簡秀吉「心はいつも子どものように自由でいたい」――初の舞台出演作『ピーターとアリス』に意欲
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簡秀吉 撮影=高田梓
世界中で愛され続ける児童文学作品『ピーター・パン』と『不思議の国のアリス』。その主人公のモデルとなった実在の人物同士が出会い、それぞれが辿った人生を赤裸々に語り始める──。2月9日(月)~23日(月・祝)に東京芸術劇場 プレイハウス、28日(土)~3月2日(月)に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される舞台『ピーターとアリス』は、物語世界と現実世界を巧みに行き来しながら観客のイマジネーションと“忘れることのない子ども心”に問いかけてくる、ちょっとビターな物語だ。そんな本作でアリスの夫とピーターの弟の2役に挑戦、初舞台を踏むこととなった簡秀吉。憧れていた舞台演劇の世界に飛び込む喜びと、意欲あふれるお芝居への思いを語ってくれた。
簡秀吉
──今作が初舞台。これまで舞台芸術について抱いていたイメージとは?
すごく興味はありましたけど、自分が舞台をやることについてはちょっと想像ができてなかったですね。でも「出たいな」「チャレンジしてみたいな」っていう気持ちは常にありました。友人が出ている作品の観劇に行くことはよくあって、観客としては楽しんで舞台に触れていました。今回の出演に際しては1年前くらい前にお話をいただいて、その時はまさに「舞台に出たい」と思う気持ちが強くなっていたタイミングだったので、とても嬉しかったです! 燃えました(笑)。しかも演出は熊林(弘高)さん。ご活躍は存じていましたので、さらに嬉しくなりました。
──はじめに台本を読んだ時の印象はいかがでしたか?
最初は正直少し難しい印象でした。が、台本を読み進めていくうちに、この『ピーターとアリス』の世界観にどんどん引き込まれていきました。今回僕はマイケル・デイヴィスとレジナルド・ハーグリーヴスという2役を演じ、彼らはそれぞれ本当に全然違った性格なんです。そこをどう演じていこうかなっていうのもいろいろと考えながら、じっくり読みました。
簡秀吉
──ピーターの弟マイケル・デイヴィスと、アリスの夫レジナルド・ハーグリーヴス。作品世界の中でも「現実」部分を担う重要なスパイスとなるキャラクターたちですね。
マイケル・デイヴィスに関しては、聡明で知的ですごく繊細な性格です。非常に秀才で頭を使うことに長けていると資料にも書いてあったので、まずはそういったイメージから考えています。演じるときは空間を大切にというか、彼の心の機微を丁寧に表現していきたいです。対してレジナルドは容姿端麗で、運動神経も抜群。また、ちょっとお調子者だったり、一方でとても口下手で感情表現に不器用なところもあるのが魅力かな。そこにもともと自分の中にあるユーモアをさらに膨らませて足すことで、愛されるレジーにしていけたらと思います。
──ちなみに本作の題材である『ピーター・パン』と『不思議の国のアリス』は読んだことがありましたか?
もちろんタイトルやキャラクターなどは知っていましたが、実は原作の本は読んだことがないんです。そして、今も読んでいません。むしろ、あえて知らないままにしておこうと思ったんです。他の作品でも僕はあまり事前に調べすぎないようにしているんですよね。別物といえば別物ですし、知りすぎないほうが今回の舞台『ピーターとアリス』という物語に集中できると思いました。
簡秀吉
──お話を伺っている今は本読みの段階。本格的な稽古を控えている心境を教えてください。
いよいよ立ち稽古に入るぞって、すごくワクワクしています。熊林さんのもと、台本読みは入念にやってきているんですけど、立ち稽古になったらまた感情もどんどん変わってくるのかなって。そこに関しては僕自身もまだ未知数なところではあるので、稽古現場を楽しんで、熊林さんとも丁寧にディスカッションしながら作り上げていければ。すでに長いセリフのシーンでは「言葉の意味にしっかりメリハリつけて」とか、ユーモアを持たせるところ、特にレジーに関しては「もっと遊んでもいいよ」というアドバイスなどをいただいています。また、マイケルにはバクストンという友人がいるんですが、その友人のことを「彼」だったり「バクストン」だったり、いろんな呼び方をしているんです。その微妙なニュアンス、言葉から感じる些細な情報みたいな部分も、お芝居でしっかりと立たせていきたいと考えています。
──台本を読んでいても繊細な伝え方を必要とするシーンが多い印象を受けました。
そうなんです。マイケルはか弱くて今にも壊れそうなイメージも感じています。そしてレジーは「紳士」。ワルツを踊るシーンではちゃんとレディーをエスコートできるエレガントな部分を見せないとね。僕自身はあまりリズム感がない人間で、本当は「ダンスはNG」ってくらいの状態なんですが(笑)、ちょうど『10DANCE』を観た後なので、「これはもうワルツ、ちゃんとしないと!」って、やる気がたぎってます。
簡秀吉
──ストーリー展開にしたがっておとぎばなしの世界のピーター・パンやアリスも現実世界の人々の前に登場し、リアリティーとファンタジーが自在に混ざり合っていく本作。物語全体を通じて、どんなところに作品の魅力を感じていますか?
