若者たち8組が激突、虎視眈々と勝利を狙う真剣勝負『ヤングタイガー2026』で大阪が燃えた日

2026.6.14
レポート
音楽

画像を全て表示(32件)

『ヤングタイガー 2026』2026.2.21(SAT)大阪・心斎橋SUNHALL

関西の名物コンサートプロモーターである清水音泉が、新鋭のバンド8組出演の若手登竜門的イベント『ヤングタイガー2026』を、2月21日(土)に大阪・心斎橋SUNHALLで開催した。過去には大阪城野外音楽堂や服部緑地野外音楽堂など、また去年閉館となった味園ユニバースなどでも開催されてて、『ヤングライオン』名義での開催から数えると約15年の歴史がある。地下にあるSUNHALLはアニメ『タイガーマスク』に登場するレスラー養成機関名称「虎の穴」を彷彿とさせる独特の雰囲気があり味わい深い。観客フロアの天井には、「YounG TiGER」とデザインされた大きなバッグドロップが掲げられ、その垂れ下がった布地はアングラ演劇のテント公演を彷彿とさせる。

MONONOKE

一番手はMONONOKE。ひとりで宅録イメージもある彼だが、今回はサポートメンバーふたりを引き連れてのバンドセット。しかし、最初からダイヤルアップ回線にまつわる機械的な人の声でのナレーションが聴こえてきたりと、やはりシンプルなバンドサウンドだけではないことに期待が高まる。

1曲目「room」からドラムも電子的な冷たさや乾きがあるが、と言っても人力ではあるので温かさも感じるという不思議な感覚に。最初のダイヤルアップ回線の音ではないが曲間に90年代的なサンプリング手法を感じさせるSEが入る。基本MCはなかったが、そのSEがどこかMCの替わりを果たしている感もあった。

的確なビートとリズムを刻んでいくが、ダイナミックさがある「ベイビーブルー」や優しさがある「テイク・ミー」などサウンドには彩がある。「皆様そろそろお別れの時間です」「それではごきげんよう」という機械的な声での挨拶から、ラストナンバー「ワールドイズマイン」へ。トップバッターというプレッシャーを物ともせず、クールに音を鳴らした姿は頼もしかった。

Maverick Mom

二番手はMaverick Mom。メンバー4人全員が赤を基調とした衣装に身を包む。先程はMCがなかった世界だけに、南出大史(Vo.Gt)が煽って空気を作っていくのは、これまた新鮮。1曲目「青く、春」で<革命起こせ>と歌われたが、それだけでバンドの姿勢が伝わってくる。続く「イエローメッセンジャー」での語りなど、歌い方も変幻自在。

新曲「スイセン」などメロディックな印象を受けていたが、「徒花」でのギターカッティング、「Monster」でのベースラインなどテクニックも魅せていく。特にラストナンバー「Monster」はベース・ギター、そしてドラムソロもしっかりと聴かせる。ファンキーナンバーにも感じたが、色々なジャンルルーツを持つことも予測できるし、良い意味で明確に何に影響を受けているかがわからなかったのにも興味を惹かれた。

最後の最後までハンドクラップを観客に求めて煽っていく、南出の一挙手一投足にも好感を持てた。トップバッターのクールな雰囲気から、きっちりと自分たち色を主張していった攻めたライブ。

ん・フェニ

三番手は、ん・フェニ。女性ソロミュージシャンだが、サウンドチェックから、その佇まいに目が釘付けになる。鮮やかなブロンドヘアであり、ギターネックにはピンクのリボンが垂らされている。ギター・ベース・ドラムとサポートメンバーを従えているが、決して1人+3人の関係性ではなくて、音が鳴った瞬間に4人がひとつの塊であることが手に取るようにわかる。

ひときわ感じ入ったのは、2曲目「SCREW IN MY HEAD」。言葉通り頭にネジが突き刺さった様なドインパクト。どんどんアップビートしていき、轟音で鳴っていくのは格好良いとしか言い様がない。続く「VETICA」でも感じたが、完璧なるバンドサウンド。オルタナティブな……、つまり型にとらわれないロックバンド。

