Do As Infinityデビュー26周年、奇跡の『DEEP FOREST』再現ライブを前に2人が語る秘話と想い
Do As Infinity
Do As Infinityデビュー26周年、奇跡の『DEEP FOREST』再現ライブを前に2人が語る秘話と想い2025年10月3日、東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催されるDo As Infinityのデビュー26周年記念ライブのテーマは、サードアルバム『DEEP FOREST』(2001年)の完全再現に決まった。『DEEP FOREST』は、アニメ『犬夜叉』テーマ曲として世界中で知られる名曲「深い森」をはじめ、「遠くまで」「Week!」「冒険者たち」などヒットシングルをぎゅっと詰め込み、当時のオリコンチャートで1位を記録した、自他ともに認めるDo As Infinityの代表作。24年の時を超えて今も光り輝く名盤だ。SPICEでは、この一夜限りの奇跡のライブを盛り上げるべく、リハーサルスタジオで作業中のメンバーを緊急キャッチ。大渡亮と伴都美子に『DEEP FOREST』の成り立ちと制作秘話、再現ライブに臨む思いと、ファンへのメッセージを語ってもらった。
――リリースから24年にして遂に実現する、アルバム『DEEP FOREST』の完全再現ライブ。そもそもどなたが言い出したものですか。
大渡:僕です。僕はずっと洋楽のロック中心に聴いてきたんですが、最近は海外のアーティストが、自分たちの代表的なアルバムを曲順通り完全再現するというライブが多々ありまして、コロナ前に、ナイト・レンジャーのファーストアルバムとセカンドアルバムの完全再現ライブを、昭和女子大学人見記念講堂で見たんですね。自分の青春時代ですから、曲順通りに聴くと、前の曲がフェードアウトする時に次の曲のイントロのキーまでわかったりとか、そういう感動があったわけです。だからDo As Infinityも、自他共に認める代表作アルバムがありますので、それをいつかやらないといかんなと、ナイト・レンジャーを見た時に思ったんです。それが2019年の10月ぐらいだったんですが、半年経たずにコロナになって、実現ができずにいたんですけど、あの時思ったことをそろそろ具体化したいなということで、提案させてもらった次第です。
――なるほど。そんなきっかけが。
大渡:ただ、僕はやりたいけど、望まれないことはやりたくなかったので。スタッフに「どうかな?」と相談したら、思いのほか好リアクションで、「絶対やりましょう!」と言ってくれるスタッフが多かったので、やる価値はあるなと思ったということですね。
――伴さんが、初めてこの企画を聞いた時のリアクションは?
伴:私はそういった再現ライブを見たことがなかったので、「それで成立できるの?」と言ったら、「成立させるの」ということだったので(笑)。ただ確かに最近は、楽曲が単品で聴かれることが多いですけど、アルバムの世界観として一生懸命作ってきた作品たちでもあるので、それを今の自分たちが表現したらどうなるかな?という興味が湧いて、「やりましょう」という形になりました。
Do As Infinity
――『DEEP FOREST』がリリースされた2001年は、『NEW WORLD』と『DEEP FOREST』の2枚のアルバムを出して、その間にクリエイティブの中心だった長尾大さんがフロントメンバーから離れて、Do As Infinityにとって大きなターニングポイントになるでした。今振り返ると、どんな時期でしたか。
大渡:僕らは1999年9月にシングルデビューして、ファーストアルバムを2000年の3月に出すんですが、最初はテレビの戦略というものを意図的に避けて展開していたんです。衛星波のチャンネルのみに出て、あとは音楽で勝負するみたいな、それまでのエイベックスの中にはない戦略を取ることになったんですね。なので、最初はそんなに多忙ではなかったんですが、確か『DEEP FOREST』を出す前に、シングルを4枚立て続けに出すんです。僕の記憶が正しければ、2001年の春先から3か月連続リリースがあって、もう1枚出してからアルバムだったと思うんですけど、シングルを出すということは、それぞれビデオを撮って、ジャケ写を撮って、取材を受けて、またレコーディングしてという、どれが先になるかわからない状態で、ただただ録音と撮影と取材が続いて、一番忙しくなってきた時だというふうに記憶しています。しかも、セカンドアルバムに伴うツアーもあったし、今では考えられないぐらいのハードスケジュールな日々だった。だから、アルバムが出た時にはもう次のことをやっていて、『DEEP FOREST』のセールスが好調なのは知っていましたけど、それを噛みしめる時間はなかったですね。
――伴さんは、この時期にはどんな思いがありますか。
伴:目まぐるしかったことは覚えていますね。テレビの露出も、ファーストを出した後ぐらいからちょこちょこ出させてもらえるようになって、私はCMとかも出させてもらって、わかりやすく露出が増えた時期だったので、充実と言えば充実でしたけど、なかなか激しいスケジュールでした。確か『NEW WORLD』を出したあとに、ライブハウスツアーをやったと思うんですけど。
大渡:やった、やった。
伴:で、ツアーに行くと、やっぱり飲むじゃないですか(笑)。あれがいい息抜きだったのかな?とは思いますね。
大渡:二人の共通点は、お酒を飲むことが好きなので。最初はいわゆるオーディション的に出会ったので、距離を縮めることになったのは、やっぱり宴(うたげ)なんですよね。
伴:宴(笑)。
大渡:宴が距離を縮めてくれました。
――忙しかったけれどすごく大事な時間でもあったと。そんな日々の中で生まれた『DEEP FOREST』というアルバムは、亮さんにとってどんな作品ですか。
大渡:今度のライブのリハーサルを始めるに際して、その時のビジュアルを見たんです。DVDを見たり、ネットで写真を見つけたりして、「これは『DEEP FOREST』の時期だ」って、写真を見てすぐわかったんですよ。こう言ったら何ですけど、ビジュアル的に一番完成されていた時だなと思うんですね。
伴:あははは。どういうこと?
