宮沢りえにインタビュー 栗山民也の演出と強力な出演陣で挑む、スリリングな『メアリー・ステュアート』

インタビュー
舞台
19:00
宮沢りえ

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同時代を生きた対照的な二人の女王を題材にした劇作家フリードリッヒ・シラーの名作『メアリー・ステュアート』を、英国演劇界の気鋭ロバート・アイクが大胆に翻案・演出。ウエストエンドでロングラン上演されるなど評判を呼んだ人気作が、栗山民也の演出で本邦初上演される。時代に翻弄され、愛を求め続けたスコットランド女王メアリー・ステュアートを演じるのは、栗山が演出した『オーランド』(2024年)で超然とした存在感を発揮した宮沢りえ。円熟の域に入りながらも挑戦を続ける宮沢に、本作品への期待感と意気込みを聞いた。

ーー演出家・栗山民也さんとの2度目のタッグで、激動の時代に生きたスコットランド女王とイングランド女王を巡る、対立と陰謀渦巻くスリリングな王室悲劇『メアリー・ステュアート』に挑まれる宮沢りえさん。ご出演の経緯から教えてください。

パルコさんからオファーをいただいたんです。「栗山さんが、次は『メアリー・ステュアート』だとおっしゃっている」と。栗山さんとは一昨年『オーランド』で初めてご一緒したんですが、お稽古が本当に充実した豊かな時間で、自分の人生の大きなポイントの一つになるような出会いだったんですね。作品の中で、性別も超えて400年生きるという本当に稀有な経験もできましたし(笑)。そんな、栗山さんが次は何を提案してくださるのかなと思っていたら、『メアリー・ステュアート』だったんです。

ーー作品名を聞いた時、どう思われましたか?

「うわぁ~!」と思いました(笑)。いろいろな形で上演・上映されてきた有名な作品で、私の中では『人形の家』とか、大竹しのぶさんが去年なさった『リア王』とか、そのぐらいの位置にあるものなので。私は以前、女優さんお二人だけでなさった『メアリー・ステュアート』(ダーチャ・マライーニ作/2015年)をPARCO劇場で観ているんですが、そんなふうに『メアリー・ステュアート』作品をご覧になってきた方たちも観に来られるんだなと思うと、やっぱり緊張感もありますし、演じるには相当なエネルギーが要るなとも思いました。二人の女王の権力や宗教を巡る争い、そして奥深くまで入り込んだ心理描写……ものすごくたくさんのものが詰まっている作品ですから。

宮沢りえ

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ーーそれでも出演を決めたのは、やはり演出家が栗山さんという安心感からでしょうか?

そうですね。栗山さんだからこそ安心して飛び込める……いえ、安心しているわけではないのですが、栗山さんは台本に書かれていない時代背景みたいなものまで、稽古中にしっかり積み重ねてくださるんですね。それで『オーランド』では、最初に感じた不安とか戸惑いみたいなものが、本番初日には全て無くなくなっているという経験をしました。それから、これは今も私の中に深く刻まれている言葉なんですが、『オーランド』の台本をいただいて、「これは一体どうやるんだろう!?」と思って伺いに行ったら、栗山さんが「どうなるかわからないものに挑戦する方が面白いだろ」とおっしゃったんです。その時に、これから自分が演じていく上で、この言葉をずっと大事にしようと思いました。今回もまた大きな挑戦になるなと思っています。

ーー今回上演される戯曲は、古典的作品の現代への大胆なアダプテーションで高い評価を得ているロバート・アイクが翻案したバージョンです。

そこも惹かれたポイントです。私は観に行けなかったのですが、(大竹)しのぶさんがなさった『ザ・ドクター』(ロバート・アイク作/2021年)もすごく評判でしたし。そのアイクさんが、世界中にいろいろな戯曲がある中で、どうして『メアリー・ステュアート』を選ばれたのか? そして、その台本を栗山さんはどうして今、演出したいと思われたのか? それが知りたくて。そういう好奇心といいますか、一役者としての思いがすごくありますし、それだけ国境も時代も超えて愛される作品なのかなと感じています。

ーー『オーランド』も素晴らしい舞台でした。宮沢さんをはじめとするキャスト、舞台美術、照明、衣裳、音楽……全てが完璧にマッチしていて、完成度の高さにシビレました。稽古はどんな感じだったのですか?

