Rhythmic Toy World主催『玩具大戦 2025』特別座談会 #1(LACCO TOWER・TOTALFAT・BIGMAMA)

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インタビュー
音楽

『玩具大戦 2025』特別座談会 #1

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昨年のRhythmic Toy World結成15周年を祝して開催されたフェス『玩具大戦』が今年も帰ってくる。埼玉・ところざわサクラタウン ジャパンパビリオン ホールAを舞台に、ライブハウスを主戦場にリズミックとしのぎを削ってきた精鋭たちが集結。SPICEでは本番へ向け、フロントマンの内田直孝(Vo/Gt)と各バンドの座談会を企画。ここの交遊の歴史や地元でフェスを企画することへの思い、ライブシーンのリアルまで様々な内容をトークセッションしていく。前編となる今回はLACCO TOWER・塩﨑啓示(Ba)、TOTALFAT・Jose(Vo・Gt)、BIGMAMA金井政人(Vo/Gt)が登場。いずれも先輩にあたる3組とリズミックとの出会いから互いのリスペクト、本番への想いまでたっぷりと語り合ってくれた。

──まず基本的なことからですけど、リズミックと今回登場の3組とはどんな出会いだったんですか。

Jose:僕はもう、うっちーが髪型キモい頃からの付き合いなんで──

内田:ちょっとちょっとちょっと!

Jose:いまだに髪切らない方がよかったと思ってます(笑)。

内田:もう6年、7年前とかですよね……もっとかな?

──もっとじゃないですか?

Jose:(赤坂)BLITZだよね、切ったの。あの三つ編みでブランコするのが夢だったのに。

内田:……ちょっと、マズいかもしれない、今日(笑)。

塩﨑:Joseが悪いと思う(笑)。

内田:LACCO TOWERとTOTALFATはライブをご一緒したことは何度もありますけど、BIGMAMAに関してはいちリスナーから入ってます。メンバーの(東出)真緒さんとイベントで一緒になって意気投合したのをきっかけに、クリスマスのライブに行かせていただいたら、良すぎて。その次にZeppのライブも行かせていただいたら、僕の記憶が正しければMC無しのライブで、本当にあっという間だったんですよ。僕らはMC無しなんて絶対に無理ですけど、言葉で伝えるだけじゃなく音楽の方に重点を置いたやり方の余地がまだまだあるなって、その後結構メンバーと話したりもしたぐらい衝撃を受けて。なので今回、この機会に満を持して声をかけさせていただきました。

──あ、これまで対バン経験はないんですね。

金井:はい。名前はずっと知っていたけど、(BIGMAMAは)わりと閉鎖的なバンドなんで(笑)、我が道を行ってしまう活動を続けてきたからご縁がなかったというだけです。キャリアを重ねてきた今、実際にライブに足を運んでくれて、こうやってイベントに誘ってもらえるということは飛び跳ねるくらい嬉しかったし、あとはやっぱり自分たちでイベントをやることの大変さもすごく想像できるようにはなってるので。いろんなバンドとコミュニケーションをとって、一つのものを作り上げようとするアーティストに対して僕らはすごくリスペクトがあるし、誘っていただいた以上は「呼んで良かったな」と思われるバンドであるべし!みたいなことは常に思っていて。これだけキャリアを重ねてるバンドなんて、みんな当たり前にかっこいいんですよ。でもそれ以上に、こうやって一緒にやろうと言ってくれることでちゃんと曲も聴くし、あらためて人間を好きになって、バンドとしても交わるタイミングがあるというのは、長く続けてきたご褒美だなと思っていて。素直に嬉しかったです。

内田:ありがとうございます……!

塩﨑:すげえいいこと言うなぁ。丸々使えますよね?

金井:一応、台本通りに(笑)。でも本当に、僕らからしても新しいことが生まれるじゃないですか。やっぱり、対バンした後って何かを受け取って帰ってるので、毎回。良い時もあれば悪いこともあるかもしれないけど、例えばTOTALFATはずっと寄り添って、背中をずっと追い続けてるバンドですけど、その後にステージに立つと何かが残ってるというか。そういうものを味わえる保証がこのイベントにもあると思うし、そこに入れてもらうことによる自分たちの変化も楽しみにしたいなと。

『玩具大戦 2025』特別座談会 #1

──LACCO TOWERはいつリズミックと出会ったんですか?

