スピッツ恒例『ロックロックこんにちは!Ver.27』初日レポート――奥田民生、go!go!vanillas、Bialystocksがつないだ音楽と幸福「ここにいるのはスピッツにとって特別な人ですから」
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『ロックロックこんにちは!Ver.27 ~Two-Na-Go!~』2025.9.18(THU)大阪・Zepp Namba(OSAKA)
スピッツによる恒例のライブイベント『ロックロックこんにちは!Ver.27 ~Two-Na-Go!~』が9月18日、大阪・Zepp Namba(OSAKA)で開催された。
1997年に始まり今年で27回目となる『ロックロックこんにちは!』は、9月18日・19日の2日間にわたって行われ、初日の18日には初出演のBialystocks、go!go!vanillasに加え、奥田民生が9年ぶりに登場した。
運動会をほうふつとさせるBGMがDNAに訴えかけるふつふつとした高揚感のなか、まずはスクリーンにFM802 DJの加藤真樹子とスピッツの4人が映し出される。壁一面に貼り出された「こんにち話」=事前に募集された『ロックロックこんにちは!』にまつわるエピソード企画を紹介しつつ、27(=ツナ)回目にちなんで生まれた宣伝隊長のキャラクター「海遊魚人 ツナイダー」に中継をつなぐと、27=ふなでもあるということで、ゆるキャラ界の人気者「ふなっしー」まで登場(笑)。2組がじゃれ合うユーモラスなオープニングで、『ロックロックこんにちは!Ver.27 ~Two-Na-Go!~』がついにスタートした。
奥田民生
舞台上にはアコースティックギターが3本とイスと譜面台。『ロックロックこんにちは!』のシンボルであるドクロのバックドロップが掲げられたステージにふらっと現れた奥田民生が、まるで自分の部屋にいるような親密な空気の中でスピッツの「うめぼし」を歌い始めるや、ドッと沸く会場。かつてスピッツのトリビュートアルバム『一期一会 Sweets for my SPITZ』にも収録された一曲で、そこに響き渡るのはアコースティックギターの音色と歌声のみ。けれど、民生の声とスピッツの歌があれば、他に何もいらない。そう証明するかのように大きな拍手が巻き起こる。「スカイウォーカー」~「E」でもただ切々と弾き語り、その言葉の一つ一つをZepp Namba(OSAKA)に染み渡らせていく。端から端までびっしり埋まった客席が微動だにせず引き込まれる求心力は、静かで強い。
「『ロックロックこんにちは!』はよく出させてもらってますけど、息をするように出てるから、「出るぞ」とか「やったるで」はないのよね。「明日か」みたいな(笑)。いつもありがとうございます。俺だけでしょ、今日出てる人で60歳になってるの。60になったらストレッチで筋肉痛になるからね(笑)。あいつみたいに元々筋肉があるヤツはならないけど……」と、とりとめもない話から歌い始めた「LA VIE EN ROSE」は、同郷の吉川晃司のカバー曲。先日、話題のユニット・Ooochie Koochieとして共に日本武道館に立った盟友の楽曲を、ひときわ情熱的にかき鳴らす。
「トップバッターで弾き語りをやるっていうのはちょっと……前座感があるね(笑)。なのでもうすぐ終わりますけど、スピッツさんたちが元気な限りこれは続くでしょうから。さっきの「うめぼし」も「LA VIE EN ROSE」も赤いから、今日は赤い曲だけやろうと思ったんですけど、そんなになかったですわ(笑)。ただ、あと1曲だけあるんですよ」
「ワインのばか」では照明でも赤く彩られ、最後は「イージュー……」と思いきや、「あ!」と唐突に声を上げる民生。どうやら譜面をめくり忘れていたようで(笑)、気を取り直して「イージュー★ライダー」を。いつどこにいたって奥田民生は奥田民生な、30分間の濃密なマジックタイム。こんな贅沢なトップバッターは、『ロックロックこんにちは!』でしかあり得ない。
転換トーク#1
ここでラジオ番組を終えて駆け付けたFM802DJ中島ヒロトが加わり、再びトークコーナーへ。スピッツによるBialystocks評は、草野マサムネ(Vo.Gt)が「メロディに心が洗われる。デトックスみたい」と言えば、﨑山龍男(Dr)は「いい感じですよね!」と極めてシンプルに評価。「小学校の給食の時間はみんなスピッツを聴いていました」と語ったBialystocksの甫木元空(Vo)も恐縮しきりで、菊池剛(Key)がたまたま選んだ「『ロックロックこんにちは!』と言えば幕間のコスプレが楽しみ」という「こんにち話」でも大いに盛り上がった。
go!go!vanillas
SEの「Lab.」を背に登場したgo!go!vanillasは、「ロックしていこうぜ大阪!」と牧達弥(Vo.Gt)がハンドマイクで叫び、1曲目の「クロスロオオオード」から完璧に仕上がったグルーヴを放出。全国津々浦々のロックフェスからイベントまで、身も心もフックアップするパフォーマンスで突き進む無敵のバンドワゴンは、「クライベイビー」でもハッピー極まりない時間と空間をZepp Namba(OSAKA)に軽々生み出してしまう。「届いてるか? 一緒に行こうぜ!」と牧が呼び掛けた「Super Star Child」では、縦横無尽にドライヴするロックンロールで見る者をロックオン! そこにいる誰一人置いていかないのがバニラズの流儀だ。
