三浦直之「キラキラしたロロが苦手だった人にも観てほしい」新境地となる新作本公演『ウルトラソウルメイト』インタビュー

2026.4.22
インタビュー
舞台

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2026年5⽉15⽇(⾦)〜24⽇(⽇)に東京芸術劇場 シアターイーストでロロの新作公演『ウルトラソウルメイト』が上演される。

古今東西のポップカルチャーをサンプリングしながら、既成概念から外れた関係性も鮮やかに表現するロロ。「フルスケール」となる新作本公演は4年ぶりとなる本作では、同じ時代を⽣きながら、異なる道を歩んだ二人の人生の軌跡を描いていく。劇団の主宰で劇作家・演出家の三浦直之が、5年前から構想を温めてきたという作品だ。

三浦が本作の着想を得たのは、高校生時代に夢中で読んでいたという長編小説の数々。ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』をはじめとする南米小説や、アメリカの小説家ジョン・アーヴィング、イギリスの小説家イアン・マキューアン、キューバ人作家レイナルド・アレナスの『めくるめく世界』……当時、これらの世界に没頭したという。

新作はどういったものになるのか? 三浦に話を聞いた。

【あらすじ】
「魂も貸し借りできるんだって」

1998年の6月、小学生のリリイと祝祭は数日間を共に過ごし親友になった。
ある日、二人は事件に巻き込まれ、祝祭はリリイの秘密を知ることになる。
やがて、二人はバラバラの道を歩み始め……
すれ違い続ける二人の数奇な半生を通して描かれる、みえることとみえないことのマジカル平成史。


大河小説から想を得た「平成史」

――今回は、4年ぶりとなるフルスケールの新作本公演です。

ここ数年のロロは、小規模な会話劇を中心につくっていました。新作は、久々に長いスケール(時間)の物語を描こうと思って、2年前ほど前から書き進めていたものです。僕は 10代の頃に一番、小説を読んでいて、とくにこの頃に感動したのは、長い時間を描いた「大河小説」と呼ばれるものでした。学校に着いたら読み始めて、休み時間も席を立たず、放課後に読み終えたら号泣するという……。「こんな世界が描けるんだ」と、とても感動しました。だから、いつか自分もそういう物語を書いてみたいという思いがずっとあったんです。

――本作のメインビジュアルが公開された際に、三浦さんは「ぼくには物語のなかで出会ったソウルメイトがたくさんいます」とコメントしていました。多感な10代の頃に読んだ小説の中にも、「ソウルメイト」はいたのでしょうか?

僕は高校 1年生の頃、友達がいなかったんです。今、振り返ると「ぼっち」だったと思うのですが、当時は全くその自覚がなかった。それはなぜなのか? 振り返ってみると僕は本を読むことで満たされていたんです。物語の中で出会った魅力的なキャラクターたちがそばにいる感覚がずっとあって孤独ではなかったし、そうした体験がいまの自分にもつながっていると感じます。

社会的な背景を切り離さずに関係性を描く

――作品の概要のコピーに「マジカル平成史」とあります。大河小説のような長いスケールの作品をつくるにあたり、今回「平成」に焦点を当てた理由を教えてください。

すぐに 100年スケールの物語を創作するのは難しいだろうから、少しずつ時間を長くしていこうと考えています。今回はまずその第一弾として、自分がリアルタイムで生きてきた 90年代の終わり頃から2000年代にフォーカスしました。この時代を取り上げるならキーワードは「平成」だと思って、平成のカルチャーや実際の事件を盛り込んでいます。

平成の中で、僕が一番カルチャーを摂取していた時代が「ゼロ年代」といわれる2000年代。いま、自分がとても影響を受けていた時代のアニメや音楽、テレビ番組を以前のように肯定できなくなってきました。

例えば、初期のロロは、「セカイ系」に影響を受けた「ボーイミーツガール」の作品をつくっていました。少年と少女が出会い、その関係によって世界の未来が決まる、といった「私」と「あなた」の物語です。歳を重ねたいま、僕はそうした設定に違和感を持つようになりました。「私」と「あなた」の間にあるはずの社会が無いもののように描かれていて、『社会の不在』を感じるんです。

これまでも、一代記のような長いスケールの物語はつくってきましたが、人の関係の背後にあるはずの『社会』は描いてきませんでした。今作では関係性に影響を及ぼしている背景も切り離さずに描こうと考えています。そしてあらためて、この頃のカルチャーを肯定できなくなった理由について考えてみたい。あの時代の空気とはなんだったのか、今の自分ならどういう風に捉えられるのかを考えてみたいと思っています。

――今作のテーマは「友情」だと伺いました。「社会の不在」に対して違和感を感じるようになったいま、二人の関係性と「社会」はどういった形で接続されるのでしょうか?

