初日中止を物ともせず、大阪が誇る愛おしい祭『OTODAMA'26』が開催、スタッフ・演者・観客が一丸となり大祝祭に
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『OTODAMA’26』 撮影=浜村晴奈
『OTODAMA’26』2026.5.4(MON)・5.5(TUE)大阪・泉大津フェニックス
『OTODAMA’26』が泉大津フェニックスで2026年5月4日・5日と開催された……、そんなAIでも書ける書き出しで無難に書き進めたかったのだが、御存知の通り、そんなわけにはいかなかった。5月4日朝7時45分。「昨晩の暴風雨による影響で施工物に支障が出たため、出演者、お客様の安全を確保できない観点から中止といたしました」という内容を泉大津駅に向かう電車の中で知った。
清水音泉に事前連絡した上で朝8時半過ぎに現地着。「ジェットバス」裏の本部から強風で屋根がめくれ上がった「エレキブロ」を呆然と眺めるのみ……。しかし、主催の清水音泉・番台こと清水さん始め、スタッフ全員が大変で忙しいのに明るく優しく気を遣ってくれる。また、会場で出店するはずだったKYOTO MUSE行貞店長を中心に運営される「ど根性珈琲」は、アイスコーヒーをスタッフに振舞っている。もちろん商業的興行ではあるのだが、村祭りや町内会バザー的な助け合い・支え合いというか、人情溢れる温もりしか感じない。で、まぁ本当に腹立つくらいに大晴天ピーカンではあるものの、確かに風は強く、そんな中、設営チームが早速「エレキブロ」の屋根の修復作業に入っている。
ふと入り口付近を見ると、関係各所全部に隈なく中止の連絡をしたはずが、1ヶ所だけ連絡をし忘れたバルーン会社が見事に設置してくれたバルーンが揺れている。「ENTER IS HERE↓」と垂れ幕には書かれていて、酷な状況であるはずなのに、つい笑ってしまうのも清水音泉特有のコミカルさというか。詳細は『OTODAMA』風呂具(ブログ)のnoteを観ていただくとしませう。
2日目に関しては、この日の夕方の最終判断発表を待つしかない。今回のイベントビジュアルを担当しており、湯沸かしDJとして開場後の朝イチDJを担当するはずだったキングジョー氏にも御挨拶する。御自身の名前が書かれた看板を大事そうに持っておられたのが印象的だった。昼前には現地を後にして、帰路につく昼1時過ぎ、初日に入浴(出演)するはずだった演者達が動き出す。
自身も地元京都で主催フェスを20年近く開催してきた、くるりの岸田繁はXでお客さんを始めとして関わる人、全ての胸が張り裂けそうな無念を綴り「続報を待ちましょう」と記した。主催者を経験しているからこその温かい励ましを感じる。5月6日に初の日本武道館ライブに挑んだa flood of circleのHISAYOは、「このタイミングでうちらを呼んでくれた事が清水音泉からのエールだと思っています」と綴る。日本武道館へ向けて一種の壮行会的想いで呼ばれたわけであり、清水音泉とバンドの熱い絆を感じた。
ハク。 写真提供=ハク。
そんな中、若手バンドたちも動く。「源泉テント」で初入浴となるはずだった地元関西のハク。は、Instagram・TikTokにて演奏予定だったセットリストをライブ生配信することに。メンバーは毎年見学に来ていた『OTODAMA』ラバーズであり、長年かけて念願の初入浴だっただけに晴れ姿をむちゃくちゃ観たかったが、それでも素晴らしいオンライン入浴での渾身のライブとなった。
Nikoん 撮影=浜村晴奈
「源泉ストロングスタイル湯上りアクト」として、大トリSuchmosの後に「源泉テント」で一番最後にライブをするはずだったNikoん。「Nikoん 勝手に漢気オトダマ振替ワンマン『マイ・フェニックス』」と題して、梅田Zeelaで夜7時に緊急ライブを開催することに。初日・2日目と何かしら『OTODAMA』
撮影=浜村晴奈
そうそう、夕方6時には2日目・5月5日の開催が発表された。初日中止は誠に残念であったが、いつかこのメンバーで再度観たいという想いも込めて名前だけでも改めて心に刻みたい。Lucky Kilimanjaro、OAU、浅井健一、The Birthday(クハラカズユキ・ヒライハルキ・フジイケンジ)、iri、OKAMOTO’S、171、Age Factory、羊文学、清水ミチコ、くるり、ZAZEN BOYS、Suchmos、キングジョー、テレビ大陸音頭、Aki、ハク。、Hedigan’s、a flood of circle、LAUSBUB、Nikoん。バトンは5月5日へと繋がれる。
