【インタビュー】“MACHIKADO”(街角マチオ・街角マチコ・街角サブマリン)~“ザ・ぷー”からの派生ユニットは脱コミックバンドの夢を見るか?

2026.2.5
インタビュー
音楽
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MACHIKADO (左から)街角サブマリン・街角マチオ・街角マチコ (撮影:塚田史香)

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街角マチオ・街角マチコ・街角サブマリンの3名から成る“MACHIKADO”が結成され、2025年12月28日に渋谷ユーロライブで開催されたツーマンライブ《レ・ロマネスク+ザ・ぷー 「メルシー2025」》において、お披露目の演奏が行なわれた。彼らは、国際的怪電波ユニットを自称する“ザ・ぷー”(英語表記は“The Puh”。2017年に“ザ・プーチンズ”から改名)から新たに派生した「社会実験ポップユニット」とのことだ。実質的には、街角マチオ(ボーカル、ギター)と街角マチコ(テルミン)の2名によってパフォーマンスが行なわれていた“ザ・ぷー”に、覆面ミュージシャンの街角サブマリン(キーボード)が加わって、3人組編成に進化した形態のように見える。そんな“MACHIKADO”の3人から詳しい話を聞いてみた。


 

■今、何故、新ユニット結成なのか

―― 最初に、マチオさんとマチコさんの出会い、そして“ザ・プーチンズ”、“ザ・ぷー”を経て今日までに至る、その活動の軌跡を、改めて教えていただけますか。

マチコ 私のCD(「テルミン大学」)のレコ発ライブをマチオさんが見に来てくれたのが最初ですね。その当時、彼は戸川昌子さんのシャンソンバー「青い部屋」でイベントの企画をやっていて、「今度僕が企画するイベントに出てくれませんか」と誘われました。話をしているうちに彼のことを、変な人、面白い人だなと思い、「じゃあ今度一緒にユニットを作って、何か演ってみましょう」となって、“ザ・プーチンズ”が結成されました。ちなみに、私たちの公演は、主にマチオが長々と喋って、そこから曲に繋がるというスタイルなのですが、それはまさにシャンソンのライブスタイルなのだということを後から知りました。彼の「青い部屋」での経験が活かされているんです。

マチオ “ザ・プーチンズ”の活動を頑張り始めたのは2010年くらいからかな。だんだん色んなところから呼ばれるようになり、2013年にはプロデューサー(SONE太郎)もメンバーに加わり、そこからさらに本気度を上げて頑張りました。それこそ「全日本テルミンフェス」をやったり、CDを出したり、PVもしっかり作って。2017年には“ザ・ぷー”に改名して“チームラボ”とのコラボライブも行ないました。そうこうするうちに、2020年からコロナ禍が始まり、思うようにライブが出来なくなってなんとなく現在に至る、という感じですかね。

マチコ ちなみに今日までにリリースしたCDは、“ザ・プーチンズ”としてアルバム「ぷりぷり」(2013年)、アルバム「ナニコレ」(2015年)、シングル「ぐるぐる」(2016年) 、“ザ・ぷー”としてアルバム「コレナニ」(2019年)の計4作。いずれもAmazonで買えます。評価も良いです。

マチオ 評価は良いけれど、あんまり売れない(笑)。

街角マチオ

―― それで、3人組の新ユニット“MACHIKADO”は、“ザ・ぷー”からの移行形態と考えてよいのでしょうか。

マチオ いや、 “MACHIKADO”はあくまで派生ユニットという位置付けです。

―― “ザ・ぷー”は、厳密には、街角マチオさん、街角マチコさんに加えて、川島さる太郎さん(さるのパペット)と、SONE太郎さん(プロデューサー)も構成メンバーとしてクレジットされていましたね。

マチコ 川島さる太郎はシュークリーム工場で働いているのですが、今は工場長になって、ものすごく忙しくなり、“ザ・ぷー”の活動が難しくなりました。

マチオ プロデューサーのSONE太郎は今、新潟在住なのですが「たまにできたらいいね」という話はしています。SONE太郎には感謝しかなくて、僕らの活動を広げてくれたのは彼なんです。もし、さる太郎とSONE太郎の都合があえば、一緒に集まって“ザ・ぷー”として時折やりたいですね。

