鬱屈ロックスディスカバリー 最強マンボウ修羅ぼうや、つきみ、アダム、超☆社会的サンダルら個性豊かな出演者たちが集う
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鬱屈ロックスディスカバリー
『鬱屈ロックスディスカバリー』2025.07.14(mon)新宿LOFT&LOFTBAR
神聖かまってちゃん、バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIが所属しているPerfect Musicとオールナイト野外フェス『BAYCAMP』を主催しているロックエージェント・ATFIELDが共同開催している『鬱屈ロックスディスカバリー』。7月14日(月)に行われた今回は、新宿LOFTとLOFTBAR STAGE――2つのステージを往来するスタイルで繰り広げられた。個性豊かな出演者たちが各々の魅力を放ったライブの模様をレポートする。
最強マンボウ修羅ぼうや
最強マンボウ修羅ぼうや
最強マンボウ修羅ぼうや
最強マンボウ修羅ぼうや
新宿LOFTのステージに最初に登場したのは、最強マンボウ修羅ぼうや。彼らのXのプロフィールに「6秒待たず大激怒 逆アンガーマネジメント音楽」と書かれていたが、どのようなバンドなのだろうか? そして迎えた開演。ステージを覆っていた幕が開いた瞬間、戦隊ヒーローのようなポーズを決めた4人・にしむぅ(Vo/修羅)、糊玉(Gt/ぼうや)、マユち(Dr/最強)、おんじ(Ba/マンボウ)が姿を現して「小池億合子が」がスタート。シャープに刻まれるビート、ファンキーなベースラインがダンスを誘った。どことなく怪訝そうにしながらも徐々に身体を揺らして踊り始めた観客。アボカドに8時間シールを貼り続けるアルバイトの作業をイメージした腕の動きと大合唱を観客に求めた「アボカドファクトリー」。アグレッシブな爆音を炸裂させた「1700」……ファンク、ハードコアパンク、ラウドロックが強引に一体化したかのようなサウンドの連続だった。
最強マンボウ修羅ぼうや
最強マンボウ修羅ぼうや
本番前の楽屋で他の出演者たちと何も喋れなかった旨をMCで語ったボーカル・にしむぅ。しかし、ステージ上での彼はなかなか饒舌だった。「私は大阪の人間なんで土地勘ないですけど、新宿歌舞伎町でお前らのような鬱屈したやつらはアウェイなんだ。ただでさえアウェイな君たちがアウェイな最強マンボウ修羅ぼうやを観に来て、今年の夏は大失敗だあー!」――そして「マンガの世界に飛び込みたい」に突入すると、激しい手拍子がフロア内で沸き起こった。続いて、ムード歌謡のような哀愁のメロを響かせた「やみやみ」。スピーディーな展開とダンスビートの併せ技で観客を踊らせた「逆張りダンス」。ラストを飾ったのは、にしむぅの歪んだ声質のシャウトが冴え渡った「麻婆拳法斃炒飯」。得体の知れなさを終始放っていたが、ライブを観た後に抱いた感想は「かっこいい!」に尽きる。彼らの唯一無二の魅力と出会えたのは、このイベントでの早速の収穫だった。
つきみ
つきみ
つきみ
SEが鳴り響く中、ステージに登場したににちゃん(Vo・Gt)、しゅか(Dr・Cho)、りーたん(Ba・Cho)。「3ピースロックバンド・つきみ、始めます! よろしくお願いします!」という言葉を合図に「強い天使も超吠える」がスタートした。掲げた拳を揺らす観客に向かって放つ歌声は噛みつくようなスタイルを基調としているが、時折寂し気な表情や優しさを滲ませるので、ドキリとさせられる。誰かを好きになることが必ずしも幸せを連れてこない理不尽さを歌った「きるゆーすたー」と「LOVE KILLER」も、激しさの中に繊細な感情を含んでいるのが印象的だった。
つきみ
つきみ
「やりたくもない仕事をしたり、頑張って学校に行ったり、トイレで泣いたり、そういうことして来てくれる子たちがいると思ってるんです。つらいという感情はどうしようもできないから、毎回ステージに立つ度にどうしようもできない悔しさがある。せめて与えられた時間でうちらができるのは、めちゃくちゃいい音楽をやって、歌って帰ることだと思ってます。今日もそれをしに来ました」――観客にまっすぐ語りかけていたににちゃん。「自分が絶望の淵に立たされた時に作った歌を聴いてください」という言葉を添えた「微熱」は、瑞々しいメロディがいつしか熱を帯びていた。「世界の終わりみたいな夜を過ごしてるじゃない? そんな夜に、この記憶が何回だってそばにいられますように、ありたっけのラブソングを」と言って歌い始めた「ワールドエンド」もサウンドは力強いが、歌詞に刻まれている心情は切ない。「ねー、ダーリン」「ミッドナイトセブンス」「WANT YOU」も連発されて、つきみのライブはエンディングを迎えた。深くお辞儀したメンバーたちを包んだ拍手。フロアにいる1人1人の心に寄り添う姿勢が伝わってくるステージだった。