それは「ラウドおじいちゃん」でも証明されたが、キレッキレであり骨太であり強靭なサウンド。「SUGAR」の鈍くて凶暴さを感じるドラムなど、終始、目も耳も離せない……。ラストナンバー「SPARK SPARK」。きらめいて刺激して活気づいていく疾走感。キュートな見た目に、このロックサウンド。全てに目と耳を奪われてしまったのは事実である。

Ululu

四番手はUlulu。大滝華代(Vo. Gt)、横山奈於(Dr)、古沢りえ(Ba)による3人からなる、ザ・スリーピースのギュッとした音像。東京から車で渋滞に巻き込まれて、大阪に到着したばかりだと明かすが、そんなハプニングを感じさせない堂々とした飄々さを、1曲目「生活」から感じる。続く「旅に行こうよ」では、ロックバンドならではの転がっていくダイナミックさを感じたし、とにかく威風堂々としている。

ギターの音が泣いている感じ、全ての楽器の音が蠢いている感じもとても良かった。まだ大阪に着いて1時間しか経っていないということに改めて驚いてしまう。いつどこで誰とどんな状況で戦っても動じない……、そんなストロングスタイルが聴く者の心に刺さる。

「Terminal」での地鳴りの様なサウンド、なのに歌い出すと緩やかなテンポなど、気持ち良いくらいに振り回される。乱れ打ち、乱れ弾きのエネルギッシュな躍動感。ラストナンバー「駆け巡る晴」でのロックンロールな音の跳ね方も、観ているだけで嬉しくなる。これだけ楽しませてくれて、さくっと終わる感じも潔かった。

水平線

五番手は水平線。京都の4人組バンドであり、田嶋太一、安東瑞登のツインギターボーカル。Kula Shaker「Hush」が登場SEで鳴った瞬間に、このバンドは軽快なロックンロールを鳴らそうとしていることが伝わってきた。メンバー自体も軽快に登場するし、すぐにウォーミングアップしていくように音を鳴らしていき、「トーチソング」へと繋げていく。

続く「たまらないね!」では、音が弾けているし、音を楽しんでいることもわかった。MCでは、2019年の『ヤングタイガー』に遊びに来ていたことを話す。そんな何気ないエピソードから『ヤングタイガー』への想いが伝わってきて、聴いていて微笑ましかった。

「エンドレスサマー」は爽やかで甘酸っぱい気分になれるが、バンドサウンドの重厚感も届けられる。勢いよく飛び跳ねてベースを弾く水野龍之介もだが、メンバー全員が『ヤングタイガー』でライブをできる喜びで大爆発していた。「鋼の太陽」はタイトルからして力強さを感じるし、ラストナンバー「Downtown」での終わりに向けてのテンポアップ感は清々しさしかない。

Nikoん

六番手はNikoん。オオスカ(Gt.Vo)とマナミオーガキ(Ba.Vo)による2人組。リハーサルから音が尖がって、脳にも耳にも心にも突き刺さってくる。別に根性論を言いたいわけじゃないが、やはり死に物狂いの気合いには惹かれるし、それを不敵な笑みで軽やかにぶつけられると痺れきってしまう。1曲目の頭から、いきなりオオスカのスクリームが炸裂する。2曲目でも、ヒリヒリピリピリ感そのまま轟音でぶっ倒しに来てくれる。続く「step by step」では、ふたり向き合いながら弾き合う姿は本気の殺気しかない。

前日に47都道府県ツアーファイナルを沖縄で敢行したバンドとは思えないし、後から聴いたが翌日には新潟で新しいツアーを迎えたという。音が苛立って暴れて切れ味鋭いまま。「とぅ~ばっど」では、オーガキの野性味溢れる凄みあるドスが効いた声で、こちらは脳みそが揺れてしまう……。しかし、終わり、オーガキは「自分の演奏が悔しくて言葉が出てきません……」と漏らす。何だ、このストイックさは……。

「お前、そんな感じやな。終わったら怒ろうと思っていた。わかってるだけ成長やな。後3曲で取り戻せ!」とオオスカ。「はい!」と返事するオオガキに、こういう真剣勝負を観たいんだと嬉しくて嬉しくてたまらなかった。ここからの3曲はギアが入りまくったし、脳も心も浄化される様な美しさもあった。本当に素晴らしかったです。