―― 新たなユニットを派生させたのは、そういう事情もあったからなのですね。

マチオ あと、“ザ・ぷー”ではない別の名前で活動したくなったというのも大きいですね。というのも、“ザ・ぷー”だと、どうしても響きが面白い感じだから、もっと都会的で洗練された感じがいいなあと(笑)。あと、意外なことに、“ザ・フー”(THE WHO)のパロディバンドなんじゃないかとも思われていて。“ザ・フー”に対して、僕らは何の思い入れもないのですけれどね。ともあれ、コミックバンドとして捉えていただく分には、“ザ・ぷー”のままでもよかったのですが、もっと音楽的なアーティストとして受けとめて欲しい、音楽性を重視した方向でやりたい、となって、もう1個、別の名前が必要になった。それで、この際だからと、別の名前の派生ユニットを立ち上げることにしたのです。

―― ただ、そもそも“ザ・ぷー”も、“ザ・プーチンズ”から改名されたんですよね、2017年に。

マチオ お、そこに触れますか。まあ、あれは、とある事情のために、とある勢力からの圧力によって改名させられたのですが……。えっと、公式には何の圧力と言っていましたっけ。

マチコ ロシア方面からの……だったっけかな?

マチオ はいはい、“ロシア界隈”(笑)としておきましょう。“ロシア界隈”からの圧力で改名を余儀なくされました。

―― 思えば、テルミンの発明者であるレフ・テルミン博士は、アメリカにいた時にKGBによって拉致されてソ連に連れ戻され、レーニンの遺体を生き返らせる研究とかさせられたんですよね。そんな忌まわしいKGBの出身者であるプーチンの名前を、そもそも最初に使用したのは何故だったのでしょうね。

マチコ 当時(2010年頃)プーチンは面白かったのです。日本にもよく来て、柔道をしたりしていましたしね。ちょっと面白いおじさんくらいの扱いでいいんだと、私たちは軽く考えていました。

街角マチコ

マチオ 語呂もよかった。ちょっとコミカルで。“プーチン”という語感をすごく気に入っていました。

マチコ あと、自分たちがバンドをやるってなったら、「ザ・なんとかズ」にしたかったんです。ザ・ビートルズとか、ザ・クロマニヨンズとか。それで“ザ・プーチンズ”。

マチオ まあ、今となっては、2017年の時に改名しておいて本当に良かったと思っています。現在において“ザ・プーチンズ”のままだったら、各方面から色んな誤解を招きそうで、誰の得にもならない。


 

■新たなユニットが生み出すもの

―― 先ほど、音楽性を重視したアーティストとして見られたくなった、とおっしゃっていましたが、12/28の“MACHIKADO”お披露目ライブを見た限りでは、音楽とコントをMIXした従来のスタイルが健在で、まだ十分にコミックバンドという印象を持ちました。

マチオ あの時は、その辺りの棲み分けが完全に出来ておらず、ふざける度合がまだ高かったかもしれません。今はちょっと、その度合を減らせないかと、色々と探っている感じです。

―― わかりました。続いて、今度の新ユニット“MACHIKADO”にキーボード奏者のサブマリンさんが加入することになった経緯(いきさつ)を教えていただけますか。

マチオ “ザ・ぷー”は実質的には2人組の男女ユニットなんですが、男性1人だけが歌う男女2人組ユニットというのは、僕ら以外だと“レ・ロマネスク”さんくらいで、他はなかなかいないんですよ。まあ、仮にいたとしても、多分一番売れない組み合わせだと思います。その一方、女性が前面に出て歌い、男性が後ろでギターや鍵盤で支える2人組は山ほどいるんです。だから、もしマチコさんが歌うんだったら、僕らの見え方もまた違うものになったことでしょう。でも実際にはマチコさん、ピタッと立ち止まってテルミン演奏に集中しなきゃいけないでしょ。歌いながらテルミンの音程をとるのは物理的に無理なんですよね。なので僕がボーカルと踊りで引っ張るしかない。でも、それだと僕が、何だかすごく出しゃばりのように見られてしまうんです。いや出しゃばりなんですけど(笑)。つまりフロントマンの僕が“センター”に立って歌い踊り、その両翼を楽器演奏者が支えるっていうほうが見やすいのではないかと。キーボード奏者を加えた1個目の理由はそれです。

