舞台『文豪とアルケミスト』第9弾開幕~泰江和明演じる小林多喜二らプロレタリア派が綴る、不屈の魂
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舞台『文豪とアルケミスト 掬ウ者ノ響歌(コンチェルト)』 撮影=潮田茗
文豪とアルケミスト 掬ウ者ノ響歌(コンチェルト) ゲネプロ 2026.3.27(FRI) 天王洲 銀河劇場
舞台『文豪とアルケミスト 掬ウ者ノ響歌(コンチェルト)』が2026年3月27日(金)、東京・天王洲 銀河劇場にて開幕した。シリーズ第9弾となる今作では、小林多喜二(泰江和明)らプロレタリア派の文豪たちにスポットを当てたストーリーが描かれる。初日前に行われたゲネプロ公演の模様をお伝えしよう。
原作は文豪転生シミュレーションゲーム『文豪とアルケミスト』。“アルケミスト”の特殊能力により転生した文豪たちが、人々の記憶から文学書を消し去ろうと目論む “侵蝕者”と戦う物語が展開される。
舞台上には、歯車をあしらった象徴的な二階建てのセット。やがて、深い闇の向こうから小林多喜二がやってくる。生前の記憶を独白しながらも、決して絶望にのまれた言葉ではない。転生を導く光の先へ向かう道中、プロレタリア派の同志である徳永直(反橋宗一郎)と中野重治(小椋涼介)と出会うが……。互いの姿かたちを確かめるようにしっかりと抱き合い、再会を喜ぶシーンには胸が熱くなった。
帝國図書館には生前から手紙の交流があった志賀直哉(谷佳樹)をはじめ、梶井基次郎(相澤莉多)、坂口安吾(小坂涼太郎)、中島敦(岸本勇太)も転生していた。会話の端々から、文豪同士の関係性が見え隠れする。原作ゲームから抽出された人間模様はもちろん、舞台ならではのオリジナルストーリーだからこそ交わされる対話にも心が躍った。
転生した文豪たちは“侵蝕者”の手にかかった文学書へ“潜書”する。筆致を具現化した作品世界の美しさに浸る間もなく、魂を込めて綴った文章が奪われ、登場人物や風景が蝕まれていく――破壊されていく本の中の世界は、必然的に小林の壮絶な体験を重ねてしまう。奪われていく理不尽への怒りも相まって、敵である“侵蝕者”を制圧していく小林だったが、仲間であるはずの文豪にも痛みをもたらす結果に。生じた不和を修復する猶予もないまま、再び別の文学書が“侵蝕”され始める。
文豪のヒューマンドラマを主軸にしながらも、シリーズを通じた伏線とアクションを散りばめた怒涛の展開は今作も最高潮。「小説の神様」と称される志賀は場の中心を担う、ムードメーカー的場面も。のらりくらりとしつつも、鋭い観察眼を発揮する坂口との連携は今作ならではの見どころだろう。独自の世界観を持つ梶井は、豊かな文章力を表したような存在感も印象的。2つの人格をもつ中島の自身への向き合い、そして他者へのリスペクトが温かく表現されていた。
今作を担うのは、一堂に会したプロレタリア派の面々。親しみのある熊本弁で場を明るくする徳永は快活さゆえ、負の感情がダイレクトに波及してくる。冷静沈着な一方で、抱え込んできた想いを発露する中野の繊細さにも込み上げるものがあった。なにより、プロレタリア派の絶対的支柱としての小林多喜二像が鮮烈。不屈の精神、それにより生じる自らの強い光と影に苦しみながらも最初から最後まで前を向いている。小林自身から紡がれるまっすぐな言葉はどれも強烈で、いつまでも心に残るだろう。
文学が持つ圧倒的なメッセージ性と、物語を体現するための演劇。化学反応の心地良さが「文劇」ならではの魅力だろう。思わず心に書き留めたくなるセリフも多い。原作ゲームはもちろん、劇中に登場する文豪たちの作品にも触れたくなる。転生を妨害するのは何者か、“侵蝕”されてしまった作品の浄化は果たせるのか、“侵蝕者”の目的とは何か――頭をフル回転させながらも物語の勢いに身を任せる激動の感覚を、ぜひ劇場で味わってほしい。
東京公演は4月5日(日)まで。大阪公演は4月11日(土)~4月12日(日)、COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて上演される。
取材・文・撮影=潮田茗
公演情報
全席指定:11,000円(税込)
小林多喜二役 泰江和明
徳永直役 反橋宗一郎
中野重治役 小椋涼介
志賀直哉役 谷佳樹
梶井基次郎役 相澤莉多
坂口安吾役 小坂涼太郎
中島敦役 岸本勇太
監修:クリーク・アンド・リバー社
世界観監修:イシイジロウ
脚本:なるせゆうせい(オフィスインベーダー)
演出:吉谷晃太朗
音楽:坂本英城(ノイジークローク)・tak・宮里豊
主催:舞台「文豪とアルケミスト」9製作委員会