さて清水さんに風呂具で「AIライター鈴木淳司」と書かれた私ですが、なんせ「人力ライター鈴木淳史」であるため、「エレキブロ」と「源泉テント」が完全に時間が被っているのは深刻な問題で……。AIライターならば被っているのもものともせず、3ステージ全組同じ文字数で何かしら書くのでしょうが、いわゆる私は全組同じ文字数での記録文ライブレポートは物理的に書けないことを、どうぞご容赦ください。あくまで鈴木淳史が覗いた『OTODAMA』的な総括・総論としての記憶文として読んで頂けたら幸いです。そういうことで2日目もドキュメント視点のライブレポートを書いていきます。
撮影=オイケカオリ
初日同様、朝イチ泉大津フェニックスに到着すると、昨日とは打って変わって清水音泉はじめスタッフたちの安堵の表情が飛び込んでくる。初日が初日なだけに万感の想いもあるだろう。初日は観客誰の目にも触れなかったバルーンも気持ち良さそうに揺らいでいる。垂れ幕に書かれた文字は初日と違い、「ようこそオトダマへ 入口はココ↓」と「なにをやってもあかんわの集い」。後者は2日目大トリ岡崎体育の歌詞から。2011年・2018年と台風中止になり、2020年は屋内開催を企むもコロナ禍で中止……、で、2024年に開催20年目という節目を終えて、去年は万博記念公園で番外編を開催するも豪雨(無事に最後まで開催はされました)、ほんでもって今年の初日は暴風雨に襲われて中止……。もはやダブルミーニングとしか思えない「なにをやってもあかんわ」。でも、それすら笑いにするしかないとはいえ、確実に笑いにする清水音泉は天晴れである。
撮影=渡邉一生
会場で、一番最初に逢ったバンドマンはフラワーカンパニーズであり、「源泉テント」で「皆勤風呂ントアクト」。逢った時から満面の笑顔であったし、朝9時半過ぎのサウンドチェックという早い時間でありながら到着したばかりの観客たちから大歓声で大人気。2年前もそうだったが、「源泉テント」は入場口そばにあるので必ず通る場所。だからと言って、別に通り過ぎても良いわけで、これだけの人が集まってくるのは、2年前のSCOOBIE DOしかり、『OTODAMA』と言えばの常連バンドが出迎えてくれるので、自然と観客が集まってくるのだ。
フラワーカンパニーズ 撮影=浜村晴奈
サウンドチェックが終わり、過去には入浴宣言も担当していたガリガリガリクソンも表敬訪問している。笑い声が絶えない、和やかな雰囲気。朝10時20分。舞台に上がった鈴木圭介は、「1日目が無くなっちゃったから、『OTODAMA』のトップバッターになりました!」と高らかに宣言。2005年初年度から入浴の皆勤賞なだけあって、歴史の酸いも甘いも熟知しているだけに全く湿っぽさがない。みんなの顔色が朝イチなだけに良くないということから、1曲目「ラジオ体操のうた」! 朝から物凄い人だし、物凄い元気が出る。四星球の北島康雄が「『OTODAMA』やなぁ~!」と嬉しそうに笑っている。皆勤賞なのだから『OTODAMA』の顔なのは間違いないし、何が凄いって、呼ばれてない年も勝手に来てライブをしていたということ。初日中止になった分、『OTODAMA』グッズを買うように促すグレートマエカワのまるで運営側みたいな発言も愛を感じる。
何よりも「メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲は次回作! 永遠によろしく!」という口上に表現される精神性が格好良いし、そのバンドを永遠に応援し続ける清水音泉も格好良い。特筆すべきはラストナンバー「白眼充血絶叫楽団」。メジャーレーベルから離れて、インディーズから再スタートとなった2002年アルバム『吐きたくなるほど愛されたい』オープニングナンバー。当時の決意表明ともいえる楽曲を、24年経った現在のライブラストナンバーでぶちかます。朝イチからバンドマンの矜持を見せつけられた。
撮影=渡邉一生
フラカン終わり、超能力戦士ドリアンのサウンドチェックが聞こえてくる。一瞬、次はドリアンかと錯覚したが、「エレキブロ」壱番風呂の超能力戦士ドリアンは、「ジェットバス」壱番風呂が終わってから。でも、確かなる気合いは感じられる。さて、「ジェットバス」壱番風呂が始まる前は恒例の主催者挨拶だが、いつもの番台こと清水さんの姿がない。主催の清水音泉とサウンドクリエーターの若手スタッフふたり。私のような古参『OTODAMA』ファンからしたら寂しさというか不思議な感覚であるが、開催22年目に入る今、変わらなきゃも変わらなきゃなのだろうし、闘魂伝承なことも伝わる。どんな職業でも一代で終わるのは寂しいし、老舗になればなるほど受け継いできた味がある。或る意味、歴史的瞬間を目撃できたし、何よりも未来に向けて毎年開催されることが重要なのだ。
