『FM802弾き語り部』が待望の再始動ーーEnfants松本大、Conton Candy紬衣、Maki山本響、KOTORI横山優也が集ったバンドマンによるアコースティックの宴
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写真=FM802提供(撮影:渡邉一生)
『FM802弾き語り部』2026.3.23(MON)大阪・BIGCAT
大阪のラジオ局・FM802によるアコースティックライブイベント『FM802弾き語り部』が、3月23日(月)に大阪・BIGCATで開催された。
『FM802弾き語り部』は、松本大(Enfants)が部長となり2017年にスタート。これまでにさまざまなゲストを迎えて行われてきたが、2023年1月以来の開催となった今回は、松本大に加え、紬衣(Conton Candy)、山本響(Maki)、横山優也(KOTORI)の計4組が出演。松本より「男子マネージャー」に抜擢されたFM802 DJの中島大静の司会進行のもと、松本以外は新入部員というフレッシュな顔ぶれがそろった、約2年半ぶりの宴がついに開演した!
山本響(Maki)
山本響(Maki)
「とりあえず大きな声でいい歌を歌うんで、好きなように聴いてもらえたら。てか、お酒は飲んでます?(笑)」と、第一声からグッと距離が近づいたのは今宵のトッパー、Makiの山本響(Ba.Vo)だ。ウォーミングアップがてらアコースティックギターに指を走らせ、「FM802でめちゃくちゃヘビーローテーションしてもらってる曲」と、まずは最新アルバム『My favorite things』のリード曲「Art」を情熱的にかき鳴らす。曲中に「俺はベースボーカルなんですけど、ギターソロを弾いていいですか?」とかかんに挑戦したものの、すぐさま断念し口ギターソロにスイッチ(笑)。隙あらば観客に話し掛けまくるフランクなステージながら、いざ歌い出せばどこか憂いを含んだ鋼のボーカルで見る者を魅了してしまう。
山本響(Maki)
「楽しく歌えてます、ありがとうございます! ハッピーな感じでいきたいんで、我々の代表曲をレゲエバージョンで弾かせていただきます」と奏でた「ストレンジ」でも、歓声をガソリンにぐんぐん調子を上げていく。一転、普段はモッシュ&ダイブが巻き起こる「斜陽」を、「荒々しい曲なんですけど、表裏一体としてきれいな部分があるので。心で聴いてください」との言葉通り、じっくり音を重ね、切々と訴え掛けていく。
山本響(Maki)
続いても、「ユース」、「落日」と、ネイキッドな弾き語りだからこそ、持ち前の声の強さとメロウな旋律がいっそう際立つ楽曲の連続。時には即興で今この瞬間の感情を歌詞に織り交ぜるなど、ラストの「Lucky」まで混じりっけなしの全力で思いを伝えた30分間だった。
紬衣(Conton Candy)
紬衣(Conton Candy)
代表曲の「ファジーネーブル」を歌い上げ、一瞬にしてガラリと空気を変えたConton Candyの紬衣(Vo.Gt)は、冒頭からBIGCATいっぱいにスウィートな歌声を響かせる。「今日は東京からやってきて、窓から見える景色がどんどん変わっていったり、天候が曇りから晴れになっていったり……そういう景色を見ていたら歌いたい曲ができたので」と導いた「Touring」は、その日の心模様をフレキシブルに反映できる弾き語りならでは。アコースティックライブ特有の静寂を巧みに味方につけ、自身のメロディと物語の輪郭をより深く描いていく。
「さっき出演者みんなでビールのロング缶を飲んでたんですけど、お花見をやりたいなってめっちゃ思いました(笑)。春が来るから、寒い冬でもちょっと頑張ってみようって思える。そんな前向きな片思いの曲を」
紬衣(Conton Candy)
ハイチェアーにちょこんと座り「恋」を歌う光景は、まるで彼女の部屋をのぞいているみたいな親密感を醸し出す。弾き語りをする機会があまりないという彼女は、「高校生ぶりに部活に入れてめっちゃうれしいです」と笑みを浮かべ、「みんなが知ってる春っぽい曲も一曲やりたいなと思って」と、YUIの「CHE.R.RY」をカバー。胸がキュンとする楽曲の世界観と声質もベストマッチで、「完全にモテにいってましたね(笑)」という選曲は大成功!