あと、もう1個、理由があって。お客さんに笑って欲しいっていう気持ちはもちろんあるにせよ、やはりコミックバンドという枠からは一度脱却したい。音楽をじっくり鑑賞して欲しいな、という思いから、楽曲のサウンドを強化できるメンバーを増やしたかったんです。で、サブマリンさんは、昔から僕の好きなミュージシャンでしたし、実を言えば、これまでも僕らのリリースした作品に、ピアノや各種キーボード、さらにアレンジなどで参加してもらっていたのです。そこで今回の新ユニットへの参加をお願いしたところ、「サポートメンバーということだったらいいよ」と言ってくれた。こちらもそれで全然ウェルカムなので、最終的に、メインはマチオとマチコ、サポートメンバーがサブマリン、という形で稼働することになりました。

サブマリンのキーボードが入ることによって、演奏の幅は格段に広がります。完全なアコースティックにも対応できる人なので、打ち込みの曲が書けなくても演奏は可能となる。一方、打ち込み曲を書けたら書けたで、すごく多才な人なので、色々盛り上げてくれるんです。だから、とてもやりやすい。良い曲を、良いアレンジで、良い音で届けるっていうことが叶うので、一緒にやってて本当に楽しいです。

―― サブマリンさんご自身は、この点をどのように感じていますか。

サブマリン ……。

マチオ 彼はあまり多くを語りたがらないタイプなので。

街角サブマリン

―― なるほど(笑)。ところで、“MACHIKADO”がこれから展開していく具体的な楽曲のことを教えてくれますか。

マチオ  “MACHIKADO”は、これまでのような面白いことも引き続きやっていきますが、音楽だけでも十分聴くに値するものをちゃんとリリースしていきたいなと思っています。先ず、このあいだのライブで発表した新曲は「日本語のよだれ」でしたね。

―― あ、はいはい。お店とかで「こちら〇〇のほうを、ご案内させていただいて、よろしかったでしょうか?」みたいな言葉遣いが罷り通っている現状を、“日本語の乱れ”ならぬ、“日本語のよだれ”と表現した、批評的な歌詞がすこぶる面白かった、あの歌ですね。

マチオ あと、「図形カッケー」。これは“ザ・ぷー”でも演ったことのある曲ですが、僕はこれを“MACHIKADO”の正式なレパートリーにしたいと思っています。

―― 正五角形はペンタゴン、正十角形はデカゴン、正十ニ角形はドデカゴン……っていう、やはり面白い歌ですね。あれは、お子さん達にバカ受けしていました。NHK「みんなのうた」に採用して欲しいと思えるナンバーでした。

マチオ あと、今年3月の「全日本テルミンフェス」のために準備している曲が「テルミン音頭」。これは結構ふざけてます(笑)。あと、「サブリミナル・テルミン」ね。マチコさんが珍しくボーカルをとるのですが、歌詞の中にテルミンという言葉が巧妙に埋め込まれていて、お客さんが潜在意識の中で勝手にテルミンを好きになっちゃうっていう……これまた“ふざけた系”の曲となります(笑)。

―― ははは。こうして伺っていると、コミックバンドからの脱却は、やはり、そう容易いことではなさそうだなと感じました(笑)。ときに、先日(12/28)の“MACHIKADO”お披露目のライブを拝見して、パフォーマンスの秀逸さ以上に印象深かったのが、グッズ販売における“概念としてのTシャツ”でした。Tシャツの簡単なイラストが描かれているだけのA4サイズの紙っぺら一枚を、大胆にも5,500円で売りつけていましたね。(※実はこれ、特典として「全日本テルミンフェス」の入場券=5,500円相当がもれなく付いてくるのだったが……)

マチオ グッズ販売というのは、今のこのCDが売れない時代に、アーティストの活動を支えるうえでとても重要な要素なのですが、その代表的な商品であるTシャツについて改めて思いを馳せてみると、アーティストの側からすれば、ライブの度に毎回違うTシャツを出すっていうのは結構労苦を要しますし、在庫を抱える負担も半端ではありません。で、お客さんのほうは、買ったTシャツを実際に着ているのかと言えば、案外着ていなかったりするんですよね。ということは、お客さんは会場で「Tシャツを買う」という体験のみを買っているのであり、体験を消費しているにすぎないわけです。だから、もはやTシャツという「実体」はいらないのだと。“概念としてのTシャツ”の売買さえ成立すれば、お客さんにはTシャツを買ったという体験の記憶が残り、我々も原価や在庫を発生させずに済む。これでアーティストもお客さんもWin-Winの関係になり、誰しもがハッピーになれるんじゃないか……ということで、先日のライブの時に初めて、実行に移してみました。