コレサワ 撮影=オイケカオリ
今年の『OTODAMA』は一味違うと主催者挨拶の余韻を噛み締める中、ピンポンと音がして可愛らしい声で注意事項が流れ、「レッツショータイム!」の声が。「ジェットバス」一番風呂はコレサワ。れ子ちゃんこと可愛らしいクマのキャラクターも舞台に見える。当の本人もピンクを基調としたフリルの可愛らしいスカートを履いている。現段階で可愛らしいと3回も書いている。あくまで個人的印象だが、今までの『OTODAMA』、清水音泉には良い意味での男臭さを感じていた。そういう意味では結成37年で、今年メンバー全員57歳のフラカンは象徴的な存在だが、これまた良い意味で正反対のコレサワ。この振れ幅を持ち始めると『OTODAMA』は最強だと思えた。可愛らしい映像演出も新時代を感じさせる。
『OTODAMA』は、スクリーンひとつ取っても、一昔前までは肉眼でライブを観てもらうことにこだわっていた。しかし今では、細かい演出を観てもらう為に普通にスクリーンも導入されている。あくまで大きい画面でライブ映像が観れるということなのだが、他のフェスでは一般的となった演者の映像演出を『OTODAMA』で観られるのは本当に新鮮であった。始まったばかりなのに、勝手に時代の進化を目の当たりにしてしまう。ただ、昔も今も変わらないのは本気の演奏。「浮気したらあかんで」は音源で聴くと可愛らしいナンバーだが、『OTODAMA』で聴くとバンド編成ならではの迫力があった。シャボン玉マシーンでシャボン玉が連射される演出も可愛らしかったし、清水音泉の「ジェットバス」で「バスタイム」を披露する心意気も素敵だった。
ピーナッツくん 撮影=渡邉一生
可愛らしい繋がりで言うと、コレサワと並ぶ強烈なインパクトを魅せつけてくれたキュートなピーナッツくんについても触れたい。「エレキブロ」弐番風呂なので、ドリアンを跳び越すことになるが、個人的にはコレサワ&ピーナッツくんは『OTODAMA』歴史における新時代新魅力初入浴コンビなので先述致します。体は黄色で白いブリーフを履き、赤いスカーフを首に巻いた男児。見た目は世に言う着ぐるみであり、YouTubeでも大活躍と、見た目やプロフィールだけだと異質感もあるが、本気で熱いライブをぶちかませば、そんなものは関係ない。そういう意味では、ピーナッツくんは5月とはいえ、こちらが心配するくらいに動きまくっていたし、口の部分を指差して、「ここで歌っている」と明かすのも潔かった。舞台袖で影アナ的に歌うのではなくて、自らの口で歌うというのは舞台人としての気迫というか。ライブ初見であったが、RHYMESTERなどゴリゴリのHIPHOPがルーツなのも感じ取れた。実は滋賀出身であったり、清水音泉の「エレキブロ」で「風呂フェッショナル」を歌うのも嬉しかった。ブリーフと言えば四星球もいるわけで、新たなブリーフスターが『OTODAMA』に誕生した瞬間に立ち会えた。
撮影=オイケカオリ
既にサウンドチェックから存在感を魅せていたドリアン。出演前にはBGMとしてフィッシュマンズが流れている。清水音泉、『OTODAMA』にとって礎の様なバンドの存在を感じられるのも嬉しかった。フィッシュマンズと清水音泉、『OTODAMA』の関係性を書くと長くなってしまうので、そちらに関しては何かしらネットで構わないので掘ってみて下さい。さて、ここで「エレキブロ」でライブを初めてしっかりと観ることに。昨日は危険性もあるので近づけず遠くから屋根がめくれ上がった状態を眺めるだけであったが、今日は屋根が全てなくなり鉄骨剥き出しとなったステージ。古代ローマのコロシアムじゃないが、武骨で硬派な感じがしたし、今日に間に合わせて仕上げてくれた職人の方々、裏方の方々に何よりも感謝しかない。
超能力戦士ドリアン 撮影=渡邉一生
そんな再生された新生「エレキブロ」で壱番風呂のドリアン。サウンドチェックから宣伝を兼ねてキーワードのX投稿を観客にお願いする。令和フェスならではの魅せ方だし、コレサワ同様に映像演出も巧みに使う。1曲多く披露したいからと2分早くスタート。新曲「OTODAMA’26」では、読売テレビマスコットキャラクターのシノビーと一緒に人文字で『OTODAMA』を表現する。
撮影=渡邉一生