MCでは、「スピッツには『ロックのほそ道』というイベントで仙台に2回も呼んでいただいて、とうとう『ロックロックこんにちは!』にも呼んでいただきました、ありがとうございます! すごいね27回って。長谷川プリティ敬祐(Ba)はスピッツの田村明浩(Ba)さんからベースもお借りして……ってかれこれもう何年よ(笑)」と牧が笑えば、「「あげると言ったらちょっと気を使うだろうから、永久に貸すよ」って。カッコいい~!」とプリティ。
「今日はすごく盛り上がる曲はないかもしれません。スピッツに聴いてほしいと思ったセットリストでやらせていただきます。自由に音を楽しんでください」(牧、以下同)と流れ込んだ後半戦は、柳沢進太郎(Gt)のメロウなギターリフが耳を奪う切なきダンスナンバー「ダンデライオン」で踊らせ、サポートの井上惇志(showmore)の流麗なピアノとジェットセイヤ(Dr)のタイトなビートが導いたのは「SHAKE」。見渡す限りの観客が肩を揺らしハンズアップした景色は、自由に音を楽しんだ何よりの答えだ。
「スピッツはどの曲も名曲で、自分を支えてくれた曲がたくさんありますが、僕らのバンドも気付けば10年を越え、いろんな人と出会って、そこから生まれた曲があります。ちょっとおこがましいですけど、今日はスピッツ先輩を兄弟だと思って歌わせてください」とささげた、高速オルタナカントリー「Hey My Bro.」まで全6曲。有言実行のレアなメニューでもきっちり魅了してみせたgo!go!vanillasだった。
転換トーク#2
「夏フェスでやってない曲ばっかり! 愛ですね」と加藤真樹子も称賛したバニラズと、スピッツからは三輪テツヤ(Gt)、田村明浩が参加した幕間トーク。過去に『ロックロックこんにちは!』でcool drive makersやMr.Childrenと出会い、それぞれのライブに行くようになったというファンが、今回はバニラズを楽しみにしていたという「こんにち話」に、「これからはバニラズに『ロックロックこんにちは!』をやってもらおう!」という三輪のトンデモ案も飛び出すなど(笑)、終始和気あいあいのムードだった。
Bialystocks
その伸びやかなボーカルをZepp Namba(OSAKA)に響かせいきなり圧倒したBialystocksは、甫木元空と菊池剛の2人でしっとりと奏でた「日々の手触り」で幕開け。その旋律にギター、ベース、ドラム、キーボードが合流していくドラマチックな構成で、「灯台」では一転、プログレッシブロックの壮大さとダイナミズムでも魅せていく。
「『ロックロックこんにちは!』、素敵なアーティストの中に僕らも混ぜていただいて本当に光栄です。最後まで一緒に楽しみましょう!」と甫木元が告げた後は、優しいメロディラインと温かなコーラスワークに包まれる「差し色」を披露。『ロックロックこんにちは!』の公式Instagramでツナイダーからも「\ライブで「差し色」聴きたいな~!/」と熱望された思いに応え、より躍動感に溢れたアンサンブルでお届け。ゴージャスな6人編成で贈るアーバンポップ「Upon You」といい、菊池のめくるめく調べにいざなわれたシアトリカルな「I Don't Have a Pen」といい、さまざまな音楽的嗜好を上質なポップソングへと昇華した楽曲群は、細部に神は宿ると言わんばかりに匠の技がさえ渡る!
タイアップ曲にも定評がある職人肌なイメージの彼らだが、ライブを見ればそのミュージックラバーぶりは一目瞭然。クライマックスは、舞うように軽やかに駆け抜けた「Over Now」、甫木元がエレキギターを手にエモーショナルに歌い上げた「Nevermore」でフィナーレへ。Bialystocksが初出演にしてスピッツにバトンを渡す大役を果たした。
転換トーク#3
転換トークのラストパートでは、中島ヒロトに今日の感想を求められても、「何回やってると思ってるんですか!」といなす奥田民生(笑)。「「ロックロック~?/こんにちは~!」という年に一度しかないコール&レスポンスがどうしてもしたくて、念願の参戦がかないました」という「こんにち話」に、「元ネタを知っているのかな? よくこんなダジャレだけで27回もやってきてるよね(笑)」と感心した幕間だけの出演経験すらある『ロックロックこんにちは!』の生き字引が、満を持してスピッツへとつないだ。
スピッツ
今回で27回目、毎年のように行われてきたすごさと尊さを、今ここにいる全てのオーディエンスは知っている。今日一番の歓声に迎えられたスピッツは昨年とはガラリとセットリストを変え、1曲目の「夢追い虫」からみずみずしいバンドサウンドを聴かせていく。ああ、この時点でもう至福。その後も、イントロからどよめきが起きた「見っけ」、疾走感たっぷりに突き抜けた「春夏ロケット」と一気に畳み掛けていく!
