BESPER、満員の会場をグルーヴィーなサウンドで熱く揺らした、初の大阪ワンマン

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レポート
音楽

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『BESPER 東阪ONE-MAN TOUR 2025』2025年12月5日(金)大阪・東心斎橋 CONPASS

高校時代にSuchmosが好きという共通点で意気投合したARARIKU(Gt)とSEREN(Ba)を中心に2020年に千葉で結成されたBESPER。高校の後輩であるSHINJIRO(Vo)を誘い、その後メンバーチェンジでHAT(Key)、 TAPPEI(Dr)、HINATA(Sax)が加わり2023年に現在の6人になった彼ら。70年代、80年代のAORやソウルミュージックをルーツにした楽曲は、音楽好きのリスナーはもちろんショート動画などを通じてさまざまな世代に届き、12月5日の記念すべき大阪初ワンマンライブは見事SOLD OUT。冬の寒さを吹き飛ばしたホットでグルーヴィーなライブの模様をお届けする。

メンバーが登場し満員のフロアに青い照明がさす中、最初に届けられた曲は「Sweet Night」。ギター、キーボード、ドラムにベースと一つ一つの音色が重なる中にサックスが加わると、曲の持つ色合いがいっそう濃くなる。バンマスのARARIKUは、バンドには最初からサックスを入れることを考えていたそうで、それは彼が愛聴していた山下達郎やOriginal Loveの影響が大きいのだという。

やや遅れて登場したSHINJIROが、ムーディーな演奏に柔らかな歌声で一つ一つの言葉をそっとつぶやくように乗せる。ARARIKUのコーラスは低くスモーキーな声で、SHINJIROとは対照的だ。ふたつの声が合わさると、楽曲の持つ平熱の心地よさと、歌詞に描かれている煌びやかな都会の真ん中で感じる高揚と、居場所のない切なさが胸に染み込んでくる。ぎっしりと人が詰まったフロアは、開演前のざわめきがかき消えて全身で聴き入っている。

「大阪の皆さんお待たせしました!楽しんでいこう!」と言うSHINJIROの声に誘われ手拍子が起こった「Secret Path」で、フロアが心地よさそうに体を揺らす。サックスのHINATAは楽器を持ち替えて演奏しながら、ボーカルの入るタイミングに合わせて笑顔でSHINJIROを指差す。長身を屈めるように演奏したり、曲によってはフルートや電子サックスなど1曲の中で幾つもの楽器をプレイし、人懐っこい笑顔とともに視覚的にも楽しませてくれた。彼らのライブを見ていて好感を覚えたのが、HAT(彼は髪、メイク、服のスタイリングも秀逸)のキーボードソロやHINATAのソロのタイミングでSHINJIROがそれぞれを指さしたり微笑みかけたり、HINATAが自分の背後でプレイするSERENを振り返ると、そのたびにゴリゴリのいかついベースを弾くSERENと、時にはドラムのTAPPEIまでもが笑顔を見せるなど、ステージ上がハッピーなムードで溢れていたこと。

4曲目の「Bluest」を終え、「大変お待たせいたしました!BESPERです!」と最初のMCで挨拶をすると、フロアは大きな拍手と歓声で応える。一週間前までインフルエンザだったというARARIKUは「まじで(治って)よかった」と安堵の一言。彼とSHINJIROがMCを担当し、BESPERが2年ほど前に大阪でライブをやり始めた頃から今日のワンマンに漕ぎ着けるまでをかいつまんで語る。”いつかは大阪でワンマンを”と思い描いていたら、今年の3月にスタッフから”ワンマンをやりましょう!”と打診があったという。本人たちは「正直まだ早いんじゃね?と思ってた」というが、蓋を開けてみたら今日のは完売で目の前にはみなさんがいる…と。後押ししてくれたスタッフと今日集まってくれたフロアに改めて感謝の思いを伝える。

ライブが再開し、ARARIKUのカッティングが炸裂するファンクナンバー「Break Down」では、「止めますよ?」(SHINJIRO)とイタズラっぽく笑い、曲中に何度もブレイクをはさむ。そのたびに心地よい緊張感が走り、フロアがぎゅっと一つになって盛り上がる。中盤にはメロウな楽曲が用意され、ARARIKUの歌から始まりツインボーカルで聴かせる「満たされた日」では、SHINJIROの透明感のあるハイトーンと、ARARIKUの曇り空のようなしゃがれた歌声の対比がくっきり。インスト曲「interlude」では、低くソウルフルに歌うSERENのベースやスリリングなドラムなど、個性豊かな5人のプレイに目も耳も奪われる。ジャジーにオルタナティブに、時にはファンタジックにも変化しながら曲が織り上げられ、個々のソロには拍手や歓声が起こった。

