空白ごっこ × クレナズム × Hakubi この3組である必然とオリジナリティとは?『SPLIT ASIA TOUR 2026』フロントウーマン鼎談
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写真左から:萌映(クレナズム)、片桐(Hakubi)、セツコ(空白ごっこ)
それぞれが強力な個性と音楽性を持つバンド/アーティストが心を尽くした対バンだからこそ見えてくる可能性。空白ごっこ×Hakubi×クレナズムは、昨年2025年に各々のホームグラウンドである東京、京都、福岡を巡るスプリットツアーでそれを実証してくれた。そして2度目となる今年は東京、台北、香港を巡るアジアツアーを開催。そこでSPICEでは今回、フロントを張るセツコ(空白ごっこ)、片桐(Hakubi)、萌映(クレナズム)の3人による鼎談を実施。出会いの経緯や互いの音楽に寄せる思い、この3バンドである意味を膝を突き合わせて(!?)語り合ってもらった。意外に知られていない三者の関係性から見えてくるこのスプリットツアーの本質を探る。
――まず皆さんが出会った経緯から伺えますか?
片桐:Hakubiとクレナズムが初めて対バンしたの、2022年の『バリよか』(クレナズム恒例のツアー名称)の福岡ですかね?
――最初はクレナズムがHakubiに『バリよか』に出て欲しい、と?
萌映:そうですね。もともと存在はサブスクとかSNSで知っていたので、一緒にやりたいなと思ってオファーしたのがきっかけだった気がします。
――メンバー間でHakubiについてどういう話をしていましたか?
萌映:私たちがまだ大学でサークル活動をしていた時、まだクレナズムを組む前にコピーバンドをしていて、確かHakubiをコピーしていた後輩がいたんですよ。それで知ったのがきっかけで、聴いていくうちにだんだん大好きになっていって、その後バンドを結成して。ベースのまことが特にHakubiの存在について「すごい好きなんだよね」って言っていたんですが、活動を続けていくうちにご縁があって対バンをさせていただいくという流れでしたね。
――どういう部分に惹かれましたか?
萌映:音源もすごく好きだったんですけど、ライブを観てより好きになったというか。Hakubiのライブはすごくエネルギッシュだけど、その中でも繊細さもあるししっかり片桐ちゃんが言葉を選んで予定調和じゃなく場の空気や人を見て言葉を選んでる、そのライブ感が魅力的だなとずっと思っています。
――片桐さんはその時の対バンの記憶は?
片桐:それ以前も私たちが福岡にワンマンライブで行った時に全員で来てくれて、お土産を持って挨拶に来てくださってたのも嬉しかったです。私たちは当時、ちょっと激しいバンドと対バンすることが多かったんですよ。でもクレナズムはまた違うライブの戦い方をしているなと感じたんですね。しかも私がやりたかったことをすごくやっていて。シューゲイザーとJ-POPを混ぜ合わせたというか、いいとこを取ってるしどちらにも入り口がある間口の広さがあるのが魅力だなと思っていて。あとは、ステージに立っている人の人柄が垣間見えるMCというか、優しさや人間性の良さも感じられるので、それはライブでさらにいいなと思ったし。いろいろ「ここ盗ませてもらいましょう」(笑)と思いながらライブを観ていましたし、今もそうです。
――空白ごっことHakubiとの出会いは?
セツコ:自分が活動を始めてから初めてライブをするとなった時にツアーを組んだんです、何かの単公演とかじゃなくて。その時の下北沢シェルターの公演にブッキングしてもらって、お声がけしてライブに出てもらったのがたぶん初めましてですね。
――セツコさんにとっての初ライブだったんですね。
セツコ:うちはネットシーンで活動する感じではあるんですが、対バンの相手は、ハリーさん(針原翼)とkoyoriさん2人のコンポーザーのボカロP界隈もちょっと違うな、空白とはちょっと違うなと思っていたし、かといってバンドの方々と接点がすごくあるわけでもない状態だったんです。そんな中、サブスクで音源を聴いてライブの映像を見て、どんな人が良さそうか探していて。そのツアーの中でもシェルターは一番大事にしてるところの一つだったので、「そこにHakubiを呼んだ方がいいね」となって。
――なるほど。
セツコ:自分たちの出番が後だったからHakubiを席上で観ていたんですけど、その時は自分がまだライブそのものにあんまり行ったことがなくて。ライブがどういうものなのかもよくわかってないまま自分が出る側になるような経験値の中で、Hakubiのコールに対してレスポンスというか、お客さんが泣きながら手を上げてるところがすごい衝撃でした。歌のメッセージ性を敷いて、MCに持っていって、曲中にも声を掛ける、その導線の引き方が仕上がっているアーティストだなあっていうので印象的だったのを覚えています。なんかやりづらかった気がします(苦笑)。
片桐・萌映:ハハハ。
「アーティストとしての飛躍の仕方がエグくて。2人とも“刺激くれマン”たちです(笑)」(片桐)
――片桐さんはそのライブを覚えていますか?
