yamaが語るコンセプトEP『C.U.T』の必然 「音楽での葛藤やフラストレーションは音楽で昇華するしかないんだなとは思ってます」
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yama 撮影=大橋祐希
yamaの新たなフェーズを示唆するコンセプトEP『C.U.T』。収録曲はいずれもパッと聴き、いわゆるアーバンなムードが漂う洒脱な楽曲だ。でも、それらの楽曲を作り上げ、歌っているのはこれまでのプロセスを経てきたyamaなのだ。メジャーデビューから5年の時間の中で見つけた音楽とルーツを見つめた上で浮上したテーマは「yamaが生み出すPops」。それを“Chill out”“Urban”“Tender”3つのキーワードから成り立つ楽曲に落とし込み、頭文字を冠したのがEP『C.U.T』だ。複数のコラボレーター、楽曲提供アーティストの中には秦基博の名前もあり、驚かされる。だが、それは今作において必然でもある。
すでに2026年、このEPリリース前にも話題の新曲が立て続けにリリースされ、複数のプロジェクトが同時進行していることはファンなら周知の事実だろう。超多忙な中、それでもyamaが新しいコンセプトに向かった理由はなんなのか。全曲の聴きどころやEP制作のプロセスをじっくり訊いてみた。
――去年もタイアップシングルのリリースも多く忙しかったと思うんですけど、そんな中、同時並行で制作していた『C.U.T』はどういう思いの中で浮上したんでしょうか。
本当にありがたいことにたくさんタイアップをいただいて、その都度、寄り添った音楽を作ってはいたんですけど、その中で広がってきた自分の音楽の幅がいろんなジャンルに向かって広がっていたので。改めて自分の好きなこととかワクワクする音楽に重点を置いて、一度枠組みに囚われずに自分がいいと思う、カッコいいと思う音楽を作ろうというのがこのEPの原点ですね。
――音楽性はもちろんですが、恋愛における感情をモチーフにした曲も多いので、そこに関しての自由度っていうのもあったのかなと。
そうですね。確かに自分で書いている対・人の関係性、恋愛チックな関係性を思い起こさせる歌詞ももちろんあるんですけど、あえて人にお願いして楽曲提供という形で、自分からアウトプットできないような関係性や言葉を書いてほしいです、とお願いした曲もこの中にあって。例えば「Remember」とか「Hanamushiro」は自分からは出ないようなストーリー、歌詞をあえてお願いしましたね。
――去年の「doku」が☆Taku Takahashiさんとのタッグで2000年代のJ-POPを想起させる部分もあったので、今作もタイミング的に違和感があんまりなかったです。
良かったです。シームレスにというか、お客さんをびっくりさせない形で徐々にこのEPに向けてサウンドも変化させてこれたのかなとは思ってますね。
自分の奥底にあるこだわり、美しい・美しくない、そういう境界線のようなものが本当はちゃんとあるから苦しいんだなというのをだんだん実感してきて。
――EPのコンセプトが、メジャーデビューしてからの5年で見つけた音楽と自分のルーツに向き合った音楽、ということですが。この5年という意味ではどういうところが大きいですか?
そもそも最初の1~2年は自分のことを客観視するのが難しくて、目の前にあることを一生懸命やるしかない状況で。すごく余裕がない中で音楽をやっていて。コンセプチュアルな音楽とか自分のアーティストとしてのカラーをどういうものにしたいのかもわからない状態で走り出していたんですけど、その中でだんだんちゃんと自分の奥底にあるこだわりとか、美しい・美しくないとか、そういう境界線のようなものが本当はちゃんとある、だから苦しいんだなというのをだんだん実感してきて。その境界線に相反するところで葛藤が生まれたりしていたんですけど、それを自覚したおかげで、じゃあ自分の感覚を大事にして音楽を作っていったほうが健全でもあるし、よりアーティストとしても芯が見えて皆さんによりフォローしてもらえるのかな?というのはこの5年ですごく感じて変化してきたところだと思います。
――多忙でも自分に向き合えていない印象の作品がなかったから意外です。
その時の全力で向き合ってはいたんですけど、どんどん心のキャパシティが増えていって、完璧でない自分をちゃんと見たくない自分を容認できるようになったときに、ふと気づく瞬間もあったりした感じですかね。
――確かにこの5年、おびただしい数の楽曲を歌ってきているわけで。
本当に、ちょっとありえないペースで新曲を出していて、常に曲を作り続けている感じなんですけど。大変です(苦笑)。
――そうなってくるとスキルでできる部分が出てきちゃう?
