jeanとArcheがそれぞれ示したルーツと信念ーー『T.B.O presents #長堀界隈 ver1107』シーンを牽引する才能に魅せられた夜をプレイバック

2026.1.22
レポート
音楽

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『T.B.O presents #長堀界隈 ver1107』2025.11.7(FRI)大阪・CONPASS

「関西で魅力的なキモチいいフェスがしたい」という想いから開催される『たとえばボクが踊ったら、(以下、ボク踊)』のスピンオフ企画『T.B.O presents #長堀界隈 ver1107』が、2025年11月7日(金)にCONPASSにて行われた。今回はオルタナティブユニット・jean(ジーン)とR&Bシンガーソングライター・Arche(アーキ)が、グルーヴィーかつクールなサウンドを響かせた。主催する大阪のイベンター・夢番地の大野氏の審美眼によってピックアップされるアーティストたちは、みな今後の音楽シーンを牽引する才能と多彩な魅力にあふれている。jeanとArcheはともに活動歴が約2〜3年、大阪でのライブはこの日で2〜3回目とフレッシュなアーティストだったが、鳴らす音はハイクオリティで、それぞれのルーツと信念、生き様が楽曲に昇華されており、初見の筆者の心にもしっかりと刻まれた。そんな素晴らしい音楽をいち早く堪能できるのが、この『界隈』シリーズ。本記事ではjeanとArcheが魅せた充実の時をレポートしよう。

会場の心斎橋・CONPASSには、両者のライブを観ようというオーディエンスが集合していた。金曜の夜ということもあってか、仕事帰りとおぼしきスーツ姿の人も多く、ミラーボールがきらきらと光を放つフロアには、落ち着いた空気が流れていた。

jean

先攻はjean。横浜生まれのJEAN(Vo)と東京出身のSota Nakamura(Gt.Key)によって、2023年に結成された2人組ユニットだ。マイケル・ジャクソンとThe Beatlesが好きという共通点のあるふたり。この日はサポートにベースの菅原寛人(鋭児)とドラムの市原太郎(鋭児、八木海莉電音遊戯)を迎えたバンドセットで登場した。

まずは楽器隊の3人で軽くセッション。やがてJEANがステージにイン、「大阪調子どう!」と「Into You」をグルーヴィーに披露する。JEANの低音であたたかみのある歌声と滑らかな英語詞が心地良い。丁寧に鳴らされるビート、天井から真っ直ぐに刺すような照明演出も相まって、じわじわとムードを高めていく。

少し勢いを増して披露された「TWO IN ME」では、JEANの色気漂う身のこなし、さらりとこなすムーンウォークに驚かされる。というのも彼は、幼少期にマイケル・ジャクソンに衝撃を受けてダンスの道へ。世界的ダンサーのケント・モリに才能を見出され、マイケル・ジャクソン追悼公演など多数のショーケースに出演、12歳からの3年間は、韓国の事務所に所属して歌とダンスを習得したという出自がある。その後帰国したJEANが、同じくマイケル・ジャクソンやThe Beatlesにルーツを持つNakamuraがクラブでギターを弾いている姿を見て声をかけたことが、結成のキッカケとなった。歌いながら踊るJEANのしなやかさに目を奪われがちだが、Nakamuraもピアノ、ギター、DTMと様々な楽器を操る手練のプレイヤー。ミステリアスな空気を纏いながら繰り出される音の個性と調和に興味をそそられる。

暗めのブルーのライトの中で演奏されたスローテンポな「Brand new」は、日本語・英語・韓国語のトリリンガルで歌われる楽曲。丸みのある歌声が3ヶ国語を自在に行き来する一方で、ボトムに這うのはギターとベースのごりごりとした低音。ドープに潜らせたかと思えば、思い切りリバーブをきかせて轟音の手前まで攻めるという、静と動を感じるサウンドメイクに心を掴まれた。実はライブアレンジではThe Beatlesの「Come Together」のリフが入っているのだと、ライブ後に本人たちが嬉しそうに教えてくれた。

ここからはダンサブルなゾーン。JEANが「大阪いけますか!」と熱を上げ、Nakamuraはギターからキーボードにチェンジ、ビートを強めて1stシングル「You make me a happy!!!」をグルーヴィーに彩っていった。さらに「音の上では自由さ」と呼びかけて、跳ねるリズムに重なるシンセがトロピカルな「DOPE CAT」を軽快に解き放つ。