片桐:もちろんです。私もともとハリーさんには楽曲でもお世話になってるし、koyoriさんも学生時代から聴いてるし、3人ともたぶんボカロ厨なんです。
セツコ・萌映:(笑)。
片桐:ボカロを通ってきてた世代なので、ハリーさんもkoyoriさんも神のように崇めていた(笑)存在ではあったので、その人たちが「え? プロジェクトやる?」「女性ボーカル入れる?」というので驚いて、本心で言うと自分もやりたかった、みたいな(笑)。でも今バンドやってるし、空白と対バンできるのめっちゃ嬉しいなあと思って、「これは絶対出ます!」と。
――当日は神がフロアにいたんですね。
片桐:自分を作ってくれた音楽の神様たちに感謝を伝えつつ、でも自分が今やってるバンドで戦うにはどうしようか? 本気でやるしかないな、という気持ちで立っていたのを覚えてますね。あとはやはり、せっちゃんの初ツアーだからすごい緊張している姿を見て、「私もこんなときあったな。初心に返らなきゃな」って思いました。というのも、すごく真摯に音楽に向き合ってたんですよね。真面目に期待に応えようとしている感じが素敵だなと思いながら、同時にせっちゃんだから空白ごっこを組んだんだろうな、私は私で頑張ろうって思いました。その後もライブを観させてもらいに行ってたんですけど、どんどん成長してて、「うわ、こんななる?」ってぐらいステージングも声の使い方もうまいし、声のマイクへの乗せ方もめちゃくちゃうまいし、アーティストとしての飛躍の仕方がエグくて。これは負けてられないなって思いながら、ライブがある時には観させてもらいに行っています。2人とも“刺激くれマン”たちです(笑)。
――クレナズムと空白ごっこの出会いはどうですか?
セツコ:最初けんじろう君が「ライブ東京でやるんでご招待します」という連絡をいきなりくれて。
萌映:私よりもギターのけんじろう君の方がせっちゃんと関わりがあったんですよ。
セツコ:それで東京公演を観させてもらって、ライブ後にご挨拶する機会があって。
萌映:私その時におらんかったよね? 毎回物販で売り子してたから(笑)。ずっとすれ違いでちゃんと話すようになったのはここ数年ぐらい?
セツコ:それこそ自分のツアーの福岡の対バンで初めてちゃんと喋ったというか、ライブもお互い対等の立場でというのが萌映ちゃんとの出会いですね。
「全身で表現してステージの袖から袖まで移動するせっちゃんを見て、自分の固定観念を壊してくれたし、めっちゃ影響を受けました」(萌映)
――お互いのライブの印象はどうでしたか?
セツコ:シューゲイザーのバンドだというのはサブスクで知っていて。さっき言ったみたいな、ちょっとエレクトロが入ったJ-POPとがっつりシューゲイズの曲の二面でやってることは知っていたんです。私シューゲイズ方面の曲が好きで、自分で弾き語りで練習する時にやらせてもらってたんですけど、クレナズムは音源まんまがちゃんとライブに反映されていて。(萌映の方を見て)あと、ギターを弓で弾くのとかやるじゃん? そういう視覚的なパフォーマンスやライティング、スモークが焚かれていてライトが赤一色になったり、目で観る演出と音の演出が噛み合うバンドだなと。それを観て、対バンをしても相手に寄せて来ない人たちかもしれないから、逆に一緒にやったほうが面白いだろうなと思ったんです。
萌映:それが空白のツアーファイナル?
セツコ:そう。ファイナルだった。
萌映:全公演もちろん全力を注いでやると思うんですけど、ファイナルって特に思い入れが残る公演だと思っているので、それを福岡でやってくれるというのと、ツアーファイナルで呼んでくれたっていう地方民ならではの喜びもあるし、バンドとしての嬉しさもあったので、私たちにとっても特別な日になったなと思ってます。
――萌映さんは、空白ごっこの音楽やセツコさんのボーカリストとしての側面をどう感じていますか?