そう。それがすごく嫌だったというか。“本当にこれでいいのか?”って自分に対してちょっと責めてしまうポイントでもあったので、最初の頃と比べてハイペースとは言え、1曲1曲に妥協せずに突き詰めた結果、より頭を使うようになったので疲労の感覚はこの数年の方が倍以上だなと思ってます。
結局音楽での葛藤やフラストレーションは音楽で昇華するしかないんだなと思っています。
――でもその疲労を、今作のように新たな音楽にチャレンジすることによって癒そうとしているということですよね。
そうなんですよ。本当そうなんだなと思うんですけど、実は音楽制作で行き詰まっている時に、結局音楽で息抜きするしかないんだな、自分は、と思って。このEP『C.U.T』に関しても、自分がとにかくわがままに表現した形でEPを出したいと言ったので、結局いろいろな制作すべき曲がある傍らでEPを進めていて、まあ息抜きと言ったらちょっと語弊があるけど、精神的な息抜きではあるなと思います。この曲たちを出せることでちゃんと表現したいことを出せているという安心感はありますね。
――他の事では息抜きにならないんでしょうね。
ならない。結構探したりもしたんですけど、結局自分はアウトプットの方法が音楽しかないというか、自分の心を癒せたり、安心できたり、達成感を得られたりする一番は、音楽だなと思っているので。結局音楽での葛藤やフラストレーションは音楽で昇華するしかないんだなと思っています。
――では具体的に収録曲について伺うのですが、「TWILIGHT」は前作『;semicolon』収録の「TORIHADA」でもコラボしてらっしゃったMatt Cabさんたちなのでスッと聴けて。EPの中では早い時期にできた曲ですか?
そうですね。一番最初にちゃんと形が見えて、今回のEPを象徴する1曲としてとても分かりやすい曲になったなと思って、一番最初に先行配信しましたね。
――日常的な光景にハッとします。
結構この今回のEPは日常に沿った、より多くの人がいろんな場面で共感しやすいシーンというか、その温度感、距離感がいいかなと思っていたので、全体的にそういう距離感にしています。
長く幸せが続くわけではないことをわかった上で、大切な人がいると、その終わりがわかっているからこそ見えてくる今の幸せさはあるのかな。
――日常的な距離感を描くこと自体が大事でしたか?
そうですね。これまで結構、自分のアイデンティティとか、すごく内省的で葛藤を描いた内面的な歌詞が多かったんですけど、そこの暗闇はありながら自分で距離を取れるようになったというか。もう少し視野を広げて世界を見られるようにもなってきたので。だからこそ日常にある風景や、ちょっとした風景の中で感じる心の機微に注目して書きたいなと思って書いています。
――EP全般に感じたことですが、2000年代のJ-POPというルーツも感じつつ、ここ2~3年の洋楽の新しいビート感もあり、音楽の同時代性を感じたんですよ。
ありがとうございます。まさにそれを目指していたので。リファレンスがちょっと古いものだと、それになぞらえすぎても難しいというか、新鮮味はなくなってしまうので。あくまでもその大事なエキスを抽出しながら現代のポップスに落とし込んでいく塩梅がムズいなと思ったんですけど、「TWILIGHT」はすごくうまくいってるなと思います。
――「End roll」はGeGさんとのタッグで、これは往年の洋楽ポップスの感じもありますが、どんなアイディアから生まれた曲なのかなと。
R&Bらしいメロディで、かつビートはちょっと跳ねてるというか、スイングしているような曲を作りたいなと思って、自分でデモを作っていて。ワンコーラスぐらいのデモを作ってGeGさんに提案したら、本当にうまい具合にサウンドメイクしてくださって。実際R&Bらしいグルーヴィなノリではあるんですけど、GeGさんが得意な、ちょっとヒップホップ寄りのサウンドもあったりして、それが面白い感じに混ざってよかったなと思ってます。
――これは登場人物の設定はありましたか?
