大阪で多彩なオリジナルイラスト作家に出会える2日間、190組が出展した『メルメリィマーケット vol.23』ーー「イラスト好きな方に寄り添えるイベントを」

2026.5.8
レポート
アート

『メルメリィマーケット vol.23』

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メルメリィマーケット vol.23 2026.3.29(SUN) 難波御堂筋ホール

3月28日(土)・29日(日)の2日間、大阪・難波御堂筋ホールにて『メルメリィマーケット vol.23』が開催された。 同イベントは、2015年に大阪でスタートしたオリジナル限定イラスト展示販売イベント。全ユニットを回りきれる規模感で、出展者と来場者の間に密度の濃いコミュニケーションが生まれ、「新しい形でイラスト作家に出会うことができる」として、広く愛されている。今回、SPICE編集部は2日目に会場を訪れ、現地の様子をレポートするとともに、作家陣にも話を聞いた。

受付の様子

近鉄大阪難波駅、大阪メトロなんば駅、南海なんば駅からほど近いビルの一角。御堂筋に面したビルの10階に上がると、会場となる難波御堂筋ホールがあった。エレベーターを降りるとす、受付スタッフが明るい声で迎えてくれた。

『メルメリィマーケット(以下、メルメリィ)』は、大阪でオリジナルのイラストレーションに特化した即売会イベントが少ないことに端を発し、「あなただけのお気に入りに出会える場所」をコンセプトに2015年にスタートした。オリジナル作品のみを扱うことでコンテンツが分散せず、一期一会でさまざまなイラスト作品に出会えるのが特徴だ。表現の方法は原画から本、グッズ、ぬいぐるみ、アパレルなど多岐にわたる。

2015年にHEPFIVEで初開催され好評を博したのち、4回目以降は規模を拡大し、現在は難波へと会場を移して開催。コロナ禍による中断を経ながらも、年2回のペースで継続されている。今では毎回、全国から約200組の作家が出展、約800〜1000人の来場者が訪れるという。

『メルメリィマーケット vol.23』

12時開場と少し遅めのスタートにより、昼食後からでも来場しやすく、再入場もOK。来場者は自由に出入りしつつ、イベントを楽しむことができるため、終了間際まで人で賑わっていることが多いそうだ。会場全体をじっくり巡ることができるほか、作家との交流もしやすく、そうした距離感の近さが出展者・来場者双方にとって心地よい空気を生んでいる。実際に、来場者として訪れていた人が後に出展者となるケースも少なくないという。

また、大阪府青少年健全育成条例に準じたイベントであることから、未就学児から参加可能で、小学生以下は無料で入場できるのもポイントだ。蓋つき飲料のみ持ち込みOKのフリースペースも用意されているので、家族連れでも安心して過ごせる環境が整っている。このちょうど良い規模感が、愛される理由なのだろう。

『メルメリィマーケット vol.23』

広々とした会場にはずらりと机が並び、それぞれの作家が趣向を凝らしたディスプレイで作品やグッズを展開。SPICE編集部が訪れた13時過ぎは、場内が混みすぎることもなく、性別・国籍・年齢問わず、実にさまざまな層の来場者が訪れて、買い物や交流を楽しんでいた。

イベントのメインビジュアルは、毎回のアンケートも参考にしつつ、メルメリィと親和性のある作家に声をかけるようにしている。開催回のイベントロゴの配色に基づいた色指定をして、そこから自由に描いてもらうのだという。実行委員会の担当者の言葉からは、『メルメリィ』と作家を大切にしていることが伝わってきた。

●メインビジュアルを手がけた大阪在住のYUUTAYO! (ユニット名:YO!)

YUUTAYO! さん(ユニット名:YO!)

