濱田めぐみ×笹本玲奈×朝夏まなと、それぞれが考える"メリーらしさ"とは?~ミュージカル『メリー・ポピンズ』2026年版への意気込み語る
左から 笹本玲奈、濱田めぐみ、朝夏まなと
空からやってきた不思議な子守のメリー・ポピンズは、家事も家庭の困りごとも、不思議な魔法でササっと解決していく……。「チム・チム・チェリー」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」などの名曲が彩るディズニー映画を、『オペラ座の怪人』『キャッツ』『レ・ミゼラブル』などを手掛けた名プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュがミュージカル化した『メリー・ポピンズ』。日本では2018年と2022年に上演され、その驚きに満ちたマジカルな仕掛けや色鮮やかで美しい世界観で、多くの観客を魅了した。
3度目の上演となる2026年、メリーを演じるのは、日本オリジナルキャストである濱田めぐみ、前回より続投する笹本玲奈、今回初参加の朝夏まなと。3人のメリーに本作の魅力や見どころを聞いた。
左から 笹本玲奈、濱田めぐみ、朝夏まなと
――メリー・ポピンズを演じるお三方ですが、濱田さんと笹本さんは続投、朝夏さんは初参加ですね。濱田さんと笹本さんには再びメリーをやりたいと思われた理由を、朝夏さんにはオーディションを受けた理由をお聞きしたいです。
濱田:私は単純に「やりたかったから」です。それ以外にない(笑)。メリー・ポピンズって私にとっては特別で、今まで自分が演じた役の中でたぶん一番フィットするんですよ。やることはたくさんあるし、舞台上で気を付けなければいけないことも反省点もたくさんあるのですが、メリーになっている時はすごく、メンタルが楽。演じているという意識もあまりなく、性質的に私はメリーに近いんだなって思う。“合っている”んでしょうね。だから自然と「やります」という感じでした。私、最初のオーディションの時、大人数が受けていた中でキャメロン(マッキントッシュ/プロデューサー)が「あ、見つけた」と言ってくれたんですよ。
朝夏:へぇー!
濱田:実は私はお母さん(ウィニフレッド)役で受けていたのですが、キャメロンが全員のビデオを見せてと言って「あれ、ここにメリーがいるじゃん」となったとお聞きしました。自分に合う役というのは、引き寄せるものがあるのかなと思っていますし、今回もできるならやりたいなと思ってやらせてもらうことにしました。
濱田めぐみ
笹本:私はめぐさん(濱田)とは違って性質的にはメリーではない、むしろ逆のタイプだと思うんです。演じていても「不思議なことを言うな、私だったらこういうことを言うだろうか」と考えてしまう。でもありがたいことに、メリーってクリエイティブスタッフから求められていることがはっきりしているんです。立ち姿から喋るスピードやテンポ感、重点を置くところまで「メリーの正解はこう」というものが彼らの中にある。そこにどんどん寄せていくという作業が、今までの役者人生の中ではなかなかなかったことで、すごく役に入りやすかった。ほかの作品でやっている、自分の引き出しをあけて「こうかな、ああかな」と役作りしていく面白さももちろんありますが、向かうべき場所が明確にあるというのは新鮮な体験でした。また、めぐさんのおっしゃるように、身体はどんどん疲れていくのですが、メンタルがどんどん元気になっていく。私は普段は本当に死ぬ役が多いので(笑)、いつもだったら稽古が進むにつれへこんでいくんです。稽古や公演を重ねるにつれ前向きになって、自分の人生も明るくなるというのは初めての経験で、またあの気持ちを味わいたく、もう一度挑戦したいと思いました。
――前回の公演時、「笑顔でカーテンコールに出ることが珍しい」とおっしゃっていました。
笹本:そうなんです。心から笑ってカーテンコールに出られない役が多いので……ほぼ劇中で死んでいるから(笑)。
濱田・朝夏:(笑)。
笹本:生きているだけで珍しい(笑)。
朝夏:私は逆で、笑顔でカーテンコールに出られる役がほとんどです(笑)。
笹本玲奈
――そんな朝夏さんは、どんなところに惹かれてメリー・ポピンズに挑戦しようと思われたのでしょう。
朝夏:日本で初演された時、めぐさんの『メリー・ポピンズ』を拝見したんです。すごく素敵な作品だな、いつか携われたらとその時に思いました。今回、オーディションを受けられることになり、絶対にやりたいという気持ちで受けました。
――初演の時のオーディションは長かった……とお聞きしたことがありますが、今回はどんな感じだったのですか?
