『LIMITS学生選手権大会2025』王者・けだまインタビュー アニメーションという自分の武器で掴んだ勝利

2026.1.28
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『LIMITS学生選手権大会2025』王者・けだまインタビュー

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『LIMITS(リミッツ)』とは、制限時間20分の即興型アートスポーツ。ランダムに決定されたお題に沿ってデジタルアートを制作し、その過程と完成作品でいかに審査員・オーディエンスを魅了できるかを競う、絵描きたちの天下一武道会である。2025年の夏、たくさんのドラマを抱えて幕を閉じた『LIMITS学生選手権大会2025』では、激戦の結果新潟県開志専門職大学から参戦の「けだま」が全国学生絵描きチャンピオンの栄冠を勝ち取った。全挑戦者の中で唯一イラストではなくGIFアニメーションの作品で勝負し続けてきたけだま。大会の記憶もまだ新しい秋の日、優勝に伴う「アメリカ ジョージア州アトランタ クリエイティブツアー」から帰国したばかりのけだまに、大会の振り返りや今後について、そして “絵を描く” ことについて話を聞いた。

『LIMITS学生選手権大会2025』王者・けだま。クリエイティブツアー帰りのスーツケースを引いた状態で、イープラスに足を延ばしてくれた。

出場のきっかけと特訓

ーークリエイティブツアー、お疲れ様でした! まずは、リミッツを知ったきっかけや、出場しようと決意した経緯を教えてください。

実は、参加する前はリミッツのことを全然知らなくて……。大学の先生にリミッツのプロプレイヤーの方がいて、その先生から「こんな大会があるけど出てみない?」って誘われたのがきっかけです。そのときはノリと勢いで決めました。

ーー出場が決まってからは、どんな対策や特訓を?

最初は友達もこの大会に出る予定だったんです。二人で練習しながら先生にフィードバックをいただきつつ、その子とお互いにワードを出し合って時間内に描く練習をしていました。彼女は最終的に都合がつかず出場できなかったんですが、当日も試合の合間合間に「良かったよ」とかメッセージを送ってくれたりして、支えてくれましたね。優勝したときも喜んでくれました。 

最初は制限時間20分で練習してたんですけど、「早押し」や「制限時間10分」の試合があると聞いてからは、10分にして練習してました。やっぱり練習の時点では、描き上げられないこともたくさんありました。

大会当日を振り返って……

ーーご自身で大会を振り返ったとき、特に心に残っているのはどんな瞬間ですか?

実は決勝戦は大会終了後も引きずっていました。自分的に作品の出来が悪かったんです……。お題ワードの候補は事前に提示されていたので、本番でどの組み合わせが来てもいいようにある程度ネタは用意してたんです。決勝までは想定内のものが描けていたんですが……。最後は本当に「やばい!」って気持ちでいっぱいで、ダンスを描いたときは負けてもいいやという覚悟でした。

※ファイナルのリミッツワード(お題)二つのうち、一つは当日発表された。当日、サプライズでのブレイクダンサーのパフォーマンスタイムを経て、お題は「ワクワク」×「青い挑戦」に決定。けだまはその場で見たブレイクダンサーの姿をアニメーション作品に落とし込み、見事優勝した。

大会当日の様子 (写真=オフィシャル提供)

ーーあの瞬間は盛り上がりましたね!

そう言っていただけると嬉しいです。

ーーあのとき、ブレイクダンスのパフォーマンスを見た感想は?

サプライズだったのでびっくりして、本当に圧倒されました。私はもともとダンスとか音楽に興味があって、それをもとにした動きを描くのも好きだったんです。社交ダンスのような動きはよく描いてました。ただ、ブレイクダンスを描くのは今回が初挑戦でした。

ーーそれでも大事な決勝戦で、見たものをすぐその場で描くのは怖くなかったですか?

それは言われます(笑)。でもブレイクダンスにインパクトがあったので、だからこそ描きたい気持ちが強くなって、チャレンジしてみました。これがもし決勝戦じゃなかったら勝ち残りたい気持ちが強くて思い切れなかったかもしれないけど、これが最後のステージなんだから、やり切るしかないなと思ったんです。

ーー先ほどご自身では、作品の完成度に納得いかないとコメントされてましたね?