YUUTAYO!(ユニット名:YO!)は、『メルメリィ』への参加は今回で4回目だという。物心ついた頃から絵を描いているが、初めてオリジナルキャラクターを誕生させたのは高校2年生の時。キャラ設定もしっかり決めているが、設定を知らなくても楽しんでもらえる絵にしたいというのがモットー。画材はアクリルガッシュやコピックなどを使用する。「絵の具の滲みや広がり、ランダム性が好き」とYUUTAYO! 。世界観のこだわりを訊いてみると、「青色を使うのが得意で、宇宙や海を描くことが多いです。5色程得意な色があり、それを基本色として使うようにしています。作品ごとに色を追加することでそれぞれ違った印象にしつつ、基本色がある事で統一された色使いになっています」と語る。

メインビジュアルを使ったグッズも

今回のメインビジュアルも、透明感のある青色やグリーン、差し色のピンクが印象的だ。オファーがきた時は「すごく嬉しかったです」と顔をほころばせる。「青と緑がきたので、最初に思い浮かんだのが地球。地球儀を描きたいなと思って、そこからイメージを広げて1週間で描き上げました。以前ビジュアルを担当された芦屋マキさんと同じ立場になれたのが、すごく嬉しかった。10年ぐらい大好きで憧れの作家さんなんです」と声を弾ませた。

YUUTAYO! (ユニット名:YO!)

この日YUUTAYO! のユニットには、メインビジュアルの原画やクリアファイル、ポストカードの他に、新作イラスト集やオリジナルキャラを紹介する『YO!’s OC book』などが並んでいた。「活動としては、YouTubeでメイキング動画を出したり、展示をしたりイベントに出たり。あまり大きくなりたいとか目立ちたいという気持ちはなくて、ずっと好いてくださる方に安定して見ていただきたいです」と今後のビジョンを語ってくれた。

●創業220年を誇る奈良の墨・書画材メーカーの墨運堂

墨運堂のブース

協賛企業も出展する。創業220年を誇る奈良の墨・書画材メーカーの株式会社墨運堂は、肉球の形をした墨「にくきゅうずみ」や、カラーの「絵墨シリーズ」を販売。絵墨シリーズは墨づくりの技術から生まれた墨運堂独自の絵の具で、ダークトーンからライトトーンまで幅広い色彩表現ができるのが特徴だ。ラメ顔彩は、絵墨の色調と合うような色設計となっている。なお、ノーマルの絵墨は、発売から25年を超えるロングセラー商品だ。

墨運堂のブース

同社は『メルメリィ』との付き合いも長いそう。メーカーのため、直接自社製品を使うユーザーと話す機会は少ないが、『メルメリィ』で実際に来場者と話したり、画材の使い方を伝えたりすることで「手応えを感じる」とスタッフの方は力強く話してくれた。お楽しみは、1回500円で回せるガチャ。お値段以上のものが入っているとのことでリピーターも多いそう。ぜひ次回は参加してみてほしい。

●東大阪市に本社を置く画材メーカー・ホルベイン画材株式会社

ホルベインのブース

東大阪市に本社を置く画材メーカー・ホルベイン画材株式会社もまた、『メルメリィ』の初期から出展している。さまざまな画材の中から、イラスト系イベントの需要に応える形で、新製品や今人気の画材をメインに紹介しているそう。今回は、昨年秋に発売された「水彩色鉛筆」を軸に展開。来場者は試し書きをしたり、スタッフから表現方法のレクチャーを受けたりすることができた。スタッフは、直接来場者とやり取りをする中で「”ホルベインを好きで使ってます”という言葉をもらうと、やりがいがあります」と笑顔を浮かべていた。

ホルベインの画材すくい

また、今回からの新しい試みとして「画材すくい」を実施。1回500円で30秒以内にアウトレット品の画材をお箸でつかむというお得な内容で、取材中にも多くの人が挑戦しており、好評ぶりが伝わってきた。

壁沿いには、過去に『メルメリィ』のメインビジュアルを手がけた蒼川わか、芦屋マキ、umiが仲良く横並びで出展していたので、話を聞いてみた。

●『vol.6』のビジュアルを担当した蒼川わか(ユニット名:mixm)

蒼川わか(ユニット名:mixm)

東京を拠点に活動する人気作家・蒼川わか(ユニット名:mixm)。来年で「蒼川わか」として活動10周年を迎える。『メルメリィ』には度々参加しており、「大阪でイベントに出るのは楽しいです」とはにかむ。蒼川さんの主題は街の風景。実際の風景に加え、架空の風景や記憶に残る風景を自分なりの解釈で描き、そこに自身の好む色彩を重ねる。さらに、子ども心のある不可思議なキャラや人物を添え、風景の魅力を引き立てるスタイルが特徴だ。

