Red Bull BC One World Final Tokyo 2025、B-Boy・B-Girl共に日本人チャンピオンを生んだ決勝でブレイキンシーンの充実ぶりを世界にアピール
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Red Bull Content Pool 撮影=Jason Halayko
『Red Bull BC One World Final Tokyo』2025.11.09(sun)両国国技館
パリオリンピックでの競技採用などを通して、日本においても改めてアートフォームとしての注目と理解が高まった「ブレイキン(ブレイクダンス)」。エナジードリンク「Red Bull」を発売しているオーストリアのレッドブル社が主催する、1対1でのブレイキンバトル「Red Bull BC One」は、世界中のB-Boy・B-Girlがその頂点を目指す、世界最高峰の大型ブレイキングイベントだ。
Red Bull Content Pool 撮影=Jason Halayko
その2025年度の世界決勝『Red Bull BC One World Final Tokyo 2025』は、そのイベント名通り、東京は両国国技館にて開催。世界中のブレイカーやダンスファンが国技館前に集い、そこからも改めて世界的な大会であることを認識させられる。そして世界予選を勝ち抜いたB- Boy 16人、B- Girl 16人が集う世界決勝には、B-BoyではShigekix、ISSIN、Hiro10、haruto、B- GirlではAYU、Rikoと6人の日本人が登場。本稿では日本人選手のバトルを中心に紹介する。
Red Bull Content Pool 撮影=Dean Treml
7722名もの観客が集まり、ソールドアウトとなった両国国技館。大相撲では土俵のある会場中央にダンスサークルが作られ、360度から観客の視線が注がれる。DJプレイに続き、相撲の一番太鼓が響き、ここが日本であること、両国国技館であることを意識させるオープニングで幕を開けた『Red Bull BC One World Final Tokyo 2025』。そしてB-Boy、B-Girl各16名がステージに登場し、その熱気は高まっていく。
B-Girlセクションから始まったこの日。第一回戦一試合目から登場したRikoは、メキシコのSwamiと対戦。2023年以来、二度目の『Red Bull BC One World Final』出場となるRiko。先手を取りこの日のイベントの踊り初めを飾った。そしてキッチリとフリーズを固めたRikoがジャッジから満票(5票)を集めて勝利。第五試合ではパリオリンピックで金メダルを獲得したAmiの実姉であるAYUが、イギリス代表のStefaniと対戦。フットワークに特化したスタイルを見せるAYUは、3:2という僅差で惜しくも敗退した。
Red Bull Content Pool 撮影=Little Shao
B- Boy部門の一回戦第二試合にはShigekixが登場。手の甲を使ってスピンする荒業を繰り出すベルギー代表のDjibrilと対戦し、きっちりと音にダンスをはめる丁寧なダンスでShigekixが次戦に進んだ。大きな歓声を受けて三試合目に登場したのはISSIN。これまでに何度も戦っているというカザフスタンのAmirとの対戦は、ISSINが初手からビッグムーブを連続して展開。その試合運びに、ジャッジ結果を待たずしてAmirがステージを降りるという、完全勝利を果たした。一回戦第八試合は、Hiro10とharutoという日本人対決。数々の海外大会で勝利を果たすHiro10と、「Red Bull BC One Cypher Japan 2025」から「Red Bull BC One Last Chance Cypher Tokyo 2025」での勝利を経て、今回の出場となったharuto。同い年、同じ出身地という二人は、冒頭から抱き合い、これからの戦いにお互いにエールを送る。お互いの得意技をぶつけ合うバトルは、harutoの勝利。試合後も抱き合い、その健闘を称える姿は感動的だ。
Red Bull Content Pool 撮影=Jason Halayko
鼓童による和太鼓のパフォーマンスを挟み、-Girlの二回戦へ。グータッチから始まった韓国のStarryとRikoのバトルは、Rikoがこの戦いも満票で勝利を収めた。
B- Boyの二回戦は、オランダのLeeと、Shigekixのバトルから開幕。Red Bull BC One All Starsに選出されている二人によるバトルは、お互いにしっかりと音に合わせたムーブを繰り出し、音楽とダンスの協調性と表現力を提示した。結果はShigekixが次戦に駒を進める。ISSINとアメリカのIcey Ivesの戦いは、パワームーブと遊び心がダンスの中で交差する一戦となり、ISSINが勝利を収めた。harutoと韓国のFeの戦いは、harutoが先攻を取り、複雑なフットワークと、「ストリートファイター」のような挑発ポーズなどエンターテイメント性の高いパフォーマンスで、harutoが勝利した。