自爆

七番手は自爆。サイレンの音が鳴り響き、頭脳警察「最終指令“自爆せよ”」が聴こえてくる。バンド名からしてそうだが、ロックンロール革命戦士であることは一目瞭然。その名の通り、「ロックンロールを始めよう」でロックンロールが始められる。続く「あの子とセックスしたやつ全員殺す」は、始まりのギターカッティングからして、まっすぐストレートロックンロール。ドカドカうるさいロックンロールを鳴らす活きがいい若者が現れたものだ。挑発的なタイトルの「邦ロック」をブチ鳴らし、「涙とリビドー」では音が分厚くなっていく様も体感ができる。

また、「ケロイドの唄」では、しゃがれた声でササキがリズム&ブルースを聴かせてくれる。そんな振れ幅を確実にさせたのは、続くサーフインスト。2026年の令和にサーフインストをぶち込んでくる気概に、50歳前ロックンロール好きおじさんはニヤニヤしてしまうが、そんな事は当たり前の如く、どうでも良くて、フロアで熱狂する若者が何よりも喜ばしい。いつだってロックンロールは若者の音楽である。その後も「天誅」「未来はない」「国家」など向こう見ずなロックンロールが鳴り響く。ロックンロールに未来はある、間違いない。


LAUSBUB

八番手はLAUSBUB。ギターとシンセサイザーとマニピュレーションを務める岩井莉子と、ボーカルとベースを務める髙橋芽以による北海道出身で、まだ二十歳を過ぎたばかりの若きふたり。ニューウェーブを感じさせるテクノポップを鳴らすが、自爆のロックンロールといい、若者たちが古き良き音楽ルーツを今現在に更新していく姿は心強い。

1曲目「Telefon」は初っ端から電話のプッシュ音が聴こえてくるエレクトロニカな展開。ふたりだけの佇まいもクール。血気盛んな年頃の若者たちが集う祭の最初と最後の演者がクールというのも『ヤングタイガー』ならではの一筋縄ではいかない並び。粒子音が心地好いし、「Get Stir Crazy」のたゆたう声、「Sweet Surprise」の響く重低音。宇宙を想起させるスペイシーなサウンドであり、浮遊感がある。先程までロックンロールフロアであったが、今やクラブフロア。この引き出しの多さは、やはり『ヤングタイガー』ならでは。硬質な音の「ysey」、テクノサウンドな「I SYNC」から、ラストナンバーはふたりで歌う「TINGLING!」。この平熱というか微熱というか、決して高熱では無い熱感。しかし、そこには音楽への情熱が静かに込められていて、ただただ我々は音を浴びて、とろけていく……。ライトもフラッシュしている。まさしくクールなフィニッシュ。

こうして約7時間に及ぶ『ヤングタイガー』が終わった。若者たちが集い音を鳴らす祭は青田買い・見本市的な要素が多少なりとも含まれていて、それはそれで別に否定しないが、清水音泉の『ヤングタイガー』は『ヤングライオン』時代から全く違う。清水音泉が強い気持ち強い愛で選び抜いた若き戦士たちが本気で闘い合う。そして、虎視眈々と全組が勝利を狙う。だから、我々は長時間全く飽きることなく高揚しながら観ている。いつかまた大きな野外舞台で、彼ら彼女らを観る機会に出逢えたら、それは本当に素敵なことだ。

取材・文=鈴木淳史 写真=清水音泉 提供(撮影:浜村晴奈)

イベント情報

『ヤングタイガー 2026』
2026年2月21日(土)@大阪・心斎橋SUNHALL
出演:UlulU、自爆、水平線、Nikoん、MONONOKE、LAUSBUB、ん・フェニ、Maverick Mom

清水音泉:https://www.shimizuonsen.com/

  • イープラス
  • UlulU
  • 若者たち8組が激突、虎視眈々と勝利を狙う真剣勝負『ヤングタイガー2026』で大阪が燃えた日