スーパー歌舞伎『もののけ姫』アシタカ役を演じる市川團子が今、思うこと

18:00
インタビュー
舞台

市川團子

画像を全て表示(8件)


「歌舞伎俳優をやめようと思ったことはないんです。昔、宇宙飛行士になりたかったときも、歌舞伎俳優をやりながらなるつもりで(笑)」

長身に、すらりと伸びた手足。精悍な顔立ちで、22歳の市川團子は屈託なく笑った。

放映中の大河ドラマ『豊臣兄弟!』で森蘭丸を演じ、5月にはTHEATER MILANO-Za『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』の大詰、舞踊『写書東驛路(うつしがきあずまのうまやじ)』で13役の早替りに挑戦する。

そんな新進気鋭の歌舞伎俳優が次に挑むのは、2026年7月に開幕する新作・スーパー歌舞伎『もののけ姫』。原作は言わずと知れたスタジオジブリの名作アニメで、主人公のひとり・アシタカ役を演じる。

スーパー歌舞伎の創始者である二世市川猿翁の孫である團子。祖父亡きあと初めて上演される新作のスーパー歌舞伎となる。おそらく日本国民のほとんどが何らかのイメージを浮かべることができるアニメ作品を、歌舞伎として再構築することになる。澤瀉屋直系の歌舞伎俳優として、大役に挑む團子にSPICEが直接インタビューした。

祖父亡きあと初のスーパー歌舞伎で新作を上演する

――2024年スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』で主演を勤められていましたが、その時はダブルキャスト。現在は澤瀉屋一門を引っ張っていく立場になられていますが、プレッシャーや重責は感じられていらっしゃいますか。

お話をいただいた時は、とにかく一生懸命取り組もうと思いました。祖父の作ったスーパー歌舞伎の冠のもとで新作を演じる、不安と楽しみは両方あります。しかも今回は、元の作品からかなりの年月が経っていますし、脚色が自由だった『ヤマトタケル』や『新・三国志』をはじめとしたこれまでのスーパー歌舞伎と違い、お客様に強烈なイメージがすでにある、「もののけ姫」です。原作を尊重し、かつこれまでのスーパー歌舞伎に恥じないものじゃないといけない。怖さはあるけれども、打合せなどに参加しながら、しっかり勤めなければと覚悟をして、身の引き締まる思いです。

――打合せにも参加されているのですか?

はい。自分も序盤の打ち合わせから関わらせていただいており、嬉しい限りです。

――横内さんは、スーパー歌舞伎では何度も猿翁丈とタッグを組まれてきました。

「猿翁さんに習ったことを全部あなたに伝えたい」と仰ってくださいました。

――横内さんが初めてスーパー歌舞伎に参加された『八犬伝』1993年初演。そして『もののけ姫』の劇場公開は97年でした。團子さんが生まれる前ですね。

テレビやDVDで何度も見たことはありますが、小中学生のころは難しくて。20代になって見返して、作品に込められたメッセージ性が再発見できました。面白さに気づいたのは最近です。音楽も本当に好きで。あの「もののけ姫」の世界を作り出し、観ている人をあの世界に連れていく素晴らしい音楽の中で自分が一緒に芝居できるなんて、感動です。

――新作のスーパー歌舞伎であり、ジブリ作品の歌舞伎舞台化ということで、高い注目を集めています。

歌舞伎とは‟デフォルメ”の演劇であり、様式美の世界です。アニメを現実に持ってくるときに、歌舞伎は非常に合っている、互換性があると思います。これまでは、基本的に祖父の映像を見て勉強したり、先輩に教えていただくことが多かったですが、今回は新作なので、自分で組み立てていかなきゃいけません。

大学卒業、祖父の教えを胸に俳優業1本へ

――大学を卒業されて、いよいよ本格的に芝居一本の生活になられました。大河ドラマへのご出演、そしてスーパー歌舞伎『もののけ姫』上演と、2026年はすでに特別な年になっているのでは?

卒業したからといって何かを変えるタイプではないので、今まで通りの日常が続いていくとは思います。専業になったことで、お客様の見る目は良い意味で一層厳しくなるでしょうし、それに応えられるよう、良いものを目指して努力する一心です。最終的にはただただもう頑張るしかないです(笑)。

――大学に進まれても、歌舞伎ではない、他の道はお考えにならなかった?

ないです。小学生の頃、宇宙飛行士になりたかった時期もあったんですけど、その時も歌舞伎をやりながらやるつもりで。ずっと続けたかったし、これからも続けていきたい。卒業して、さらに気合を入れていきますけれども、ずっとやってきたことの延長戦でもあると思っています。祖父はお弟子さんたちに「学業もしっかりやりなさい」、「よいものをたくさん見なさい」と教えていたと聞きました。大学で学んだこともいい経験でした。実は、歌舞伎のゼミに入っていたんですよ。外からというか、学術的な視点で歌舞伎を見ることができてよかったです。

――教授やゼミ生は、團子さんがいらしてびっくりされたのではないでしょうか。

授業で映画を見て、歌舞伎にこれは活かせるなとか、ゼミ以外でもいろいろ考えていました。あと、そもそも学校にいる時間が、自分の中では大切でした。本名の“政明”でいられる場所。自分の心を助けてくれていたと思います。

――おじい様の教えが團子さんの心の支え、助けとなっていたわけですね。二世猿翁丈の教えというのは、やはり大きなものですか。

はい。祖父の映像や残っている文章、祖父のお弟子さんに教えていただくこと、すべて本当にありがたいです。

もののけ姫の世界に音楽と共に入っていく

――今回は久石譲さんの音楽を使われるとのことで。「アシタカせっ記」を團子さんが踊られるなんてこともあるのでしょうか。

『もののけ姫』って、特に音楽がとても重要な役割を果たしていると、私は思っています。久石譲さんの音楽がバックにかかっている中で芝居をするとしますよね。その音楽が、ちゃんと自分の体に影響が出ればいいなって。日本舞踊では、音楽がとても大事な要素なんです。