蒼川わか(ユニット名:mixm)

蒼川は「この世にひとつしかない存在が好きです。作品は、水彩やアクリルを使っています」と語る。アナログが持つ色味や質感、温度感を愛するがゆえに、作品は全てアナログで仕上げる。新刊はイラスト集『憶えていない道』。飾られた表紙原画の美しさに思わず目を奪われた。風景を固めるのに1週間、着色に3日〜1週間。丁寧な筆致と色使い、構図からは積み上げたキャリアが滲み出していた。4〜5月には東京・神保町の文房堂Gallery Cafeで個展『ひなたのまぼろし』を、5〜6月には大阪・阿波座の喫茶 水鯨で個展『語らい継ぐ 水の色』を開催予定。2027年の10周年には、東京と大阪にて大回個展も計画中とのことなので、今後の展開にも注目が集まる。

●『vol.21』のビジュアルを描いた芦屋マキ(ユニット名:NeOn)

芦屋マキ(ユニット名:NeOn)

そんな蒼川に影響を受けたのは、芦屋マキ(ユニット名:NeOn)。2016年から作家活動を開始し、2020年からイラストレーターとして本格的にスタート。現在は、関東を拠点に活動している。人物主体のコミックイラストを水彩で描くというベースは昔から変わらず、現在は光や温度感、人と人が触れた体温にフォーカスし、人物を大きめに描いて小物を散らばせたり、手の動きやまつげ、瞳に重きを置いて創作する。画材は水彩を中心に、アクリル、不透明水彩、色鉛筆、時には墨も取り入れているという。

芦屋マキ(ユニット名:NeOn)

「目が合った時にドキッとしてほしくて、瞳の描き方を絵によって変えています。メインビジュアルに声をかけられた時は嬉しかった。『メルメリィ』がすごく好きで、メインビジュアルを担当する作家さんも憧れの方だったので。創作イベントだから「imagination」をタイトルに、世界が広がる感じで夢と現実のはざまの瞬間を描きました」と振り返る。学生時代から蒼川のファンで、作家活動を始める前に蒼川さんの作品に出会い「水彩ってこんなに綺麗に表現できるんだ!」と衝撃を受けたのだそう。現在は交流も生まれ、「光栄で夢のよう」と語る。『メルメリィ』を通して作家同士のつながりが育まれている点も、このイベントの魅力の一つといえる。

●『vol.15』のビジュアルを手がけた大阪在住のumi(ユニット名:lulu)

umi(ユニット名:lulu)

活動歴は約10年。幼い頃から空想の人物が好きで、展示会デビューからは天使とメイド服の組み合わせを描き続け、今に至るという。「アナログがメインだけど、デジタルも楽しい」と笑顔で語るumiは、2025年から個展『LOVE』を企画し、現在は愛をテーマにイラストを描いているそう(個展『LOVE 2026』が4月16日〜27日まで、大阪・中崎町のイロリムラにて前後期で開催)。自身が母親になったこともあり、自分の中にある愛を見つめ直すとともに、今まで活動を支えてくれた、心の拠り所になったオリジナルキャラクターへの感謝の思いも作品に込めている。

umi(ユニット名:lulu)

『メルメリィ』でビジュアルを担当したのは、コロナ禍を経てイベントが再開されたタイミングだった。「再会」というテーマで、眠りから目覚める女の子を描いたと振り返った。「自分の‟好き”に真っ直ぐに。これは一生大切にしたい。絵は自分の夢を叶えてくれる魔法みたいなもの。ずっと絵に救われている」と明るく話す。さらに「即売会が好きで、直接絵の感想をもらうのってこんなに幸せなんだと思って。もっと自分の好きを突き詰めて、これからも自分の原点でもあるアナログをメインに デジタルもがんばりつつ、『メルメリィ』や展示会に出たい」と今後の展望を語った。

●外国にルーツを持つSentimental Moon(ユニット名:SenMoon)

Sentimental Moon(ユニット名:SenMoon)