人間誰しも自分の中に「影」というものがあると思うんですけど、そこに飲み込まれる人もいれば、飲み込まれずに立ち向かって勝っていく人間もいる。登場人物みんなもそういう複雑なものを持っています。自分に置き換えてみても、共感・共有できる部分がたくさんあるし、新鮮に感じ取れることもたくさん詰まっているように思うんです。きっと、『ピーターとアリス』の物語に引き込まれていくほどに、作品の感じ方や楽しみ方もどんどん変わっていくんじゃないかな。劇場にいらしたみなさんがそんな気持ちになって、「110分があっという間だった」っていう感想をいただけたら、一番嬉しいです。
──特に好きだな、と感じるシーンは?
あります! 序盤でジェームズ・バリー(『ピーター・パン』の作者)が大人になったピーターを少年に戻したがるんですよ。挑発や誘惑めいた言葉でなんとかピーターにフック船長の名前を言わせようとする。ピーターも思わずフックの名を口にしてからは冒険の真っ只中にいるかのように叫んで少年に戻る瞬間もあって、そこにはピーター・パンの姿も重なって見えて……スリリングですよね。そこからお話がグッと動いていく感じがあって、僕はとても好きなシーンです。
簡秀吉
──子どもから大人になっていく過程での楽しさ、辛さ、大人になって感じる特別だった頃の思い出との距離感。この物語の中に描き込まれているそういった感覚は誰しもが経験するところではあるけれど、改めて向き合う困難さもあります。
生きていれば自ずと人は大人になっていくじゃないですか。容姿もそうですし、生きていく知恵とか、知識量とかのいろいろは、成長とともに自然に受け入れていける。でもやっぱり心の根幹にある部分は少年のままでありたいなっていう気持ちも強い。俳優をやっていると、少年心を持っていないとできない役とかもありますし。だからそこはそのまま残しつつ、常識的な部分はしっかりと大人になっていけたらいいんじゃないかなって、僕は思います。心はいつも子どものように自由でいたいです。
簡秀吉
──劇中のピーターとアリスもそんな「子ども心」について、私たちに深い問いとイマジネーションを投げかけてくれるのでしょうね。
初舞台でこういう大きな作品に挑めることに本当に感謝しています。まずはみなさんに「『ピーターとアリス』を劇場に観に来てよかった」って言ってもらえるように、稽古から一生懸命しっかり作品と向き合っていくこと。台本を読んでいても毎回僕自身も感じ方が違うし、同じピーターとアリスのやりとりを聞いていても、いろんな受け取り方ができるんですよね。なので、お客様にも観るたびにいろんな感じ方を楽しんでもらえるんじゃないかな。ぜひこの世界観にどっぷり浸かって、何回でも観に来ていただけたら嬉しいです。
──ファンのみなさんにとっては、板の上に立つ簡さんの姿を見るのも初めての体験です。
僕、個人的に舞台を観るときはその物語自体に引き込まれる楽しみっていうのももちろんあるんですけど、生のお芝居からパワーをもらえるというか、舞台上で一生懸命今を頑張っている、今を生きている人たちの姿を見ていると「自分も頑張ろう」って思えるんです。だからファンの方にも、そういうモノを感じ取っていただけたら本当に嬉しい。「最近ちょっと元気なかったけど、秀吉も頑張ってるから自分も頑張ろう」って。
簡秀吉
──舞台を通じたパワーの交換。素敵ですね。本作は簡さんにとって2026年のスタートになると思います。ここを皮切りに、どんな1年にしていきたいですか?
2025年よりもさらに「変わらない」というか、いつも通り地に足つけて、コツコツ謙虚にやっていきたい。それが自分にとって一番のモットーです。お芝居の技術面など基本的なことも変わらずしっかりと学び、もっともっと説得力ある役者になりたいです。目標はアカデミー賞を取ることなので、そこへ向けて一作一作、一歩一歩、着実に頑張り続けていこうと思います。
取材・文=横澤由香 撮影=高田梓
衣装協力/ジャケット¥143,000、パンツ¥82,500(Taiga Igari)、その他スタイリスト私物
スタイリスト/津野真吾(impiger)
ヘアメイク/SUGA NAKATA(GLEAM)
公演情報
【東京】2026 年2月9日(月)~2月23日(月・祝)東京芸術劇場 プレイハウス
※未就学児童入場不可
料金:S 席:12,000 円 A 席(2 階サイド席):9,500 円(全席指定・税込)
【大阪】2026 年2月28日(土)~3月2日(月)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
※未就学児童入場不可
料金:全席指定12,000 円 (全席指定・税込)
作:ジョン・ローガン
翻訳:早船歌江子
演出:熊林弘高
配役・キャスト
不思議の国のアリス:古川琴音
ピーター・パン:青木 柚
ルイス・キャロル:飯田基祐
ジェームズ・バリー:岡田義徳
マイケル・デイヴィス/レジナルド・ハーグリーヴス:簡 秀吉
アーサー・デイヴィス:山森大輔
ピーター・ルウェリン・デイヴィス:佐藤寛太
アリス・リデル・ハーグリーヴス:麻実れい
上演時間:約110分予定(休憩なし)※演出の都合により、変更となる可能性あり。
公式HP:https://www.umegei.com/peteralice2026/
公式X:@peteralice2026
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
共催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場(東京公演)
あらすじ
1932 年、ロンドンのとある書店で開催された「ルイス・キャロル展」の開幕式で、アリス・リデル・ハーグリーヴス(当時 80 歳)と、ピーター・ルウェリン・デイヴィス(当時35歳)は出会う。永遠の子どもとして物語に刻まれた2人は、そのとき一体何を語り合ったのか。現実の世界に”ピーター・パン”と”不思議の国のアリス”が登場し、過去と幻想が複雑に交錯してゆく。大人になった2人が辿り着く、人生の終幕とは――。
撮影風景動画
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