ReoNaが綴った「お歌のココロ」と意志を持つ思い 『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”』レポート

レポート
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2026.2.3

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『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”』2025年12月22日(月) 昭和女子大学人見記念講堂

日本には「八百万の神」という言葉がある。

無定形のものや無機物にも「ココロ」があると信じる風習や信仰が、この国には根付いている。付喪神という名前で、古くから使われてきた物に霊が宿るという考え方があるし、近年では小惑星探査機「はやぶさ2」の地球への帰還に、まるでその探査機に命があるかのような思いを重ねた人も多かった。それくらい僕たちは、日々の端々に「ココロ」が存在していると信じて生きている。

ReoNaが自身3枚目となるアルバムに「HEART」と名付け、そのリリースを記念して全国6都市を巡る『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”』を開催した。ReoNaにとって、そしてファンにとっての「ココロ」の形を確かめる旅は無事終幕を迎えたが、ここではツアー終盤、東京・昭和女子大学人見記念講堂で行われた公演をレポートする。

客席はびっちりと満員。ファンは席に腰掛けつつも、期待と興奮が静かな渦となって巻き起こっている。黒い紗幕がステージを隠す中、バンドメンバーが静かに入場。暗転し、緞帳の向こうの空気を感じ取ろうとしていると、音楽が会場に溢れ出す。緞帳が引き上げられた先、センターに立つのはReoNaだ。

ReoNaのライブは、いつも印象的なステージ美術が施されている。今回はLEDライトで紡がれた光の道が放射状に伸びている。それはReoNaから放たれているのか、ReoNaに光が集まっているのか、どちらにも感じられる装飾の中心にReoNaがいる。物語の始まりは「命という病」、そして「オルタナティブ」。ノイジーなサウンドに耳を、光のカーテンのような照明に目を奪われるうちに、ReoNaを中心とした「HEART」の世界に心を攫われていく。

続く「GG」は、この一年の間にさまざまなステージで歌われてきた、今のReoNaを象徴する一曲。その歌は、経験を重ねる中で確実にタイトさを増している。

刻む激しいビートに負けないどころか、ReoNaの歌がバンドを引っ張っているかのような勢い。「R.I.P.」「forget-me-not」と聴き進めるうちに、レベルアップした歌唱を堪能しながら、「歌がうまいというのは、どういうことなんだろう?」という疑問が頭をもたげてきた。

シンプルに考えれば、音程、リズム、発声、声色──そういった要素の組み合わせが正確で安定していることが「歌がうまい」ということなのだろう。ただ、その技術の前に「その人の声でなければ成立しない物語」が必要だと、僕は思っている。

ReoNaの技術が向上しているのは言うまでもない。だが、今のReoNaのライブが持っているのは、人の心の柔らかいところを的確に揺さぶる、圧倒的な説得力だ。「ガジュマル ~Heaven in the Rain~」で歌われる離別の悲しみや喪失の痛みも、どこか自分自身の思い出を歌ってくれているような感覚になる。

「生命換装」の壮大さも同様だが、ReoNaの歌の世界は「拡大」と「縮小」を繰り返している。かつては、自分の身の回りの絶望を歌っていた彼女が、いまテーマに据えるのは命や輪廻。かと思えば「虹の彼方に」では、たった一人の友人との別れを、訥々と絞り出すように歌う。「オムライス」ではさらにミクロに、自分と、自分を取り巻く小さな世界の物語へと潜り込んでいく。森羅万象のあらゆる場所に、ReoNaが語るべき事柄が存在しているのだと気づかされる。

「このツアーは『HEART』。ここにいる全ての人の心臓は音を立てている」

MCで放たれたReoNaの言葉が、何度もリフレインする。ReoNaの、僕らの、そして歌われる全ての物語の「ココロ」はどこにあるのだろうか。

ReoNaの始まりのお歌「SWEET HURT –Naked–」は、ギターの調べに乗せて優しく、そして強く響いていく。幼さを感じたデビュー当時の面影をわずかに残しつつ、違う受け取り方もできる形へと曲も本人も進化している。そして、ReoNaが新たに背負うことになった、あの曲へ。