塩﨑:地元群馬の前橋DYVERっていうライブハウスに来てて、観に行ったんですよ。相当前だよね?

内田:13年前くらいじゃないですかね?

塩﨑:で、その時のライブが良かったんで、自分は出てないのに打ち上げも参加して話しにいったんですよ。見た目もそうだし競って気負ってる感じはしたんですけど、意外と人間っぽいMCをしてたんで、そこに俺は興味があって。話してみたら本当にそのままというか、ステージを降りても変わらない信念みたいなものが常にある人間なんだなと。他のメンバーもみんな個性的だし、一回で仲良くなれちゃうような人懐っこさもある。そこからもう、とんでもない回数(共演)を重ねてきて、地方に行ったり、呼んだり呼ばれたりみたいな感じですね。

内田:僕、話しかけづらいと言われる人生を歩んできてるんで、そこは受け入れてるんですけど……先輩方にもちょっと責任はあると思うんですよ。

塩﨑・Jose:おお!?(笑)

内田:僕も15年やってきて後輩とかもできたからこそですけど、先輩たちは後輩がどれだけ緊張して対面しているかっていうのを、もうちょっと汲んでほしいですね。

塩﨑:はっはっはっは!

内田:ご自身たちがどれだけステージからエネルギーを発して輝いているかということを、今一度、しっかりと! 見つめ直していただきたいですね(笑)。ただでさえ「うわぁっ」ってなってるのに、さらに話しかけづらい印象まで持たれてしまうと、余計に時間がかかってしまうんですよ、僕は。

──緊張してるからこそ、余計に話しかけづらいオーラが出ちゃう。

内田:そうなんですよ。僕は一緒にライブをしたいんです。一緒に同じステージに立ちたいということは、同じスピードで歩んでいたらダメなので、そのためにあの手この手を考えて、今だからこそできる加速度やスピード感みたいなものを駆使していくしかないわけじゃないですか。今はまだマシですけど、僕もその頃はかなり閉鎖的だったし、ちょっと斜に構えてる奴だなと思われてもいいから隙を突くというか、そういう戦法を当時はとってましたね。なので、今こうしているのがどれだけ嬉しいかっていうことなんですけど。

──出会った当時にこのメンツを集めて何かやろうなんて思えないでしょうし。

内田:こんなのもう、ドリームチームみたいなもんじゃないですか。ライブハウスのポスター見て、やりたい人をポンポン並べて「こんなんできたらいいよなー」くらいのレベルの方々が、僕らのスタイルに少しでも光る部分を見つけてくださったことが、本当にありがたいです。

Jose(TOTALFAT)

──リズミックの光る部分って、Joseさんはどこだと思います?

Jose:今は取材なんでだいぶオブラートに包んでますけど、うっちーは尖ってるんですよ、基本的に。それが僕らの中ではすごくかっこいいなと思っていて。自分の曲と歌に自信があって、それをどうしたらお客さんに伝えられるかをすごく考えてライブをするバンドいう印象の中で、たとえばすーさん(須藤憲太郎/Ba)みたいに先輩に可愛がられるキャラクターもいたり、自然とうっちーを尖らせておけるように他3人が動いてるイメージがあるんですよね。後輩なんて尖ってて当たり前だし『絶対に倒してやんぞ!』って思っててくれないと僕らが冷めちゃうんですよ。リズミックとの対バンはもう何年もできてないけど、今回はタイミングよくハマったので『これは出たいよね』って。自分らの冠でトリにどんなライブをするのか、すごく楽しみですね。ガチガチだったら面白いけど(笑)。

内田:ちょっとやめてください(笑)。僕、今となってはJoseさんに感謝してることがあって。ツアーに呼んでいただいた時に、当時は僕が三つ編みやったんで、見た目がKuboty(TOTALFATの前ギタリスト)さんと似てるっていう──

Jose:はいはいはい(笑)。

内田:先輩のツアーに呼んでいただいただけでも結構ガチガチだったのに、Kubotyさんと同じような格好をして1曲ギターを弾いたら?みたいなことを、現場入りしてから伝えられて、やるしかないじゃないですか。でもコラボみたいなことをあんまりしたことないし、しかも先輩のバンドに入るっていうので、もうヤバかったんです。ステージに立ったら緊張しちゃって、頑張らなあかんところで上手くできなかったんですけど、終わった後に「あんなの弾けないんだったら気にせず『ウェーイ!!』とかやっちゃえばいいんだよ」っていうふうに言ってもらって、楽しむってそういうことなんやなって。怒られるかもと思ってたんですけど。