栗山さんが言ってくださったことを、日々、台本に書き込んでいたら、余白がなくなりました(笑)。それぐらい本当に細かく、私たちが演じていく道筋をしっかりと提示してくださって。栗山さんが、構成とかビジュアルのビジョンをはっきりとお持ちだったので、骨組みがまずバンとできて、そこを密に埋めていくという稽古の流れだったんです。毎回そうなのかはわからないですが、動きとセリフのタイミングもほとんど決めてくださったので、すごくいい意味で“近道”をしたような感覚があって、それがとても新鮮でした。

ーーかなり緻密に作り込んでいく稽古だったのですね。

その細かさが私は嬉しくて。栗山さんが立ち位置や動きを決めてくださるので、役者さん同士がお互いに遠慮したり気を遣ったりすることなく、フラットでいられる感じがいいなと思いましたし、空間を探り合うようなこともないので、稽古時間がより濃密になって完成度を高められる。だから初日に不安なく飛び立てるというか。面白いのは、呼吸の深さ一つであっても、そこに辿り着けるまで稽古をされるのに、急に「ここは好きに動いていいよ」とおっしゃったりするんです。それぞれの役者さんの個性を見ながら、「ここに自由をあげるよ」というふうに。そういうところは楽しいですね。

ーー今回、宮沢さんが演じるのは歴史上の人物です。どういったアプローチを考えていらっしゃいますか?

16世紀の物語ですし、今の自分が時代も国も超えて舞台の上でその世界を生きるために、台本には書かれていない時代背景も含めて、あらゆる情報にアプローチしたいですね。私の場合は、自由に動けるようになるには、やっぱりある程度、知識や情報の蓄積が必要なんです。そのほうが自分の想像力も膨らみますし。あとはもう、栗山さんの玉手箱のような引き出しからいただいた言葉を蓄積していって、最終的には本当にリアリティを持って、メアリーを生きたいです。
そういえば、今日見た資料の中に、2018年に図書館で見つかったある文章を分析したら、実はそれが、メアリー・ステュアートが陰謀も含むある計画を練っている時に、暗号として書いた手紙だったことがわかったという記事があって。読んでワクワクしましたね。500年経って初めて、そういうものが発掘されたなんて。もともと好奇心で調べたりするのは大好きですし、リアルな歴史を知ることは、私自身にとっても楽しいこと。メアリーのことも、得た知識を土台として踏み慣らした上で、自由に演じられたらいいなと思います。

ーーメアリーという人物に魅力を感じていらっしゃいますか?

はい。メアリーだけじゃなく、イングランド女王のエリザベスにもすごく魅力を感じています。メアリーを思いながら台本を読んでいると、同時にエリザベスの心の描写が気になってくるんですよ。すごく不思議な台本だなと思って。それだけ、メアリーを演じる上で、エリザベスを知ることは大事なことなんでしょうね。ロバート・アイクさんは、イギリスで上演した時、上演前に毎回コイントスをして、その日に二人の女優さんのどちらがエリザベスをやって、どちらがメアリーをやるか決められたそうです。

ーーなんとも粋な趣向です。

コインを投げて「今日、どっちやる?」なんて、ワクワクしますよね(笑)。今回は、もちろんやりませんが、どちらの役も演じられるくらいの深い理解をもって演じたいです。メアリーとエリザベスが出会うシーンは、台本を読んでいても鳥肌が立ちましたし、鏡を挟んでぶつかり合っているような感覚を覚えたので。それが舞台で立体的になることが、すごく楽しみです。

ーーとてもヒリヒリした舞台になりそうですね。

そうですね。ただ、メアリーにとって一番近い存在である乳母の役を、犬山(イヌコ)さんが演じてくださるので、とてもシリアスでヒリヒリするストーリーではありつつも、そこにいろんな風が吹きそうだなと感じています。本当に素晴らしい役者さんたちがご一緒してくださる心強さがありますし、二人芝居で描かれていたこととは、また別の立体感が生まれる気がしますね。

ーーますます楽しみです。

頑張ります。公演概要が発表されて以降、皆さんの『メアリー・ステュアート』に対する期待感をすごく感じていて。去年『リア王』をやっていた時も、しのぶさんに「メアリー・ステュアートやるの?」って言われました(笑)。そんな皆さんの好奇心とか期待感を、いい意味で裏切るようなものにしたいですね。せっかくだったら、観たことがないものの方が面白いじゃないですか。

ーー素敵です。作品に挑戦していく上で、ご自身の核となりそうなもの、大切にしたいことは何でしょう?

