作曲家に聞く『ワタル』音楽制作秘話、第2弾は『機動戦士ガンダムF91』の音楽も手掛けた門倉聡氏 コンプリート・サウンドトラック ブックレットからその一部を公開
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門倉聡氏
2025年10月29日(水)に発売された「『魔神英雄伝ワタル』『魔神英雄伝ワタル2』コンプリート・サウンドトラック」。その内容の濃さに喜びの声があがっているが、同梱ブックレットに掲載された『ワタル』の音楽を作曲された3名の作曲家への充実したインタビューも話題だ。SPICEでは発売に先行し、ブックレットから『魔神英雄伝ワタル2』の音楽を担当された神林早人氏とレコーディングエンジニアである吉田俊之氏へのインタビューの一部を紹介した。今回第2弾として『魔神英雄伝ワタル & ワタル2』、また仙台フィルの“エンターテインメント定期公演第5回”で取り上げられた『機動戦士ガンダムF91』の音楽も手掛ける、門倉聡氏のインタビューからご紹介する。
門倉聡 氏 インタビュー
聞き手:生地 俊祐(バンダイナムコミュージックライブ)
2025年7月9日 、8月20日 門倉氏宅
作曲家、門倉聡氏のインタビューをさせていただきました。
35年前ということもあり、かなり記憶が定かではないという氏ですが、「あまり難しく考えないでいただければと思っております!」というところからインタビューを開始させていただきます。
以下、 門倉氏:門 生地:生、と表記。
生:「魔神英雄伝ワタル」 の音楽を担当してください、というような
オファーは最初どんな感じだったかご記憶にありますか?
門:いろいろ思い出したこともあったんですけど、 最初に 「ウィンダリア」 (1986年公開のアニメーション映画) の音楽がビクター音楽産業(当時)で、 こちらの作品の音楽を担当しました。 その時に初めてやったんですよね、 オーケストラを使って。
「ウィンダリア」 を契機に僕の当時所属の事務所が 「アニメの音楽とかやったらいいんじゃない?」ってなってビクターさんとお話されたのではないかと思うんです。ビクターさんでは他に『スペース・ファンタジア 2001夜物語』 (1987年のオリジナルビデオアニメ作品)も担当しました。
そんな流れからか、ビクターさんより「『ワタル』をやらないか!」ってお話をいただきました。
当時、どんどんポップスの世界で仕事するようになっちゃっていまして。その仕事も次々来ていて止められない状況で、「ちょっとできないから」って伝えたら、「ボーダーラインに所属した兼崎さんも一緒に担当するから!」って言われたんですよ。兼崎さんだったらもうなんでもバリバリにできるし、ブラスもバリバリだから、 シンセサイザーでの打ち込みが中心の僕と差別化も出来ますし 「わかりましたじゃあやりますよ!」 ってなったのが 「ワタル」です。 ただその代わりに、もう本当に時間ないからと伝えて(笑)。
CD『魔神英雄伝ワタル』『魔神英雄伝ワタル2』コンプリート・サウンドトラック
(中略)
生:作曲されたときには何か資料を参考にされたのでしょうか?
門:多分音楽メニュー打ち合わせがあって、設定の紙資料だけはもらったことは覚えているんですよ。あ、そうです!思い出しました。レコーディング最中になんかこういう画だよ、というのを見せていただきました。だから基本は発注メニューを頼りに仕事していたと思います。劇場版だとシナリオやシーンに沿って作りますが、TVアニメーションは色々なシーンを想定された発注となりますので、「ワタル」についてはメニュー自体が結構細々書かれていました。あと創界山”の話と、それからちょっとしたキャラクターの話は聞いた覚えはありますね。
門:作曲してからアニメーション本編がすぐに始まっていた気がする。言われた通り、何十曲もあったかもしれないけど、別ヴァージョン(本CDで言うところのサウンドトラック・ヴァリエーション)もすごく多いのは、そういうこともあるのかもしれませんね。時間が無いなか、とにかく曲数が必要だったはずだから当時。
(中略)
生:しかし、考え込む時間もないですね。 「ワタル2」は分かりませんが、 「ワタル」だと1週間ちょいで。
門:依頼後にすぐやんなきゃいけないんだろうし、よくやってた!でもあの時代こうやって一気にやってたんですね、レコーディングまで。ちょっとびっくりです(笑)
しかし、え、こんなに自分の曲があるの?(改めて本CD収録曲リストを眺めて)
生:門倉さん曲は、「ワタル」は別ヴァージョンは数えないで37曲、尺にすると正味34分です。「ワタル2」は26曲で39分くらい。
門:そんな書いてます!?