とにかく緊張していて……。理性を保てていたらもっと描けたのではと、悔しい気持ちもあります。

ーーちなみにキツかった瞬間のほか、大会中で嬉しかった瞬間は?

ファーストラウンドの早押しで勝ち抜けたときは嬉しかったですね。まわりの挑戦者さんたちがあと一歩の惜しいところで抜けられない状況で、「自分はいけるのかな……」と心配が多かったぶん、勝ち抜けが決まったときは本当に興奮しました。

大会当日の様子 (写真=オフィシャル提供)

※ファーストラウンドは「Speed LIMITS 12組同時バトル」。12チームが一斉に描き始め、完成した人から早押し形式で発表し、審査を受けるという戦いだった。

優勝して、それからの変化

ーー優勝されて、ご自身やまわりに変化はありましたか?

私自身の内面に結構ありました。自分としては、この大会を通じて“アニメーションはそんなに難しくない”ってことを伝えたいと思っていたんですけど、そのことを一番感じてるのが、他でもない自分自身です。大学の授業では、かっちりとした商業アニメの作り方に取り組んでるので、絵コンテから動画までイチから描くんです。でも、リミッツになるとそれらの工程をスパッとカットする必要があって。

ーーと言うと?

リミッツで描いていたのは「原画」の部分です。商業アニメだと、まず話の流れを簡単な絵で描く「絵コンテ」っていうのを描かなきゃいけなくて。その後に「レイアウト」という工程で、背景から人物の配置までをもっと丁寧に描いて、そこから「原画」で動きの大まかな流れを書いて、その後に「動画」で間を埋めていくんですね。リミッツの場合はその「原画」だけをバーッて描いていくので、アニメーション作りの作業を一気に凝縮したような感じでした 。それをやってみてからは、アニメーションを作ることがすごく楽になったなと感じているんです。

ーーそれはどうしてでしょう?

やっぱり20分という短い時間で完成させなきゃいけないから、むしろ身構えなくて済むというか。 とりあえず描かなきゃ、手を動かさなきゃ、って思えたからですかね。

インタビュー中に、決勝で描いた作品のデータを見せてもらった。

ーー自分自身だけでなく、周囲の人たちの変化はありましたか?

実は出場したことをほとんど周りに言ってなくて(笑)。家族には優勝したあとに連絡しました。「海外に行くことになったよ」みたいな感じで。最初は本当に軽い気持ちで挑戦し始めたことだったので、大げさにしたくなかったんです。優勝したと聞いた母は本当にびっくりしてましたね。それから家族で配信を見返してくれて、弟からは「激アツ!」 とメッセージをもらいました。

ーーきっかけをくださった、大学の先生の反応はどうでしたか?

先生は当日会場で応援してくださってたんですけど、途中で「あそこはデッサンが狂ってたよ」とか「お題のワードが反映されてないんじゃないかな」とか、結構厳しい指摘をリアルタイムでいただきました。それで最後、優勝したあとには「無謀だね」って言われましたね。でも、先生も喜んでくださっていたと思います。

ーーちゃんと褒めてももらいました?

はい(笑)!

アニメーションは難しくない?

ーー そもそも、けだまさんがこのアートバトルを「自分はアニメーションで勝負しよう」と決めたのはなぜでしょう?

私が大学で専攻しているのがアニメーションだったからです。先生から出場を勧められたときも、イラストだけじゃなくてアニメでも参戦できるよと聞いていたんです。私以外の参加者の皆さんがイラストのようだったので、よし、新しい挑戦をしてみようかな?と思って。

ーーひとつのアニメーション作品で、何枚くらいの絵を描くのですか?

私が決勝戦で描いたブレイクダンスのアニメーションで、12枚くらいですね。それを繋げて動きをつけます。

同上

ーー他の人は制限時間内で1枚のイラストを描いているところを、アニメーションだとその何倍も量を描く必要があるってことですよね?