大渡:伴さんが多くの人を魅了した意味というか、理由がそこにあって、簡単に言うと「こりゃ売れるわな」という感じがあって、添え物の僕も、結構完成しているんですよ(笑)。髪が金髪だったりとか、ほとばしるエナジーみたいなものを、自分を見て感じるんですよね。「あの時はこうだった」というよりも、客観的にその写真を見て、カメラに向かってグワーっとほとばしる何かを感じて、「この伴と亮はかっこいいな」と思えちゃったんです。すごくスタイリッシュに見えたし、いいタイミングでいい衣装さんといいヘアメイクさんと出会えたということもあって、商品として完璧だなというふうに思いましたね。
伴:洗練されたんだね。
大渡:その後の僕らは、普通に人間生活をそれぞれ営んで、今がありますから。例えば子供がいたり、家庭があったり、そういうふうになってくるんですけど、そうじゃない時の、商品として完璧な状態で、だから売れたんだなと思ったんです。もちろん曲は大事ですけど、「このビジュアルでこの曲をやっているから売れた」と思うんですよ。『DEEP FOREST』は、実売で60万枚ぐらい売れているはずです。
伴都美子
――2001年でその数字は、本当に凄いです。
大渡:本当にピークもピークで、その後もピークの時期は結構続くんですけれど、最初のピークを迎えたのが『DEEP FOREST』だと思うんですよね。自他ともに認める代表作としたら、やっぱりこのサードアルバムになるなというふうに僕は思いますね。
伴:タイアップのおかげで、いろんな方にの耳に届いたことは事実ですけど、関わってくださったスタッフのみなさんの才能やセンスが、すごく研ぎ澄まされたものが集まって、しかも「流行りに乗らない」というか、自分たちの「好き」や「ワクワク」を選んで作り上げたものでもあったので、自信にも繋がった1枚ですね。多くの方に届けられたという、自負心も実感もあります。
――亮さん、いつかのインタビューで、「我々はエイベックスの中で異端のグループだった」という言い方をされていましたよね。
大渡:先ほど言いましたけれど、戦略からして本物志向を目指そうということで、テレビやタイアップにたくさん出ていくというやり方ではなかったんです。鳴り物入りで、いきなり認知されて売れたというよりは、地固めをしっかりするグループとしての戦略があったと思います。当時のエイベックスのアーティストさんで、そういう戦略の方々がほかにいらっしゃらなかったということがまず一つと、あとはエイベックスの特徴として、当時の代表取締役専務の松浦勝人さんのプロデュースというものがあって、初めて世の中に出るという流れがあって、僕らもそれを踏襲しているんですが、実際に実務を任されていた人間が元々ミュージシャンで、メンバーとして伴や亮を集めることから尽力した人なんです。今は会社にはいないんですけれど、Do As Infinityはその人の個性が強く反映されていて、松浦さんに「俺にはよくわからないからお前が好きにやってくれ」みたいに言われたグループなんです。
――はい。なるほど。
大渡:それが故に、バンドサウンドを追求して今日まで来れたということですね。なので、異端というフレーズを使ったのは、いわゆる会社の中での異端ということで、そしてロックという音楽的にも僕らは異端だと思うんです。どういうことかというと、世間様からすると「エイベックスのELTの後釜グループ」で、でも中(エイベックス社内)から言うと「うちのカラーとはちょっと違う」というか、一番カテゴライズできないところにいたんですね。ロッキンオンとか、そういう人たちにはいわゆるポップスに思われるし、エイベックスにはロックに思われるし、そういう状況に苛立ちを感じた時期は当然あったんです。「なんで俺らはこんなにガンガンやってるのに、ガンガンやってると思われないんだ?」って、非常に残念に思ってしまった時期もあったんですけれど、でも世間が思うことはコントロールできないんですよね。26年経ってみて、「このアンバランスな感じはほかにないな」という、稀有な存在として胸を張っていいのかもしれないって、すごく今は思えています。「ロックと呼ばないなら呼ばないで勝手にせいや。こっちも勝手にやるからな」みたいな、54歳になっても気合を入れる感じというか。
――かっこいいです。今日、亮さん、飛ばしてますね(笑)。