清水音泉の清水さん、そしてドリアン担当の男湯こと田口さんの大きな顔写真を段ボールに貼り、観客の上で運んでいくレースなど賑やかな展開に。この後、段ボールの鉄人である四星球が控えている中、段ボール芸は大胆な本家取りであったが、画素数の低い粗い顔写真というのは誠にインパクトがあった。ちょけるだけではなく、7月のNHK大阪ホール以降、いつかオリックスホール→大阪城ホールなどでライブをして清水音泉に恩返しをしたいという強い気持ち強い愛を感じる。
四星球 撮影=オイケカオリ
段ボール芸の本家であり、清水音泉へ強い気持ち強い愛で恩返しをしたいのは、「ジェットバス」弐番風呂の四星球も同じ。本番前、舞台裏に様子を伺いに行くと康雄が珍しく酷くえづいている。「『M-1』初回の中川家みたいでしょ!? いつも『OTODAMA』はこうなるんですよ」と笑う康雄。それだけでも『OTODAMA』に賭ける気持ちがわかる。CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」をサウンドチェックでブチかましたり、バスタブに入浴したシャンプーハット裸姿のU太まさやんがミャクミャクに扮したモリス掛け声で観客の上をレースしたりと、いつもどおり大爆走する四星球だが、この言葉には痺れた。
「段ボールで何でも作れるんです! 言うてくれたら、ステージの屋根くらい作ったのに!」
今でこそ大常連の四星球だが、元々は「SET YOU FREE テント」という小さなテントステージからメインステージまで這い上がってきている。四星球と清水音泉の絆を改めて感じた。そういや、康雄にソックリでお馴染みちょんまげマンも登場したが、2年前は清水音泉の清水さんソックリちょんまげマン清水も登場していた。今年は段ボールにデザインされたちょんまげマン清水パネルが数体も登場。観客エリアに投げ入れられて、手にした人はお持ち帰りできたそうだが、そのままクロークに預けた強者もいたという。流石『OTODAMA』観客! 洒落がきいている。
撮影=オイケカオリ
そうそうハイライトシーンをもうひとつ。10年くらい前、康雄は清水さんから「四星球は良いバラードあるんだから、フェスでもバラードを歌ったら」と言われたそう。バラードは長尺の曲も多いため、フェス盛り上げ最優先するとなかなか勇気がいる。だが、四星球は6分もある「フューちゃん」に果敢に挑んだ。じっくり観客も聴き入っていたし、完全なる新しい必殺技を手に入れたように想う。清水音泉から得たことは、これだけではない。
「全部をポジティブに変換ができると教えてくれたのは、清水音泉です!」
「ピンチをチャンスに」と書くと陳腐になるが、どれだけ大変な崖っぷちに遭っても笑い飛ばしていく強さ。
「好きなバンドのワンマンライブへ行けば、清水音泉に還元されますんで!」
清水音泉AID、『OTODAMA』 AID……。ライブに飛び入り参加した忍者姿のシノビーにちなみ「これ以上、フェスの中止は堪忍じゃ!」と〆も完璧でした。
撮影=オイケカオリ
そして、「ジェットバス」参番風呂・小山田壮平BAND→「エレキブロ」参番風呂・Hump Back→「ジェットバス」四番風呂・銀杏BOYZ→「ジェットバス」伍番風呂・SHISHAMOの流れに感じた一貫性も書き留めておきたい。大きく分けるならば、普段から清水音泉の主催でライブをしたり、『OTODAMA』常連組でもない。小山田BANDは初入浴だし、ハンプ、銀杏、SHISHAMOは2回目の入浴。でも、違和感なぞ全くなく、どちらかと言えば凄いライブバンドを『OTODAMA』でも観れるなんて超嬉しいの一言に尽きる。逆説的に言うと凄いライブをぶちかます人たちだけを観れるのが『OTODAMA』。
小山田壮平BAND 撮影=オイケカオリ
小山田がandymori時代の楽曲を1曲目「Sunrise&Sunset」始めとして惜しみなく演奏して歌ってくれたのは感慨深かった。ファンファンのトランペットも青空に映えて響き渡る。「革命」は、今や伝説ナンバーの風格もあるし、革命なんて大それた言葉なのに、何故か無敵な気分になれてワクワクする。小山田は東京の新幹線乗り場で呑み始めていたらしいが、今日の開催が決まったと聴き、1本で止めたという微笑ましいエピソードを明かす。ラストの「夕暮れは百道浜」→「空は藍色」という流れは、海も近い泉大津の青空の下で涼しい風に吹かれて聴くには最高すぎた。ライブ後、小山田と少し話せたが、「空は藍色」は大阪城野音でのライブを想い出すという。大阪での想い出の曲を大阪で聴かせてくれたのは粋であった。
Hump Back 撮影=渡邉一生
