこともあるHAYATOのプレイによるところも大きいんじゃないか。新たな発見として、最後に付け加えておきたい。
取材・文=山口智男 撮影=Keisuke Morizawa