1枚のイラストを描くよりも、このやり方のほうが私としては楽なところがあって。アニメにする前提で、いろんな動きを分解して見ているようなところもあるかもしれないです。

ーー先ほど「アニメーションは難しくないと伝えたい」と仰ってましたが……難しくないんですか?

はい、難しくないと思います。実はそもそも私自身、やる前はずっと難しいと思ってたんです。子どもの頃、パラパラアニメを作るゲームソフトにハマって遊んでいたのですが、それが難しくて……。そのときはアニメーションを作るなんて自分にはできないと思っていたんですが、大学に入ってちゃんと学び始めたことで、意外と面白いなと考えが変わってきました。いつの間にか、アニメーションがむしろ自分の武器になった感じです。

ーーリミッツでアニメーション作品を作るうえで、敢えて大変なことを挙げるなら?

つなげたときの完成度をイメージしたあとに、途中で大きく付け加えることができない大変さはあります。 リミッツの制限時間を考えると、描いて消してと試行錯誤する時間がないというか。描いたら試運転してみて、カクカクして見えたらそこに入れて……としかできない。新たに別の動きを付け加えるとなると、また描くべきものが増えてしまい時間がかかるためです。

ーーなるほど……。

だから最初にイメージを決めたら、その完成イメージに向かってひたすら描くことしかできないんです。もっと時間があれば、皆さんが普段見ているアニメーションみたいに滑らかな動きになるんですけど、20分だとどうしても荒削りで勢いのあるものになっちゃいますね。

描くことが好きで

ーーけだまさんは、絵を描くのはいつ頃から好きだったのですか?

物語を作るのが好きで、幼稚園の頃には自分の考えたストーリーを絵本とか漫画もどきにして描いてましたね。先日、小学校低学年の頃の自分が自由帳に描いた漫画が見つかったんですが……ちょっと内容は恥ずかしくて言えないです! 当時は雑誌の『ちゃお』を愛読していたので、そういう少女漫画みたいな感じで。一部は破り捨ててしまいましたが、一部はとってあります(笑)。

ーー漫画好きな女の子だったんですね。

おばがプロの漫画家だったこともあって、そもそも漫画に触れる機会は多かったと思います。おばに絵を描いてもらったり、その姿を見ているうちに、自分もやってみたいと思うようになりました。小学校4年生のときに、Gペンとか原稿用紙とかスクリーントーンとかが入った漫画家キットみたいな一式をおばからもらったんです。そのあたりから本格的にアナログの漫画を描くようになって。 中学生になってからは、タブレットを使ってデジタルで描くようになりました。

クリエイティブツアーでの学びと衝撃

ーー優勝賞品の、ジョージア州アトランタへのクリエイティブツアーはいかがでしたか?

本当に濃厚な1週間でした。今までは引きこもり精神というか、快適すぎる日本から出たくない気持ちが強かったんです。海外行くとウォシュレットがないのはちょっとなぁ〜なんて思ってしまって。でもやっぱり、海外のクライアントさんのもとでお仕事をしたり、一緒にクリエイティブなことをしたり、そういうのも素敵なことなんだ……って考え方が変わりましたね、このツアーで!

ーー向こうではどんな体験をされましたか?

社会科見学みたいに、色々見て回らせてもらいました。歴史あるアート・デザインスクールのSCADとか、コカコーラ本社のミュージアムとか、世界的なTV局のCNNとか……。一番びっくりしたのは、アトランタの政治の中心の、議事堂を見せてもらったことですね。

ジョージア州アトランタ、クリエイティブツアーの様子(写真=オフィシャル提供)

ーーツアーの中で特に印象に残っているのはどんなこと?

