予測不能な面白さ! 好奇心ひとつで誰もが楽しめるライブを~ジャズトランペット奏者・松井秀太郎、最新ライブアルバム『FRAGMENTS』&新ツアーインタビュー
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トランペット奏者・松井秀太郎が2026年1月24日(土)からツアー「松井秀太郎 CONCERT HALL LIVE TOUR 2026 『FRAGMENTS』」をスタートする。2023年のデビューアルバム『STEPS OF THE BLUE』、2024年の2ndアルバム『DANSE MACABRE』に続いて、2025年はライブアルバム『FRAGMENTS -CONCERT HALL LIVE 2025』をリリース。ライブならではの空気感が詰まった作品によって、プレイヤーとしての魅力がより感じられたが、その時と同じカルテットで、次のツアーを回ることが決定。ツアー開始を前に、ライブアルバムを通して感じたライブの魅力、カルテットのメンバーのこと、そして新ツアーの見どころについて語ってもらった。
――2025年にリリースされた最新アルバムはライブアルバム。ホールならではの空気感が感じられる作品ですが、この時の公演はいかがでしたか?
コンサートホールのライブでは「生の音楽」というのをテーマにしています。マイクも立ててはいるんですが、エンジニアの方とも「生の音を極力そのまま届けたい」という話をしまして、ステージの上で鳴っている音がホールに響いているのを、マイクに手助けをしてもらってるという感じで音作りもしています。
――個々の楽器の音をマイクで拾うというのではなく、ステージで鳴っているいろんな楽器の音を届ける、と。
はい。さらに、自分たちはほとんどが即興で演奏していますので、ホールやその日のお客さんの反応、雰囲気も含めて、その場でライブを作っている感覚があります。生の音を届けて、その場で出来た音楽を一緒に体感してほしいという気持ちなので、今回ライブ盤として実際にその場であったこと、お客さんのいる会場の空気感も含めて、“コンサート”という形で作られたものを作品にできたのは自分にとっても特別なことでした。すごく大切な思い入れのあるアルバムになりましたね。
――スタジオレコーディングとはまた違った魅力がありますからね。
そうなんです。やっぱり自分自身が好きなアーティストのライブ盤をたくさん聴いてきましたので、自分もいつかライブ盤を作りたいという気持ちを持っていました。このツアーが始まって、最初の公演の時に「あれ? これはいけるんじゃないかな」って思ったんです。それで「このライブは録っておきたい」とみんなに話して、急遽レコーディング機材を入れていただきました。実際に録ってみて、これはライブ盤にできるんじゃないかと。無事作品としてリリースすることができました。
――ツアー前から、ライブ盤を作ることを予定していたわけではなかったんですか。
はい。実はツアーが始まる半年くらい前にこのカルテットを始めて、ツアーの初日が2回目の本番だったんです。そういう意味で新鮮さもありますし、その時にしか出せないものがあると思ったので、レコーディングしておいてよかったです。即興が多いとお話ししたように、その日にしか録れないものもありますし、次のツアーではまた違ったものになると思うので、このタイミングでの演奏、音を残したいと思ったんです。
――それもまたジャズの魅力であり、楽しいところですよね。ロックバンドのように固定のメンバーで音を作り上げていく楽しさもあると思いますけど、ジャズのカルテットとかトリオとか、ソロとして活動しているプレイヤーが集まることで化学変化が起きたり。
そうですね。組み合わせが自由ですし、誰と組むかで同じ曲を演奏していても違って聞こえたり、そういう自由さが楽しいです。
――デビューアルバムの『STEPS OF THE BLUE』、2枚目の『DANSE MACABRE』、そして3枚目の『FRAGMENTS -CONCERT HALL LIVE 2025』と順番に聴いていくと楽曲の幅、演奏の振り幅も大きくなっているのを感じます。
そう感じてもらえるとうれしいです。やっていくうちに、表現したいこと、やりたいことが広がっていくので、自然と幅が広くなっていってます。
――大学に入ってからジャズ専修になったということで、まだそんなに年数がたっていないわけですが、だからこそ、1年1年の変化と進化が大きいのかなって。
どんどん価値観が変わっていって、自分の演奏も変わっていってます。「こういう音楽が作りたい」というのがよりハッキリしてきたというのもありますね。
――松井さんはトランペット奏者ではありますけど、楽曲を作ったりする上で、トランペット以外の音のこともいろいろ考えているのかなとも思ったんですが。
はい、トランペットが軸ではありますが、いろんな楽器に興味があります。現状、トランペットしかステージでは演奏していないんですけど、密かに違う楽器も練習したりしてます(笑)。
――ライブ盤も、次のツアーでもカルテットでの演奏になりますが、ピアノの壷阪健登さん、小川晋平さん、ドラムスのきたいくにとさんは、松井さんから見て、どういうプレイヤーですか?
