東京バレエ団、“メイド・イン・ジャパン”のオリジナルバレエ『かぐや姫』が世界へ パリ・オペラ座での全幕上演に「日本のバレエ界にとっても大きな進歩になるはず」【会見レポート】
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左から金森穣(演出・振付)、斎藤友佳理(東京バレエ団団長)、秋山瑛(東京バレエ団プリンシパル)、大塚卓(東京バレエ団ファーストソリスト)
東京バレエ団の第37次海外公演(2026年イタリア)、第38次海外公演(2027年フランス)の開催が決定。上演は東京バレエ団のオリジナル作品『かぐや姫』(演出・振付:金森穣)。東京バレエ団にとっては『ザ・カブキ』(1986年初演)、『M』(1993年初演)に続き、3作目の全幕オリジナル作品を持っての海外公演だ。2026年4月9日(木)都内にて開催された記者会見のオフィシャルレポートが到着した。
4月9日、東京バレエ団の第37次・第38次海外公演についての記者会見が開催された。
今年12月(第37次)にイタリアで、来年5月(第38次)にフランスのパリ・オペラ座で開催される海外公演の目玉となるのは、金森穣による演出振付の『かぐや姫』である。イタリアでは第1幕のみ(他作品とのミックス・プログラム)の上演だが、パリ・オペラ座では全幕を上演することが決まり、日本舞台芸術振興会専務理事の髙橋典夫氏は「日本人の振付家、日本人のスタッフによる“メイド・イン・ジャパン”の作品である『かぐや姫』を上演できるのは感慨ひとしお」と語る。
「東京バレエ団創立者である佐々木忠次の時代から、海外公演のたびに現地の方から『どうして日本人振付家の作品がないのか』と聞かれてきましたので、我々はこれを佐々木から引き継いだ夢のように思ってきました。今回、パリ・オペラ座での全幕上演は、マルティネス芸術監督やネーフ総裁に『かぐや姫』の映像を見せ、たびたび『やりたい』とアピールしてきてきたことから実現しました。世界最高峰であるパリ・オペラ座が、シーズン中に外来のバレエ団を呼ぶのはめったにないことですので、日本のバレエ団にとってもひとつの金字塔になると自負しています」(髙橋)
髙橋典夫氏(日本舞台芸術振興会専務理事)
イタリア公演の初日は東京バレエ団の海外公演800回目に当たる。自分たちで主催したことは一度もなく、これだけの数の公演を海外の劇場や現地のプロモーターに招聘されて上演しているのは快挙と言えるだろう。
とくに今回、パリ・オペラ座はガルニエ宮での上演が決まったが、ガルニエ宮は2027年から改修工事に入ることが発表されており、ギリギリでの実現となる。そこでの上演は、東京バレエ団団長の斎藤友佳理にとって悲願だったという。
「まず日本最古の物語である『かぐや姫』を題材にすることが決まり、次にドビュッシーの楽曲を使いたいと穣さんに言われたときから、私のなかで『いつかこの作品をフランス、できればパリ・オペラ座で上演したい』と願ってきました。ガルニエ宮が改修工事に入ってしまう矢先にオペラ座から招待を受けられたのは、これまでNBS(日本舞台芸術振興会)がオペラ座と築いてきた信頼関係があったからこそです。この機会は東京バレエ団にとっても、ダンサーにとっても、そして日本のバレエ界にとっても大きな進歩になると思います」(斎藤)
『かぐや姫』は2021年にまず第1幕を初演し、2023年に第2幕を上演してから、同年に第3幕を追加した全幕が完成。そして、今年5月5・6日に東京文化会館で全幕が再演される。
だが、第1幕の完成より4年前の2017年には、当時芸術監督であった斎藤友佳理から振付家の金森穣に新作の相談をした。委嘱を受けた金森は「新しいバレエを創る」ことをテーマに掲げたという。