『私』と『あなた』が友達になるときに、自分はおもちゃをたくさん買ってもらえるけれど、友達は買ってもらえない、といった経済的な格差が友情に影響を与えるかもしれません。家族が置かれた社会的な立場が、関係してくる可能性がある。そうした背景も含めて『友情』という関係を描いていきます。

――ではなぜ、対照的な二人の人物の人生を同時に描くことにしたのでしょうか?

今作にはサッカーを続けているリリイと、文化的なものが好きな祝祭という人物が登場します。「文化系」と「体育会系」という形で括られることがありますよね。僕自身はずっと文化系です。2000年代も文化系の視点から見てきたものがたくさんありますが、体育会系の見え方もあるはずです。

例えば、ロロの制作の奥山君はずっとサッカー部で、多分、僕とは違う世界の見方をしていると思います。でもこうやって一緒に演劇をやっていたりする。そんな風に一人の視点ではなく、いろいろな視点からこの時代を捉えてみたいと思ったんです。

大人になっても使える「魔法」の正体

『四角い2つのさみしい窓』(2020年)

――5年間の構想期間中に、三浦さんはどういったことを考えていたのでしょうか?

2020年にロロのメンバーだけで『四角い2つのさみしい窓』をつくりました。未だに自分の中でとても大切な作品で、それをつくり終えた時には「一区切りだな」と感じました。では次にどんなものを目指そうかと考えて、次は長い時間の物語をつくろうと決めたのですが、コロナ禍が重なって、なかなか長期的な公演の計画を立てるのが難しい状況になりました。

その頃は、(コロナという異常事態に)その場その場で対応していくことで精一杯でしたし、演劇を続けることのストレスも多分あったと思います。そういったことが重なる状況が結構しんどくて、「憧れていた大河小説のようなものを、死ぬまでに自分はつくれないのかもしれない」といった思いになって、2年前には「もう書くのをやめるかもしれない」と、奥山君に言っていました。

そんな状態になった自分がとにかく書きたいと思えるように「ワクワクする気持ちを取り戻さなければいけない」と、自分一人の言葉でつくるのではなく、誰かの言葉から影響を受けながら立ち上げる作品をつくろうと考えました。

それが歌人の上坂あゆ美さんと一緒につくった『飽きてから』という作品です。上坂さんの短歌に影響を受けながら創作することは、とても楽しい経験でした。その制作が終わった頃に「自分がジョン・アーヴィングのような物語を書けるのかはわからない。ただ、やっぱり書いてみたい。そう思えるなら書いてみよう」という気持ちになって、いま叶え始めたという感じです。

――そうした時間を経てつくられる、大河小説から影響を受けたという今作が、どういった世界観になるのかが気になります。

うんとファンタジーではあるのだけれど、時代の空気であったり、登場人物や物語が時代とつながり続けたりするような作品にしようと思っています。

「キラキラしたロロ」が苦手だった人にも届いて欲しい

――ファンタジーの要素を盛り込むとなると、もう一つ気になるのが、作品概要のキャッチコピーにある「見えないものと見えるもの」です。ロロの作品性から想像すると、演劇ならではの見立てや手法を散りばめた「マジカル」なものを想起させられます。

一代記をテーマに制作したこれまでの作品は、幼少期はキラキラしていたのだけれど、大人になるにつれて感動が失われて、「魔法」が使えなくなってしまった人のその後を描く、というパターンが多かったんです。ですが今回は、大人だからこそ使えるキラキラしたものを描きたいと思っています。大人になって、子どもの頃に使えていたような「魔法」はもう使えないかもしれない。でも大人になったからこそ使える「魔法」もあると考えています。

――今作の登場人物は大人になって、どういった「魔法」を起こすのでしょうか。ネタバレにならない範囲で伺えますか。

抽象的な話になってしまいますが、10代の頃は刺激的なものが楽しいし、刺激を求めると思います。ところが年を重ねていくうちに、新しいものに刺激を感じるような機会は徐々に減っていくと思うんです。ずっと刺激を求めて生きていくような人生は、むしろしんどい。だから刺激的なものではなく、安寧や平穏のようなものに「魔法」が宿っていく。そういったものをイメージしています。

――それは「ソウルメイト」という関係性にもつながっていくのでしょうか?