朝夏:言われるがままやっていた感じです(笑)。「歌はこれを歌ってください、踊りはこれを踊ってください、覚えてください」と。お芝居は事前に自分でイメージを作っていきましたが、その場で「こうやってみて」というものに対応できるかもきっと見られているんだなと思いつつ、自分の考えるメリーを提示して。「メリーは全部わかっているんだよ」と言われて「何をわかっているんだろうか……」と思いながらも(笑)、「そうか、わかってるのか」と思ってやっていました。……初演のオーディションは、そんなに長かったんですか?
濱田:長かったです。ビデオ審査を撮っては、何度もコールバックがかかり。「次はこの角度で見たい」とまた呼び出され、撮影し……。しかも合格してからも上演が決まるまでの時間も長かった(笑)。最初にオーディションを受けてから初日の幕があくまで、だいぶかかりました。
朝夏:今回はさすがにそこまで長くはありませんでしたが、それでもオーディションを受けてから連絡が来るまで長くて、まったく連絡が来ないから「これはもう……終わったな」と思っていました。忘れた頃に合格のお知らせをいただきました(笑)。
朝夏まなと
――笹本さんがおっしゃった「メリーの動き」というのも、オーディションですでに細かく言われましたか?
朝夏:はい。「手の位置はここ」とか「その動きはメリーはしないよ」とか、言われました! 「おお、メリーはこうは動かないのか」とオーディションを受けながら学んだ感じです。
濱田:稽古でも意識せず立っているとすぐ「めぐ」と注意されるんです(笑)。「めぐ、手」「れな、背筋」って。アクティングエリアに入ると本当に気が抜けない。立っていると「立ち方が違う」と言われるから……。
笹本:足の開き方も言われますよね(笑)。
濱田:すぐ「1番(バレエの第1ポジション)で」って言われますね。素に戻りたかったら(待機場所の)椅子のところにいなければいけないんです(笑)。
笹本:最初の頃は、稽古場に“いる”だけで筋肉痛になりました。
朝夏:わぁ……。でもオーディションでも、スタッフの皆さんが本当にメリーのことが大好きなんだなということが伝わってきました。メリーを愛しているから、メリーはこうでいて欲しいと言うビジョンがとてもはっきりしているんだなと思いました。
――さて、そのちょっと不思議なメリー・ポピンズですが、皆さんはどういう存在だと思っていますか?
濱田:これは永遠の謎ですよね、「メリーって、何なの?」というのは。たとえば宇宙人だと思っても、じゃあ宇宙人とは何ぞやとなってしまう。結論は出ておらず、抽象的であやふやなのですが、でも「メリーらしさ」「メリーっぽさ」はある。私たちは観る方が「メリーっぽい」と思うところを目指している形です。だから演出家との相互理解がすごく大事なんですよね……。ただ一つ言えるのは、まなちゃん(朝夏)が言ってたとおり「わかっている」ということ。メリーは物事がわかっていて、その上で会話をしているということがとても大事。だから焦ったりしない。焦るというのは予期しないことが起こるから焦るのであって、何がどう来るかわかっているメリーは全部対応できるので、焦らない。2個、3個先を行っているというのは演出でもよく言われました。
笹本:私が大切にしていたことは、会話が人間らしく成立しないということ。一般的なお芝居では……というか普段の生活でも、相手が言ったことに反応して返すのですが、メリーはそうじゃないところで対応していく。ある意味、非人間的。めぐさんがおっしゃったようにメリーは先のことが見えているので、人間が持つあらゆる感情がないんですよね。怒ることも、涙を流すことも、悲しい表情をすることもまったく彼女はしない、表に出さない。そのコントロールはすごく気を付けて演じていました。
朝夏:私が最初に思ったのは「Practically Perfect」の歌が自己紹介だなということ。ここで歌われる、行儀よく清潔で「圧倒的に完璧」がマストだなと考えてオーディションに行きました。それはきっとこのあと稽古に入ってもベースにあるのだろうなと思っています。また、私は長年ダンスをやってきているのもあってか、オーディションでは「ダンスの時が一番キラキラして見える」と言われたんです。私自身、単純に踊っていて楽しかった。踊っている時の感覚で歌もお芝居もしたい、それが自分の思うメリーらしさかなと今は思っています。
――ありがとうございます。それにしても面白いですね、メリーという人の性質は非人間的なのに、すごく温もりがある作品だということが。
笹本:メリーって正解はあるけれど、その本質のようなものは、その人によってそれぞれ違うんだと思うんです。優しいメリーを求めている人もいれば、厳しいメリーを求めている人もいる。それは観客だけでなく、演出家やスタッフの間でも違うんだなと、前回の公演を経験して感じました。皆さんがそれぞれ求めるメリーを私たちに投影してくださればいいんじゃないかな。“温もり”というものも、役者の個性や観る方の感じ方で生まれてくるのだと思います。
――なるほど。……ところで朝夏さん、フライングの経験は?
