さらに一歩進んだ表現で構築した、“今”のAve Mujicaの世界――Ave Mujica 6th LIVE「Ulterius Procedere」東京公演レポート

2025.12.19
レポート
アニメ/ゲーム

写真:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project

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■2025.12.14Ave Mujica 6th LIVE「Ulterius Procedere」@東京国際フォーラム ホールA

2025年12月14日に、東京国際フォーラム ホールAにてAve Mujica 6th LIVE「Ulterius Procedere」の東京公演が開催。ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!』発のリアルバンド・Ave Mujicaによるこの日の“マスカレード(※ライブ)”は、定番曲から初披露となる最新シングル収録曲まで幅広い楽曲を、MCパートを挟まず次々に演奏。無線制御された公式販売のリストバンドライトを掲げる“共犯者(※Ave Mujicaファンの総称)”とともに、彼女たちならではのダークで、それでいて熱く迫力あるステージを見事に作り上げてみせた。

(C)BanG Dream! Project

■演出とパフォーマンスに魅入られ、気づけばみな“Ave Mujicaの世界”に

開演を前に場内にはアコーディオンが主線を担うBGMが流れ、ステージを覆う赤の絞り緞帳も紫のライトに照らされ、怪しげなムードを醸成。そのBGMに乗せた観客のクラップが、会場に徐々に一体感をもたらしていく。

そして場内が暗転して緞帳のみが引き続き照らされるなか、まずはアモーリス(米澤茜 / Dr.)の演奏によるドラムの音が響き、それに合わせて大きくクラップを響かせた観客の心の熱量が高まったところでコーラスが響き始めて「Choir ‘S’ Choir」からライブスタート。絞り緞帳(どんちょう)が左右に開くと、序盤は演奏・歌唱とともにメンバーが1人ずつ紗幕にシルエットとして浮かび上がり、この演出もさらに観客の熱狂を巻き起こす。そして1サビでその紗幕もオープンし、大観衆の前にAve Mujicaが登場。パワフルな演奏と歌声によって作り上げた、ダークな世界観で観客を虜にし、その心の温度を上げていく。それに続いたのは、人気曲の1つ「顔」。イントロ中のドロリス(佐々木李子 / Gt.&Vo.)による舌打ちがまたも歓声を沸き起こせば、モーティス(渡瀬結月 / Gt.)も表情に勝ち気さをにじませ、ぐっと力を込めた演奏でそれに続く。サビでは「hey!」のコールが大きく上がり、場内のボルテージはますますアップ。それを前に、2サビ明けにスポットライトを浴びながら披露したティモリス(岡田夢以 / Ba.)の堂々たるプレイも、スタイリッシュさが映えていた。

写真:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project

そして5人の演奏と歌声が場内をさらにダークでヘヴィな雰囲気へといざなったのが、「ふたつの月 〜Deep Into The Forest〜」。序盤座り込みながら演奏していたオブリビオニス(高尾奏音 / Key.)を、エスコートするように立たせるドロリスのパフォーマンスも歓声を呼ぶ。そんなパフォーマンスも含めステージを移動しながら響かせるドロリスの歌声は、力強くもどこか哀しみや苦しみをはらんだ、この曲のエッセンスを最大限引き出す。そこからシームレスに続いた「黒のバースデイ」では、より疾走感を発揮した楽曲に乗せて、さらにパワフルな歌声と演奏を展開。まるで場内を埋め尽くした観客へと襲い来るかのようにグイグイ攻めゆく。この曲ではオブリビオニスが大サビにてキーボードの反対側に立って演奏したり、2本のキーボードの間に立ち、両手で異なるキーボードを弾いたりとすさまじいプレイを次々披露。それをしとやかな佇まいとともに、さも当然かのようにやってのける姿、観る度に驚きと畏敬の念が自然と湧いてくる。そして猛々しいドラムのプレイからスタートした「Symbol IV : Earth」では、照明演出と観客のリストバンドライトが場内をグリーンに染め上げるなか、ここまでみせたパワー感に加え壮大さを表現。同時に、サビのハイトーンも含めて“Ave Mujicaならではの美しさ”を提示してみせる。しかも落ちサビでは力強さはそのままに、息ピッタリに演奏と止音のタイミングを合わせて演奏。その揃いぶりから、彼女たちの“バンド”としての練度の高さを改めて感じさせられた。