Hump Backは個人的に久しぶりにライブを観たのだが、一聴するだけでロックンロールのルーツというと大袈裟な言い方かもしれないが、簡潔に言うとロックンロールが好きなのだろうと思えた。ドカドカうるさいロックンロールバンドなんていう言葉を歌詞に忍ばせるのも可愛らしかった。林萌々子は、4年前にコロナ禍明け初めて開催された『OTODAMA』で初入浴したことについて話し出す。3日間開催で延べ50組くらい約200人以上の演者が入浴した中で、清水音泉が気合いを入れて楽屋エリアに設置したサウナテントに入浴したのは、林ひとりだったという。それを『OTODAMA』関係者が林の友人に「あの娘(こ)、エエ娘やわ!」と言っていたのを最近聞いたらしい。その前にテレビ取材で『OTODAMA』について、他のフェスとの違いや良さを聞かれたが、色々と感じていることがありながらも上手く言語化ができなかったらしいが、今ならできると言って、こう言った。
「『OTODAMA』は、大阪が誇る愛おしいイベント」
もう今回のライブレポートタイトルは、この言葉しかないと咄嗟に思った。良い意味で『OTODAMA』との距離感があるからこそ、客観的で俯瞰的にとらえた言葉。私が言うのもあれですが、良い言葉をありがとうです。
銀杏BOYZ 撮影=オイケカオリ
銀杏BOYZ。峯田和伸は私と同い年ではあるが、紛れもないロックスターでありロックヒーロー。今や大御所感もあるし、外タレのような風格もある。凄いもんで最初の出音から違う。これ、別に大音量という単純な意味ではなく、音の圧の凄みというか……。反響感でありノイジー感であり、圧倒されるし、1曲目「神の左手悪魔の右手」は8分にも渡る。立ちすくむしかない、とんでもないロックンロールの儀式……。
続く「若者たち」でもグッシャグッシャな音に圧倒される。初日中止にも触れて、なかなか、大阪の野外フェスに銀杏BOYZとして来ることがないからと歌われたのは「人間」。22年前はフェスで誰も歌ってくれない曲だったのが、いつの間にかみんなライブで歌ってくれる曲になったという。新たにレコーディングもされたという「人間2026 アナーキーインザ夕景 ver.」バージョンでは、<戦争反対戦争反対 戦争反対 とりあえず戦争反対って言ってりゃあいいんだろう>が全て「戦争反対」と歌われていた。凄いものを、それも大阪で観られたのは幸せでしかないし、音楽の凄みを魅せつけられた時間。多くの演者たちが袖や関係者エリアや観客エリアなど様々な場所から真剣に観ている姿も美しかった。
SHISHAMO 撮影=渡邉一生
6月13日・14日のUvanceとどろきスタジアム by Fujitsu(等々力陸上競技場)でのワンマンライブをもって活動を終了するSHISHAMO。泉大津フェニックスで観れるのは、今回が最後。SHISHAMOと泉大津フェニックスと言えば、切っても切り離せない関係であり、それは言うまでもなくGREENS主催の『RUSH BALL』に出演し続けていたということ。そして、宮崎朝子が初代ベース脱退が決まっていた2014年9月に、現ベースの松岡彩と出逢ったのも泉大津フェニックスでの『RUSH BALL』だった。
『RUSH BALL』の運営スタッフとして来ていた専門学校生の松岡に、宮崎が声をかけたのは有名な話だけに、ここでSHISHAMOを観られるのは特別感がある。8月末開催の『RUSH BALL』の頃にはすでに活動終了しているだけに、この時に観られたのは貴重過ぎる。「君と夏フェス」から始まり、最後は「明日も」→「明日はない」。言葉だけでいうと、両極端の意味を感じさせる両タイトル。その刹那の美しさを魅せれるのはSHISHAMOだからこその唯一無二。しかと泉大津フェニックスでのハッピーエンドを見届けさせてもらいました。
撮影=渡邉一生
ちなみに余談ですが、『RUSH BALL』のXアカウントでは、「お疲れ様でした! しみっさんのSHISHAMOへの愛をしっかり受け取りました もちろんOTODAMAに出演していた全てのアーティストがしみっさんへの愛で溢れ散らかしていた事も確認済みです/アーティストとオーディエンス そこを繋ぐ僕らの仕事 しっかり勉強させて頂きました!/2026年の8月夏の最後の土日 しっかりやらせていただきます! 今は銭湯でも行って休んでください」とつぶやかれていた。
また、この日5月5日には『RUSH BALL』のラインナップも発表されている。『RUSH BALL』主催者は、これまたXでこうつぶやいている。「何故この日なのか 『OTODAMA』に最大の敬意と愛を 先に開催する先輩のイベントからバトンをもらうための今日でしょ でも今日の現場でたくさんの愛をもらうんだろうけど 皆さん泉大津フェニックスでお会いしましょう」と。余談なのは理解しているが、こういうところに物事の真髄はあると想っているし、表方と裏方の関係性を知った上で、フェス含め、ライブを観ると、より心を揺さぶられたりするものです。