「ロシアから来たエリアナ・パヴロワが鎌倉にバレエ教室を開いてから100年ほど経ち、日本人は外来の文化であったバレエを自らの身体芸術にするために研鑽を積んできて、今では世界中で日本人ダンサーが活躍しています。しかし、何かが足りない。それは振付家だったと思います。私は2004年に日本初となる公立劇場専属舞踊団を立ち上げましたが、これもいずれ誰かがやるべきことであったと思います。ただ私はその機会を得た者として、その使命に報いようと闘い続けてきた。そしてその過程で磨かれた振付能力を持って、東京バレエ団とともに創った日本発のオリジナルバレエを欧州の方々に見ていただけることを、とても嬉しく思います」(金森)
2021年の第一幕初演時から主役のかぐや姫を踊り続けてきたのが、東京バレエ団プリンシパルの秋山瑛。トライアウトの時点から金森らとともに創り続けてきた『かぐや姫』が世界に旅立つことに対して「ずっと夢の中にいるようです」と秋山は語る。
「私をはじめ、バレエをやっている人にとってオペラ座は憧れの舞台です。そこで穣さんの作品、廣川(玉枝)さんのお衣裳で踊れることは光栄ですし、幸せなことだと思っています。これまで何度も海外公演に参加してきましたが、そのたびに言葉のないバレエの素晴らしさを感じます。直接話せなくても、拍手があったり、笑いが起きたり、ざわめきが起きたりと、心の交流を持つことができるので、どこで踊ってもお客さまのバレエへの愛を感じています。今回も楽しみです」(秋山)
5月の再演で秋山とともに主役を務めるのは、ファーストソリストの大塚卓だ。初演の際は、かぐや姫に惹かれる帝役を演じたが、今回はかぐや姫の幼なじみであり、恋の相手となる道児役デビューとなる。「パリ・オペラ座で上演するところまで話が広がったことにプレッシャーも感じています」と語りながらも、覚悟の決まった言葉を伝えてくれた。
「『かぐや姫』の制作を始めた2017年は、僕はまだ海外にいて東京バレエ団に入団していませんでした。それだけ長い時間をかけて進んでいった作品だと知り、改めて生半可な気持ちでは臨めないと感じています。まずは今年の5月、東京文化会館でしっかり瑛さんと新たな『かぐや姫』を演じたいです」(大塚)
質疑応答では、秋山が2024年、ブノワ舞踊賞女性ダンサー部門にノミネートされた際に、ボリショイ劇場で『かぐや姫』第1幕のパ・ド・ドゥを踊ったときのことも話題に挙がった。審査員のひとりとしてその舞台を観ていた斎藤は「月の形をしたリフトでは観客から大きな歓声が上がり、リフトからすとんと落とされたときにまた拍手喝采で、その日のコンサートで一番受けていたと思います」と語る。
世界に羽ばたいていくかぐや姫の姿を、まずは5月、改修工事に入る直前となる東京文化会館で見届けたい。
写真=Yuji Namba 衣裳協力=秋山瑛 Max Mara/大塚卓 JOSEPH HOMME
公演情報
『かぐや姫』全3幕
2026年
5月5日(火・祝)13:00/18:30
5月6日(水・振)14:00
上演時間:約2時間40分(休憩 2回含む)
音楽は特別録音による音源を使用します
演出振付:金森 穣
衣裳デザイン:廣川玉枝(SOMA DESIGN)
木工:近藤正樹
映像:遠藤 龍
照明:伊藤雅一(RYU)、金森 穣
演出助手:井関佐和子
衣裳製作:武田園子(Veronique)
■キャスト
5月5日(火・祝)13:00
5月6日(水・振)14:00
道児:大塚 卓
影姫:沖 香菜子
帝:池本祥真
翁:岡崎隼也
■キャスト
5月5日(火・祝)18:30
道児:柄本 弾
影姫:金子仁美
帝:生方隆之介
翁:岡崎隼也
S:¥16,000 A:¥13,000 B:¥10,000 C:¥8,000 D:¥6,000 E:¥4,000
※クラブ・アッサンブレ会員は、S~E の各席種1割引。
5歳以上、入場可 ※4歳以下のお子さまはご入場いただけません。