脅威の高シンクロ率ダンスで世界的にも注目度の高いアバンギャルディのダンスパフォーマンスに続いて、B-Girlのセミファイナルがスタート。RikoとフランスのSyssyという優勝候補同士の戦いは、Rikoが先攻し、ブレイクビーツクラシックであるYellow Sunshine「Yellow Sunshine」のトラックに合わせて、完成度の高いムーブを見せたRikoがここでも完勝を果たした。
進出した4人中3人が日本人選手となったB-Boyのセミファイナル。ShigekixとISSINの戦いはお互いの出方をかなり伺う、ゆっくりとした始まりとなった。先に仕掛けたのはISSIN。冒頭からビッグムーブや新技を畳み掛け、Shigekixもドリルやフリーズで対抗する。お互いに近距離で戦い、バトルっ気の強い近接戦に、一つ一つの技に観客から拍手が上がる。結果はISSINが完勝し、観客からは更に大きな歓声が上がった。harutoとベネズエラのMighty Jakeは、ビッグムーブ、フットワーク、フリーズをしっかりと組み合わせたharutoが5:0で勝利した。
Red Bull Content Pool 撮影=Little Shao
決勝前のライブショーに登場したのは、なんとREDMAN! 「Da Goodness」「Da Rockwilder」と、問答無用のREDMANクラシックをライブパフォーマンスし、大歓声が上がる。また、このショーケースのあと、2026年の「Red Bull BC One World Final」の開催地がカナダ・トロントになることが発表された。
Red Bull Content Pool 撮影=Jason Halayko
B-Girlの決勝はRikoと、パリ五輪で銀メダルを獲得しているリトアニアのNickaの対戦。じっくりとタイミングを伺い始まったバトルは、Nickaが飛び出す。とにかく技のバリエーションの多い二人が、矢継ぎ早にムーブを固めていくさまは、ブレイキングというカルチャーの表現の豊かさを改めて感じさせる。そしてバトルが終わると、肩を組み、お互いのスキルとパフォーマンスに対するリスペクトを感じさせる、充実した表情を浮かべる二人の姿が、非常に心に残った。結果は、Rikoがジャッジの過半数を獲得し、B-Girl部門の女王の座を手にした。優勝後のインタビューでは、家族への感謝を言葉にしていた。
Red Bull Content Pool 撮影=Dean Treml
B- Boyの決勝はISSINとharuto。2004年生まれのharuto、2005年生まれのISSINという同世代であり、ブレイキンクルー「BODY CARNIVAL CREW」に共に所属する二人の戦いは、登場の段階から大きな歓声が上がる。DJ KhanFuがブレイクを流すと、真っ先に動いたのはISSIN。harutoも重力を感じさせないような動きで魅せる。負けじと打点の高い飛び技や四股のような動きを形にするISSIN。共に練習を重ねているだけあり、お互いの技を読み、それが交錯した瞬間には、ジャッジは思わず立ち上がり、観客からも大歓声があがった。死力を尽くし、技を出し切った二人の決勝戦は、harutoが2票、ISSINが3票を獲得し、ISSINがB- Boyの世界王座を戴冠。割れんばかりの歓声と称賛の拍手が会場を包んだ。
Red Bull Content Pool 撮影=Little Shao
優勝後の記者会見では、Rikoは「今回、日本開催の大会で優勝できた事はすごく嬉しいです。自分を見つめ直すなかで、結果にこだわると自分らしいダンスができないということに気づいて。そこでマインドチェンジをして、自分がなんでブレイキングを始めたのか、という原点に戻って、初心の気持ちで練習してきました。決勝で当たったNickaとは、何度もバトルしているんですが、いままで一度も勝てたことがなかったので、今回こそは勝ちたいと思っていました。勢いで押し込むしかないと思って、最初から全力でぶつかったのが、勝利につながったと思います」と話す。
Red Bull Content Pool 撮影=Jason Halayko
ISSINも「今回の大会では、自分が倒したいと思っていた人に勝つことができたので、嬉しさが溢れています。決勝戦はharutoと当たったんですが、彼とはめちゃくちゃバトル練(バトル形式の練習)もしてきたので、嬉しい反面、複雑な気持ちがあります。でも、彼を含めたBODY CARNIVALのみんなに本当にサポートしてもらったし、みんなのおかげで、チームの存在によって助けられて、優勝できたと思います。本当にみんなにありがとうと言いたい」と述べた。
Red Bull Content Pool 撮影=Little Shao
日本開催の決勝において、日本選手がB- Boy、B-Girlともにチャンピオンベルトを獲得するという、現在のブレイキンシーンの充実ぶりを世界的にもアピールする結果となった『Red Bull BC One World Final Tokyo 2025』。その魅力はより深く、そして多くの人に伝わっていくことだろう。
取材・文=高木"JET"晋一郎
イベント情報
2025年11月9日(日)両国国技館