毎回スピッツが選ぶカバー曲も『ロックロックこんにちは!』の見どころの一つだが、今年は米津玄師の「Lemon」をチョイス。希代のメロディメーカーが、希代のメロディメーカーの楽曲を歌う。どちらの色も共存共栄するような絶妙なカバーからは、音楽の魔法をまざまざと感じさせた。
「ようこそいらっしゃいました。ロックロック~?」(草野)、「こんにちは~!」といういつもの掛け声が何年経っても楽しい。「スピッツでコール&レスポンスってここしかやらないからね」と三輪が言えば、「そういうのとあまり縁のないバンドですけど、たまにはいいんじゃないですか。ここにいるのはスピッツにとって特別な人ですから。やっぱりカバーが終わると気が楽になるね(笑)」と草野も思わずほほを緩ませる。
続けて出演者にも触れ、「民生さんには毎回むちゃ振りも聞いていただいて、力をくれて。go!go!vanillasもめちゃくちゃ楽しいライブでしたね」と、草野がジェットセイヤからもらったグッズの靴下を持ち歩き、靴を試着するときや急きょ知人の家にお邪魔するときに重宝しているという逸話も。これには三輪も「38年間付き合ってきて初めて知った。まだあるね~(笑)」と大喜び。「Bialystocksはずっと気になっていたアーティストで、音源を聴いたときはしっとりしてるのかなと思ったらライブはすごくロックで、『ロックロックこんにちは!』にピッタリだなと。そして、ふなっしーもありがとうございました(笑)。画面に出た途端にスター性があるよね」と草野が締めくくる。
何とも仲むつまじいやり取りの後は、豊潤なコーラスワークが心地良い「初恋クレイジー」、ライブアレンジの打ち込みドラムをバックに草野がアコースティックギターをかき鳴らし、三輪のエレキギター、田村と﨑山のリズム隊が溶け込んでいく光景に鳥肌が止まらない「運命の人」と続け、「やっぱりスピッツしか勝たん、『ロックロックこんにちは!』に来て本当に良かった!」と今年も心の底から再確認!
「『ロックロックこんにちは!』もおかげさまで27回目、本当に幸せなことで、こんなに長く続けられているのも、皆さんのおかげです。スピッツも『ロックロックこんにちは!』も、できるだけ長く続けていきたいと思ってます。まだまだ続きますのでお付き合いください」
草野からそう言葉にしてもらえる幸福に胸いっぱいのまま、終盤は「クリスピー」~「8823」~「美しい鰭」と、曲を重ねるごとに熱量と充実感が増していく怒濤の展開! アンコールでは、阪神タイガースや『EXPO 2025 大阪・関西万博』についてもメンバーが思い思いに話しながら(笑)、「見て楽しい、やって楽しい。俺らが出る前に完結していたようなイベントで、今年3本目のライブでした(笑)。レコーディングも楽しいけど、やっぱりライブは楽しいね!」(田村)、「客席で見たかった! 楽しい夜を一緒に作ってくれてありがとうございました」(草野)と、シメのごあいさつ。「ハニーハニー」~「トビウオ」の2連発で見事に沸かせ、初日のトリを飾った。
クロージングトークでは、興奮冷めやらない加藤真樹子、中島ヒロト、スピッツの4人が集い、「今日はすごい声援をいただいて。結構ライブの間隔が空いたんですけど、これで取り戻せた」と草野もやり切った表情。恒例の出来たてほやほやのエンドロールには、この日のライブ写真がいち早くまとめられるなど、今年も訪れた人々の余韻にまで寄り添った『ロックロックこんにちは!』の初日となった。
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=オフィシャル提供(撮影:河上良/小川星奈)
>>2日目のレポートはこちら
スピッツ恒例『ロックロックこんにちは!Ver.27』2日目レポート
――OKAMOTO'S、ハラミちゃん、礼賛とつないだ熱狂のひととき「まだまだ続けていきます。音楽が好きでよかった」と再会を約束
イベント情報
【9/18】 奥田民生 / go!go!vanillas / スピッツ / Bialystocks
【9/19】 OKAMOTO’S / スピッツ / ハラミちゃん / 礼賛
ナビゲーター:FM802 DJ 加藤真樹子 / FM802 DJ 中島ヒロト