写真:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project

こうしてまず5曲を披露したところで、ここからは1人ライトに照らされたアモーリスによるソロプレイタイムがスタート。髪を振り乱しながら荒々しく繰り出されるその演奏が、さらに観客を高ぶらせる。しかもそれを3セット、いずれも異なるアプローチを見せ、観客を決して飽きさせないものにしていたのも特筆すべきポイント。その姿、まさに“圧巻”のひと言だった。そんなドラムソロの余韻残るなか、ドロリスのアカペラによる「Mas?uerade Rhapsody Re?uest」の歌い出しからライブは再開。歌詞どおり“紫の空”の下で美しく歌声を響かせピンと張り詰めた空気を作ると、改めて5人による重厚なサウンドをもって圧倒にかかる。この曲では2サビ後、下手側にモーティスが、上手側にティモリスが移動。それぞれお立ち台にのぼり、観客の間近で堂々たるプレイを繰り広げる。それも、ティモリスは時折リズムに合わせてかがむなどしながらの演奏だったのに対し、モーティスは基本直立での演奏。それぞれのキャラクター像も見える姿もまた、観客の心を沸かせていった。そんな曲からしばし間を挟み、前曲の余韻を一旦切ってから始まったのが、ロックバラード「Imprisoned XII」。ステージ中央で椅子に腰掛けてアコースティックギターを爪弾きながら歌い始めたドロリスのボーカルは、切なさや葛藤を内包したかのような、少々震えるもの。そこから感情の盛り上がりを歌声と演奏で描き出し、大観衆にじっくりと聴かせていく。特に歌声を絞った2サビでの歌声には哀しささえも乗っているかのようで、激しい楽曲とは違った形でぐっと心を掴んでくれた。

写真:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project

そして楽曲が閉じられ、オブリビオニスのキーボードの音色によって歓声が上がるなか始まったのが、ライブ初披露曲「碧い瞳の中に」。曲名どおり、ステージ上のライティングに加え観客のリストバンドライトも合わさる青く染め上げられた世界に向けて、再び力強い演奏と歌声を繰り出していく5人。この曲では重さよりも、メンバーによるコーラスも含めた美しさをより強く感じさせてくれる。サビでのドロリスによるハイトーンなボーカルもまた美しく、伸びやかなものだった。そんな空気をまたもハードに変貌させたのが、「八芒星ダンス」。再びステージは赤の光に包まれると、ここではドロリスがギターを外し、要所にトゲとクセをつけたボーカルを展開。そして1サビ直前にはなんと側転を決めて、観客をさらに沸かせていく。さらにドロリスは2コーラス目の序盤ではオブリビオニスのもとへ歩み寄ると、2人でアイコンタクトを交わしながら歌唱・演奏。その後も拳を振り上げてオーディエンスを先導したり、2サビ明けにはお立ち台に片脚をかけてソロプレイを繰り広げたりと、この日はとにかく彼女が会場中を驚かせ惹きつけていく。その後奏部分を延長するように、またもアモーリスが荒々しくドラムソロを繰り広げ、それに続いたのは「天球(そら)のMúsica」。1サビでは客席から合唱が起こり、この曲ならではの光景が場内にさらなる一体感をもたらしていく。そんなこの曲、メンバーの演奏は非常にアグレッシブで、1サビ明けにはモーティスとドロリス、それにティモリスも並んでのセッションを披露。そのまま下手方向に移動したティモリスとオブリビオニスが、微笑み合いながら演奏するなど、アニメの物語を経たからこそ、より胸を熱くする光景が観客を沸かせる。そしてDメロではドロリスがラフめに歌ったり座り込んだりと、内に渦巻くエモさを爆発。後奏ではまたも会場一体となってのシンガロングが響き渡ると、アモーリスのスティックが先導する形で観客の腕も左右に振られ、たまらない大団円感に満たされたなか、曲が、ライブの前半が締めくくられた。