朝夏:!! そうなんです、ないんです……。そして高いところも……あまり得意ではなく……。オーディションの時にもそれは自己申告していたのですが……。
濱田:あらまー。
笹本:あららー。
――日本の『メリー・ポピンズ』は世界で一番長い距離を飛ぶとお聞きしたことがあります。
濱田:そうなの。けっこう、飛ぶよ。でも大丈夫!
笹本:下はあまり見えませんしね。そんなに怖いことはないです。
濱田:役に入っていると、逆にスカッとするよね。
朝夏:スカッとする……!?
濱田:一度、上空で止まってしまったことがありましたが(笑)。
朝夏:そうなんです、そのお話を聞いて、なんと恐ろしい……! と思って。しかもそこでも焦ったりできないわけですよね、メリーは。
濱田:空中でみんなと会話していました(笑)。
朝夏:すごすぎます……。
笹本:でも本当に気持ちいいですよ。だって客席の上空を飛ぶなんて経験はほかではできませんから。どんなテーマパークよりウキウキワクワクします。
朝夏:そういう心持ちになれるよう、頑張ります……。
――最後に改めて、2026年版『メリー・ポピンズ』のアピールをお願いします!
濱田:新キャストも加わり、今回はメリーとバートがトリプルキャストになります。色々なパターンの『メリー・ポピンズ』が観られると思うので、ぜひそれぞれのメリーとバートを観ていただきたいです。
笹本:パターンがたくさんあるのは私もとても楽しみです。音楽が素敵で衣裳も可愛く、一瞬も目が離せないミュージカルですので皆さんも楽しみにしていてください。
朝夏:一観客として観て、背中を押してもらえた作品です。私が味わったその感動を今度は皆さまにお届けできたらと思います!
取材・文=平野祥恵 撮影=中田智章
《濱田めぐみ》ヘアメイク/住本由香 スタイリスト/尾関寛子
《笹本玲奈》ヘアメイク/真知子(エムドルフィン)
《朝夏まなと》ヘアメイク/根津しずえ スタイリスト/筒井葉子
公演情報
メリー・ポピンズ:濱田めぐみ/笹本玲奈/朝夏まなと(トリプルキャスト)
バート:大貫勇輔/小野田龍之介/上川一哉 (トリプルキャスト)
ジョージ・バンクス:小西遼生/福士誠治 (Wキャスト)
ウィニフレッド・バンクス:木村花代/知念里奈 (Wキャスト)
バードウーマン/ミス・アンドリュー:島田歌穂/樹里咲穂(Wキャスト)
ブーム提督/頭取:コング桑田/安崎 求 (Wキャスト)
ミセス・ブリル:浦嶋りんこ/久保田磨希 (Wキャスト)
ロバートソン・アイ:石川新太/DION(Wキャスト)
石川 剛、伊藤稚菜、岩下貴史、小形さくら、工藤 彩、熊澤沙穂、小島亜莉沙、小林遼介、今野晶乃、齋藤信吾、咲良、清水 錬、白山博基、高瀬育海、高田実那、高橋慈生、高山裕生、照井裕隆、東間一貴、中原彩月、長澤仙明、西村実莉、廣瀬喜一、福満美帆、MAOTO、水島 渓、吉岡慈夢、吉田玲菜(五十音順)
企画制作:ホリプロ/東宝
主催:ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作委員会
【東京公演】
日程:
東京公演:2026年3月28日(土)~5月9日(土)
会場:東急シアターオーブ
東京公演:プリンシパル出演スケジュール>>https://marypoppins2026.jp/castsch_tokyo.html
<平日料金>
SS席:16,500円
S席:15,500円
A席:12,000円
B席:7,000円
S席セット:30,000円(2枚セット)/42,000円(3枚セット)/54,000円(4枚セット)*
Skyヤングシート:8,000円(25歳以下当日引換券)*
<土日祝料金>
SS席:17,500円
S席:16,500円
A席:13,000円
B席:8,000円
S席セット:32,000円(2枚セット)/45,000円(3枚セット)/58,000円(4枚セット)*
Skyヤングシート:9,000円(25歳以下当日引換券) *
Yシート:2,000円(20歳以下当日引換券)*
*=ホリプロステージのみ取扱い
https://horipro-stage.jp/news/mp2026_ticket/
【大阪公演】
日程:2026年5月21日(木)~6月6日(土)
会場:梅田芸術劇場メインホール
<公式X>https://x.com/marypoppinsjp #メリーポピンズ #メリーポピンズ2026