生:そんなに書いています(笑)
(中略)
生:仙台フィルハーモニー管弦楽団(以下、仙台フィル) エンターテインメント定期(以下、エンタメ定期)についてです。お越しいただきありがとうございました!
門:これはね、とても良かったです。行ってよかったです。
仙台フィルがすごいうまいんですびっくりしました。そして、自分の曲は「ああ僕の曲だな」っていうのを実感しました。聞き直して。確かにこれは僕。書いた記憶はないが(笑)、この感じは僕だな!っていうのはすごいあった。あとは兼崎さんの曲はすごいわかりやすくて。ああ、確かにアニメにはこういった曲が必要だな!っていうのを改めて感じた。僕の曲はどっちかって言ったら変な曲 (笑)な印象。兼崎さんの方がわかりやすくて、ちゃんとアニメしていて。 でもちゃんと個性もあって。なんかこう 「ワタル」っていうのはきっとこれだったんだろうな!ってすごいわかるし、 僕の曲はどちらかといったらなんかこうわりとインナーワールド”じゃないけど、ちょっと変わった曲。 僕のクラシカルな曲もちょっと僕っぽいんです。 なんかあの普通じゃ行かないとこの音へ進行して行く。「ガンダムF91」も含めてなんだけど、それがもう如実に出てる曲だなあと思う。なんかもはやもう35年も前の曲だけど、 例えば未だに作曲の手癖はこっちに音の進行は行くだろうなと思うところに行くし。
生:ある意味、 短期間での作曲と考えたら、 手癖が出やすいのかもしれませんね。ストレートな門倉さんと言いますか。
門: (音が) ちゃんと行くところがちゃんと行かせないんですよ、僕は。どちらかというとそういうタイプの曲の創り方をするから、 和音の押さえ方とかも人だったら“ドミソ”っていくところを絶対”ドファン"にしちゃうとか。そういう人なんですよ。 はっきり”ドミソ”って言いたくないっていうふうな教育を受けて。
生:教育なんですか? それ(笑)。
門:そうです。 こういうのはかっこいい、こういうのはかっこ悪い、っていうのを、教育を受ける中で、こうまあ、そのやっぱりその大学行くまでにその作曲を習っていたりする中で。
生:習うといえば、 三枝成彰さんは高校生時代の作曲の師匠なのでしたね?
門:三枝先生は中学生時代ですね。
今、 「ワタル」のコンサートと同じく25年8月9日に仙台フィルさんが開催される次回エンタメ定期のために 「交響詩 機動戦士ガンダムF91」の譜面を準備中ですが、 三枝先生の作品と一緒にプログラムされるコンサートという面でもとっても感慨深いです。
その「ガンダムF91」の音楽含めて、やっぱり僕はどちらかといったらひねくれた音楽なんですよ。 どこにかっこよさを求めるってなると“ドミソ”じゃないんだよね、僕の場合は。
だから、もし僕一人が全部 “ワタル ” の音楽をやったら違うものになっちゃっていたと思うんですよ。
(左から)門倉聡氏、三枝成彰氏
(中略)
兼崎さんの曲と神林さんの曲と僕の曲がこう混在してるこういうセッションだとなんか変体の曲が現れて、 兼崎さんのくっきりした曲が出てきて、 神林さんは神林さんの世界もあるし、 っていうのはすごく面白かったです。
生:ちなみに門倉さんが多く手掛けられているポップスの世界ではボーカルがありますが、今回の“ワタル”などの劇伴って、“インスト”だからこそ門倉さんの本質なのかわからないですけどそういうのがダダ漏れしたみたいな?
門:そう思います。歌ものじゃないからこそやっぱり出てくるものというのはあってだからダダ漏れしていると思います(笑)
生:ある意味、 生粋の門倉さんが出ているのですね。
門:本当にだから 「ワタル」で言えば、 中心にあるのが兼崎さんで音楽でそのままこう周りを僕はよれた音楽をつけているみたいなイメージでしたね。うん、いやもう本当にそうでした。
生:なるほど。ちなみにお三方からお聞きしていますが、3人でお会いしたことは未だにないんですよね。
門:そうなんです。 神林さんの奥様の名里さんは、昔仕事を一緒にしたので、よく知っているけど。でも、本当にこの間のコンサートすごい良くて、うん、楽しかったです。あ、こんな曲なんだ!みたいな。“ワタル”の世界ってこんな世界なのね!っていうのは改めてっていうか。初めて(笑)。 当時、忙しくてCDも聴けていませんでしたから。
生:再確認ではなく、 初確認!!(笑)
(中略)
生:最後に、 改めて35年越しにコンプリート・サウンドトラック化することと、多くのワタルファンに向けて一言メッセージをお願いいたします。
(前略)
門:アニメーションの劇伴を最近僕はやっていないんで分かりませんが、兼崎さん、神林さんも僕と同じかそれ以上の曲数を書かれていた訳だから、他作品と比較してもきっと相当な楽曲数の作品ってことですよね 「ワタル」や「ワタル2」は。しかも別ヴァージョンなどまであって。凄いね “ワタル”!