一旦ステージを去ったSHINJIROが戻り、ライブの2日前に配信リリースされたばかりの新曲「Snowfall」へ。タイトル通り、雪が降る中をステップを踏みたくなるような躍動感たっぷりのウィンターソングだ。歌い終えたSHINJIROが、「いかがでしたか?」とフロアに向かい、「新曲の感想を”いっせーの”で言ってください!」と促し”いっせーの!”と声をかけると、あちこちから”かっこいい!”や”ええやん!”などの声が飛び交うちょっとしたカオス状態に。SHINJIROも大きく頷きながら「わかる〜俺もそう思う(笑)」と返し、メンバーも楽しげな表情を見せていた。

ここでカバーを1曲披露。彼らは今年バンドにとって初のフェスとなった『INAZUMA ROCK FES. 2025』に出演したが、その際にリハで演奏したものの「不完全燃焼だった」(ARARIKU)というSMAPの「がんばりましょう」をリベンジ披露。アイドルソングとしてだけでなく90年代R&B、ファンクの旨味を凝縮したJ-POPの金字塔的1曲を、原曲よりグッとタイトに、よりゴージャスなダンスナンバーへアップデート。続くロマンチックな高速ナンバーの「Twilight Dive」は、SHINJIROの歌声がひときわきらめいてフロアに降り注いだ。最後は、洗練された中にも人肌の温かみがある「Flight Time」を。そしてアンコールは「Ours」。「みんなで一緒に歌いたい!」と呼びかけ、”ナナナナ〜”の歌唱指導をすると、フロアの歌声が予想以上に大きかったようで、メンバーが大絶賛。ステージもフロアも、どこまでも駆け抜けていけそうな熱気に包まれたまま、初のBESPER大阪ワンマンは幕を閉じた。

本編最後の「Flight Time」を前にARARIKUがこんな話をしていた。BESPERは今年、過去の楽曲を再レコーディングした『REBUILD』をCDとアナログ盤でリリース。レコーディング中の様子は「BESPER REBUILD RECORDING DOCUMENT」と題してYouTubeのBESPER公式チャンネルで公開されているが、制作中は不安もあったが、「良いものを作っている」という自信もあったという。彼らは東京を中心に路上ライブを行っているが、その裏には、有名なプロダクションなどの力を借りるのではなく自分たちの力で自分たちの音楽を見せつけるという思いがあることを吐露。そうやって泥くさく自分たちの音をみんなに伝えていきたいし、これからもいい曲をみんなに届ける、と言葉を結んだ。

BESPERが鳴らす曲は、クールでグルーヴィーで、日常をふっと忘れさせるようなドラマがある。それは彼らの音楽の大きな魅力だが、その曲の中に見え隠れする飾らない人間っぽさや、ふとした時に耳に飛び込んでくる歌詞に散りばめられた喜怒哀楽も聴き手の心を捉えているように感じる。年内は東京でのディナーショーや年の瀬のライブが予定されており、年明け早々もライブが決まっている。大阪で3月20日(祝金)に開催されるサーキットフェス『たとえばボクが踊ったらpresents.梅田界隈 THE CIRCUIT '26』にも、2025年に続いて出演が決定。泥くさくひたむきにグルーヴィーなサウンドを鳴らし続けるBESPERの、2026年のさらなる飛躍に期待している。

取材・文=梶原有紀子 写真=オフィシャル提供

セットリスト

『BESPER 東阪ONE-MAN TOUR 2025』
2025.12.5  LIVE SPACE CONPASS
<SET LIST>
1.Sweet Night
2.Secret Path
3.TEGA
4.Bluest
5.Break Down
6.Low Battery
7.Alone〜from here〜
8.Cry Days
9.満たされた日
10.interlude
11.Snowfall
12.がんばりましょう
13.Twilight Dive
14.寒空
15.Flight Time
[ENCORE]
16.Ours
公式X:@besper_band
公式Instagram:@besper_official/

出演イベント情報

たとえばボクが踊ったらpresents
『梅田界隈 THE CIRCUIT '26』

日時:2026年3月20日(金祝)OPEN/START13:00
会場:梅田BananaHall、梅田Zeela、梅田BANGBOO
出演:(A→Z):Arche/BESPER/Bone Us/brkfstblend/Massclub/Meg Bonus/Natsudaidai/oops cool/QOOPIE/S.A.R./スーパー登山部/TiDE/and more
 
<TICKETS(Dr別)>
ADV¥5000(早割¥4300)/U-25 ¥3500
※未就学児入場不可 ※25歳以下はU-25対象

主催:YUMEBANCHI/企画・制作:たとえばボクが踊ったら、

公式サイト:https://www.t-b-o.jp
X:@odd_talla / instagram:@tbo_0fficial