Jose:ああ、なるほどね。

内田:そもそもそういうスタンスじゃないもんなっていう。それからは、誰かとライブでコラボするとかっていうのも積極的に『やりますよ!』『任せてくださいよ!』って言える自分になれた、きっかけがJoseさんやったんです。

内田直孝(Rhythmic Toy World)

──それぞれから受けた影響あっての今のリズミックですけど、BIGMAMAのライブを観た時にはどんな部分で喰らったんですか?

内田:空間を掌握する速さと、色のついていくスピードも速すぎて。もちろんワンマンというのもあるかもしれないですけど、だからといって絶対に盛り上がるとか、素晴らしいライブになるというものでもないじゃないですか。しかも僕らは純ファンの方とはまた違う気持ちで行ってるわけで。でもわかったんですよ。そこにいる人がいま何で笑ってて、楽しそうな顔をして、真面目な顔をしているのか。何故かと言ったら、僕も同じ顔をしていたから。それがいちばん強いなと思ったんです。知ってる人でも知らない人でも等しく同じ空間できる力が、自分に足りないものとしてちょうど悩んでいたことの一つでもあったんですよ。ライブのやり方は本当に千差万別あって、僕らは言葉と音楽をセットにして考えてライブを組み立ててるけど、でもそこにももっと切り込める余地があるんじゃないか、言葉を少なくすることによって音楽の説得力が上がることもあるんだとか、そういうことも改めて考えさせてもらったことで、僕の中では偉大なライブという感想でした。

金井:僕は、自分を好きっていう感想よりも、曲を好きって思ってもらった方が嬉しいんですよ。だから、曲を好きって思ってもらうにはどうしたら良いかをずっと考えているし、ライブの感想として誰かが何かを言ったよりも『曲が好き』に辿り着いてもらいたいゆえの一つの方法論であって。あとはきちんと余白を残しておきたいというか、ざっくりと媚びないというか、観てる人が自分で辿り着いてほしいんですよ、その感情に。なので、あまりこちらから『ああしてくれ』『こうしてくれ』よりも『あなたがいちばん楽しい方法で自由に楽しんでね』っていうのを徹底してたら、いまこうなりました。

──なるほど。

金井:こうやってキャリアを続けられるバンドって声紋というか、声の指紋みたいなものを感じられるかが絶対にふるいの一枚目にあって。その上でどうエネルギッシュに活動していけるか……最終的に俺はガッツだと思っていて(笑)。わりと根性論を言うのは嫌なんですけど、人は熱量がないと動かないから。(リズミックは)それを純に感じやすい音楽だし曲だなと思います。今は想像で言ってますけど、おそらくこういうライブをするんだろうなっていう印象を、当日に超えてくれるのをすごく楽しみにしてます。

塩﨑啓示(LACCO TOWER)

──そういうバンドごとの姿勢や考え方、流儀の打ち出し方って、ワンマンとこういうイベントの時でどんな部分が変わってくるものですか。

内田:ああー、それは僕も知りたいですね。

塩﨑:自分たちのワンマンだったり、誰かに呼ばれたり、どこどこのハコの何周年イベントだったり、いろんな場合があると思うんですけど、都度頭に浮かぶのってその主催の人がどう考えてるかとか、どういう思いでステージに立つかってことだと思うんですよね。例えば自分たち主催でレコ発みたいな冠が付くときは、それが主体となったセットリストを組んだり話す内容になるのと一緒で。自分たちの地元とか仲間に恩返ししたいというので始めたのが『I ROCKS』っていうイベントなんですけど、フェス=祭りだからそれぞれ違って当然で、何のためにやるかも当たり前のように全員同じ方向ではないと思うんですよね。『玩具大戦』は去年ちょうどライブが被って出れなかったんで、どういう意図があって所沢でやるかは想像になっちゃいますけど、相当腹を括らないとできなかったと思うんですよ。規模もそうだし、巻き込む人の数もそうだし。地元に墓を建てるくらいの気持ちで続けていくフェスだと思うからこそ、ステージも楽しみだし、俺たちも生半可な気持ちではステージに立てないなという思いで挑むし。……質問とはずれちゃいましたけど、ライブによって当然思いは違うから、向ける方向も違うっていう感じですね。