尾崎世界観 撮影=渡邉一生
表方と裏方の関係性で言うと「エレキブロ」四番風呂の尾崎世界観も特別な関係である清水音泉・『OTODAMA』とは。1曲目「君の部屋」では、<好きな『OTODAMA』も>と歌詞を変えていて嬉しくなる。2011年『OTODAMA』が台風で中止になった日、清水さんは大阪のライブハウスへクリープハイプを初めて観に行ったという。中止で厳しい心境になっているにも関わらず、新しいバンドを見つけに来てくれて、改めて凄い人だと想うし、だからこそクリープハイプの今があると丁寧に話す。
「引き続き清水音泉を宜しくお願いします」
この言葉には不意を突かれて思わず涙が出た。すぐに今回は保険をかけていたのだろうか、前回は額を一桁間違えていたなんて話も出たが、その後も、初めてメインステージに立ったのも、初めて大トリをやったのも『OTODAMA』なので想い入れがあると尾崎は語る。
「よく中止になるでしょ。『OTODAMA』が色んな不幸をもらってくれてるのかもしれませんね。もっと恩返ししたいし、もっと売れてこのフェスに、清水音泉に返したいと思います」
5月27日リリース最新EP「仮のまま定着したような愛情で」から「生きてみます」も一足早く聴けたのも感激したし、またバンドでも絶対に入浴して欲しい。
天々高々 撮影=浜村晴奈
この真裏の完全被り時間帯に「源泉テント」四番風呂では天々高々。あふちゃんことアフロもあいちゃんことヒグチアイも普段はイベンターが清水音泉主催ではないし、『OTODAMA』初入浴なのに、ずっといままでいたような錯覚にすら陥る馴染み感。というのも心から楽しんで、心から観客を楽しませているから。象徴的シーンはラストナンバー「5959」。<アルコール アンコール ゴクゴク>というシンプルな歌詞を繰り返して歌うだけでハッピーになるし、気が付けばMV出演もする電子工作グループ・ヅカデンが操るドラゴンが観客エリアを光りながら練り歩く、いや練り飛んでいる。途中であふちゃんが「何か呑み足りない感じ!? しょうがないなぁ! 俺から清水音泉から振る舞い酒があります!」と告げると、想像以上に多くの紙コップに入ったビールがスタッフから観客へと振る舞われる。
天々高々 撮影=浜村晴奈
これ町内会の祭だなと大興奮していると、舞台袖で観ていたキュウソネコカミのヤマサキセイヤとヨコタシンノスケも呼び込まれて、あふちゃんと肩組んで歌っている。で、「5959」が何と3回も繰り返される。尾崎の静なる時間、天高の動なる時間。始まる前は体を半分に引き裂いてでも両方を観たいと悲観的に考えていた時間であったが、結果、時間が被っていたとはいえ、異なる素晴らしい時間を魅せてもらえたことに未だに想い出すだけで大熱狂してしまう。忘れられない2組の時間となった。
Blue Mash 撮影=浜村晴奈
FUJIBASE 撮影=浜村晴奈
「源泉テント」はフラカンと後述する「源泉クライマックス湯上りアクト」のトモフスキー以外は、全て「エレキブロ」と被っているので全てを観たい身としては苦労する時間帯であったが、フラカン・トモフ・天高以外はヤングニューカマーが目立った。地元関西で言うとカライドスコープ、真裏被りキュウソネコカミが「観たかった!」と憤慨していたBlue Mash、そして清水音泉主催若手登竜門的イベント『ヤングタイガー』でも大活躍のMaverick Mom、個人的には完全初見で楽しみにしていたFUJIBASEなど、ひとり人力じゃなければ焦らず慌てずに観れたのにと悔やむ顔ぶればかり。
Maverick Mom 撮影=浜村晴奈
カライドスコープ 撮影=浜村晴奈
Sundae May Clubはデビュー当時から取材担当なのもあり、僅かな時間ではあるが覗かせてもらったが、「源泉テント」に向かう大分手前から凄い熱量が届いていた。3月に香川は高松の商店街で開催されたサーキットイベント『SANUKI ROCK COLOSSEUM』でも観ていたが、テントとはいえ野外の広大な土地で観るライブは、コンパクトなライブハウスで観るライブとは全く違うエネルギーがあった。ヤングニューカマーにとっては、大きな広い野外でライブをぶっ放せる喜びが間違いなくある。将来、大きなステージで大暴れするヤングニューカマーたちの姿も観てみたい。
Sundae May Club 撮影=浜村晴奈
フレデリック 撮影=渡邉一生