リミッツバトルをやる機会があって。最初は、アトランタの方たちにリミッツの雰囲気を伝えるために、同行していただいた大学の先生とktymさん(※大会で解説やエキシビションも担当していたリミッツプレイヤー)と私でバトルをする予定だったんですけど、当日になってゲストで「marvel」のすごい人がいらっしゃって、一緒に並んで絵を描くことになって! 緊張しました……。上手って私が言うのもおこがましいくらいデッサンが綺麗で。さらさらと、かつダイナミックに、躊躇なく描いていくのが本当にかっこよかったですね。しかもオーディエンスの中には、リミッツの大会にビデオメッセージをくださったジョージア州の議員の方もいらっしゃって、さらに緊張しました。

ジョージア州アトランタ、クリエイティブツアーの様子(写真=オフィシャル提供)

ーーどうですか、海外も悪くなかったでしょう?

そうですね! でも今回は、そばについていてくださる方々の英語が堪能だったので、そのおかげで楽しめたんだろうなって思います。自分一人だったら言葉がままならないので。これからのためにも、英語をちゃんと勉強したいなって思いました。

これからのこと

ーー未来のリミッツ参加者の方たちに向けて、ぜひメッセージをお願いします!

私が言えるのは……とにかく、自分の武器を見極めて参加することをお勧めします。私にとってそれはアニメーションでした。出場するほとんどの方はイラストなんですけど、なかには漫画の方もいましたし。形式にこだわることなく、自分の全部を使って、出し切って、頑張ってほしいなと思います。 

ーーなるほど、絵を描くのが好きとひとくちに言っても、イラスト、アニメ、漫画とか、得意分野は人それぞれですよね。けだまさんはどうやって自分の武器を見つけたのでしょう?

やっぱりずっと描いているし、いろんな技法というか、美術系のものに手を出したっていうのがあると思います。色々やった結果、自分のやりたいことにフィットした表現のやり方を見つけることができたって感じです。

ーーご自身の場合はアニメが最適な表現方法だったんですね。どんなところが?

音楽と一緒に見せることができる絵、っていうのがアニメーションなんです。そういう意味で、自分のやりたいことにはアニメが一番合うなって思っています。 

ーーこれからの目標や、やってみたいことは?

ずっと、ミュージカルアニメを作ってみたくて。自分でストーリーから考えて、新しい表現をやってみたい。日本のアニメも好きですが、海外のカートゥーンらしいちょっとコミカルな動きも好きなんです。そういうのを融合させて、新しい表現ができないかなと思っています。

ーー最後の質問です。もしリミッツに来年も出られるとしたら、また出たいですか?

出たいですね! 出場してみたら面白かったのが一番の理由です。速さを競うって独特な切り口ですし。リミッツは “絵の上手さ” だけで決まる競技じゃないからこそ、いろんな人とか才能を引き上げられる可能性を持っているんじゃないかな、って思います。

ーーありがとうございました!

大会当日の様子 (写真=オフィシャル提供)

けだま本人は、果たして気付いているのだろうか……インタビューの中で、アニメーション作りも、リミッツバトルも、海外行きも、全て「はじめは大変だと思っていたけど、やってみたら面白かった」という感想に落ち着いていたことに。彼女が自身の精神的なたくましさをどこまで自覚しているのかは計り知れないが、様々な挑戦の先で「やってみたら意外と面白かった!」と笑えるのって、かなり無敵なのではないだろうか。リミッツ2025学生大会王者・けだまの武器は、会場をあっと驚かせるGIFアニメーションだけではない。その柔軟さと貪欲さだったのだ。

雪道を行くラッセル車のようにタフに歩むその道のりが、彼女の好きな、華やかなミュージカル音楽と共にありますように。ショーの本番はきっとこれからだ。


文=小杉美香  写真=大橋祐希、オフィシャル提供

イベント情報

MIZUHO LIMITS全国学生選手権大会2025 ※終了
日程 2025年8月31日(日)
会場 横浜ランドマークホール 横浜市西区みなとみらい2-2-1 ランドマークプラザ5F
 
【LIMITSとは】
『LIMITS』は、制限時間の中で、ランダムに与えられる2つのテーマを組み合わせてデジタルアートを制作し、審査員と観客の投票で勝敗を決める即興型アートバトル。
ライブで進行する創作のプロセスや選手同士の駆け引き、完成作品のクオリティが観る者を惹きつける、新感覚の“アートスポーツ”です。
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