菊池亮太×けいちゃん「全人類必聴のコンサート!」 東京交響楽団と贈る「『共鳴』-The First Concerto Session-」は見どころだらけ!

2025.10.30
インタビュー
クラシック

菊池亮太、けいちゃん

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クラシック音楽やジャズ、ポップスなど、さまざまなジャンルをシームレスに行き来しながら独自の音楽性を発揮しているピアニストの菊池亮太とけいちゃん。2025年11月2日(日)、東京交響楽団との公演「『共鳴』-The First Concerto Session」にて共演を果たす。

けいちゃんはガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏し、菊池亮太は自身初となるピアノ協奏曲を書き下ろして自ら披露する。いま注目の2人による2つの協奏曲、そしてアメリカと日本にフォーカスしたプログラムなど、さまざまな「共鳴」を感じられる公演になるだろう。今回、菊池亮太とけいちゃんに対談インタビューを実施し、公演への意気込みを語ってもらった。

運命的な出会いから6年、2人の共演に「エモさ」を感じる

菊池亮太

――東京交響楽団との共演が決まったときの感想を教えてください。

菊池:まずは本当にびっくりしました。「コンチェルトを弾いてほしい」というだけでなく、「作ってほしい」というご依頼までいただいて、そんなことがあるのかと現実味がなかったですね。

でも、きっとクリエイティブなコンサートになるだろうなと思い、せっかくなら自分だけが出演するのはもったいないと感じたんです。そこで真っ先に「けいちゃんにも出てほしい」と思い、声を掛けさせていただきました。今やけいちゃんは、クリエイティブなピアニストの筆頭ですから。

けいちゃん:お声がけいただいて、本当に光栄でした。僕にとっての活動初期に友人になってくれた一人が、菊池さんなんですよね。これまでも他のピアニストを交えて共演したり、一緒にYouTubeに出たりしてきましたが、こうして大々的にご一緒できるのは初めて。LINEでも「エモいよね」って話していました(笑)。

――改めておさらいさせていただくと、お二人の出会いは2019年でしょうか。東京都庁のストリートピアノでセッションをされている様子を動画で取り上げていましたよね。

けいちゃん:そうですね。東京都庁のストリートピアノに行ったとき、とんでもない音圧の演奏が聴こえてきて、「誰!?」と思って顔を見たら菊池さんだったんです。「本物だ!」と思いましたね。

菊池:あれが最初でしたね。当時、僕もすでにけいちゃんの存在は知っていたんです。「個性的な演奏をする人だな」と思っていました。声をかけてもらって、「ああ!」と繋がって、これはもう連弾しなければ帰れないなと(笑)。

けいちゃん:あんなセッションは一生に一度かもしれません。そう思える出会いでした。

菊池:出会うべくして出会った、そんな感覚でしたね。

けいちゃん

――お二人がお互いに思う魅力を教えてください。

菊池:僕とけいちゃんは、もともとクラシックを学んでいたという音楽的なルーツがすごく近いんです。クラシックで培った技術が演奏に説得力をもたせていて、それでいて自由自在。そんなバランスの良さがあります。

けいちゃん:ありがとうございます。菊池さんは、心の底からピアノと音楽を愛している人だと思います。そして、その熱が音にしっかり結びついている。初めてお会いしたときから感じていましたが、圧倒的なテクニックの一方で、驚くほど繊細な音も出せる。両方を持っているピアニストって、なかなかいないんですよ。

それに、セッションしていると安心感がすごい。僕が何をしても受け止めてくれるし、驚くようなフレーズをさらっと入れてくる。とにかく楽しいです。

菊池:褒められるのは気持ちいいですね(笑)。

影響を受けてきた音楽を下地に、「自分探し」の音楽を(菊池亮太)