大渡:リハーサルの直後なので、アドレナリンが出ているんです(笑)。自分たちが浮ついてなくて、ちゃんと自分たちの音楽さえやっていられれば、世間様にどう見られようが関係ないという考え方に今はなりました。僕らが作ってきた屋号を推し進めながら、ちゃんと地に足つけて、好きでいてくれるお客様のために届けることと、これから興味を持っていただくための広報活動と、どちらも継続していきたいという感じですね。
大渡亮
――私事ですが、初めてお二人にインタビューさせていただいたのが2004年で。その時の亮さんの発言で、「今のJ-POPの流れに反抗する気はないけど、そこに“ささくれ”のようなものを作りたい」とおっしゃっていて。
大渡:その時からそんなこと言ってたんだ(笑)。
――実際、「エイベックスの新しいグループ」だと思って聴いていたら、ものすごくハードな歪みギターが飛び出したり、攻撃的な側面もたくさんあって。それこそ『DEEP FOREST』に入っている「構造改革」のギターソロとか、とんでもないです。
大渡:当時はグランジの質感を好んでいた時期でもあって、それは椎名林檎さんを手掛けた亀田誠治さん(『DEEP FOREST』のアレンジャー&プレイヤー)の感性もあって、僕もそれには完全に賛成していたので。時代の流れとしてオルタネイティブな要素があって、それをポップスに落とし込んだ一つのフォーマットというか、そんな感じがしますね。
――伴さん、『DEEP FOREST』の中で特に思い入れのある曲や、覚えているエピソードがあれば教えてください。
伴:曲順を決める時に、1曲目は「深い森」しかないでしょうって、みんなの意見が一緒だったのは覚えています。あとは「構造改革」とか、当時はがむしゃらだったので、トライの連続で、必死にみんなについていくみたいな姿勢だったんですけど、今聴き返してみても古くないというか、全然刺さる人がいるんじゃないかな?と思います。当時、「構造改革」という言葉が世の中に出てきたんですよね。
大渡:小泉さんの時ね。
伴:そういう時代背景を踏まえて歌詞を見ると、「すごい角度から切り込んだ歌だな」という手応えを感じています。
――「構造改革」は、誰が書いた歌詞でしたっけ。
大渡:あれは、先ほど言ったエイベックスのスタッフで、僕らの船頭だった方です。立場的にはエイベックストラックスのA&Rとして携わってくれた人物です。ただ作詞作曲のクレジットに関しては、彼の提案で「全員で作っているから公のクレジットはD・A・Iにしよう」ということにしたんですけど、今思うとちょっと失策だったと思います。個人名でやったほうが、それぞれのカラーを見てもらえたかな?と思うので。
――確かに。そうかもしれない。
大渡:長尾さんが歌詞まで書いていると、思われることが多かったので。もちろん長尾さんは作曲家として素晴らしかったですけど、作詞はみんなで分業でやっていたので、そこをもっとフォーカスされても良かったかな?とは思います。
Do As Infinity
――伴さん、あらためて、今や世界中で愛されている名曲「深い森」について、最初からこんな大きな曲になると思っていたかどうか、当時の印象を教えてください。
伴:私がDo As Infinityのプロジェクトに入った時には、もう長尾さんの作曲のデモ音源が結構な量があったんです。それから路上ライブを3人でやることになって、リハーサルスタジオに行って、休憩中にデモ音源を聴いていたんですけど、「深い森」を始めて聴いたのもその時で、「この曲は絶対歌いたい。人に渡したくない」と思った1曲です。
大渡:温存していた曲ではあったんですよね。デビュー当時からすでに存在していて、大事な時期に出すと決めて取っておいた曲というか。長尾さんも、伴さんの歌が一番この曲に合うと思っていたみたいです。
伴:この頃は長尾さんがよくスタジオに来ていて、「もっとこうして」みたいなボーカル・ディレクションもあったりしましたね。
――貴重な話が聞けて嬉しいです。そしていよいよ、10月3日のデビュー26周年記念ライブ、LINE CUBE SHIBUYAでの『DEEP FOREST』再現ライブが間近に迫ってきました。どんなライブにしたいと思っていますか。