紬衣(Conton Candy)
その後も、5月20日(水)にリリースを控えるメジャー1stアルバム『すっぴん』から本邦初公開の新曲や、「FM802にとてもお世話になった曲があるので」とFM802の2024年10月度ヘビーローテーション曲「BABY BABY」を届け、『FM802弾き語り部』の新たな出発に一輪の花を添えた。
横山優也(KOTORI)
横山優也(KOTORI)
「いい歌をいっぱい歌うんで、自由に聴いていってください」なんてさらりと言いながら、一曲目の「秘密」から見事に有言実行。一番手のMakiの山本の特徴を絶妙に捉えた歌まねでも場を沸かせつつ(笑)、続く「魔法」でも、派手な演出やギミックがなくとも、歌が良ければ、声が良ければ、歌詞が良ければ、それだけでぶっ刺さる。そんなアコースティックライブの真髄を初っぱなから突き付ける横山優也(Vo.Gt)。「声が似てるんでMakiの曲をやってみようかと。Makiと対バンするときは執拗にこの曲をやってくれと言ってます(笑)」とカバーした「Landmark」には、オーディエンスも思わず拍手喝采だ。
横山優也(KOTORI)
「僕は宮崎県出身で……上京してもう10年以上経ってるわ、ヤバいですね。「東京」という曲を作ったんですけど、上京したときの気持ちを何も思い出せなくて。その分今までが濃かったんだなと思って、今の気持ちで作った春の曲です」と、数多くのバンドがテーマに掲げてきた「東京」でもKOTORIなりの情景とメッセージをしかと刻み付け、「声が枯れてきたんで一緒に歌ってもらっていいですか?」といういざないもニクい「トーキョーナイトダイブ」では、会場を温かなシンガロングが包み込む。
「今日は心斎橋のBRONZEというライブハウスで、僕の大好きな友達が活動休止ライブをしていて。ここで俺がライブをしてるのも運命だったのかなと。さよならポエジーとの出会いの曲をやらせてもらいます」
横山優也(KOTORI)
今まさにその活動が止まるバンドと、続けていくと決めたバンド。立っている場所は違えど、決断は異なれど、横山が歌った「二束三文」が絆となってにじみ出す。「全ての音楽好きとバンドマンにこの曲をささげて終わろうと思います」と放った「Masterpiece」まで、アコースティックだろうが弾き語りだろうが一人だろうが、バンドマンの矜持を感じさせた全7曲だった。
松本大(Enfants)
松本大(Enfants)
「盛り下げに来ました(笑)。今日は初めての人たちばっかりでフレッシュな感じだから、かなり毛色が違うので楽しんでもらえるか分からないですけど」と吐露したEnfantsの松本大(Vo.Gt)だったが、はかなくも美しい「Dying Star」にみるみる引き込まれていくフロアを前に、そんな危惧は無用だったと思い知る。一音一音の残響とともにEnfantsの深淵にゆっくりと落ちていく「R.I.P.」、耳をつんざくダークな叫びが心臓を貫く「HYS」……この2年半の心境と表現の変化と同時に、弾き語りという孤独な戦いの現場で研磨し続けてきた確かなエッジを見せつける。
松本大(Enfants)
「『FM802弾き語り部』ってちょっとポップなコンテンツじゃないですか? その上で3曲聴いてもらって、どうこのトゥーマッチ感(笑)。2年半空いたのは自分が気乗りしないのもあったんですけど、実際この企画自体は、自分で始めておきながら素晴らしい。いろんな人が出てくれて、すごく素敵なイベントになったなと思って。ただ、自分の立ち位置が変わってきてるから、結構前向きにぼちぼち部長から降りたいなと(笑)。とは言え、この部活はずっと続いてほしいなと思うし。今日は来てくれて本当にありがとうございます」
松本大(Enfants)
イベントの発起人としての今の率直な気持ちを述べ、「俺は言葉を大事にしながら曲を作ってるから、日記がそのまま曲になる感覚があるんだよね。だから言葉にフォーカスを合わせて、一緒に沈んでくれたらうれしい」と松本。そんなMCすら詞のようで、「Autopilot」、「Play」と静かに濃度を増していく圧倒的没入感がたまらない。
「今日出てくれた3人のアーティストにもう一度大きな拍手を」と歌い出した最後の「星の下」では、魂が震えるような感動がBIGCATに降り注ぐ。ニューアルバム『Bedford Hedgehog』の収録曲も多数披露し、『FM802弾き語り部』の再始動の夜を締めくくるにふさわしい強烈な存在感を突き付けた松本大だった。
松本大(Enfants)
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=FM802提供(渡邉一生)