パントマイムアーティスト・が〜まるちょばに“異変”、台詞のない演劇作品『ピストルと少年』で語られる“言葉”

2026.3.20
インタビュー
舞台

が〜まるちょば 撮影=浜村晴奈

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世界的に高く評価されているパントマイムアーティスト・が〜まるちょばに“異変”が起きている――。
言葉・台詞を使わずに物語を表現して鑑賞者の心を掴んできたが〜まるちょばだが、これまでの公演では「観客に先入観を持って見てもらいたくない」という思いから、事前に公演内容については具体的に語ることはなかった。
しかし、2月20日(金)に東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで開幕し、4月4日(土)の大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール公演から全国ツアーが開催される『ピストルと少年』は、フライヤーなどにも物語内容を示唆する“言葉”が散りばめられ、いつものサングラスとモヒカン姿ではなく、作品のキャラクターとしてそこに立っている。なぜ、これまでとは異なるアプローチがなされたのか。が〜まるちょばのHIRO-PONに話を聞いた。

が〜まるちょば

■「言葉を使わずに表現をしているから、言葉がないと伝わらないものもよく分かる」

――右目のまぶたあたりに青タンが目立っていますが、それは……?

『ピストルと少年』のゲネプロのとき、舞台の暗転中に舞台監督と勢いよくぶつかってしまったんです。でも、この青タンが物語にも合っていて、いい“役作り”になりました(笑)。

が〜まるちょば

――そんな『ピストルと少年』ですが、これまでのが〜まるちょばさんの公演は、タイトルも宣伝ビジュアルの打ち出し方もグローバル性のあるイメージでしたよね。しかし今回はいずれもダイレクトに伝わるものになっています。

今回の公演では、第1部が「が〜まるちょばショー⋰短編作品」、第2部が新作長編作品「ピストルと少年」の2部構成。新作長編作品のタイトルを、本公演のタイトルにしたのは初めてです。大きな理由としては、僕が常に口にしている「パントマイムはパフォーマンスではない」「演劇である」ということを、もっと知ってもらいたいからです。一つのストーリーを、まったく喋らずに一人で演じるところを見てもらいたい。それを強く押し出すために、このタイトルにしました。

――なるほど。

あとグローバル的なことで考えると、実は僕はそんなに世界を狙って活動はしていないんです。でも、日本ではできなかったからこそ、世界に出たという経緯があります。つまり、お客さんにいるところへ行ったら、それが世界だった。

――が〜まるちょばとしてのパントマイムがどこで受け入れられるのか、模索した結果ということですね。

アスリートなど競技の世界は、世界一を獲るとそれはすなわち日本一という認識になります。でもエンタテインメントに限っては、世界一がそのまま日本一ではないと僕は考えています。世界で活動するとビジネス的な市場は広くなります。それでもエンタテインメントとして日本で一番という印象は持てない。僕はどちらかというと、日本一になりたいんです。

が〜まるちょば

――意外なお話です。

この活動を始めたとき、「パントマイムを始めました」と話すのが恥ずかしく思えて、なかなか言えなかったんです。それでも、パントマイムをやる人間として一人前になりたいという志はありました。そして「一人前ってなんだろう」と考えたら、それは「日本一だ」って。そういう原点の気持ちは今でもあります。世界で売れる、というより日本なんです。逆に、パントマイムでいろんな国を巡りましたが「これを日本の人に見てもらえなかったら意味がない」とさえ感じています。作品を作るときもグローバル的な目線で考えてやっていましたが、『ピストルと少年』に関してはそういうのは捨てて、とにかく日本の鑑賞者に喜ばれることを強く意識しています。

――だからなのかチラシなどを見ても、今までになく物語のキーワードが“言葉”として具体的に示されていますね。

これまでは、インタビューなどで内容をはっきり口にすると、お客様がそういう見方をしてしまうようになるため、伝えてきませんでした。それでも今回は、最低限でも伝えられるものは文字にしようと。先ほどもお話ししたように、自分はどうしても「パフォーマー」に見られてしまい、人によっては「お笑い」に捉えられることもあります。パフォーマーやお笑いが良いか悪いかという話ではありません。ただ、自分はそこに分類される人間ではないんです。パントマイムは演劇であり、お芝居である。もし演劇をよくご覧になる方のなかで、パントマイムをパフォーマンスだと思って二の足を踏んでいらっしゃる方がいるのであれば、「そうではありませんよ。台詞はないけどお芝居ですよ」とお伝えしたい。そういう意味で、今回はお伝えできることはきちんと示すというアプローチを取っています。

