心地よさのあとに残る深い余韻ーーbrkfstblend『GROOVE REVIVAL TOUR』ファイナルの大阪公演で音楽の魔法とグルーヴに酔いしれた夜

2026.1.23
レポート
音楽

撮影=冨永倖成

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blkfstblend『GROOVE REVIVAL TOUR 2025』2025.10.18(SAT)大阪・心斎橋CONPASS

Michael Kaneko(Vo.Gt)、Keity(Ba/元LUCKY TAPES)、粕谷哲司(Dr、元Yogee New Waves)の3人が2023年に始動したバンド、blkfstblend(ブレックファストブレンド)。昨年2月にリリースされた彼らの1stアルバム『blkfstblend』が2枚組のアナログ盤として発売。そのアルバムを携え、10月に東名阪を回るツアー『GROOVE REVIVAL TOUR 2025』が開催された。完全限定生産のアナログ盤を、店頭販売に先駆けライブ会場で入手できるというのだ。初日の東京公演はタイのバンド・H 3 Fとのツーマン。その後に名古屋を経て、ファイナルは10月18日の大阪。ライブから数日経つがいまだに冷めない余韻の中にいるよう。極上のグルーヴに酔いしれたファイナルの大阪公演をレポートしたい。

定刻になりMichael (以下マイキー)、Keity、粕谷とサポートの近藤邦彦(key)が現れると、拍手と歓声に迎えられる。開演前のBGMも素晴らしく、サンダーキャットの「I wish I didn’t waste your time」他、brkfstblendのリスナーに相性の良いグッドミュージックが続いていた。4人が位置につき、場内に流れるテーム・インパラの「Dracula」が静かになるとライブがスタート。

オープニングは「odisea a la quinta dimensión, 1979」。キーボード、ドラム、ベース、ギターの4つの楽器が、お互いの呼吸をたしかめ、間合いをつかむようにしながら少しずつ重なり、ふくよかにうねり、奥行きを生み出してゆく。歌うようなマイキーのギターをはじめ、4人の奏でる楽器の音がダイレクトに感じられるインストゥルメンタルナンバーに心が沸き立ちはじめる。70年代のクラシックロックをベースにディスコや今の時代のクラブミュージックもブレンドされた「Fine Love」は、なんといってもベースがたまらない。間奏でマイキーが「Keity!」と紹介し、そこから「Keity、Keity、……」と連呼するとフロアも思わず唱和しクラップ。4人の演奏が観客それぞれの導火線に火をつけてゆくようで、フロアは音に身を任せて揺れたり、手を上げたり。マイキーが(もっと声を!)というように手招きし「Oh,Oh,Oh……」と歌うと、フロアもつらなり一緒に声をあげる。

「brkfstblendです、Are You Ready〜?」と呼びかけた「City Habits」は、ジャジーなアレンジが加わり、間奏部分のセッションは音源よりも長め。青とオレンジの照明のもと、光の粒を降らせるようにきらめく鍵盤の音色にワクワク、ゾクゾクする。

この日は何度もクライマックスが訪れるのだが、最初のクライマックスは次のインストナンバー「nam keng」だろう。この曲はタイでレコーディングされ、現地での経験やその時に感じたものがアルバム全体の制作にも良い影響を及ぼしたという。モゴモゴしたギターが幻惑的で、インディーロックとサイケデリックロックが絶妙に溶け合った演奏がみるみるフロアを飲み込んでいくようで心地いい。

「nam keng」は原曲の曲中にブレイクが入るが、この日はその空白がやけに長くもしやここで曲は終わりか?いや、メンバーはブレイクした状態のままステージでフリーズしているから、そんなはずはない……そう頭をめぐらせたところへ、粕谷が「好きな回転寿司のネタの話しようか?」とおもむろに切り出す。驚く様子もなく「いいね」と返すフロントの2人の口調はごく自然で、これはMCなのかトークなのか、3人の日常会話なのではとつっこみたくなる。予想していない話の展開に手を叩いて笑い出す人もいて、ブレイクで高まった緊張感が一気にほぐれ場の空気がなごむ。