「End roll」は、幸せっていうものが結構簡単に通り過ぎていくというか、感動や幸せも薄れていく。まあ、喜怒哀楽すべてだと思いますけど、そう考えた時に長く長くこの幸せが続くわけではないっていうことをわかった上で、一緒に誰かといるとか、大切な人がいると、その終わりがわかっているからこそ見えてくる今の幸せさはあるのかなと思っていて。それを歌詞にしたいなと思って書いていたものですね。
このEPの向かっていきたい方向性、すごく洗練されたポップスという意味で、秦さんにお願いしたら快く受けてくださいました。
――「Hanamushiro」はとても新しいyamaさんが聴ける曲ですね。
この曲は秦基博さんが完全に歌詞もメロディも全て書いてくれて。冒頭で言ったように、自分からは出ないような表現やストーリーをぜひ書いていただきたいというふうにお願いして、本当に自由作っていただいて。このEPのコンセプトとサウンドのトーン感だけお伝えして書いていただきました。
――秦さんにオファーされた理由は?
このEPの向かっていきたい方向性、すごく洗練されたポップスという意味で、秦さんはすごく合いそう、このEPにぴったりな気がすると思って、おこがましいですけど全く関係性がない中でお願いしたら快く受けてくださって書いてくださいました。
――デモが届いてからどういうやりとりがありましたか?
デモが来た段階でめっちゃいい曲だなと思って。これ以上何かを自分が言う必要は全くないなと思うぐらい素敵だったので、淡々と進めてもらいましたね。
――個人的に《アスファルト 染めてく 汚れた薄紅が》という箇所が非常にいいなと。
いや本当にすごいのが、パッと景色が浮かぶ歌詞。歌詞、すごいなあと思いましたね。本当にすごいなあと思いました(笑)。
――秦さんには意外と実験的な曲もありますよね。
あります、確かに。ポップスとして素晴らしいメロディを毎回書かれているなとは思うんですけど、実際トラック面でしっかりとした地盤の中で、カッコいいことをやってる上でポップスに昇華している、そのバランス感がすごくいいなと思っていて。歌詞も情景的かつ割とエッジのある言葉遣いというか、ドキッとするような言葉の組み合わせを使っていたり、そういうバランスがすごく素敵だなと思っていて。リファレンスで秦さんの「dot」っていう曲があるんですけど、それがすごく素敵だったので。バンドとのコンビネーションをライブで表現するにあたっても絶妙なキメが一致しているとか、よくよく聴いてみると音楽的にもカッコいいことをしている。でも外装はちゃんとポップス、そういう曲が歌いたいなと思ったことがお願いした大きな理由ですね。
――桜をメタ的に捉えつつ季節感もあったりして、表現が何層にも重なっているのも素晴らしくて。
自分が多くの人に聴いてもらうきっかけになった「春を告げる」という曲も春がテーマなんですけど、この「Hanamushiro」の《もうすぐ春が終わる》とか《過ぎゆく春の先へ》とか、自分にとって重要な曲である「春を告げる」のその先へ、というような自分の音楽人生をちょっと重ねながら歌える曲ではあるんですよね。切なさもあるんだけど、次の自分へっていう、移り変わって生まれ変わっていく自分を思い描きながら歌える曲なので。個人的にすごくしみる曲です。
このEPを作ることが、蛹から孵っていく羽化という行為そのものだと思って。自己をぶさらずに表現したいことをする行為自体に意味がある。
――「Remember」はいかがでしょうか?
「Remember」は、におさんという方が書いてくださっていて。におさんはこれまで何曲かお願いしていて、情景的かつポップスとしても大好きな曲を書いてくれる方で、信頼がすごい厚いんです。だからこのEPでも、におさんにぜひお願いしたいなと思って、完全に作詞作曲でお願いしています。
――ネオソウルやジャズのコード感があるので、聴いていて非常に楽しいですね。
うん、分かります。気持ちがいいというか、実際にメンバーと一緒に演奏していても自分が歌っていても楽しいし。コンビネーションが試される曲でもあるんですけど、すごくライブ映えしそうだなと思っていて。
――ちなみにライブは普段のバンドメンバーでやるんですか?