そしてシームレスに台湾の女性アーティスト・Mandarkをフィーチャーした「DON’T BLINK」へ。同期で流れるMandarkの柔らかな歌声に浸っていると、JEANが「大阪Let’s Go!」と叫んだのを合図にベースとギターがダークにわななき、今度は囁くような「Fucked up」へ。この3曲の流れは昨年5月にリリースされた1stフルアルバム『We,A Fool and Wise.』の収録だが、生で聴くとこの落差が大きなうねりとなって、ハイライトシーンを作り出した。

「THEY DON’T CARE」では、盟友・ego apartmentのShu(Gt.Vo)を呼び込んで一緒に演奏する。浮遊感がありつつも高音から低音までを幅広くカバーするShuの歌声は、楽器のひとつとなってアンサンブルに溶け込み、会場を満たしていく。集中力高くライブを観ていたオーディエンスは自然に身体を揺らし、グッドバイブスに酔いしれた。

JEANは「今回こういう機会をくださってありがとうございます」と感謝を述べ、「1回1回のライブで出会えるお客さんは一度きりだし、一期一会を大事にして、1人ひとりのために歌いたい」と言葉を添えて、Hiphop/R&Bヴォーカルデュオ・Otomodatchiをフィーチャーした「ENN」を、冒頭アカペラで披露。ラストは「聴いている人の心の内を引き出す」という想いが込められた「Talk to me」で締め括った。一度聴けば耳に残るメロディーとリリック、軽快さと重厚さを併せ持ったファンクネスなサウンドは、不思議な魅力をもって聴く者の意識に深く潜り、最後はパワフルにこの日一番のエネルギーを生み出した。「荒々しくもあり、美しくもある」という彼らのコンセプトを体現した37分。オーディエンスから贈られた拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

Arche

続いてはArche。ギター兼マニピュレーターでプロデューサーのSPENSRが歪みギターを唸らせて「Are you ready!」と叫ぶと、Archeが颯爽と登場。1曲目は「addicted」。オーバーサイズのレザージャケットと黒いキャップ、グラサンという出立ちの彼女の、小柄な身体から放たれる骨太ボーカルに度肝を抜かれる。息継ぎをする間もないのではと思うほどの流れるようなラップと、少しハスキーで中世的なボーカルは、あまりに力強くセクシー。オーディエンスは彼女のパフォーマンスを熱視線で追いかける。日本語詞と英語詞を混ぜた切ないラブソング「君は知らない」、サビのプチョヘンザで会場がひとつに揺れた「YOU NEVER SAY THAT」と連続で楽曲を紡ぎ、恋愛の揺らぎを情感豊かに表現した。

「フー!」とフロアから喝采が上がると、Archeは照れくさそうにはにかんで「初めまして、Archeと申します。お呼びくださりありがとうございます。大阪でライブするの2回目なんですけど、最後まで楽しんでいってください」と挨拶。Archeは2022年頃からTikTokの投稿を軸に活動をスタート。心理学と音楽に出会ったことで、自身の人生の中で感じてきた生きづらさを楽曲に昇華し、肯定できたと語っている。だからこそ彼女の楽曲は、聴く者の心の奥深くに入り込み、共感を呼ぶのだろう。現在は冨田ラボの新メンバーに抜擢されるなど、活動の幅も広げている。

ムーディーなギターリフとフェイクが美しいソウルナンバー「言い訳」に続き、間髪入れず「now」を投下。音符を転がすようにテンポ良く跳ねるボーカルがとても心地良く、オーディエンスもただただリズムに身を任せる。さらに、結ばれないふたりを日本語詞で歌った「M.W.N.E.」、深い傷を受けて自暴自棄になりながらも迷路から抜け出そうともがく心情を描いた「Fill me up」と、切なくリアルなリリックを赤裸々に吐き出していく。