後からわかったのだが、「nam keng」の曲中にしゃべりが挟み込まれるのは定番になりつつあるようだ。ただ何を話すのか事前の打ち合わせなどはなくまったくのアドリブなのだそう。

粕谷「マイキーはカリフォルニアロールでしょ?」

マイキー「それも好きだけど……、やっぱサーモン(笑)」

粕谷「でもさ、回転寿司の正解というものがあって」

まで話したところでいきなりドラムを叩いたかと思うと、すぐにスティックを置き、何事もなかったように「サーモンはやっぱり美味しいんだよ」(粕谷)としゃべりに戻る。

「おれエンガワ好きだな」と日常テンションで返すKeityの手には缶ビール。ちなみに粕谷の好きなネタ圧倒的一位はネギとろ軍艦だそうで、

粕谷「あれが一番うまくない?」

Keity「蟹味噌も……」

という平和なやりとりのあと、再びいきなり演奏になだれ込む。もちろんカウントもない。ただこの2度のブレイクを挟んで演奏が再開した時のKeityのドヤ顔は見逃さなかった。緊張感のある間(ま)と、その場のノリやプレイヤーの遊び心でいかようにも変化し得る即興演奏はライブの醍醐味で、そこに彼らの流儀が垣間見えるのもらしくていい。

中盤では、スティーリー・ダンのカバー「Do it again」と、都市生活者の葛藤をシニカルな目線で綴った「nyc」をマッシュアップ。続く「sober」は浮遊感のあるドリーミーな演奏が、曲が進むにつれ徐々に力強く熱を帯びていき、溢れ出す衝動を抑えることなく爆発させる。それまで目を閉じつぶやくように歌っていたマイキーの歌声もいつしか熱いシャウトに変貌している。

昨年の『フジロック』に出演した際の3日間に感じたものを詰め込んだという「Fever」も、即興プレイを随所に織り交ぜこの場にしかない演奏を繰り広げる。鍵盤のメロウな音色に歓声が上がった「2am」は、濡れたようなAORの曲調が、中盤からノリのいいラテンフレーバーも織り交ぜた大セッションへ展開。演奏のボルテージは上がり続け、その熱が頂点に達しようかというところで一気に急降下し、「2am」のメロウなリフにgo back。その緩急の巧みさもたまらない。この曲も間違いなくこの日のクライマックスの一つだ。

アンコールで再び登場すると、「出し切ったねえ」と本編を振り返りビールで乾杯。お互いを労い、最後に「一番カロリー使うやつをやります」と「Cannonball」をお見舞い。彼らの音楽を形作っている要素、クラシックロックやR&B、ブルースやジャズ、AOR、インディーロックなどの片鱗が息づいたセッション。「出し切った」と言ったそばから、これだけのエネルギーが音になり演奏になって放出されるのかと圧倒されるようなラストだった。

brkfstblendは、本当に自分たちが好きなこと、やりたい音楽をやるバンドであると以前に3人が話していた。人間が奏でる生音の生み出すグルーヴ。音源とはまた違った、ライブの場で体感することのできる音楽の魔法。彼らが生み出す極上の魔法に、グルーヴに酔いしれ続けたい。

取材・文=梶原有紀子 写真=オフィシャル提供(撮影:冨永倖成)

セットリスト

brkfstblend
GROOVE REVIVAL TOUR 2025
 
1.odisea a la quinta dimensión, 1979
2.Fine Love
3.City Habits
4.nam keng
5.Do it again / nyc
6.sober
7.Fever
8.2am
9.parade
10.Ladyland
 
-ENCORE-
11.Cannonball

リリース情報

LP盤アルバム『brkfstblend』
発売日:2025年10月22日
brkfstblend(2LP)公式販売サイト
 
Tracklist:
side A
1. 2am
2. Ladyland
3. City Habits
 
side B
1. Fine Love
2. odisea a la quinta dimensión,1979
3. space and time
 
side C
1. nam keng
2. Let's Stay Together
3. sober
 
side D
1. parade
2. nyc

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