まず、3人とも共通しているのが、「いろんな音楽をやっている」ということです。ジャズだけをやってきたジャズミュージシャンも多いんですけど、皆さん、いろんなジャンルの音楽をされているんです。ドラムのくにとさんはバンドをやっていたり、ピアノの壷阪さんはポップスもやっていて、ジャンルにとらわれていないんです。あと、これもさっき少し触れましたが、ホールで生の音を届けるというのを自分はすごく大事にしているので、ちゃんとその楽器自体の本来の良さ、特徴をしっかりと出せる人がいいなと思っているんです。そのためにはホールとの付き合い方も考えられる人がいいなと思ってるんですけど、みんな、オーケストラとの共演経験があるので、そういう点でも信頼できるというか、安心感があります。
――松井さんを含めて、考え方が同じだったりするんですね。
そうですね。自分が持ってくる楽譜っていうか音楽はジャズだけじゃないことが多いし、今後、もっと多くなっていくと思うんです。そういうものに対して「面白そう」と思ってもらえる方たちなので、大事なものを共有できてる感じがあります。
あと、自分のバンドなんですけど、演奏している時は対等なんです。自分がやりたいことをみんなが汲み取ってくれて、完璧に演奏してくれたりすると、たぶん面白くないと思います。
――それぞれ個々に活動されているプレイヤーなので、カルテットを結成するタイミングやスケジュールとか、いろんなものが重ならないと続けられないものだと思いますが、2026年1月24日から始まるツアー『FRAGMENTS』も同じメンバーで回れるというのは。
うれしいですね。おっしゃる通り、それぞれカルテット以外の活動もあるので、スケジュールやタイミングも重要になってくると思っています。
――タイトル「FRAGMENTS」は、ライブ盤の1曲目にも入っていましたが、ツアータイトルになるくらいなので重要な曲の一つなのかと。
タイトルは“断片”という意味で、楽曲自体もすごく断片的というか、シンプルなフレーズがあって、それの組み合わせでできているんです。聴くとすごく複雑な感じがするんですけど、楽譜的には実はとてもシンプルなので、演奏者に多くの部分を委ねている曲です。最初のフレーズがあるだけの、すごく自由で即興性みたいなものにフォーカスした曲なので、アルバムのタイトルとしても、次のツアーのタイトルとしてもすごく合ってるなと思い、ツアータイトルを『FRAGMENTS』にしました。
――自由さというのが魅力だと思いますが、セットリストはどんなふうに決めてますか?
最終的な曲目を決めるのは、当日ホールに行ってからですね。やっぱりホールの響きが重要なので、毎回ではないんですけど、演奏中に急に曲を変更したりすることもあります(笑)。
――ブルーノートで何日か連続で演奏するというのではなく、毎回いろんな土地に行って違うホールで演奏するので、ツアーと言っても毎回違うものになるのでしょうか。
はい。ツアーですけど、自分たちの気持ちとしては毎回“初日”という気持ちです。会場も違いますし、やってる内容も毎日違うし、始まってみないとどうなっていくのか分からなかったり、油断できなかったりするので、ずっと初日が続いていて、飽きないし新鮮なんです。
――3枚目のアルバムが『FRAGMENTS』で、今回のツアータイトルも「FRAGMENTS」ということで、アルバムと今回のツアーはどこか地続きな部分があったりするんですか?
今年(2025年)行ったツアーのタイトルは『FRAGMENTS』ではなかったんですけど、ツアーが終わって、ライブ盤にする時にツアーを振り返ってタイトルを決めました。今度のツアーではこのアルバムに入っている曲も多く演奏するので、そういう意味では繋がっているところはあります。ただ、この1年の間に自分も含め、カルテットのメンバーそれぞれいろんなところで演奏して経験を積んでいるので、全然違う演奏になると思っています。
――松井さんは、この間の経験で大きかったのは?
デュオでツアーをしたことですね。ピアノの壷阪さんと2人だけで回るツアーをしたんですけど、一対一の会話みたいな感じで、音楽的にも技術的にもかなりいろんな挑戦をしました。そのツアーで、自分も演奏に対する気持ちがより強くなったので、その経験を経て、また4人でできるというのが楽しみです。他の二人もピアニストの小曽根真さんのレギュラートリオをやっているので、別のところで1年間経験して、すごく強くなって帰ってくると思うので、お互い鍛えられてるんじゃないかなって。
――それは楽しみですね。
他にも、オーケストラのコンチェルトを何度かやらせてもらって、そこでオーケストラと自分の単旋律で表現するという経験ができたことは、いい経験でした。これはジャズを始める前からやりたかったことだったので、それが叶ってよかったです。
――最後に、ツアーを楽しみにしているファンの方、このインタビューを読んで「見に行きたいな」と思っている人に、楽しみ方とメッセージをお願いします。
ジャズを聴く方、演奏される方はもちろん、そうじゃない方もお楽しみいただける内容のライブだと思っています。ジャズトランペットはなかなか馴染みがないかもしれませんが、ジャズを全く知らなくても、面白そうだな、と思う気持ちひとつあれば楽しめるライブにしたいと思いますので、即興演奏の面白さも含めて、楽しんでいただけたらうれしいです。
取材・文=田中隆信 撮影=池上夢貢
公演情報
『FRAGMENTS』
松井秀太郎カルテット
松井秀太郎(トランペット)
壷阪健登(ピアノ)
小川晋平(ベース)
きたいくにと(ドラムス)
東京 2026年1月24日(土) 14:00開演 三鷹市芸術文化センター 風のホール
神奈川 2026年2月11日(水・祝) 14:00開演 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット