『魔神英雄伝ワタル』&『魔神英雄伝ワタル2』兼崎順一&吉田俊之インタビューがコンプリート・サウンドトラック ブックレットから一部公開【前編】
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兼崎順一氏
2025年10月29日(水)に発売された「『魔神英雄伝ワタル』『魔神英雄伝ワタル2』コンプリート・サウンドトラック」。40Pを越えるブックレットでは、3人の作曲家、兼崎順一、門倉聡、神林早人、各氏へのロングインタビューが掲載されている。ブックレットに掲載されているインタビューのなかから、兼崎順一氏&吉田俊之氏のインタビューの一部が公開となった。(以下、ブックレットより抜粋)
兼崎順一氏&吉田俊之氏インタビュー
聞き手:生地俊祐 (BNML)/鈴木則孝(BNML)
2025年7月21日 荻窪 ホワイトベース
作曲の兼崎原一氏に加え、今回、スペシャルゲストとして、ワタルシリーズでレコーディングエンジニアを務められました吉田俊之氏に参加いただきました。
「お互いに35年以上も前のことなので記憶もあやふやなので是非とも二人で喋りながら」と申し出いただき実現しました。
以下、兼崎氏:兼 吉田氏:吉 生地:生 鈴木:鈴、にて表記。
■■第1部:回想篇■■
――36度越えの猛暑のなか、荻窪まで足を運んでくださったお二方。ちょっと久々の再会だそうです。
生:お会いになるのはいつ以来でしょうか?
兼:2023年5月21日に目黒で開催された「Donpei Big Band」以来ですね。
吉:僕も参加させて貰っているのですが、そうか、もう2年以上ぶりですね。昨年は開催出来なかったので。
■『スペクトラム』以前。お二人が出会うまで篇
生:お二方は1979年~81年に活動された伝説のブラスロックバンド『スペクトラム』で、兼崎さんはトランベット、吉田さんはトロンボーンとして参加されていたのですが、それ以前のお話を軽くお聞かせください。
兼:音大に通いながらクラシックの奏者を目指していたのですが、クラシック奏者になることに迷いもあったのもあります。そこで先輩に渡されて出会ったマイルス・デヴィスの『MILES IN BERLIN』のレコードに衝撃を受けて。
そしてその先輩からダンスホールなどのビッグバンドにアルバイトで呼ばれまして、気づけばバンド三昧で忙しくて忙しくて。そのままこの世界に、という感じですネ。
吉:僕も同じような感じです。芸大で夏休みとか休みになると先輩から「お前は上野の店へ行け」「お前は新宿の店へ行け」とか言われまして、アルバイト的に2週間だけそこのバンドへ行ってラッパ吹いてくる。
形状はジャズのビッグバンドスタイル。ダンスホールなどがあの頃の都内には沢山ありました。一回30分程度のステージを18時過ぎから23時台まで複数回演奏が毎日続きます。演奏ジャンルはジャズ、ロック、ラテン、ルンバ、タンゴ、ワルツ等々多岐に渡ります。もちろん初見の曲のうえに、とんでもなく分厚い譜面集の中から「はい、次はこの曲。ワンツー、ワンツースリー、はい(スタート)」といった感じで、次々と曲間の休みも無く連続演奏を30分。めくって吹くだけでも大変なのに、いきなり立ってのソロ演奏もあって…失敗も沢山しました。悔しいので休憩時間に自主練習、譜面を持ち帰って必至に練習!2週間後、契約最終日、失敗した曲のリベンジの機会を設けてくれ、勿論完璧に演奏すると賞賛!厳しかったですけど暖かく鍛えられました。良い時代だったかも。
ドンベイさん(兼崎さんの愛称)は、もうバンドで生活出来てましたよね?新田一郎さんと出会ったのはその学生時代ですか?
兼:いやいや、その後ね、学生時代以降もいろんなバンド行ったから。『ビート・オブ・パワー』というパンドの結成前、チャッピー(渡辺茂樹氏:キーボード。元ザ・ワイルド・ワンズ)たちと、そのころにディスコで吹いている面白いトランベット奏者がいるということで見に行ったのが新田一郎くん(スペクトラムを結成したリーダー)。トランペットをクルクル回してた。
生:え?『スペクトラム』以前の当時から既に回してたのですね。
兼:そうです。派手だし、そして歌も歌うし、これは必要な才能だなって皆思いました。そして流れでキャンディーズのパックバンドなどをするチャッピーが率いる『MMP』(ミュージック・メイツ・プレイヤーズ)へと。
生:吉田さんとはまだ出会われてないんですよね?初めてお会いした時のことなど覚えてらっしゃいますか?
吉:僕は先ほどの話の通り学生時代にビッグバンドの世界の現実も見てしまい、卒業後は、その世界は躊躇。クラシックの世界でもない道に進みたいなと思い、色々模索していたのです。副科で多少鍵盤系も弾いていたので、キーボーディストの知り合いの方からヘルプの要請があり、原田真二バンドのツアーサポートでキーボードと、時にはトロンボーンも演奏。
そうこうしているある日、トロンボーンがいないから助けて欲しいと声が掛かったのが、1977年7月17日、日比谷野外音楽堂で開催された、“キャンディーズのサマー・ジャック77”でした。もはや伝説の突然の「普通の女の子に戻りたい!!」という解散宣言。会場は大バニックで、紙テープの雨にまみれながらも分からないまま中途撤収になりました。
その時の演奏を客席で新田さんが聞いていたらしいのですよ。で数日後、自宅に「新田一郎です」って電話があり「ゆっくり話しをしないか?」と呼ばれたのです。
■『スペクトラム』誕生篇
吉:ところが集合時間が物凄く、夜の23時とか24時に楽器を携え代官山のアミューズの事務所へ行き、その時に一緒にドンペイさんにもお会いしましたよね。そこで「この楽譜をやるよ」って3人で演奏。用意されたラジカセで演奏を録音するのです。思いの外簡単な譜面なのです。が、合わない!!しかし、何故全然合わないか教えてくれないの。自分で考えろって。
その後、週に2、3回誘われて、毎回この様な深夜数時間の特訓が続きました。それから何ヶ月続きましたっけ?
兼:どれくらいでしたかね。まあイニシアチブ取って新田くんがやってたからね。俺は何も言わなかったんだけど。まあ、大体が新田くんとずっとつるんで仕事やってたら、その流れで今日、吉田くんとやるからちょっと来てって言って、つれ去られてたんですね。
吉田俊之氏
吉:それまではクラシックの世界できちんと勉強してきたはずなのだけど、彼らの演奏は全然違うのですよ。ので、何が違うのだろうと録(と)ったカセットを自宅で繰り返し聞きつつ悩む日々。
話が少し逸れますけど。トロンボーンっていう楽器の話をしますと、一般的に言うと例えば映画でも使われたワーグナーの「ワルキューレの騎行」みたいな有名な曲は、全部頭の音は拍アタマから少し遅れて発音するのです。それから豊かに響かせ、横に“わあっ”というような広がりを持たせるのが綺麗な奏法と教わりました。タンギングもゆっくり柔らかく。そして、中低音の楽器は特にそれが大切だと…。
でも、ドンペイさんたちは違う。拍アタマジャストからバシッと音が来るの。それがカッコいい! そのことは理解出来たが、では実際どうしたら合わせられるのだろうか。それから第2の勉強が始まったわけです。
ポップス奏法で一番大切なのはビートだと気付く。ビートの拍ジャストに合わせてグルーヴ(ノリ)を作っていかなければならない。ドンペイさんさんたちは綺麗に全てソリッドにジャストなのですよ。
そうか、タンニングをもっと鋭く早くすればいいのか。あとはトロンボーンってトランペットに比べて全長が長いから、その分、ちょっと早め早め解釈で演奏しないと頭が合わないよな。等々ラジカセに録った3人の音をヘビロテで聴きつつ、問題点改善へ自主訓練の日々は続きます。アタマが合うようになると次に大切なのは三人のアーティキュレーションをしっかり合わせること。そしてより大切な「音を切る」タイミングもバッチリ揃える…。徐々にイイ感じに変化していけたように感じます。
この様にロングスパンな訓練期間はありましたが、一つ一つクリア。
本当にフルパワーで吹かないと鋭いアタック感は出ないし、同時にマシンガンのような素早いタンギングも必要で、呼吸法も改善!
それまでのホーンスペクトラムとは、兼崎順一、新田一郎と中村聡(サックス)の3人ユニットで、色々なレコーディングなどをやられていたなか、中村さんが辞められた。では次のサックス…ではなく、新田さんとしてはトランペットとトロンボーンとの組み合わせをやってみたいと思ったようです。
兼:新田くんは、すごい高音を正確に吹けるトランペッターのメイナード・ファーガソンが好きでした。そしてロックにブラスを取り入れたバンドの『シカゴ』が好きだったから、その影響もあってスペクトラムのスタイルを目指したんでしょうね。シカゴはトロンボーンが活躍しますので。新田くん自身、トロンボーンも好きで、バルブ トロンボーンも持っていましたし。だから吉田くんに声をかけたのでしょう。
吉:そんななか新田さんが目指したライブに誘われました。
『ブラザーズ・ジョンソン』。78年、新宿の厚生年金会館でのLIVEに新田一郎と共に鑑賞。 ホーンセクションはトランペット1本とトロンボーン1本の二人だけ。聞いたら格好良すぎでもう鳥肌立ちまくった。たった二本でもこんなにグルーヴィーで熱いサウンドができるの⁈…みたいな感動がふつふつと。
これは、絶対演ってみたい!やるしかないよね。
兼:その時は私もご一緒しましたよ。“ブラジョン”メンバーの顔までは覚えていませんが、袖からベースが飛び出て来て、あの当時はテクニックとして最新だったチョッパーソロから始まった印象が強すぎて、個々人の顔よりトータルステージングで観ていた感がありますね!確かにかっこ良かった(笑)
新田くんは海外アーティストの
そのなかで特に僕が鳥肌モノだったのは東京厚生年金会館で聞いた『タワー・オブ・パワー』で、これは凄かった!
吉:新田さんに「上手いトロンボーンは引く手あまたでいっぱいいるけど、”お前にしか出来ない”トロンボーンを吹け」と後押しされ、それをドンベイさんにもサポートしていただいて。音大レベルの考え方で技術的アドバイスも頂いて特訓させられた気もするのですけど、忘れた?