萌映:もちろんサブスクで音源もずっと聴かせていただいていたんですけど、ライブパフォーマンスでのせっちゃんの存在感が飛び抜けて目に映る印象があって。あと、曲を作られてるのが一人じゃないじゃないですか。その分、曲の振り幅があるんですよ、空白ごっこって。ライブでも歌い分けをしっかりしてて、命を注ぎ込んだパフォーマンスの仕方がすごく魅力的だなと思いましたね。私はギター&ボーカルでやっているので、マイク一本でのパフォーマンスはどうしても慣れてない部分もある。そういう意味では全身で表現していてステージの袖から袖まで移動してるせっちゃんを見て、自分はギター&ボーカルだけどちょっとそれに囚われ過ぎてた部分もあったなというか、固定観念をいい意味で壊してくれたし、めっちゃ影響を受けました。
――片桐さんもギター&ボーカルですけど、どうですか?
片桐:確かに。せっちゃんは時々“降ろしてる”感じがあるんですよ、何かを(笑)。多分楽曲によって降ろしてるのかもしれないし、それは何かはわからないけど。何の曲か忘れちゃったんですけど、ステージングにすごく色気があって惹きつけられて。確かに私たちはギターを持って弾かなきゃいけないしマイクはここにあるんですけど、それ以外にもきっとできることがあるんだろうなって感じさせてくれた、それは私も萌映ちゃんと同じですね。
――さっきボカロ厨という聞き捨てならないワードありましたが、皆さんそれぞれスターはいるんですか?
片桐:みんな広く好きですよね。
――いろんなコンポーザーがいますもんね。そういう部分で、ロックバンドだけじゃない共通項がある?
セツコ:3組とも若干電子音っぽい編曲を取り入れ始めた時期があるじゃん? それボカロ通ってるからじゃない?
片桐:それに抵抗がないのはボカロを通ってきたからかもしれない。ニコニコ動画にあった楽曲を私たちは普通に聴いているんですけど、いろいろ聴いていくうちにR&Bの要素がある曲もJ-POPっぽい曲も、バンドっぽい曲もジャージー系の曲もあったりするので。いろんなルーツを持って育ってきたコンポーザーの曲をジャンル関係なく聴けたことで、バンド音楽だけに固執しない心を作ってくれて、いろんなジャンルに関心を寄せることができる人間になれたのは強かったんじゃないかなと思います。
「音は違えど同じようなメッセージでその空間に没入できる。他では類を見出せないのがこのスプリットの強みなんじゃないかな」(セツコ)
――話を伺うほどに三者の必然が見えますね。去年の1回目を開催した手応えはどうでしたか?
片桐:ジャンルそのものはそれぞれ違う、その良さがあったんじゃないかなって思っていて。普段対バンは男性の方が多くて女性ボーカルと対バンする機会もなかなかないんですが、こうやって女性ボーカルで同じ一日を、しかも3ヶ所それぞれトリが変わっていってどうライブを終わらせるかというのもそれぞれのやり方があったし、お客さんの反応もめっちゃ良かったと思います。
――1バンド目当てというより全て観たいリスナー?
片桐:誰か1バンド、1アーティストだけ目当てで来てたとしても、すごく楽しめたんじゃないかな。それはボーカル同士が仲良くさせてもらってることによる、今までの思い出のようなものがライブで出るし、それぞれの拠点にしている場所への思いも詰まっていると思うので。意味のあるものができていったと感じましたね。
萌映:本当にどの会場もお客さんの熱量がすごくあった印象で、特にアンコールでコラボした時の光景は忘れられないです。なかなか自分のバンド以外のバンドのステージで歌うこと自体があんまりないし、3人のボーカリストが一斉に歌った時のユニゾンってあの場でしか味わえないものなので。やってよかったなあと思ってますね。
片桐:人の曲を歌うとメロディラインもそうですけど、その人の癖とか自分にはできないことがわかるから、いい経験になりました。
セツコ:私はデスクトップミュージックだしトラック数の多い音が鳴ってるし、クレナズムはシューゲイズかつポップスもあるし、Hakubiはソリッドかつシンプルなロックで、それぞれ全然違うけれど、メッセージ性に関しては共通してるなと思っていて。この3組でやる強みを考えた時に、女性がロックを下地に鬱々しく内省しているのは世代的にもあんまり見ないんですよ。代表曲がちょっとしたラブソングになってるバンドや爆発的なパンクっぽい音楽性の方もいますけど、自分を顧みて等身大の内省を発信して音に乗せている女性ボーカルのバンドって恐らく限定的じゃないかなって自分は思っていて。人が音楽を聴く時って、その音楽に没頭できるかどうか、自分の感情に見合ってるかどうかだと思うんですけど、この3組は音は違えど、ライブに来ることで同じようなメッセージでその空間に没入できる。そういう他では類を見出せないのがこのスプリットの強みなんじゃないかなと思っています。
――確かにそれは大きな特徴だと思います。さて、今回は東京と香港、台北。国外の方が多いツアーになっています。
萌映:アジアツアーです(笑)。
――皆さんアジアでライブ経験があるからだと思いますが、台北と香港をやることにした主な理由は?