そうですね。誰かから受け取ったものを誰かに渡してあげる、という物語を描きたいと思っています。あなたが何かをくれたから、あなたにこれをあげるとか、そういったギブアンドテイクの関係ではなく、贈与で結ばれた関係を今作では「ソウルメイト」と表現している気がします。

――今回、ロロから⻲島さんと篠崎さんが出演されるほか、客演の方もたくさんキャスティングされていますね。

ここ5年で、自分がとても元気になって、またキラキラしたものを描きたいと思えるようになりました。けれど、これまで自分が表現してきたキラキラしたものとは、きっと違う。だから大人になったからこそ使えるであろう、キラキラしたものを体現してくれる俳優さんたちにお声掛けしました。

――元気を取り戻した三浦さんは、いま楽しく稽古をしていらっしゃるんだろうなと想像しています。

楽しいですよ。楽しいのが一番いいと思っています。楽しく最後までやりたいです。

――今作には平成のカルチャーがふんだんに盛り込まれるとのことですが、先日のワークショップ(4/4、4/18開催の『ウルトラソウルメイト』創作イベント「ロロの新作を一緒に立ち上げる」)の時に、20代の参加者たちが、リアルタイムで聞いていないはずの音楽の話題で盛り上がっていたのが印象的でした。今作はそういった要素も楽しめるポイントになっていそうですね。

今回は既成曲をゴリゴリに使っていこうと考えています。最近は、ミュージシャンの方に音楽を制作していただく作品が続いていました。こういった作り方は久しぶりです。

今、SNSやTikTokの影響で音楽が(世代を問わず)フラットに楽しめるようになった気がするんです。若い人と話していても、時代の距離感をあまり感じない。音楽は世代間ギャップをつくらずに、時代を表せるものだと思っています。

――より幅広い人が楽しめる作品になりそうですね。

最近ロロを知ったという人は、会話劇をつくっている劇団だと思っている方が結構多いのですが、もともと僕はリアリズムから外れた作品も多くつくってきました。そういった一面も知ってもらえたら嬉しいです。

あと、以前はよく「ロロのキラキラした感じが苦手」という感想が寄せられることがありました。そんな風に感じていた方たちにも、この 5年で変わったロロの作品が届いてほしいと思っています(笑)。

取材・文=石水典子 撮影=荒川潤

公演情報

ロロ新作公演『ウルトラソウルメイト』
 
2026年5⽉15⽇(⾦)〜24⽇(⽇)
東京芸術劇場 シアターイースト

 
▼アフタトークゲスト
5⽉15⽇(⾦)19:00公演 原宿(元 オモコロ編集⻑)
5⽉18⽇(⽉)19:00公演 ⼩川哲(作家)
5⽉20⽇(⽔)19:00公演 ⾓⽥光代(作家)
 
脚本・演出 三浦直之
出演 ⻲島⼀徳 篠崎⼤悟(以上ロロ) 荒⽊知佳 ⼤場みなみ ⾨⽥宗⼤ 新名基浩 野⼝詩央(劇団かもめんたる)

 
共催︓東京芸術劇場(公益財団法⼈東京都歴史⽂化財団)
企画制作・主催:合同会社ロロ
公式HP︓https://lolowebsite.sub.jp/usm/
 
料⾦(税込)
⼀般:4500円、U-29:3500円、U-18︓無料(枚数限定)
ペア:8500円、応援 10,000円、障がい者割引 3,000円
当⽇券 各500円増し
 
スタッフ
美術:いとうすずらん 照明:富⼭貴之 ⾳響:池⽥野歩 ⾐裳:⾅井梨恵 舞台監督:原⼝佳⼦
⼩道具製作:森⼭⾹緒梨 稽古進⾏:中村未希 ⽂芸協⼒:稲泉広平 宣伝デザイン:佐々⽊俊 宣伝イラスト:ひらのりょう
制作助⼿:⼤蔵⿇⽉(⽩昼夢)⽊⾹花菜(KIKONOKI) 制作:奥⼭三代都(ロロ)、坂本もも(ロロ)
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