早くも時間は夕方6時。「エレキブロ」伍番風呂フレデリック。三原健司は登場するやいなや、「SHISHAMOちゃんが最高のライブをしてくれまして、流れを変えることだ!」と言い放つ。「35分1本勝負!」と言い切っていたが、完全に勝負に来ている。祭ではあるのだが、戦というか、プロレス的に言うならばバトルロイヤルという大人数勝負決戦というか、メラメラ燃えている闘魂という炎が。音も重厚であり鉄壁であり、2年前の『OTODAMA』から異様に成長を遂げている。代表曲「オドループ」を初っ端からぶつけて、地元関西出身なだけに「生まれ育った街なので初心忘るべからず!」と初期楽曲「バジルの宴」も披露。2日目は特に多種多様であり、関西弁の褒め言葉で使うところのけったいさを感じていたが、三原は「変な奴らばっかり集めておもろい!」と言語化してくれたし、「清水音泉がみんなの個性を認めてくれている」という言葉も良かった。どんなことが起きてもおもろいに変えている点にも触れながら、「清水音泉がいるから、俺らもやれるんです」というストレートな想いは心に突き刺さった。
ORANGE RANGE 撮影=オイケカオリ
「ジェットバス」六番風呂ORANGE RANGE。22年前の楽曲「以心電心」は、観客全員が幸福そうな顔で踊っている。大ヒット曲の強みを感じていると、続く、これまた22年前の大人気曲「ロコモーション」へ。イントロが聴こえてきた瞬間の沸き具合の凄さって、まぁビックリするくらいの沸き具合! 離れたフードエリアまで大盛り上がり。四星球の康雄による前日X投稿を引き合いに出して、「バンドマン舐めんなよ!」話へ。これは初日中止の影響がよしんばあったとしても、どんな状況でも絶対にバンドマンは盛り上げるという意地の話。そして、知らない曲でも楽しむこと(楽しんでいるふりをすること)を観客に誓わせる契約儀式もユーモアに溢れてるし、どんな手を使ってでも必ず観客を楽しませ盛り上げる心意気が素敵だった。『OTODAMA』を応援していくこと(応援していくふりをすること)もどさくさに紛れて全力で誓わせていたのも嬉しい限り。観客が初めて聴く曲だとわかれば、曲を止めてでも盛り上げ方を伝授したりしながら、ラストは「イケナイ太陽」→「上海ハニー」を畳みかける。幸せをかき混ぜていく目出度いハッピータイム。
キュウソネコカミ 撮影=渡邉一生
夜7時35分。「エレキブロ」。トリのキュウソネコカミ。すっかり陽は暮れている。今や清水音泉を代表するバンドであり、スーパーヤングニューカマーのイメージがあった彼らもアラフォー。そして何よりも関西在住のバンドであるので、『OTODAMA』への想い入れは人一倍強い。サウンドチェックから気合いは伝わってきたし、舞台裏で見守っていた四星球のモリスは「今日のキュウソ攻めてますよね!」とセットリストを見て興奮していた。確かに「私飽きぬ私」→「The Band」というスタートダッシュからは決意表明すら感じる。セイヤは「ちょっとでも清水音泉のダメージが減ればいいなと」言って、こう続けた。
「清水音泉は、みんなで作り上げているイベントです!」
撮影=渡邉一生
「なにをやってもあかんわの集い」というバルーンの垂れ幕についても、ダブルミ―ニング過ぎて笑えないと言いながら大笑いして、そういうところも愛すべきイベントだと観客に語りかける。セイヤ自身の哲学も踏まえた上で、「完璧すぎないところが愛おしい」と評した。ここでもまた出た、「愛おしい」……。もうこれ以上の言葉はないだろう。清水音泉にも『OTODAMA』にも詳しくない人でも、演者たちから今日一日レクチャーを受けて愛おしさが理解できたであろう。その愛しさは、いよいよ「ジェットバス」大トリ岡崎体育へと繋がっていく。
岡崎体育 撮影=オイケカオリ
夜8時15分。「ジェットバス」。大トリ岡崎体育。2020年大トリをやるはずだったことを明かして、繰り越しでの今年と話す。衣装も普段のままで、そのままサウンドチェックから本編へとぬるっといくのも肩に力が入り過ぎてなく何気に「ひとりでトリした人いたっけ?」と言っていたが、ひとり名義の人はいても、舞台に完全ひとりであがった人は、私の記憶が確かならばいないはずだ。ジャンケンで勝った人だけ踊れるとか、突然英語で喋り出したり、絶対に真似できないハンドクラップリズムを観客に求めたりと、何も飾らない本人の言葉を借りるならば茶番を繰り返していく。何より観客がまるで寄席を観ているかの如く心から大笑いしているのも良い。
撮影=オイケカオリ
「『OTODAMA』お客さん変な人多いので茶番に付き合ってくれる幸せを感じています」
