sumikaがFCツアーファイナルで交わした約束と見せつけたありのまま ――「死ぬまでsumikaをやります」

2025.12.20
動画
レポート
音楽

sumika

画像を全て表示(13件)

FANCLUB LIVE TOUR 縁会 2025
2025.12.16(TUE)東京・Zepp Haneda

「sumikaというバンドはまだまだ続いていきます!」と扉のモニュメントを開け放ち、ステージを降りた『Live Tour 2025 Vermillion's』からおよそ6ヶ月。2025年12月16日(火)、sumikaはファンクラブツアー『縁会』のツアーファイナルである東京・Zepp Hanedaに立っていた。2022年の初開催以来、2度目となるこのツアー(※2024年度は全公演延期)は、sumikaのsumikaによるsumikaファンのための1日。全国6ヵ所全10公演を繰り広げた今回のお祭り巡礼の終着駅で示されたのは、片岡健太(Vo,Gt)が「『縁会』ってこういうことだよなと思いました。今日はみんなと目線が合った!」と口にした言葉にも端的に表れている、バンドの飾らない在り方であった。

無邪気に演じることもせず、ひたすらに目を合わせようとする姿勢は、ライブ冒頭に「ファイナル、最高の1日にしよう。てか、するよ!」と届けた「Lovers」や、腰を据えて会話をするべく幾度も設けられた質問コーナーからも明らか。《B5の紙に書きだしてみたんだ》の1行に呼応して思いっきり身体表現をしてみたり、小川貴之(Key,Cho)と肩を組みながら歌ってみたりと、全身から“ただ今が楽しくて仕方ないのだ”という思いが立ち昇っているのだから、当然アンサンブルもクラップものっけからフルスロットルだ。

とはいえ、sumikaは元来、とことんあなたと向き合い、この世にたった一つだけの肉声を借りて、その瞬間だけにしか生まれ得ぬ音楽をクリエイトしてきたバンドであるはず。それゆえに、この日のカギを握っていたのは、オープニングナンバーに選ばれた「Someday」や「リラックスして、楽しんでください」とドロップされた「Jamaica Dynamite」といった、sumikaの王道から外れた楽曲たちだったのではないか。実際、リリース当時のインタビューでは、前者に対しては「この曲を表題曲にしてsumikaを名乗るには語弊がある」と、後者に対しては「バンドの武器であるボーカルや歌詞ではなく、演奏面にスポットライトを当てたかった」という旨が語られているわけで、これらのナンバーが3人にとってのチャレンジであったことは疑いようもない事実。しかし、今の彼らが鳴らす「Someday」や「Jamaica Dynamite」には、背伸びをしようとする様子が皆無だったのだ。

それはバンドとしての成熟をありありと伝えるのみならず、3人がsumikaという共同体のイメージを強引に書き換えることなく、少しずつ彼らのエリアを拡大してきたことの証左でもあっただろう。王道の8ビートもアダルトな香り漂うラフでジャジーなリズムも抱え込み、ありとあらゆる感情を各部屋で体現する筆致。それをどこまでも受け入れてきたファンの目の前だったからこそ、FCツアーならではの選曲が成されたのであり、「今日のライブ大好きだ! へんてこりんで最高な夜にしようぜ」と歪までもを抱きしめることができたのである。

そう考えると、小川が歌い上げた「ファンファーレ」や「運命」も、何をやろうともsumikaになるという確信の下に成立していたと言えよう。夜の静けさとぐるぐると頭を駆け回る不安を具現化する片岡の低音豊かなボーカリゼーションに比べ、エッジーで爽やかな形質を誇る小川の歌声は、分厚い雲を突き抜け、視界が広がるその瞬間を鋭く捉えるように、一際エネルギッシュな輝きを放っていた。と同時に、片岡のボーカルや小川のプレイの唯一無二っぷりを、その不在をもって刻みつけたのだ。

挑戦的な過去作を気負わずに届け、小川の歌唱でいかなる形であれどsumikaはsumikaであることを示したからこそ、クライマックスを彩った「アイデンティティ」から「言葉と心」へ至る流れは素晴らしかった。《人は忘れながら生きていくよ だから 忘れないように歌にして》《足鳴らして あと一歩 足並み揃えたら もう一歩》と彼らにとっての歌を産み落とす意味が、片岡と小川の歌唱で、全身全霊で一粒を叩きつける荒井智之(Dr,Cho)の演奏で、会場を満たしていく。横一列に並んだ3人の風姿は、sumikaのアイデンティティが彼らの存在そのものにあるのだと断言しているみたいであり、それは「言葉と心」のフィナーレにて、1人また1人とサポートメンバーが舞台を降りていく中、3人だけでオーディエンスと《ことばとこころ》の1節を熱唱したことからも明らかだった。

ライブ終盤、片岡は「約束をするという価値観が変わってきたと思います。前までは約束は必ず守らなくてはならないものだと思っていたけれど、今は約束は楽しいものだと思うようになりました」と口にした上で、「改めてここで約束をしたいと思います。死ぬまでsumikaをやります」と言い放った。この約束をこの場に集った全ての人と交わした事実。それこそが、この『縁会』の意味だったと言っても過言ではないはず。どれだけ形が変わろうとも、音楽がカラフルになろうとも、3人はいつまでも帰り続ける場所であり続ける。「どんな状況になっても、あなたが帰ってくる家はここにあるから」と断言した彼らは、目を合わせ続けることを忘れはしない。

取材・文=横堀つばさ 撮影=後藤壮太郎

>>全ての画像を見る

撮影=後藤壮太郎

 

セットリスト

sumika『FANCLUB LIVE TOUR 縁会 2025』
2025.12.16(TUE)東京・Zepp Haneda
01. Someday
02. Lovers
03. イノセンス
04. ファンファーレ
05. 運命
06. 絶叫セレナーデ
07. Jamaica Dynamite
08. チョコレイト
09. 春夏秋冬
10. MAGIC
11. リビドー
12. KOKYU
13. アイデンティティ
14. 言葉と心
[ENCORE]
15. Beatnik -Horse-
16. Door
17.祝祭

上映情報

『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』 
公開日:2026年2月27日(金)
原作:藤子・F・不二雄
監督:矢嶋哲生
脚本:村山功
【キャスト】
ドラえもん:水田わさび のび太:大原めぐみ
しずか:かかずゆみ ジャイアン:木村昴 スネ夫:関智一
エル:千葉翔也 水中バギー:広橋涼
主題歌:sumika「Honto」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
 
公式サイト:http://doraeiga.com/2026/
 
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2026 
  • イープラス
  • sumika
  • sumikaがFCツアーファイナルで交わした約束と見せつけたありのまま ――「死ぬまでsumikaをやります」