たぎりたいです。ただ舞台の上に立っているだけでも、メアリーという人間が皆さんの心にきちんと伝わるように、たぎっていたいです。静かに立っていても、きちんと物語を背負っていられるようにするためには、やっぱり本当に心がうごめいて、たぎっていることが大事だろうなと思うし、根本がたぎっていれば、静も動も生きられる感じがするので。あとは、これはどの作品に対しても思うことですけど、鮮度をもって公演を重ねていきたいです。

宮沢りえ

宮沢りえ

ーー最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。

『メアリー・ステュアート』は、これまでもいろいろなバージョンが上演されていますし、きっとこれからも上演されていくと思いますが、それでもなお、“ここでしか見られない二人の女王”が存在する舞台になると思います。たとえば、役者さんたちの呼吸音とか空気感……同じ空間にいなければ感じられないものはたくさんあります。もちろん、映像になって大勢の方に観ていただくのも嬉しいことですし、の値段のことを考えると、なんとも言えないところもありますけれども、皆さんも一緒に、この物語の住人になってもらえるようなことが起きたらいいなと思っています。初めて舞台をご覧になる方にも、なぜ上演され続けてきたのかを感じ取ってもらえるような作品にしたいです。心に残る『メアリー・ステュアート』になるように頑張ります。
 

取材・文=岡﨑 香                    撮影=福岡諒祠        

公演情報

パルコ・プロデュース 2026『メアリー・ステュアート』

原作=フリードリッヒ・シラー
翻案=ロバート・アイク
翻訳=小田島則子
演出=栗山民也
 
出演=宮沢りえ 若村麻由美 橋本淳 木村達成 犬山イヌコ 谷田歩 大場泰正
宮﨑秋人 釆澤靖起 阿南健治 久保酎吉/伊藤麗 上野恵佳 松本祐華/段田安則
 
公式HP=https://stage.parco.jp/program/marystuart2026
ハッシュタグ=#メアリー・ステュアート
企画・製作=株式会社パルコ

【東京公演】
[日程・会場] 2026年4月8日(水)~5月1日(金)PARCO劇場
[入場料金(全席指定・税込)] マチネ12,000円 ソワレ11,000円
ペア=マチネ23,000円 ソワレ21,000円
[一般発売日]2026年2月14日(土) 
[に関するお問合せ]
サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
[公演に関するお問合せ]
パルコステージ 03-3477-5858 https://stage.parco.jp/
[東京公演後援]TOKYO FM
[企画製作]株式会社パルコ
 
<地方公演>
【福岡公演】
[日程・会場] 2026年5月9日(土)~5月10日(日)J:COM 北九州芸術劇場 大ホール
[入場料金(全席指定・税込)]
S席マチネ12,000円/A席マチネ(当日引換券)9,000円  S席ソワレ11,000円/A席ソワレ(当日引換券)8,000円 
[一般発売日]2026年2月14日(土)  
[お問合せ]サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
[主催]TNCテレビ西日本/サンライズプロモーション/シアターマネジメント福岡 協力=北九州芸術劇場
 
【兵庫公演】
[日程・会場] 2026年5月14日(木)~5月17日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
[入場料金(全席指定・税込)]12,500円
※未就学児入場不可
[一般発売日]2026年4月12日(土)
[お問合せ]キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00 ※土日・祝除く)
[主催]関西テレビ放送/兵庫県、兵庫県立芸術文化センター/サンライズプロモーション大阪
 
[愛知公演]
[日程・会場] 2026年5月21日(木)~5月23日(土)穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホール
[入場料金(全席指定・税込)] S席12,000円 A席9,000円 U25(A席)4,500円 
高校生以下(A席)1,000円※未就学児入場不可
[一般発売日]2026年2月21日(土)
[お問合せ]プラットセンター 0532-39-3090(10:00〜19:00 休館日を除く)
[主催]公益財団法人豊橋文化振興財団
 
【北海道公演】
[日程・会場] 2026年5月30日(土)~5月31日(日)カナモトホール(札幌市民ホール)
[入場料金(全席指定・税込)] S席マチネ12,000円/A席マチネ9,000円  S席ソワレ11,000円/A席ソワレ8,000円
[一般発売日] 2026年2月14日(土)
[お問合せ]サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
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