片桐:去年のタイミングで「海外も行きたいね」って話もしていたんですが、1回目はそれぞれの地元かなということで、東京、京都、福岡の3公演になって。今年は海外も実現しようっていう形で始まって。台北と、香港とかアジアには聴いてくれている人が多いっていうのがそもそもの始まりだったと思います。
――Hakubiは「何者」のマンダリン(中国語の標準語)バージョンも出ていますが、今回歌いますか?
片桐:台北では歌おうかなと思っているんですけど、香港はちょっと考えつつですね。もちろんマンダリンバージョンも喜ばれるんですけど、意外に日本語が嬉しいみたいなことも聞くんですよ。母国語で歌っているということだったり、日本語の響きが好きな人もいっぱいいて、それも発見だったし、この曲にどっちの言語もあるのは強みかなと思います。
――では、最後に2回目のスプリットツアーへの抱負をお願いします。
片桐:各々ホームとしている場所があって、せっちゃんは東京かもしれないしネットの中かもしれないけど(笑)、そこから飛び出て行った3組が各地でライブをできるのは素敵なことだと思います。この3組だからこそのつながりがあってできるライブは深いものになっていくと思うので、今回もその絆を深めながら、お互いにとっていいライブになったらいいし、この先も続けていけるような日にできたらいいなと思っています。Hakubiとしては思いっきりぶつかるしかない(笑)、それしか私はできないので、直球ストレート、豪速球でやれたらいいなと思っています。
セツコ:SNSのアルゴリズムの出方の関係だと思うんですけど、最近日本のバンドやアーティストが海外にちょっと行きやすくなったじゃないですか。そういう情勢もある中で、この3組がアジアを回る時に、いっぱいいる日本のアーティストが複数集まったというより、こういう軸を持ったでっかい母体で行くことが日本の女性ボーカルのシーンの一縷になるぐらい爪痕を残したいです。そのためにはオーディエンスの動向もちゃんと調べて下準備をして、万全な状態で杭を差しに行かないといけないなと。年末あたりから割と身が引き締まる思いでいるので、準備したものをすんなり出せたら嬉しいなという感じです。頑張りましょう。
片桐・萌映:頑張りましょう。
――クレナズムとしてはどうですか?
萌映:この3組でやっているようなことをやってる人ってなかなか周りにいないですし、私たちだからできることじゃないかなと強く強く思っているので、各地悔いのないようにと思っています。ライブって同じ日は二度とないので、しっかりとパフォーマンスをやり遂げて、お互いにいい刺激になるような1日を各地で作っていけたらいいですね。あとはアジアに関しては現地の言葉をできるだけ覚えていって(笑)、現地の言葉で挨拶をするとか、そういう歩み寄り方もできたらもっと距離が縮まるのかなと思うので、そういうところも頑張っていけたらなと、個人的には思っています。
取材・文=石角友香 撮影=toya
ライブ情報
3/7(土)渋谷 WWW X
OPEN 16:45 / START 17:30
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ADV.¥5,000+1D
イープラス https://eplus.jp/kuhaku-culenasm-hakubi/
空白ごっこ x culenasm x Hakubi – SPLIT ASIA TOUR 2026 – Live in Taipei
3/28(土)台北 SUB Live
START 18:00
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優先
空白ごっこ × culenasm × Hakubi SPLIT ASIA TOUR 2026 – LIVE IN HONG KONG
3/29(日)Portal
OPEN 17:00 / START 18:00
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VIP HKD$1080 / GA HKD$780
関連リンク
■クレナズム オフィシャルサイト:https://www.culenasm.com/
■Hakubi オフィシャルサイト:https://www.hakubikyoto.com