11月19日にリリースされた最新曲「Life」を歌う前にArcheは、「この曲は自分が一番自分らしくいられる瞬間について歌った曲です」と言葉を紡いだ。「私が自分らしくいられるのは歌ってる時なんですけど、音楽に出会うまでは自分がすごく嫌で。自分を隠して、無理矢理小さい箱に自分を押さえ込んでいたのがしんどかった。音楽に出会って、ありのままの自分でいていいんだと思えたし、もっと自分らしく生きていいんだと思うことができました。辛い日々があったからこそ、歌えることも当たり前じゃないと感謝しています」と述べて、大切そうに歌声を響かせた。ヒップホップのドラムパターンに鍵盤が優しく重なり、あたたかみを感じるサウンドが会場に広がっていく。<Live your life. Live your own life Love your style,Love your own style><何者じゃなくてもいい Your life><誰のものでもない Your life>。過去の出来事、音楽によって救われた彼女の強さと繊細さ、音楽への情熱、そして「あなたも自由に遠くに行けるよ」というメッセージが詰め込まれたリリックが胸にしみる。同時に「音楽がArcheを輝かせるのだ」ということが伝わる、たおやかでカッコ良いステージだった。

Arche自身も思い入れが強いという「you are」では、のびやかなでソウルフルな歌声で躍動し、オーディエンスと目を合わせてフロアごと巻き込んでいく。人間生きていればポジティブな面もネガティブな面もある。だけど、<幸せは自分次第 足りないもの数える前に 今あるものを愛せばいい>。既に手元にあるものに気付くかどうかなのだ。これらの普遍的で本質的な言葉は、彼女が生きる上で大切にしているテーマであり、現代を生きる我々にも実感を伴って突き刺さるし、勇気をもらえる。

そしてラストスパート。「今日は本当に聴いていただいてありがとうございました」と低姿勢で挨拶すると、超絶パワフルにフェイクを叩き込んだ「パラサイト」で盛り上げると、とびきりグルーヴィーでクールな「Expired」でフィニッシュした。

大喝采のフロアから、すぐさま発生したアンコールを求めるクラップ。残念ながらスケジュールの都合でアンコールはなしだったが、Archeは再びステージに戻り、待っていたオーディエンスと一緒に記念撮影、サインにも応じてコミュニケーションをとっていた。ステージ上とはまた違う、彼女の優しさと素の部分が垣間見えた瞬間だった。

こうして『T.B.O presents #長堀界隈 ver1107』は大盛況で幕を閉じた。3月20日(金・祝)に開催される『梅田界隈 THE CIRCUIT ’26』には、Archeの出演も決まっている。次はどんなアーティストに出会えるだろうか。楽しみにしていよう。

取材・文=久保田瑛理 写真=オフィシャル提供(撮影:冨永倖成)

セットリスト

たとえばボクが踊ったらpresents
『梅田界隈 THE CIRCUIT '26』

日時:2026年3月20日(金祝)OPEN/START13:00
会場:梅田BananaHall、梅田Zeela、梅田BANGBOO
出演(A→Z):Arche/BESPER/Blue Vintage/Bone Us/brkfstblend/Massclub/Meg Bonus/NAGAN SERVER/Natsudaidai/oops cool/QOOPIE/Roka/S.A.R./スーパー登山部/TiDE/and ???
 
<TICKETS(Dr別)>
ADV¥5000(早割¥4300)/U-25 ¥3500
※未就学児入場不可 ※25歳以下はU-25対象

主催:YUMEBANCHI/企画・制作:たとえばボクが踊ったら、

公式サイト:https://www.t-b-o.jp
X:@odd_talla / instagram:@tbo_0fficial

ライブ情報

Arche 東阪ワンマンツアー2026
【大阪】2026年8月1日(土)@大阪・心斎橋CONPASS
OPEN 17:00/START 17:30
¥5000 +ドリンク代¥600
 
【東京】2026年8月14日(金)@東京・恵比寿 LIQUIDROOM
OPEN 18:15/START 19:00
¥5000 +ドリンク代¥600 

リリース情報

Arche
ニューシングル「do for love」
※カンテレ×FODドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』 オープニング曲
形態:配信シングル
リリース:2026年1月14日(水)
配信リンク:https://lnk.to/Arche_doforlove
<Arche 各種SNSリンク>
YouTube:https://www.youtube.com/@arche8294
TikTok:https://www.tiktok.com/@arche_214ce
X:https://x.com/arche_214ce
Instagram:https://www.instagram.com/arche_214ce/
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