兼:いや本音では、そうじゃないだろうと思ったこともあるだろうし、でも言っても仕方がないわけだからと。とにかくよく頑張ったよね。それから一緒ですもんね。ありがとうございました。
生:45年越しのお褒めの言葉が。
吉:しかし、ほんとうにめちゃくちゃキツかった…。
その後、『スペクトラム』へのデビューの演奏を控え、もう一つの苦難が…。振付です。前面にバンド全員が写る大きな鏡のあるダンススタジオを借りるのですよね。そこで短パンとTシャツで、ドンペイさんはいつもタオル巻いて全員で振り付けのリハーサル。
兼:『スペクトラム』以前、それも相当以前からも振り付けは結構あって、土居甫(どいはじめ、ピンク・レディーの『UFO』などを振り付け)さんなど有名な振り付け師さんに教えて貰いながら踊ってた。新田くんが振り付けしていたのは『スペクトラム』からだったかな。
生:ちゃんと観客に見られることも含めて、それで当然だっていうスタンスですね。
吉:うん。個人的には単なる音大出で、ダンスや振り付けなど勿論習ったこともないじゃないですか。しかし、振付を加えると演奏面でも如実にタイム(ビート)の取り方が変わってくるよね。そこでリズム感とかも含めて音楽のグルーヴに戻って来る。
また、自分としてもその変化を面白がってやっていたのですよ。「客席から見て面白い&かっこいいって思われるのが気持ち良いでしょう」って言われると、それはそうだよね、って思うわけで。若い!あの新宿厚生年金会館でのライブを客の一人として観た自分の気持ちそのものだね。それを今度は自分たちがステージ上で演じることになる訳だから。
『スペクトラム』と言う今までに無いバンドを作る段階から、そう言った方向性をキチンと指し示してくれていたから、それに向かってじゃあ俺もやってやるぞという意識は凄く強かったかもしれない。ただ、、とは言え…全てがキツい…。楽なことは何も無かったね。
商品一式写真
後篇へ続く!次回はいよいよ“ワタル”の話へ突入する。
公演・CD情報
⚫︎発売日:2025年10月29日(水)
⚫︎品番:SRML-1127〜32
⚫︎価格:¥9,800(税抜き)
DISC1-2
『魔神英雄伝ワタル』オリジナル・サウンドトラック(DISC1,DISC2:Tr.1-31)
『魔神英雄伝ワタル』サウンドトラック・ヴァリエーション(DISC2:Tr.32-68)
『魔神英雄伝ワタル2』オリジナル・サウンドトラック(DISC3,DISC4:Tr.1-7)
『魔神英雄伝ワタル2』サウンドトラック・ヴァリエーション(DISC4:Tr.8-46)
『魔神英雄伝ワタル2』エディットVer. ①(DISC4:Tr.47-53)
『魔神英雄伝ワタル』エディットVer. (DISC5:Tr.1-11)
『魔神英雄伝ワタル2』エディットVer. ②(DISC5:Tr.12-19)
魔神英雄伝ワタル&ワタル2~おもしろカッコいいコンサート~
演奏:仙台フィルハーモニー管弦楽団/指揮:神成大輝/歌唱:a・chi- a・chi
オーケストラ編曲:佐野秀典、鈴木雄大、穴沢弘慶、山本 純
魔神英雄伝ワタル&ワタル2~おもしろカッコいいコンサート~【前半】(DISC5:Tr.20-25)
DISC 6
魔神英雄伝ワタル&ワタル2~おもしろカッコいいコンサート~【後半】(DISC6:Tr.1-11)
Tr.12 Step by Step (TVサイズ)
Tr.13 君に止まらない〜MY GIRL, MY LOVE~ (TVサイズ)
Tr.14 Step (TVサイズ前期SEあり)
Tr.15 Step (TVサイズ後期SEあり)
Tr.16 a・chi-a・chiアドベンチャー (TVサイズ)
Tr.17 Step by Step (TVサイズSEあり)
Tr.18 君に止まらない〜MY GIRL, MY LOVE~ (TVサイズ)
Tr.19 Fight! (TVサイズSEあり)
Tr.20 虹の彼方に (TVサイズ)
※映像の音声トラックから収録。オープニングについてはSE(効果音)入り。
・三方背スリーブケース
・METAL ROBOT魂<SIDE MASHIN> 龍王丸
とディスプレイ連動したコラボCDパッケージ仕様
・封入40Pブックレット。作曲家、兼崎順一・門倉聡・神林早人、インタビュー、解説。
・別冊トラックリスト・歌詞集
⚫︎レーベルサイト
https://www.sunrise-music.co.jp/list/detail.php?id=1439
【声の出演】林原 めぐみ
【出演アーティスト】a・chi-a・chi、高橋 由美子
【MC】天津飯大郎
昼の部 開場 13:30/開演 14:30
夜の部 開場 17:30/開演 18:30
【場所】:LINE CUBE SHIBUYA(東京)
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【制作】バンダイナムコミュージックライブ
【お問合せ】インフォメーションデスク https://information-desk.info/
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