が〜まるちょば

――「言葉を使わない俳優として新しい章へと進みます」という文言は、そういう思いも込められているのですね。

逆に、それだけ自分が追い詰められているのかもしれません。そうしないといけないというか、そうじゃないと「伝わらないんだな」って。

――葛藤があった、と。「言葉を使わない」というものに対する、現実的なハードルの高さですよね。

一方で、言葉を使わずに表現をしているから、言葉がないと伝わらないものもよく分かるんです。言葉はすごく大事なものですし、強い武器になる。言葉にしたことで迷いが生まれたり、うまく伝わらなかったりすることもあります。しかし僕らのようにエンタテインメントに携わる人間は、「言葉は武器である」と認識して人前に立たなければいけない。料理人の包丁は、研ぎ澄まされていれば良い料理が生まれる。でも刃がボロボロだと、なかなかそうはいかない。同じように、言葉が研ぎ澄まされていれば良いエンタテインメントができる可能性は高く、言葉の使い方が上手くないとそうはならない。僕は、言葉を使っていないのでその道具は持ち合わせていませんが、言葉に対する意識は強く感じています。

が〜まるちょば

――逆に今は言葉が氾濫し、言葉に頼りすぎている気もします。

だからこそ、が〜まるちょばの公演をご覧になった方は「言葉がなくてもこんなに伝わるんだ」と感じてくださるのではないでしょうか。私生活ではやっぱり言葉に頼る部分が多いですし、テレビでは今は出演者の喋りに合わせてテロップも出すなど、言葉に対して丁寧にアプローチされている。一方で、言葉以外の部分を感じる、考える機会が少なくなっているかもしれません。

――あらためて「言葉のない演劇」からいろんな気づきを得てもらいたいですよね。

演じることがとても上手な役者さんはきっと、パントマイムもうまい。言葉や台詞というのは、気持ちがあって喋るもの。たとえば頭がかゆいから、頭に手をやるんです。「台本にそう書いてあるから、頭に手をやる」では、それは段取り芝居になります。感情をしっかり動かして「頭がかゆい」と思わないと、手を頭に持ってくることはできません。そういうことを分かっている役者は、台詞として「かゆい」と言わなくても伝わります。台本に書いてあるからそうするのか、自分がそういう気持ちになったからそうするのか。そこには大きな違いがあります。

――確かに。

きちんとメンタルを動かして、言葉を武器として発する。言葉に必然性を感じて舞台上で発することができるのが、いい役者。段取りを追う“大根役者”ではないということです。僕は心をきちんと動かし、自分がやりたいことを言葉に出さずに表現する。気持ちを動かさないと、“嘘”になる。パントマイムとはそういうものなんです。そこを見ていただけたら、みなさんがいつもご覧になっている芝居と変わらず楽しんでいただけるはずです。

が〜まるちょば

取材・文=田辺ユウキ 撮影=浜村晴奈

ツアー情報

GAMARJOBAT THEATRE 2026
『ピストルと少年』

一部. 「が〜まるちょばショー⋰短編作品」
二部. 「ピストルと少年」
作・演出・出演/が~まるちょば
企画制作/が~まるちょば株式会社https://www.gamarjobat.com/
制作協力/株式会社ティアスエンド
ゼネラルプロデューサー/豊永雄雅
プロデューサー/熊手和宏
 
【ツアー日程】
● 大阪
日程:4月4日(土) 2公演(12時開演、16時半開演)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
入場料:全席指定 6,600円 ※未就学児入場不可
● 姫路
日程:4月5日(日)
会場:アクリエひめじ 中ホール(16時開演)
入場料:全席指定 6,600円  ※未就学児入場不可
● 仙台
日程:4月11日(土)
会場:仙台市太白区文化センター(17時開演)
楽楽楽ホール
入場料:全席指定 6,600円  ※未就学児入場不可
● 山口
日程:5月3日(日)(16時開演)
会場:KDDI維新ホール メインホール
入場料:全席指定 6,000円  ※未就学児入場不可
● 名古屋
日程:5月5日(火祝)
会場:アマノ芸術創造センター名古屋(17時開演)
入場料:全席指定 6,000円 ※未就学児入場不可
●東京
日程:5月28日(木) (18時半開演)
会場:東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
入場料:全席指定 6,000円 ※未就学児入場不可
 
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