全音楽スタッフみんな頑張ったんですね (笑)。35年たってCDが出て全部聴けるのは僕も驚きだから、そんな音楽たちを皆さんも、当時を思い出しながら、でも新しい発見もしながら楽しんでみてください。
公演・CD情報
⚫︎発売日:2025年10月29日(水)
⚫︎品番:SRML-1127〜32
⚫︎価格:¥9,800(税抜き)
DISC1-2
『魔神英雄伝ワタル』オリジナル・サウンドトラック(DISC1,DISC2:Tr.1-31)
『魔神英雄伝ワタル』サウンドトラック・ヴァリエーション(DISC2:Tr.32-68)
『魔神英雄伝ワタル2』オリジナル・サウンドトラック(DISC3,DISC4:Tr.1-7)
『魔神英雄伝ワタル2』サウンドトラック・ヴァリエーション(DISC4:Tr.8-46)
『魔神英雄伝ワタル2』エディットVer. ①(DISC4:Tr.47-53)
『魔神英雄伝ワタル』エディットVer. (DISC5:Tr.1-11)
『魔神英雄伝ワタル2』エディットVer. ②(DISC5:Tr.12-19)
魔神英雄伝ワタル&ワタル2~おもしろカッコいいコンサート~
演奏:仙台フィルハーモニー管弦楽団/指揮:神成大輝/歌唱:a・chi- a・chi
オーケストラ編曲:佐野秀典、鈴木雄大、穴沢弘慶、山本 純
魔神英雄伝ワタル&ワタル2~おもしろカッコいいコンサート~【前半】(DISC5:Tr.20-25)
DISC 6
魔神英雄伝ワタル&ワタル2~おもしろカッコいいコンサート~【後半】(DISC6:Tr.1-11)
Tr.12 Step by Step (TVサイズ)
Tr.13 君に止まらない〜MY GIRL, MY LOVE~ (TVサイズ)
Tr.14 Step (TVサイズ前期SEあり)
Tr.15 Step (TVサイズ後期SEあり)
Tr.16 a・chi-a・chiアドベンチャー (TVサイズ)
Tr.17 Step by Step (TVサイズSEあり)
Tr.18 君に止まらない〜MY GIRL, MY LOVE~ (TVサイズ)
Tr.19 Fight! (TVサイズSEあり)
Tr.20 虹の彼方に (TVサイズ)
※映像の音声トラックから収録。オープニングについてはSE(効果音)入り。
・三方背スリーブケース
・METAL ROBOT魂<SIDE MASHIN> 龍王丸
とディスプレイ連動したコラボCDパッケージ仕様
・封入40Pブックレット。作曲家、兼崎順一・門倉聡・神林早人、インタビュー、解説。
・別冊トラックリスト・歌詞集
⚫︎レーベルサイト
https://www.sunrise-music.co.jp/list/detail.php?id=1439
【声の出演】林原 めぐみ
【出演アーティスト】a・chi-a・chi、高橋 由美子
【MC】天津飯大郎
昼の部 開場 13:30/開演 14:30
夜の部 開場 17:30/開演 18:30
【場所】:LINE CUBE SHIBUYA(東京)
https://eplus.jp/wataru_cho-kansha-sai/
【制作】バンダイナムコミュージックライブ
【お問合せ】インフォメーションデスク https://information-desk.info/
(C)SUNRISE・R
公演・CD情報
日時:2026 3.20(金・祝)
開場 14:00 開演 15:00
場所:仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
https://www.sendaiphil.jp/e6/
音楽:三枝成彰 仙台フィルハーモニー管弦楽団 指揮:太田 弦 ピアノ:田村 響
発売日:2025年 12月 10日(水)
品番:SRML-1138(初回)/ SRML-1139(通常)
価格:初回盤 ¥5,800(税抜き)/ 通常盤 ¥3,200(税抜き)
2024年8月10日(土)宮城・仙台銀行ホール イズミティ21
「仙台フィルハーモニー管弦楽団(仙台フィル)エンターテインメント定期第2回」LIVE録音
https://www.sunrise-music.co.jp/list/detail.php?id=1597