2025年12月2日(火)。KT Zepp Yokohamaで開催されたAqua TimezとReoNaによるツーマンライブ “Aqua Timez & ReoNa Special Live 2025『合流地点』”。そこでAqua Timezから託された楽曲「決意の朝に」。熱のこもったパフォーマンスは、確実に客席の胸を打った。この曲を歌い始めたときには想像もしていなかっただろう景色や状況が、今ReoNaの目の前には広がっている。それでも、歌に込められた思いを受け継ぐということもまた、「HEART」を繋いでいくという行為なのだ。

無数の思いを「お歌」として放ってきたReoNaは、そのステージの数だけ、その歌を愛している人の数だけ、誰かの「HEART」を受け取っている。ReoNaはその「HEART」を、どう受け止め、どう昇華させようとしているのだろうか。

そんなことを考えていると、「かたっぽの靴下」が会場に響き出す。どこか90年代後半のJ-POPの空気感を湛えたこの曲をライブで聴いて、そのメロディの良さを改めて実感する。

今回のアルバムには、多種多様な音楽が内包されているが、根底にはやはりポップスの血が流れている。「絶望系」というキーワード、その繊細な声とボーカリゼーション、ライダースを羽織り、足元にはマーチンのブーツというロックテイストなビジュアル。その一方で、彼女は同年代の誰よりもしっかりと「ポップスとは何か」を捉えようとして歌っている気がする。

「End of Days」の広がりのあるサウンドで、一気にライブの世界観を押し広げると、ここからが今回のツアーのクライマックスだという空気感が生まれる。今回拾い続けてきた「HEART」の中には、ReoNaと共に楽曲を作り上げてきたクリエイターの思いも含まれている。なかでも強くピックアップされていたのが、傘村トータだ。

楽曲制作のために、深夜に何時間も語り合うこともあるという傘村トータの「HEART」を伝えるために、ReoNaがステージに上げたのは「敗走」。

傘村トータが過去に発表したボカロ曲を、ReoNaが歌う。「何度だって逃げても構わない」というメッセージは、どこかReoNa自身の絶望と重なる部分がある。ReoNaが歌うことで、傘村の思いが客席に染み渡っていく。傘村トータの「HEART」は、今まさにReoNaが受け取り、紡ぎ直した──そう感じる時間だった。

そして、その紡がれた思いは「芥(あくた)」へと繋がっていく。傘村トータがReoNaの「HEART」をすくい取ったかのような楽曲。宇宙から見れば、人も、花も、星も芥。その視点で描かれたこの曲と、アルバム表題曲「HEART」は、今のReoNaを象徴する二つの柱だろう。そこで初めて、ReoNaが拾い集めてきた「HEART」の輪郭が、少し見えてきた気がした。

思いも、願いも、受け取れるだけ受け取り、拾えるだけ拾い、集められるだけ集めたReoNaが、アウトプットとして「お歌」を奏でるとき、その歌にもココロが宿るのだろう。歌は、極論を言えば「空気の振動」だ。音波が媒介を伝わり、僕らの鼓膜に届くだけの現象かもしれない。それでも僕らの脳は、言葉や音程を理解し、解釈し、そこに意思があるのだと信じている。それはきっと、歌うReoNaも同じだ。人にだって、物にだって、歌にだって「HEART」はある。皆が一つの事柄を信じるとき、それはきっと“本当のこと”になるのではないだろうか。

「ReoNaの音楽に救われた」というファンの声を多く耳にする。実際、どの楽曲のときも客席はそれぞれの楽しみ方で音楽に寄り添い、そして音楽に寄り添われていたように感じた。そこに嘘はない。その言葉にならない思いのやり取りの確認こそが、ReoNaがツアーで求め続けてきた「HEART」なのだと、僕は思う。

無数に広がる星屑たち。
たった一つの星で生まれた小さな命。
たった一人の「僕ら」が生まれた。

そんな言葉から紡がれる「Debris」。完全にライブの「決め曲」となったことを確信しながら、ただステージを見つめる。ギターをかき鳴らしながらボルテージを上げていく演奏に身を任せているうちに、いつしか叙情的な感情が胸に湧いてくる。繰り返されるシンガロングは一体感を生み出し、空間を掌握し、ReoNaが叫ぶ「生きていこう」という言葉が胸に刻み込まれていく。