この曲に関しては、普段ライブでサポートで演奏してくれているバンドメンバーがRECで参加してくれていて。そのままの音でライブでも披露できると思います。
――歌詞の可愛らしさにも注目ですね。
(笑)。歌詞ね。毎回ちょっと可愛らしい歌詞をにおさんは書いてくださって。ちょっと色気もあるような、いじらしいとろこもある歌詞を書くのが上手な方で。自分だったら思いつかないような表現なので、毎回面白いなと思いながら楽しく表現させてもらっています。
――「UPSIDE DOWN」はまさに今のビートって感じがいいですね。
そうですね。割と音数も少ない中でストイックにメロとトラックで表現する曲になっていますね。「TWILIGHT」と同じで、Matt Cabさんがプロデューサーでいて、メロディや歌詞は共作しながら。歌詞に関してはTamamiさんという方がちょっと入って一緒に作ってくださって、コライトで作ってます。
――最後の「蛹」ですが、EPのテーマのひとつに“Tender=バラード”があると思うんですけど、この曲もどバラードはなくて。
そうですね。
――最後の方にできたとおっしゃっていましたが、どういう立ち位置の曲なんでしょうか。
「蛹」は構想としては結構はじめの方からありはしたんですけど、このEPを作ること自体がひとつの自分の成長が、蛹から孵っていく羽化という行為そのものだなと思っていて。自己をぶさらずに表現したいことをする行為自体に意味があると思っていたので、「蛹」というタイトルの曲をずっと書こう書こうと思っていたんですね。その構想がある中で、GooDeeさんという方と一緒に作っていったんですけど、一番メッセージ性が強い曲でもあったので、すごく時間をかけてしまって。“これでいいのか? それでいいのか?”という迷いも生じるし、妥協したくない思いも強くて、ギリギリになってしまいました。
――このEPの他の楽曲にはない、大人になることへの不安や変化について書いてらっしゃると思うので、EPの中での核になる曲なのかなと感じました。
そうですね。これは割と自分の心象風景というか、「蛹」自体が自分自身であるとして、それって作品でもあるなと思っていて。だからこの中で描いているまっさらな羽を持った蛾は、自分の純粋な気持ちで作られた作品だったとしても、それをずっと手の内に隠して出せない自分もいたなと思っていて。蛹を羽化させるってすごい大変なことだけど、時間をかけてじっくり羽化させた状態の作品、イコール蛾がどうか羽ばたきますように、みたいな、ちょっと祈りのようなイメージを込めながら作った曲ですね。
――本作を携えたツアー『羽化』はこれまでのライブ活動で一貫してきた「the meaning of life」ということですよね。それはすごく大きなことなのでは?
そうですね。今回の『C.U.T』を軸に展開していくツアーなので、余計な演出があるというよりかは、本当に音楽で気持ちいい、楽しいという高揚感で帰ってほしいなと思っているので、ちょっと編成を変えてみようかなとは考えていて。コーラスを足したり、キーボードをもうひとり足してみたり。そういう形でより身をキュッと詰めた状態で音楽を届けられたらいいなと思っています。
――音楽でしか癒せないというyamaさんが、こうしてまた別の軸のあるものを作ったことによって、気持ちとしてはラクになりましたか?
結構ラクになりましたし、別軸でEPを立てたんですけれど、今後どんどん統合できたらいいなと思ってますね。染み込ませていくというか。そうすることでどんどん気持ちもラクになっていくし、表現したいこともちゃんと表現できるようになるし、割と前向きにというか、音楽がこれからもっともっと楽しみだなという気持ちです。
取材・文=石角友香 撮影=大橋祐希
リリース情報
1. TWILIGHT
2. End roll
3. Hanamushiro
4. Remember
5. UPSIDE DOWN
6. 蛹
ライブ情報
EX ENTERTAINMENT presents 【EXtra SHOT ver.1 】
3月30日(月)EXシアター六本木
出演:Chilli Beans. / yama
yama C.U.Tリリースツアー “羽化”
5月6日(水祝)@ Zepp Sapporo
5月10日(日)@仙台GIGS
5月16日(土)@ Zepp Fukuoka
5月23日(土)@ Zepp Namba
5月24日(日)@ Zepp Nagoya
5月31日(日)@ Zepp Haneda
TAKASAKI CITY ROCK FES.2026
6月27日(土)Gメッセ群馬&スタジオシアター
OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL -THANKS 10TH GIGA-
8月2日(日)大阪舞洲スポーツアイランド ジャイガ特設会場
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