敬愛するバンドとの共演、35.7がyonigeを迎えて見せた宝物のような点

2026.4.7
レポート
音楽

35.7

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『35.7 two-man live houi』2026.03.29(sun)F.A.D YOKOHAMA

35.7が対バンを迎えて、大阪と横浜の2箇所で開催した『35.7 two-man live “houi”』。3月7日(土)・大阪・Live House ANIMA公演のゲストアクトは、ミニマムジーク。3月29日(日)・神奈川・F.A.D YOKOHAMA公演には、yonigeが出演。敬愛するバンドとの共演を35.7が実現させた2公演の内、F.A.D YOKOHAMAの模様をレポートする。

yonige

最初にステージに登場したのは、ゲストアクトのyonige。牛丸ありさ(Vo/Gt)、ごっきん(Ba/Cho)、サポートプレイヤーの土器大洋(Gt)、ホリエ(Dr)を拍手が出迎えた後、1曲目「さよならアイデンティティー」がスタートした。ギターを弾きながら歌い始めた牛丸が先陣を切り、ごっきん、土器、ホリエの演奏が合流。厚みのあるグルーヴィーなバンドサウンドに包まれながら力強く突き抜ける歌声が心地よい。「ワンルーム」と「strattera」も届けられた時点で、満員のフロアからステージを見つめる観客は、すっかり夢中になっていた。35.7のファンの中には、初めてyonigeのライブを観る人も少なからずいたはず。

牛丸ありさ(Vo/Gt)

「春の曲をやります」と牛丸が言い、歌い始めた「愛しあって」。穏やかなサウンドの向こう側から、整理がつかない想い、戸惑い、痛みが滲むのを感じた。ポジティブな捉えられ方をすることの多い春だが、気温の変動、環境の変化が重なることにより、心が激しく揺れ動く季節でもある。決して晴れやかな気持ちで春を迎えられない人にとって救いになる何かが、寂寥感の中に息づいている曲だった。静かに奏でられるサウンドに彩られながら、叙情的なメロディをじっくり浮き彫りにした「沙希」。壮大に高鳴っていくサウンドに息を呑まされた「対岸の彼女」……耳を傾けていた観客は、演奏が幕切れた瞬間、感極まった様子の拍手をステージに向かって送っていた。

ごっきん(Ba/Cho)

歌、演奏に深く引き込まれずにはいられない瞬間の連続だったが、終盤の小休止でリラックスしたムードとなった。まだきちんと話をしていない35.7のメンバーたちに関して、「多分、yonigeのことが好きなんだよね?」と他人事のように言っていた牛丸。好きではないバンドに対バンをお願いするはずもない。「絶対好きやって!」とツッコミを入れたごっきんは、若手のバンドに「聴いていました」と憧れの眼差しを受けるようになったことに喜んでいた。先日、再びメジャーレーベルの所属となったyonige。30代になるとこれまでの日々を振り返ることもあり、20代とはまた別の心境で活動と向き合うようになる旨を牛丸が語っていたのも印象的だった。

yonige

そんなMCタイムを経て、演奏再開。ダンサブルなビートに合わせて観客が身体を揺らしていた「アボカド」。硬質なバンドサウンドをじっくり体感させてくれた「スクールカースト」。そして、ラストは「さよならプリズナー」。届けられるサウンドを心の底から気持ちよさそうに受け止めた観客の間から、手拍子が沸き起こった。悲しみを湛えている歌だが、力強さもたっぷり含んでいる。痛み、不安、迷い、鬱屈した心情も、こうしてライブハウスで鳴り響かせると、不思議と希望の光のようなものを生む。そんなことも感じられるライブをyonigeは見せてくれた。

たかはし(Gt/Vo)

セットチェンジが行われ、サウンドチェックのためにステージに現れたたかはし(Gt/Vo)、かみのはら(Gt)、さくや(Ba)、こな(Dr)。肩慣らしで「50%」を1コーラスだけ演奏しつつ、微調整をしていた。そして迎えた本番。オープニングを「運命論」が飾った。観客が掲げた拳が揺れる風景が美しい。続いて新曲の「あむりた」と「祝日天国」も届けられたが、たかはしの歌を彩るかみのはらによるギターの単音フレーズが絶妙だった。彼女のギタープレイは、35.7のもうひとりのメインボーカルと称しても大袈裟ではないだろう。アルペジオ、コードプレイ、単音リフを絡ませながら繰り広げるたかはし&かみのはらによるギターアンサンブルも、心地よい響きを次々生む。リズムを担うさくや&こなの華のある安定感、温かなグルーヴは、聴きながら身体を揺らす喜びを加速する。全身で感じるのがとても楽しいサウンドを序盤からたっぷり聴かせてくれた。

かみのはら(Gt)

最初の小休止で、yonigeとの対バンが実現した嬉しさを語り合ったさくや&こな。たかはしは『houi』というタイトルに込めた意味、yonigeへの想いを語った。「大学を卒業したので、改めてバンドとしてのコンパスというか、見つめたい方角にいるバンドさんに声をかけたんです。yonigeとの出会いは中学生の時。恋をした時に「春の嵐」を聴いてみたり、学校が嫌で周りがだるかった時は「最終回」を聴いてみたり。人生のいろんな部分の思い出になるバンドが私は好き。そういうバンドになりたいと思ってます」――学生時代に足を運んだ回数がおそらく最も多いF.A.D YOKOHAMAで対バンができていることへの喜びも滲ませていた。そんなMCタイムを経て演奏再開。スタートするや否や観客の手拍子が加わり、一際の躍動感が生まれた「ふたり」。そして「Hurtful」「nemus」「スローファイヤー」も連発され、「空気洋燈」に突入。寂し気なメロディの熱を徐々に高め、空間系のエフェクトを効果的に駆使したギターが冴え渡るアウトロへと雪崩れ込む展開がドラマチックだった。