つきみ
『鬱屈ロックスディスカバリー』は、出演をかけたオーディションを毎回行っている。今回、オーディションを勝ち抜いてLOFTBAR STAGEのステージに立ったのは2組――りと(セッションズ)がゲストでギターを弾いた曲も交えつつ、エモーショナルなサウンドを全力で炸裂させたAFTER PILLDREN。目玉が描かれたヘルメットを被ったササキ(Gt・Vo)が吼えるように歌い、生き急ぐかのような全力のロックンロールを鳴り響かせた自爆――
アダム (ズットユース/ SUNNY CAR WASH)
彼らのライブに続いて、LOFTBAR STAGEのトリを飾ったのは、追加アーティストとして数日前に出演が発表されたアダム。岩崎"Adam"優也としてバンドでも活動している彼だが、今回はソロでの弾き語りによる出演だった。
アコースティックギターを手にして登場したアダムが最初に歌ったのは「夢で逢えたら」。心と身体を絞り上げるかのよう響かせる歌声は、不思議な魅力を持っている。奏でるギターの音を絶妙に乗りこなしながら歌う姿から目を離せなかった。時折、ディストーションを掛けたサウンドを轟かせた「グッデイ」を経て、「しゃけ」「週末を待ちくたびれて」「それだけ」「ハッピーエンド」「ティーンエイジブルース」「ファンシー」「ムーンスキップ」……多彩な曲を一気に披露。奏でるギターと歌が、各曲に刻まれた世界を奥行き深く浮き彫りにしていた。MCを挟むことなくひたすら歌っていたが、ラストの曲を始める直前に観客に語りかけたアダム。「これから鬱屈しながら生きていきましょう。鬱屈しながら生きてるのが本当にすごいと思うし、鬱屈してる人はそれだけ本気ということ」――そして披露されたのは、SUNNY CAR WASHの曲「キルミー」。観客の歌声も加わりながら力強く響き渡った。「ありがとうございます! みんな大好きです!」と観客に呼びかけてステージを後にしたアダムを大きな拍手が見送った。
超☆社会的サンダル
体格が立派な男性メンバー・タケマスター(G・Cho)、ふじお(Ba・Cho)、林田翔馬(Dr・Cho)と一緒にステージに登場したオニザワマシロ(Vo・G)。「シティガールってどういう意味か知ってますか? 私みたいな東京生まれ、東京育ちのキュートでかわいいガールのことを言うんじゃなくて、東京に染まった、東京が似合う、それはそれは美しい女の子のことを言うらしいです」という彼女の言葉と共に「City girl」がスタート。開放的に踊る観客を回転するミラーボールの光が妖しく照らす。そして「熱中症」、新曲「東京」、「バカマ●コあかり」も次々届けられた。「可愛いユナちゃん」の途中で、自分のことを鏡で見ると幻滅すると語ったオニザワ。「私がこのイベントの初回にオープニングアクトで出て、そこからずっと出てるのは、私がずーっと鬱屈してるからだと思います。かわいいあの娘には勝てない重い呪いがかかっていて、この歌を歌って呪いをかければかけるほど、自分に返ってくるんです」と言った後、歌声の熱量を高めていた。
超☆社会的サンダル
「気づいてないかもしれないけど、生きてるだけでみんなも呪いにかかってると思うんです。ワクチンとかじゃ治らないんです」――ギターを弾きながら発した言葉が自ずと歌と化した「薬を飲んでも」も印象的な曲だった。途中で「お前らが言ってくれる“好き”“生きてて良かった”を 300倍くらいで受け取ってるから責任持っておくれよ。お前らが言った“好き”、一生忘れねえし。聴いてくれる人がいなきゃただの音だから」と、観客への想いを吐露したオニザワ。フロアにいる人々それぞれの鬱屈した想いを強く抱きしめるかのようなひと時だった。
超☆社会的サンダル
超☆社会的サンダル
「17」で本編は締めくくられたが、鳴り止まない手拍子に応えてステージに戻ってきたメンバーたち。そして「祈りは1つ。本当に皆様が幸せになること。本当に私が幸せになること。あなたもあなたもあなたもあなたも1人じゃない」という言葉が添えられて、「乙女の祈り」が届けられた。疾走するバンド演奏と歌を受け止めながら激しく沸き立った観客。そして、「バカなあなたが1番大好き!」という言葉がフロアに降り注いで迎えたエンディング。アグレッシブなサウンドの連続が残した余韻は、とても温かった。
取材・文=田中大
イベント情報
2025.07.14(mon)新宿LOFT&LOFTBAR
超☆社会的サンダル
つきみ
最強マンボウ修羅ぼうや
アダム
<オーディション枠>
AFTER PILLDREN
自爆
・オフィシャルHP