日本だけでなく、海外からの出展も増えている。ドイツとクルドにルーツを持つSentimental Moon(ユニット名:SenMoon)は来日6年目で、『メルメリィ』に出展するのは昨年に続き2回目となる。2009年に九州に留学し、ドイツに戻って大学を卒業した後、再び日本へ。現在は英語教師をしながら創作活動を続けている。「これがマイパッションです」と見せてくれた作品に描かれたモチーフは、神話や童話。グリム兄弟のゆかりの地で育ったことから、童話などの古い物語がインスピレーションの源になっている。また、日本の漫画で日本語を勉強したこともあり、自身のイラストに日本の漫画を混ぜたスタイルを模索中。古い物語にオリジナルストーリーを加えて独自のスタイルを作り上げる。

Sentimental Moon(ユニット名:SenMoon)

例えばセイレーンは、歌で船乗りを誘う怖いイメージだが、Sentimental Moonが描くのは柔らかいイメージ。「その歌が本当に導こうとしたのは、あなた自身の中への旅だったとしたら?」という問いかけも、見る者に何かを残す。描きたいモチーフはたくさんあるが「日本の妖怪の絵を描いてみたい」と目を輝かせる。「1年前に『メルメリィ』に出展して楽しかったから、また出たいと思った。海外のお客さんにももっと来てほしい。自分も頑張らないと」と意気込んだ。

●自分の心象風景をイラストを描く、まるゐ(ユニット名:まるゐ雲店)

まるゐ(ユニット名:まるゐ雲店)

もう1人、気になった作家に声をかけてみた。元々絵を描いていて関西の芸大に進学、本格的に作家活動をスタートして4年ほどだそう。『メルメリィ』は今回で3回目の出展だ。「『メルメリィ』は会場がコンパクトで、来てくれた人と話す時間がゆっくり作れる。お話ししたことはないけど知っていた作家さんとお互いのスペースに寄り合ってみたり」と、イベントの時間を楽しんでいるそう。

まるゐ(ユニット名:まるゐ雲店)

「キャラというよりは自分の心象風景を描くことを目指している。人物と植物、髪の毛の線を描くのが好き」と話すまるゐ。現在は5月に出す新刊に向けて制作の真っ最中だ。「世界情勢も相まって、死について考える時間が増えた。いつまで絵が描けるだろう、と思いを馳せている」。新刊にはその思索が色濃く反映される予定だ。

まるゐ(ユニット名:まるゐ雲店)

グッズには「戦争反対」のステッカーも。「自分の払うお金(税金)で戦争に加担したくない。戦争の余波で生活が追いやられる危機感を持っている。全員で声をあげようという想いです」と力を込める。「好きな作家さんが戦争反対と言ってくれて嬉しい」と連帯する来場者もいるそう。「その時その時を頑張りたい」と言うまるゐの思いに強く共感した。

『メルメリィマーケット vol.23』

気付けば、あっという間に3時間が経っていた。取材をしていて、集う人たちが穏やかなのが『メルメリィ』らしさなんだな、と感じられた。「これまでよりこれからが楽しみになる場に」「変化を続けながら長く親しんでもらえるイベントに」と、出展者と来場者の双方に寄り添う実行委員会の丁寧な運営姿勢が、この心地よい空気を醸成する理由になっているのだろう。

次回の『メルメリィ』は2026年9月26日(土)、27日(日)に開催予定。続報は公式SNS、HPをチェックしよう。次回は、一体どんな出会いが待っているのか、期待が高まる。

取材・文・撮影=久保田瑛理

イベント情報

『mel-merry market vol.23
日程:2026年3月28日(土)~29日(日)
時間:12:00〜16:30
会場:難波御堂筋ホール ホール10(大阪府)
入場料:前売:800円
    当日:1000円​
    小学生含む以下無料
    ※金銭の受渡を減らすため、事前電子制としました。前売は前日まで販売いたしますので、お越しになる方はなるべく事前購入をお願い致します。購入に際しては、販売ページの詳細をお確かめいただきますようお願い申し上げます。
    ※購入後のキャンセルには対応しておりません。
    ​※当日券の販売もございます。
主催:メルメリィマーケット実行委員会
公式HP:https://www.melmerrymarket.com/about
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