写真:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project

■ライブを通じて高ぶった感情が、“表現”として心を捉える

そしてそこからしばしの暗転を挟み、オブリビオニスがライトに照らされゆっくりとキーボードを奏で始めると、そのたもとにしゃがみ込んだドロリスが「Angles」を歌い始めて後半がスタート。比較的静かに涼やかに歌い始めると、徐々にそのキーボードの演奏とともに感情が盛り上がっていくさまをボーカルワークを通じて表現。そこに他の3人の演奏が加わり、5人のヘヴィな演奏がライブ後半の幕開けを飾ると、再び場内のボルテージを上げたのはジャズロックテイストのナンバー「Symbol II : Air」。ここでもドロリスはギターを置き、不敵な笑みとともに観客へとクラップを要求。2サビ明けの間奏ではドラムの横に移動して拳を振り上げるなど、オーディエンスを煽りながら歌唱していく。2サビではモーティスとティモリスが微笑みながらまたも向き合ってセッションを繰り広げれば、大サビではそのティモリスがドロリスとも視線を交わして演奏するなど、観客の心も体も踊らせながらメンバー同士のコミュニケーションも多く見られた1曲に。それに続く「DIVINE」では、1コーラス目の歌い出し直前でギターを弾くモーティスの佇まいが、“可憐だけれどもかっこいい”と感じさせる。まさにモーティスのイメージドンピシャな姿が鮮烈に心に残った。そんな彼女も含め5人は、この超ハイスピードナンバーをまたもパワフルに披露。Dメロでさらに楽曲に没入し、ギターを抱きしめ歌うドロリスの姿も印象深いものだった。そんな光も伴った疾走感のある楽曲に続く「‘S/’ The Way」は、またもダークなメタルナンバー。挑発的な表情とともにラップをこなしながらお立ち台に足をかけてオーディエンスを煽るドロリスを筆頭に、さらに迫力をもってこの楽曲を叩きつけていき、クライマックスに向けて場内にさらなる熱を与えていく。その熱を一段と高めたのが、最終音を活用してシームレスに続けたキラーチューン「KiLLKiSS」だ。
 

写真:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project

自らが主軸となったTVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」のOPであり、今年アニソンシーンを席巻したナンバーでもあるこの曲が、さらにオーディエンスの心を熱く燃やしていく。ドロリスは序盤から、またもお立ち台に足をかけて前のめりに観客を高ぶらせにいけば、2サビ前ではこのマスカレードの世界に耽溺するかのような狂気をはらんだオブリビオニスの表情も心をぐっと捉える。こうして演奏と歌声、そしてパフォーマンス、すべての面での表現が場内の熱量を最大限まで上げていくと、全力で駆け抜け切った勢いそのままに初披露ナンバー「Sophie」へと突入。この曲でも5人は、力強くてどこか危うさも感じる世界を力強く表現。そして2-Bメロでは、身体を折りながらドロリスがシャウト。歌いながら膨れ上がっていた感情を一気に解放するその姿が、たまらなく心に突き刺さる。大サビ冒頭でモーティスが美しくも鋭いスピンを決めたりと他のメンバーも高ぶりをあらわにするなか、ドロリスはその感情を吐き出しつつも巧みに制御もし、“ボーカル表現”として共犯者の心に刻みつけた。そんな観る者を圧倒するような表現を経てのラストナンバー「Symbol I : △」でも、最後まで熱く、そしてダークな世界を表現し続けるAve Mujica。すさまじい攻撃力を持った演奏とそれを束ねる歌声が、真冬の国際フォーラムにとてつもない熱気を渦巻かせていた。2サビ後には一旦客電が点灯し、またも場内一体となってのシンガロングがスタート。そこから受け取った力とともに、ドロリスは最後までギターをかき鳴らしながら力強い歌声で場内を巻き込んでいく。ラストのかき回し中も彼女は、シャウトを通じて高ぶらせた感情を発露すれば、それとともに長い長いかき回しを経てこの日の演奏は終了。絞り緞帳が閉じかける。

