空山作品が一堂に会する、過去最大規模の回顧展『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』レポート
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空山 基 Space Traveler 2025 (C) Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA
2026年3月14日(土)から5月31日(日)まで、東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOにて、『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』が開催中だ。
1947年生まれの空山基は、人体と機械の美を追求した作品で国際的に知られるアーティスト。1978年に初めて発表したロボット表現を源流とし、1983年の同名書籍の刊行によってその名を知らしめた「セクシーロボット」シリーズでは、女性の人体美をロボットに取り込んだ表現で、後のロボットのイメージ形成に大きな影響を与えた。
本展は、空山が1978年にウィスキーの広告のために描いたロボット作品や、恐竜やユニコーンなどを画題にした最新のキャンバス作品、デザインを手がけたAIBOの原画やエアロスミスのアルバムジャケットとして知られる作品に加え、最新の彫刻作品や映像インスタレーションも一挙公開。空山が半世紀にわたり追い求めてきた、光・透明・反射という表現の核を、圧倒的なスケールで体感できる極めて貴重な機会である。
今までの歩みを振り返る、最大規模の回顧展
空山作品の軌跡をエリアごとに紹介する本展。会場は、近年描かれた大型の絵画作品が並ぶ「ギャラリー」に始まり、ダイナミックな映像に没入できる「フローティングスロースぺース」、ロボットが鏡に映り込んで無限に反射する「スペーストラベラー」「ミラーメイズ」、水槽型の迫力あるインスタレーション「アクアリウム」、壮麗な空間でロボットたちがポーズを決める「テスモフォリア」、空山のスタジオの再現や貴重な原画などが並ぶ「ピンクティールーム」、コラボレーション作品を紹介する「アーカイブルーム」、ダイナミックな映像が流れる「ティーレックス」に分かれる。
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
9つのセクションごとに雰囲気が変わるので、違うセクションに足を踏み入れるたび、新鮮な驚きに包まれる。空間の変化を楽しみながら、絵画や映像、立体やインスタレーションといった彩り豊かな作品をたっぷりと堪能することができるだろう。
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
作品の年代は幅広く、最初期の作品や過去の貴重な原画から、長年手がけている彫刻、最新のインスタレーションまで幅広く紹介。空山が立ち止まることなく芸術的な進化を続けていることを実感できるほか、変わらないテーマや核となっている要素、無尽蔵の想像力などがダイナミックに伝わってきて、まるで作家の頭の中を覗いているようだ。
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
空間が広く、大きな作品が多いのも本展の魅力のひとつ。近くから見上げたり遠くから離れたりすることで全貌が見える作品や、4枚で1つの画題を表現する絵画、巨大な映像スクリーン、背の高いロボットたちなど、迫力満点な作品群は鑑賞者を圧倒する。作品数も非常に多く、まさに最大規模の回顧展といえよう。
空山 基 Untitled 2023 (C) Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA
没入空間で作品を堪能
本展は驚きと楽しさに満ち、アートの展示にしてアミューズメント施設に来たような高揚感に満ちている。美しいロボットのスペーストラベラーが宇宙空間を漂う「フローティングスロースぺース」では、鮮やかな青や赤の宇宙と銀色のスペーストラベラーに目を奪われ、銀河を漂っているような気持ちに。
空山 基 Space Traveler 2025 (C) Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA
まるで無重力空間で浮いているようなポーズを取るロボットの「スペーストラベラー」、ショーケースの中のロボットたちが輝きながら無限に反射する「ミラーメイズ」、壮麗な邸宅や宮殿にも似た「テスモフォリア」では、理想的なプロポーションのロボットたちがさまざまなポーズを取っている。永遠の旅や出られない迷宮、変わることのない美などを想起させられる、魅力的な非日常空間だ。
空山 基 Space Traveler 2025 (C) Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
空山はサメを「最もセクシーな魚」と評している。サメの彫刻作品がこちらを見つめる「アクアリウム」は、深海のような透明感と神秘性のある水槽型の作品だ。周囲の壁面には彫刻の原型となった関連作が紹介されており、作品の発展過程を追うことができる。
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
本展はこれまで上海、広州と巡回してきたが、「ティーレックス」はここ東京展にて初公開の新作。SONYの最新触覚技術「ハプティクス」を駆使しており、映像・音響・振動を連動させることで複数の感覚に訴える新感覚のインスタレーションである。空山が子どもの頃から「アイドル」と称する恐竜が目の前で生き生きと動く、迫力に満ちた作品だ。
空山 基 TREX 2026 (C) Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA
作家の熱量が伝わる充実の内容
空山の活動の軌跡を紹介する本展は、作家本人の創造性や創作欲がダイレクトに伝わってくる内容である。「ギャラリー」の大きな絵画は大胆な筆致が目をひき、「ピンクティールーム」に並ぶ多様な姿のロボットたちは躍動感に満ちた姿を披露。多岐にわたる空山作品の中でも、代名詞となっている作品がずらりと並ぶさまは圧巻だ。
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
「ピンクティールーム」にある空山のスタジオを再現したスペースは、絵画やオブジェ、ファッションアイテムや画材、メモなど様々な品が置かれ、まるでエキセントリックなおもちゃ箱のようだ。人工物の無機性と官能性、金属の熱と冷たさなど、相反する要素を混ぜ合わせて昇華させる空山の創作は、このカオスのような空間から生まれるのだと実感する。
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
「アーカイブルーム」にはファッションブランドのディオールやステラ・マッカートニー、ミュージシャンのザ・ウィークエンドらとのコラボレーション作品などが並ぶ。空山が現代のクリエイティブシーンを刺激し、広範な影響を及ぼしていることが伝わるエリアだ。
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
また特別企画として、SF漫画『攻殻機動隊』の主人公である草薙素子にインスパイアされた世界初の新作も公開。草薙は全身義体(サイボーグ)なので、空山の作風や本展の雰囲気と非常に相性が良い。無数のケーブルにつながれて静かに佇むロボットは荘厳な雰囲気に包まれ、時が止まっているようにも、今にも目覚めて動き出しそうにも思えた。
空山 基 Sexy Robot_The Ghost in the Shell type 2 2026 (C) Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA
空山基の歴代作品と最新作が一堂に会し、圧倒的なスケールで没入させる『SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―』。本展は5月31日(日)まで、CREATIVE MUSEUM TOKYOにて開催中。
文・写真=中野昭子
イベント情報
日程:2026年3月14日(土)~5月31日(日)※休館日なし