――和楽器の音もアクセントがあったり、なめらかだったり、踊りに合わせて変化しますね。

三味線の音色とか、音の雰囲気を体に入れる、音と体が溶け合っている感じが理想とされています。久石譲さんの素晴らしい音楽を溶け込ませて芝居をしたいです。

同世代の俳優たちとの切磋琢磨しながら前に進んでいく

――サン役の壱太郎さんとのご共演は、2023年ごろからですね。

知り合ったのは僕が12歳の時。壱太郎さんは21歳で、小6からするととても大人に感じました。たくさん遊んでいただきました。ご出演の時に楽屋に行けば、いつも芝居の話をします。僕みたいな後輩にも、分け隔でなく、ディスカッションの場を設けてくださるんです。どう思うっていつも聞いてくださって、ありがたいです。そうだ、 最近発見したんですけど、今の僕、 出会った時の壱太郎さんより年上になっていて!特に意識していなかったんですけど、数字となって目の前に出ると衝撃で。これ、どこか取材で言いたかったので言えて嬉しいです。

――市川染五郎さんがゲスト出演する番組にVTRでコメントを出されるなど、「染團コンビ」は歌舞伎ファンや若い女性の間で知られています。『もののけ姫』出演は、お話されましたか?

情報解禁までは関係者以外には言えないので……。発表になっても特に話してはいないです。多分知っていてくれてはいるでしょうけど。向こうの仕事に関して、僕もそんな感じで(笑)付き合いが長いからこそですね。とは言え、彼の「ハムレット」も観に行く予定ですし、同世代で、ライバルでいつも刺激をもらっています。(尾上)辰之助さんと、三人でごはんに行くこともあります。

――2026年5月に襲名披露した三代目尾上辰之助さんは20歳。染五郎さんが21歳、皆さん同世代ですね。

 もちろん、歌舞伎俳優の皆さんから刺激をもらっていますし、勉強させていただいています。でもやっぱり、同世代が頑張っているのを見ると、自分も、って燃えるじゃないですか!

歌舞伎を見たことない人も、『もののけ姫』ファンも、歌舞伎ファンも楽しめる舞台を

イープラスポーズもばっちり決めてくれました!

――最後に、SPICE読者へのメッセージをお願いします。

『もののけ姫』は、「正しさとは」「自分の軸とは」ということが問い直される作品であると思っています。皆さんの頭の中には、ばっちりイメージがあると思いますが、それがいかにスーパー歌舞伎となるのか。歌舞伎の様式美的な魅力と、もののけ姫のテーマ性、スケールの大きさ、美しさが掛け合わさり、化学反応が起これば、素晴らしい舞台になると思います。そもそもスーパー歌舞伎は祖父が、歌舞伎の魅力を現代の人にもわかりやすく伝えたいと始めたものです。 今回も、セリフはほとんど現代語でストーリーもわかりやすく、かつ歌舞伎の世界でしか表現することのできないスペクタクルで溢れた舞台になると思います。歌舞伎を観たことがない皆様にも、いつも観ていただいている皆様にも、原作ファンの皆様にも、とにかく全世代、全ての皆様に感動していただける、明日の活力になるような舞台になるよう、一生懸命取り組んでまいります。ぜひ、ご覧ください。


13役の舞台の稽古中、合間をぬっての取材だったにもかかわらず、終始明るく朗らかだった團子さん。カメラの前での凛とした佇まいは、アシタカとして舞台の中央に立っている姿を想像させる格好良さでした。

※「瀉」のつくりは、正しくは「ワ冠」です。

取材・文=宇野なおみ 撮影=山崎ユミ

公演情報

スーパー歌舞伎『もののけ姫』
 
原作/宮﨑 駿
オリジナル音楽/久石 譲
脚本/丹羽圭子 戸部和久
演出/横内謙介
協力/スタジオジブリ

 
出演:
アシタカ/シシ神:市川團子
サン:中村壱太郎
エボシ御前:中村時蔵
ジコ坊:市川猿弥
モロの君:市川笑三郎
甲六:市川青虎
猩々:市川寿猿
ヒイさま/トキ:市川笑也
ゴンザ:市川門之助
乙事主:市川中車

 
日程:2026年7月3日(金)~8月23日(日)
会場:東京・新橋演舞場

 
料金(税込):
1等席 17,000円 / 2等A席 10,000円 / 2等 B席 6,500円
3階 A席 6,500円 / 3階 B席 3,000円 / 桟敷席 18,000円
※未就学児童は満4歳よりお一人様につき1枚切符が必要です

公式HP:https://mononoke-kabuki.jp/
製作:松竹株式会社
 
<イープラス貸切公演>
7月公演: 2026年7月26日(日)16:00開演
8月公演: 2026年8月15日(土)16:00開演
★お弁当付プランあり:本券1枚につき【お弁当+プラみちゃん饅頭引換券】が1枚付きます
■【最前列あり】特別先行プレオーダー受付
受付期間:2026年5月8日(金)12:00~2026年5月19日(火)18:00
詳細・お申込みはこちらから
https://eplus.jp/enbujo260708_kk/
 
イープラス貸切の広報担当「プラみちゃん」、X(旧Twitter)で最新情報発信中
関東の公演情報 @eplusplm_kanto
関西の公演情報 @eplusplm_kansai
九州の公演情報 @eplusplm_kyushu