写真:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project

と、それが途中で止まり、オブリビオニスひとりが改めて入場。ステージ中央でライトを浴びながら、上手側と下手側、そして真正面の三方向へと麗しく礼。改めて彼女ならではの高貴さを感じさせながらステージを降り、改めて緞帳が閉まってこの日のマスカレードは終幕を迎える。最後にステージ両脇のスクリーンにて“Ave Mujica LIVE TOUR 2026「Exitus」”の開催と、そのFINAL公演がSGC HALL ARIAKEにて2Daysで行われることが発表され、ライブとはまた違った種類の歓喜をもたらし、東京公演は終了したのだった。

写真:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project

“今のAve Mujicaならではのマスカレード”を大きな柱とし、それを現実のものとして描くための準備を重ねたうえで、この場だけの感情などを乗せて表現した――それが「Ulterius Procedere」東京公演というライブだった。全17曲・MCなしの公演というのは実にストイックなものだが、だからこその途切れない緊張感が共犯者の心を“Ave Mujicaの世界”へといざない、最後まで没入させてくれたのだろう。ますますバンドとしても成熟していくなかで、彼女たちならではの世界がどう提示されていくのか。その世界に浸れる次の機会が、心から楽しみでならない。

取材・文:須永兼次 写真:ハタサトシ
 

セットリスト

2025.12.14Ave Mujica 6th LIVE「Ulterius Procedere」@東京国際フォーラムホールA

■アーカイブ配信受付中
【配信
視聴価格:5,500円(税込)
受付URL:https://eplus.jp/avemujica_6th/st/
海外配信受付URL:https://ib.eplus.jp/avemujica_6th_st/

販売期間:2025年12月21日(日) 22:00まで
配信期間:2025年12月21日(日) 23:59まで

01. Choir ‘S’ Choir
02. 顔
03. ふたつの月 〜Deep Into The Forest〜
04. 黒のバースデイ
05. Symbol IV : Earth
06. Mas?uerade Rhapsody Re?uest
07. Imprisoned XII
08. 碧い瞳の中に
09. 八芒星ダンス
10. 天球(そら)のMúsica
11. Angles
12. Symbol II : Air
13. DIVINE
14. ‘S/’ The Way
15. KiLLKiSS
16. Sophie
17. Symbol I : △

 
■セトリプレイリスト公開中
音楽配信サービスにてAve Mujica 6th LIVE「Ulterius Procedere」東京公演のライブセットリストをプレイリストにて配信中。
https://bmu.lnk.to/avemujica_6th_tokyopr

Ave Mujica公式X:https://x.com/BDP_AveMujica
Ave Mujica公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@bang_dream_AveMujica
Ave Mujica Biography:https://bio.to/AveMujica

(C)BanG Dream! Project

ツアー情報

Ave Mujica LIVE TOUR 2026「Exitus」


2026年
04/17(金) 福岡・Zepp Fukuoka
04/26(日) 大阪・Zepp Namba
05/01(金)愛知・Zepp Nagoya
05/04(月・祝) 東京・Zepp Haneda (TOKYO)
06/19(金)東京・SGC HALL ARIAKE
06/20(土)東京・SGC HALL ARIAKE

 
最速先行>
◆受付期間:~2026年01月18日(日) 23:59
※Ave Mujica 3rd Single「‘S/’ The Way / Sophie」初回生産分に封入の申込券でご応募いただけます。
詳細:https://bang-dream.com/events/avemujica_livetour

イベント情報

Ave Mujica トークイベント「UNMASQUERADE」


・東京公演
2026/01/10(土)東京・Kanadevia Hall
1部 開場12:45/開演13:30(予定)
2部 開場16:45/開演17:30(予定)

・大阪公演
2026/02/21(土)大阪・松下IMPホール
1部 開場12:45/開演13:30(予定)
2部 開場16:45/開演17:30(予定)

一般発売>
◆受付URL:https://eplus.jp/avemujica_talkevent2026/
※先着順・無くなり次第終了

ライブ情報

MyGO!!!!!×Ave Mujica ツーマンライブ「“moment / memory”」


2026年
03/01(日)神奈川・Kアリーナ横浜
プレイガイド先行>
◆受付期間:~2026年01月15日(木) 23:59
◆受付URL:https://eplus.jp/mygo-avemujica2026/

 
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