――菊池さんは今回、コンチェルトの作曲は初めてだとか。

菊池:そうなんです。だから、決まったときは本当に実感が湧かなくて。でも、けいちゃんが一緒に出演してくれると決まってから、少しずつ“自分ごと”として捉えられるようになっていきました。

――改めて今回演奏されるピアノ協奏曲は、どんな作品に仕上がったのでしょうか。

菊池:「自分探し」のような作品になったと思います。近代音楽や映画音楽、自分の好きなRPGなど、影響を受けてきたものが自然とベースになっています。自分の中に強く根付く音楽性を、嘘いつわりなく出したいという気持ちでした。

それと、お客様にとってわかりづらい音楽にはしたくなかったので、ポップスや近現代音楽の要素を取り入れて、飽きずに聴いてもらえることを意識しました。……とはいえ、完成した作品の演奏にはかなり苦戦しています(笑)。

――今回、コープランドやバーンスタイン、日本の武満徹や伊福部昭といった作曲家の作品も並びます。これらの作曲家の存在は意識されましたか?

菊池:そうですね。特に伊福部さんの作品は大好きで、『ゴジラ』の音楽など、和音の使い方にはかなり影響を受けています。今回は「アメリカと日本の近現代音楽を取り上げる」という裏テーマがあるので、自分の作品もその流れに寄せました。

「オーケストラと一緒に遊びたい」(けいちゃん)

――けいちゃんは今回、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏されます。ガーシュウィンに対してはどんな印象を持っていますか?

けいちゃん:ガーシュウィンはクラシックとジャズの架け橋を作った人であり、ジャズに芸術的な価値を見出した存在だと思います。芸術にジャンルはないということを、音楽で体現した人ですよね。彼は冗談を言いながら即興でピアノを弾いていたらしく、僕もそういうタイプなので、少し親近感があります。

「ラプソディ・イン・ブルー」は小学生のときにピアノ・ソロで弾いたことがあり、他のガーシュウィン作品もYouTubeでは何度か弾いたことがありますが、こうして本格的に向き合うのは初めてです。

――「ラプソディ・イン・ブルー」の魅力はどんなところにありますか。

けいちゃん:クラシックの形式的な美しさと、ジャズの自由さが見事に融合していて、「クラシックがジャズの服を着ている」ような作品なんです。従来のピアノコンチェルトというより、ピアノとオーケストラのセッション。僕はセッションが大好きなので、「オーケストラと一緒に遊べたら絶対楽しいだろうな」と思って、この作品を選びました。

ピアノコンチェルトの魅力は、ピアノとオーケストラのシームレスな関係性

――けいちゃんは、実は今回が初めてのコンチェルトだそうですね。改めてお二人が思うピアノコンチェルトの魅力とは?

けいちゃん:「コンチェルト」という言葉自体に「協力」という意味がありますよね。その通り、ピアノソロだけでは出せない深みや広がりをオーケストラが補い、逆にオーケストラでは出せない静寂や内省的な声をピアノが担う。そんな会話のダイナミクスこそが、聴き手の心を揺さぶるんだと思います。

菊池:そうですね。ピアノが前に出る場面もあれば、オーケストラが主旋律を担ってピアノが支える場面もある。そのシームレスな役割の移り変わりが魅力です。

それに、オーケストラと一緒に演奏するのって、おそらくテンションが上がることなんですよ。音圧がすごくて、「自分はいまこの中で弾いているんだ」と感じられる。まさに“音楽をやっている感”が味わえる。クライマックスでは、筆舌に尽くしがたい多幸感がありますね。

――お二人の好きなピアノコンチェルトは?