さくや(Ba)

「yonigeの好きな曲の好きな部分をちょっとだけ歌わせてもらいます」とたかはしが言い、ギターを弾きながら歌い始めた「愛しあって」の一節。「きっともう恋じゃなくて、意地、執着とか、そういうものを『好き』だと思ってたのかもしれない」という言葉を添えることで、その後に続いた35.7の曲「忠犬ボク公」がyonigeの「愛しあって」とリンクするのを感じた。そして歌い終えた後、抱えている想いを語ったたかはし。元気ではない時期がずっと続いていて「生まれてよかった」と思う瞬間はまだ訪れていないが、「生きててよかった」と感じることはあると言っていたのが印象的だった。「みんなにもそういう日があったんじゃないかな? わからないけど。勘違いでもそう思えた日があったなら、苦しいけどしあわせが来るまでは……待つのを諦めてもいいけど、否定しちゃいけない。一緒に『しあわせだったね』と思える日が来ますように。絶対に来ると信じてます。ちょっと肩の力を抜いて、深呼吸しながら聴いてほしいです」――この言葉を噛み締めながら聴いた「しあわせ」は、幸福を待つ日々を支える力を観客に少しでも届けようとしているのを感じた。

こな(Dr)

《好きな君を捨て君を選んだんだ ずっと一緒にいたいから 3.1415926 とくべつなおまじないだよ》という観客の大合唱からスタートした「うそうそほんと」。沸き起こった手拍子も、この曲が愛されていることを物語っていた。そして「バッドリピートエンド」を歌い始める前、この曲のインスパイアの源となったのはyonigeの「バッドエンド週末」だと明かしたたかはし。対バンのこの機会にぜひ歌いたい曲だったのかもしれない。切なさと晴れやかさが入り混じった歌声で本編を締め括っていた。

35.7

アンコールを求める声、手拍子に応えてステージに戻ってきた4人。6月19日(金)・愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO、6月20日(土)・大阪BIGCAT、7月2日(木)・東京・Spotify O-EAST――東名阪で開催されるワンマンライブのタイトルが“to_ten”だと発表した後、たかはしが説明を加えた。“to_ten”とは“、”を意味する“読点”。これまでの活動で出たかったフェスへの出演、憧れのバンドとの対バンなど、経てきた宝物のような“点”をくっつけ、学生時代から駆け抜けてきた歩みに“読点”を打つような集大成のワンマンライブにしたいという想いを込めたのだという。そして、「僻みでもあるんですけど、ハッピーに生きてる人よりも『悲しい』『苦しい』がある人の方が、すごく豊かなんじゃないかなと私は思います。私は夢とかない。ただ、音楽が自分には必要なんです。曲を作ること、歌うことが私には必要。お客さんの中にも音楽が『好き』というより『必要』な人がいると思います。今のところ22歳の私はそういう感じ。生きるために、生き延びるために音楽をし続けたいと思ってます」と語った後、彼女はアンコールをどうするか迷い始めた。先ほど「しあわせ」を歌ったので、「すももドロップ」も歌いたくなったらしい。大阪公演と同じ曲をやるのは嫌だと言い、メンバーと相談し始めたので客席からは笑いが起こっていた。

フロアから届けられた声を汲みつつ演奏する曲が決まり、たかはしは改めて観客に語りかけた。「みんなのことを否定してしまうかもしれないし、否定されたと感じる人がいるかもしれないけど、それでも『生きててほしいな』と思ったし、『みんなのことを全肯定したいな』と思ってます。またどこかで会えたら嬉しいです」――そして届けられた「すももドロップ」と「かに座のうた」は、再会の約束の歌として迫ってきた。歌詞はもちろん、サウンドのテイストも全く異なる2曲だが、生きていくこと諦めない姿勢、生きていくことを諦めてほしくないという願いが根底に脈打っている――そんなことを感じながら受けとめることができた。

演奏を終えると、拍手に見送られながらステージを後にした4人。満員のフロアは熱気で満たされていたが、余韻は爽やかだった。大阪と横浜の2公演で敬愛する2バンドと共演した体験は、35.7の活動を後押しするエネルギーの1つとなるのだろう。今後予定されている様々なイベント、ワンマンライブへの期待も高まる。たかはしの言葉を借りるならば、“宝物のような点”を着々と経ているのを感じるライブだった。


取材・文=田中大 撮影=Kanta Nakano

セットリスト

『35.7 two-man live houi』2026.03.29(sun)F.A.D YOKOHAMA
yonige
01.さよならアイデンティティ
02.ワンルーム
03.strattera
04.愛しあって
05.沙希
06.対岸の彼女
07.アボカド
08.スクールカースト
09.さよならプリズナー
 
35.7
01.運命論
02.あむりた
03.祝日天国
04.ふたり
05.Hurtful
06.nemus
07.スローファイヤー
08.空気洋燈
09.忠犬ボク公
10.しあわせ
11.うそうそほんと
12.バッドリピートエンド
En1.すももドロップ
En2.かに座のうた

ツアー情報

35.7 ONEMAN LIVE 2026 “to_ten” 
2026年6月19日(金) 愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ : サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
 
2026年6月20日(土) 大阪・BIGCAT
OPEN 16:30 / START 17:30
問い合わせ : キョードーインフォメーション 0570-200-888 (12:00〜17:00 ※⽇祝休)
 
2026年7月2日(木) 東京・Spotify O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ : AIR FLAG Inc 03-6276-4968 (平⽇11:00〜16:00)
 
 : スタンディング ¥4,800(税込) ※ドリンク代別, 未就学児童入場不可

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47日(火)12:00  2026412日(日)23:59
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