関西人特有のちょけて照れ隠しする典型的な岡崎だが、この言葉は本音であっただろう。もしも自分が本当にAIライターならば耳が痛い「Quick Report」。近年フェスからクイックレポートがほぼ消えかけているのは、クイックなんかじゃレポートできっこないからだろう、特に岡崎体育は。「観客のボルテージは一気に最高潮に」なんて言葉でまとめたいのならば最低でも108回……いや∞に書かないといけない。「僕は僕の精一杯」とも強調していたが、その気概は「FRIENDS」でも感じた。泉大津フェニックスのフェニックスを、「なんぼでも生き返ってくるなんて格好良くない!?」と言っていたが、まさに『OTODAMA』がそうであるし、6年越し大トリを務めあげる岡崎にも言える言葉だ。
撮影=オイケカオリ
今年メジャーデビュー10周年なのも大トリの大きな理由だが、曲の中で発表したいことがあるという。で、曲の中で、そしてスクリーンにも大きく映し出されたが、メジャーデビュー10周年ファイナル公演として、2027年3月22日(祝)大阪城ホールが発表される。この発表の仕方は清水さんの粋な計らいと言っていたが、祝うかのように打ち上げ花火も上がる。言霊として残して実現する為に、『NHK紅白歌合戦』出場という夢も宣告。しっかり笑わせて、しっかり聴かせて、しっかり伝える。そんな大トリライブ。
撮影=オイケカオリ
撮影=オイケカオリ
「ご入浴ありが湯ございます」
清水音泉からの洒落っ気たっぷりのメッセージがスクリーンに大きく映し出されたところで、ピーズ「グライダー」が流れる。ピーズは今年入浴していないが、『OTODAMA』にとっては必要不可欠なバンドであり、ここでは詳しくは書かないが、今年は特に色々な想いを感じて胸が熱くなる。
夜9時に大トリ終わり、そのまま「源泉テント」で源泉クライマックス湯上りアクトとしてトモフスキー大見参! 言うまでもなく、はることピーズのボーカルである大木温之の双子の弟。昨年還暦を迎えたトモフスキーが殿(しんがり)を務める。
トモフスキー 撮影=浜村晴奈
「ジェットバス」から「源泉テント」へダッシュで走っていると、横を清水さんと康雄も走っている。主催者も共演者もみんな観たいのだ。最初のフラカン同様に最後のトモフというのは、清水音泉と『OTODAMA』の根っ子というか重要な時間。野球でいう先発と抑え。つまりエースと守護神が存在してくれているからチームは勝つ、みたいな安心感というか高揚感。「こころ動け」なんて言われるが、こころ動かないわけないし、兎にも角にもトモフパワーを我々聴く側はスポンジのように吸収するのみ。
「無計画という名の壮大な計画」なんて、そのタイトルだけで心が震える……。60歳のバンドマンに首ったけ状態だし、本当にバンドマンって何歳になっても格好良いなと惚れ惚れしてしまう。「源泉テント」のテント部分を越した相当後ろまで人人人人人人……で溢れ返っている。鯛焼きで言うならば尾っぽまで、肉や魚ならば骨までしがみたくなるくらいに、『OTODAMA』は最後の最後までが楽しい。『OTODAMA』チームの一員たちである四星球全員、HumpBack林・キュウソネコカミのセイヤも舞台に上がって一緒に歌って踊っている。それこそ全員野球!
撮影=浜村晴奈
撮影=浜村晴奈
「家に帰るまでが『OTODAMA』だけど、家に帰ってからも『OTODAMA』です!」
まさにそうですとしか言いようがないトモフの大名言も飛び出た上に、トモフは「このステージ、イイ~!」と叫んでいる。RCサクセションが歌うところの「キモちE」というやつだろう。最後は「蛍の光」。フラカンの「ラジオ体操のうた」から始まり、トモフの「蛍の光」で終わるなんて、なんて素晴らしい大祝祭なんだ……。
撮影=浜村晴奈
「また来年逢えるように!」
トモフは、そう言った。初日中止なんていう我に返るスキマを見事に埋めてくれたトモフ。あんまり振り返るようなことは言いたくないけど、これは前に進む言葉だと想い、敢えて活字にするが、そろそろSuchmos大トリを観たい。それは来年なのか、いつなのかは置いといても、いつか必ず観たい。
最後にもうひとことだけ。清水音泉も演者も関係者も、そして何より観客皆様も年齢世代問わず老いも若きも全員集合・闘魂伝承で大祝祭『OTODAMA』をずっと続けて繋げていきませう。おあとがよろしいようで。
撮影=渡邉一生
取材・文=鈴木淳史 写真提供=清水音泉(撮影:渡邉一生、オイケカオリ、浜村晴奈)
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