Jose:ワンマンだとマニアックな曲とか、実は好きだけど最近やれてない曲をできたりするので、自分たちも楽しいっていうのと、純度100%の自分たちのファンと長い時間一緒にやれる。やっぱりフェスとかって一瞬じゃないですか。だからもうちょっとやりてえなで終わっちゃうことも多いんですけど。その代わり、フェスだと僕らはやり逃げスタイルというか、とにかくホームランを打ち続けて走り去っていくみたいな。

内田:(笑)

Jose:さっき金井が言った曲を好きになるという、その前にもうインパクトだけ残して、気になって仕方ない状態で終わらせるライブというのは意識してますね。今回の場所だとうちのドラムのBUNTAがめっちゃ地元で、僕らがイベントをやろうとした時にも名前が出てきた会場の一つなんですよ。なので、奴にセットリストを組ませます。

塩﨑:いいね!

Jose:両親とかも多分くると思うんで、恩返しというか。そういう意味で、MCもBUNTAにやらせたら……どうなるかなぁ?(笑) でもそういうライブは、俺らは結構やりますね。友達に呼ばれたツアーだったら、そいつらにリクエスト聞いたりとか、そこで対バンした時にできたマニアックな曲を放り込んだりとか。なので今回はBUNTAに期待かな。

内田:それ、めっちゃスペシャルじゃないですか。

金井政人(BIGMAMA)

──BIGMAMAはワンマンと、フェスやイベントで大きな違いはあまり感じない気もします。BIGMAMAの空気のままどこにでも出ていってるというか。

金井:不器用なだけじゃないですか?(笑) でもふたつ考えがあって、ひとつは一生自己紹介だなと思ってて。きっとこれからもイベントに呼んでもらったり新しく観る人が多い時に、我々はいちばんかっこいい自己紹介をずっと探し続けてます。……ワンマンですらそう思ってるかも。で、もうひとつはステージに立ってしまえば夢中でやるっきゃないので、準備するまでが愛情表現だと思っていて。セットリストを決める時に、ここはぶん殴った方がいいのか、髪を撫でた方がいいのか、愛情表現のやり方をギリギリまでいろんな曲と相談して、毎回スタッフに迷惑かけながら最後のリハまでやって、それで当日当たった/外れたみたいな話もしますし。もちろん来てくれるお客さんが第一なんですけど、その向こう側に呼んでくれた人たちを見ていて。このイベントを誰が作ってるのか、どういう気持ちで呼んでくれたのか。そこへきちんと届くように、ということを考えてます。

『玩具大戦 2025』特別座談会 #1

──それぞれのバンドが当日どう挑むのか、既になんとなく伝わってきますね。

内田:ちょっと……ゾワゾワします(笑)。自分もそう思うなっていうこともあれば、オリジナルな考えやスタイルもあって、それを言語化できるところはやっぱり流石だなって。なんとなくじゃないっていう、僕もそうありたいって常に思いながらも、うまく言葉にできないこととか、ずっと迷いながら悩みながらやってる。それでも今現在のスタイルとかムードだったりが、いちばん自分たちに似合ってるという自負はあって。みんなライブのスタイルも全然違うわけですけど、これはすっごく混じり合うんじゃないか?と思います。一日通してみんな一つのライブだと考えた時に、とんでもなく混ざり合うなと確信しました、今。……あとは当日、僕の代わりをタイミーで雇って、観客として観にいけるかどうかですね(笑)。

Jose:髪長かったらKubotyでどうにかなったかもしれないけど(笑)。

内田:(笑)。とにかく今年もみなさんのライブを楽しめるだけ楽しんで、それを受けて立つんで。それはプレッシャーのようにも感じるけど、心強さもありますね。どんなステージになってもちゃんと真っ直ぐ観てくれるやろうから、胸張って堂々と、思いっきりいちばん楽しんでやろうと思います。


取材・文=風間大洋 撮影=大橋祐希

『玩具大戦 2025』特別座談会 #1