―― 実際、紙っぺら一枚の“概念としてのTシャツ”は売れましたか。

マチオ はい。おかげさまで、数十枚ものA4用紙が飛ぶように売れました。A4の紙を――もしかすると、その紙一枚すら必要なかったのかもしれませんが――「Tシャツください」とお客さんが言ってくださることに、僕はすごく感動して。「アレください」とか「“概念としてのTシャツ”ください」じゃなくて、「Tシャツください」と言って、あのA4の紙を求めてくださる。これは本当にすごい社会実験だなと、我ながら深い感銘を受けました。

―― さすが「社会実験ポップユニット」を掲げる集団だけのことはありますね。しかし、“概念としてのTシャツ”という社会実験がそれなりに成功したのであれば、その画期的な概念自体の特許を取得すれば、今後よりいっそうの収益を得られるのでは?

マチオ いや、このアイデアはオープン・ライセンスにしますので、ぜひ他のアーティストの皆さんにも使っていただきたいです。ただ、それが世界中に広まった時、これを最初にやったのは“MACHIKADO”だったということだけは、きちんと人々の記憶の片隅に留めていて欲しいのですが(笑)。

―― では最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

マチオ 「社会実験ポップユニット」を標榜する“MACHIKADO”としては、先ほどの“概念としてのTシャツ”もそうですが、それなりにいい歳の人間たちが今更ながらあたらしい音楽ユニットを結成して本気で頑張ったらどうなるんだろうっていう、ちょっと知的好奇心をくすぐるような「実験」を行なっているつもりでいます。音楽的にも知的好奇心をくすぐるような曲をどんどん書いていきます。それを色んな世代の方々が楽しんでくださるならば、きっとどこか知らない変な場所にみんなで行けるんじゃないでしょうか。

マチコ 私たちの次の出演イベントは、2026年2月21日(土)の「街で逢えたら」(吉祥寺シルバーエレファント)という”MACHIKADO”結成を記念したワンマンフリーライブ、そして3月28日(土)に私・街角マチコの主催する「全日本テルミンフェス」(代官山UNIT/晴れたら空に豆まいて)となりますので、ぜひ観に来てください。そして、これからも末永くご愛顧のほど、よろしくお願いします。

サブマリン ……。

取材・文=安藤光夫(SPICE)
写真撮影=塚田史香

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公演情報

街で逢えたら
~MACHIKADO結成記念!ワンマンフリーライブ~

■日時:2026年2月21日(土)12:30開演 12:00開場
■会場:Silver Elephant(吉祥寺)
■料金:Free(2ドリンク制 1,200円)
■公式X:https://x.com/machio_desu

全日本テルミンフェス ALL JAPAN THEREMIN FESTIVAL

■日時:2026年3月28日(土)16:00開演 15:30開場(予定)
■会場:代官山UNIT/晴れたら空に豆まいて
■料金:一般=5,500円、U-20=4,000円(※公演当日20歳以下/リストバンド交換時に顔写真付き身分証確認)、こども=3,000円(※小学生~中学生/保護者同伴)、未就学児=無料
※ご入場時に別途ドリンク代600円を頂きます
※当日券の販売は未定です。
■主催:街角マチコ(テルミン大学)

■出演:
(第1弾発表)
●片桐仁(全日本テルミンフェス名誉会長・映像出演)
●東京テルミンオーケストラ
●クリテツ(あらかじめ決められた恋人たちへ)
●大西ようこ(テルミンミュージアム館長)
●空中カメラ
●新種のImmigrationsB
●フェザード・シジュ(ほぼ日見習い勤務の宇宙鳥)
●グレゴワール・ブラン(映画「きみの色」テルミン奏者)(リモート出演)
●街角マチコ
●MACHIKADO
(第2弾発表)
●落合陽一(映像出演)
●ドリット・クライスラー
●小山田壮平
●吉田悠軌(怪談師・オカルト研究家)
●KokeShina
●レ・ロマネスク
●Toshihiro Yoshioka
●MURABANKU。
●re-in.Carnation
●フレネシ

 
■公式サイト:https://theremin-fes.com/
■クラウドファンディング:https://motion-gallery.net/projects/theremin-fes

 
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