大渡:アルバムの曲順通りにやることにはこだわりがあって、ただ使う楽器や音の質感は今の状態なので、昔のままを再現するわけではないです。ただ先ほども言いましたけど、『DEEP FOREST』の頃は、外から見ても完璧だったんですよ。ルックスも含めて、完璧だった僕らを振り返るには今がいい時期だなと、本当に思うんですね。当時は忙しすぎて、その後に一度解散しているし、グループのことをあまり肯定的に思えなかった時期が、僕の中には結構あるんです。否定的というわけじゃなくて、振り返っていると自分が前に進めないから、振り返らないみたいな時期があって、再結成してからも、昔のサウンドを追求していても勝機はないから、今の僕たちの最大限を目指すということで、あえて振り返らなかったということもありますし。
――はい。なるほど。
大渡:ただ、やっぱりコロナが大きかったとも思いますけれど、それが明けて、今僕らも調子がいいから、そういう時にこういう再現をするのはたぶん喜ばれるな、という流れなんですよね。自分的にも、「あの時期のあれを再現する」という気持ちでステージに上がると思います。そして、くしくも会場が、渋谷公会堂あらためLINE CUBE SHIBUYAなんです。僕らの全盛期には、ツアーの入口に渋谷公会堂で2DAYSをやって、ずっと回って帰ってきて、最終日にまた渋谷公会堂で2DAYSをやるみたいなことが多くて、すごくメモリアルな会場なんですね。それもあって、ここでやることで、当時を振り返ることがコンプリートできるかな?と思っています。
――ちなみに、アルバムの中で、当時ライブでやらなかった曲はあったりしますか。
伴:「Hang out」ですね。
大渡:なぜか、やる機会がなかったんです。アルバムのツアーに出ても、旧作をやる必要もありますし、物理的に省かれちゃったのかな?という感じですね。曲的には、やっても良かったのにと僕は思いましたけど、ただ歌詞の問題で、僕らの中で評価が低かったのかな。等身大で頷けないというか、共感できないみたいな(笑)。
伴:だから今回、「Hang out」が一番喜んでいるかもしれない。曲自体が。
――やっと歌ってもらえる、と。
大渡:ようやく日の目を見ますね。
――そうした初披露も含めて、伴さんは今回のライブで、どんなことを表現したいと思っていますか。
伴:さっき亮くんも言いましたけど、私も振り返ることは好きではなくて、常に未来のほうを見ていたいんですけど、でもこの企画自体はやってみる価値はあると思うし、喜んでいただけるファンのみなさんもいらっしゃると思います。そして渋谷公会堂、LINE CUBE SHIBUYAという場所は、路上ライブ100回記念でフリーライブをやった思い出の会場でもあるので、全部が楽しみでしかないです。私は26年歌ってきて、自分でも不思議に思うくらい、今歌っていてすごく充実している実感があるので、その感じが表現できたら嬉しいですね。
大渡:伴も僕も、ミュージシャン的には最高潮というか、本当に今が一番いい状態だと思っています。昔は表現できなかった微妙なニュアンスとか、今なら的確に表現できる強みがあったりして、楽しみながらライブをやれている感じです。
――当時を知る方も、初めて見る方も。すべて含めて、ファンの方へのメッセージをもらえますか。
伴:私たちはいつでも誰でもウェルカムです(笑)。これをきっかけに、はじめましての人も楽しんでもらえるようなステージにしたいですし、昔から応援してくださっているファンの方も、胸熱なライブになると思いますので、どうぞお楽しみにいらしてください。
大渡:こんなふうに、やる曲を先に言っているライブなんて、そうそうないですから。だからまずアルバムを聴いて、ビビッと来れば、それを生で感じていただきたいと思います。今はサブスク全盛時代で、どんなに昔に出したものも、今の子たちには新譜扱いだという話を聞くので、そういう方はまずアルバムを聴いていただいて、ビビッと来るか来ないか、信じるか信じないかはあなた次第です(笑)。
伴:もちろん、『DEEP FOREST』以外の曲も、再結成後の曲も含めて、ライブの定番曲もやりますので。全部を楽しんでほしいです。
取材・文=宮本英夫
Do As Infinity
ライブ情報
開場 17:30 / 開演18:30
【生配信】
視聴券販売期間:9/29月18:00〜10/12日21:00
視聴プラットフォーム:Streaming+
視聴料金:4,500円(税込)
視聴
3rdアルバム『DEEP FOREST』
1.深い森
2.遠くまで (Album Ver.)
3.タダイマ
4.Get yourself
5.翼の計画
6.構造改革
7.恋妃
8.Week!
9.Hang out
10.冒険者たち
11.遠雷