「どんな想いを抱えていても、あなただけの音色、たった一人の紡いだ音色が重なって混ざって、お歌を象っていく──」

荒幡亮平と宮嶋淳子がReoNaに託した音色は、「コ・コ・ロ」という曲になって生まれた。ステージで披露されたそのメロディは、モータウンサウンドを思わせる軽快なソウル・ミュージック。ライブ終盤でこの曲が置かれている意味を考えながら、サビの歌詞を反芻して、その理由に気づく。

この曲も「Debris」も、根底にあるのは「生きていこう」というメッセージだ。ReoNaが生まれ、育ち、アーティストになり、彷徨い、駆け抜け、探し続けてきた「HEART」の一つのアンサーが、「生きる」ということなのではないだろうか。

言葉は歌になり、歌は想いを乗せて心を得て、意思を持つ。そこに、ReoNaのファンに対する思いがあった気がする。そしてそれが、極上のポップスとして鳴り響いていることが、何より痛快だ。

「改めて今日は、こうしてここに来ることを選んでくれて、お歌を受け取ることを選んでくれて、本当に、本当にありがとうございました」

最後の一曲は、もちろん表題曲「HEART」。軽やかな歌声がホールに反響し、柔らかな余韻を残して広がっていく。

1stアルバム『unknown』で「何者でもない」と自分を評したReoNaが、2ndアルバム『HUMAN』で愛を叫び、「人間」であると宣言し、3枚目のアルバムで「生きている」と伝える。ReoNaという一人の人間の成長を、音楽を通して追体験するような時間──。その広がった音楽ジャンルと歌唱の幅は、もはや「ライブ」というより、「コンサート」と呼ぶのがふさわしい内容だった。

発表された「ReoNa 動脈・静脈プロジェクト」の一環として、故郷・奄美大島での初凱旋フリーライブ「シマユイあまみ」、そして2026年7月から全国6都市を巡るオールスタンディングのライブハウスツアー『ReoNa Live Tour 2026 “De:TOUR -動脈-”』が控えている。去り際に指でハートを作ってみせた彼女は、まだまだたくさんの楽しみを隠しているようだ。

アルバム制作、そしてこのツアーで拾い上げた無数の「HEART」が、これからどう進化していくのか。その行方を楽しみにしながら、今は日々を生きていこう──冬の夜空を見上げながら、そう思った一日だった。

レポート・文=加東岳史

セットリスト

2025年12月22日(月)
『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”』 昭和女子大学人見記念講堂

1.命という病
2.オルタナティブ
3.GG
4.R.I.P
5.forget-me-not
6.ガジュマル ~Heaven in the Rain~
7.生命換装
8.虹の彼方に
9.オムライス
10.SWEET HURT -Naked-
11.決意の朝に
12.かたっぽの靴下
13.End of Days
14.敗走
15.芥
16.Debris
17.コ・コ・ロ
18.HEART

ライブ情報

『ReoNa Free Live2026 in 奄美大島“シマユイ あまみ”』

03/07日(土)開場 16:00 /開演 17:30
会場:鹿児島県・奄美大島笠利町 Camp&Music, Koya 野外特設ステージ
〒894-0508 鹿児島県奄美市笠利町大字用安1246-1
料金:入場無料
※一部有料エリアあり
優先エリア: 6,800円(税込)

≪優先エリア限定色スタジアムクッション付≫
優先エリアをReoNa オフィシャルFC「ふあんくらぶ」にて
先行抽選販売中。
受付期間:~2026年1月12日(月・祝)23:59
受付URL:https://reonafc.com/shimayuiamami/

 
ReoNa OFFICIAL SITE:https://www.reona-reona.com/
More Information:https://ReoNa.lnk.to/artistpage

ツアー情報

『ReoNa Live Tour 2026 De:TOUR-動脈-』

07/19(日)大阪府・Zepp Namba
07/20(月・祝)福岡県・DRUM LOGOS
07/25(土)東京都・Zepp Haneda
08/08(土)愛知県・Zepp Nagoya
08/10(月)宮城県・仙台 Rensa
08/21(金)北海道・PENNY LANE

 
料金:
1Fスタンディング:7,000円(税込)
2F指定席:8,500円(税込)
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