けいちゃん:僕はずっと、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が不動の1位です。大学の卒業制作でフルアレンジして一人で演奏したほど好きで、和声もメロディも本当に素敵だと思います。

菊池:僕もラフマニノフの第3番が好きです。あと、「ラプソディ・イン・ブルー」も大好き。

けいちゃん:あっ、僕も「ラプソディ・イン・ブルー」って答えればよかった(笑)。こちらも、もちろん大好きです。

菊池:(笑)。この作品は、ピアニストが自分の中にある音楽性を思い切り出せる曲なんですよね。僕自身、この曲に救われた瞬間がたくさんあります。

けいちゃん:わかります。

――先ほど「ラプソディ・イン・ブルー」について、けいちゃんも「コンチェルトというよりオーケストラとのセッション」ともおっしゃっていましたが、ピアニストにとって自由度の高い作品なんでしょうか。

けいちゃん:そうですね。ガーシュウィン自身も初演で演奏したとき、カデンツァ部分を即興で弾いたらしいんです。だから僕も、その自由さを楽しみたいなと思っています。

菊池:楽譜通りに弾いても成立するし、そうでなくても成立する、多様な表現が許される作品ですよね。

けいちゃん:僕もいろんな方の演奏を聴いてきましたが、自分だけの“誰にも当てはまらない”「ラプソディ・イン・ブルー」を弾きたいです。ガーシュウィンがクラシック界に革命を起こしたように、僕もこの作品に小さな革命を起こしたいですね。

菊池:けいちゃんの「ラプソディ・イン・ブルー」、絶対盛り上がると思う

けいちゃん:ありがとうございます。「ラプソディ・イン・“スーパー”・ブルー」にしたいと思っています(笑)。

菊池:そのあとに僕が自作自演をするので、どんな顔で臨めばいいのか……(笑)。もう、夢に出るくらいドキドキしています。

たくさんの「共鳴」を感じられる演奏会に

――今回はお二人の共演に加えて、日本とアメリカという、対照的な2つの国の音楽が取り上げられるのも特徴ですね。

菊池:そうですね。20世紀の音楽を中心に取り上げますが、この2つの国はオーケストラ作品の違いが最も際立つ国同士だと思います。「ラプソディ・イン・ブルー」と、伊福部さんや武満さんのオーケストレーションはまったく違う。その聴き比べも面白いと思います。

さらに、アメリカの音楽である「ラプソディ・イン・ブルー」を日本人のけいちゃんが弾くという点にも、新鮮な面白さがあります。いろんなケミストリーが起こる演奏会になると思いますね。

けいちゃん:タイトルが「共鳴」であることも一つのポイントですよね。アメリカと日本の“共鳴”、菊池さんと僕の“共鳴”、そして僕たちとお客さんとの“共鳴”。いろんな共鳴を体感できるコンサートになると思います。

菊池:たしかに。この演奏会は、クラシックをこれから好きになっていく方にも、すでに音楽に対して専門的な目線を持つ方にも楽しんでいただけると思います。あと、お子さんがけいちゃんの演奏を聴いたら、忘れられない体験になるはずです。

けいちゃん:いえいえ、菊池さんこそ! いつか音楽室でベートーヴェンやバッハと並んで肖像画が飾られる日も近いと思うので、菊池さんの自作自演は必聴ですね。これだけいろんな魅力が詰まった、“全人類が来るべき”コンサートはなかなかありません。ぜひ後悔のないようにお越しいただきたいです!

取材・文=桒田萌

公演情報

菊池亮太×けいちゃん×東京交響楽団
『共鳴』-The First Concerto Session-
 
公演日時:2025年11月2日(日) 13:00開場/14:00開演
会場:東京芸術劇場 コンサートホール
S席8,500円 / A席7,000円 / B席6,000円(税込)
 
指揮:佐々木新平
ピアノ:菊池亮太、けいちゃん
管弦楽:東京交響楽団
 
[演奏予定曲目]
A.コープランド:市民のためのファンファーレ
L.バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」からシンフォニックダンス
G.ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー(Pf.けいちゃん)
武満徹:3つの映画音楽
伊福部昭:SF交響ファンタジー第1番
菊池亮太:ピアノ協奏曲(Pf.菊池亮太)《世界初演》
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