ミュージカル『アニー』2026 ゲネプロレポート~新生ウォーバックスは「ビッグで、うるさくて、タフな奴」!
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丸美屋食品ミュージカル『アニー』ゲネプロより (撮影:安藤光夫)
【THE MUSICAL LOVERS】ミュージカル『アニー』第62回
ミュージカル『アニー』2026 ゲネプロレポート~新生ウォーバックスは「ビッグで、うるさくて、タフな奴」!
丸美屋食品ミュージカル『アニー』(主催・製作:日本テレビ放送網/協賛:丸美屋食品工業。脚本:トーマス・ミーハン、作曲:チャールズ・ストラウス、作詞:マーティン・チャーニン、翻訳:平田 綾子、演出:山田 和也、音楽監督:小澤 時史、振付・ステージング:広崎 うらん)が、2026年4月25日(土)、東京・新国立劇場 中劇場で開幕した。<チーム・バケツ>(アニー役:下山夏永)と<チーム・モップ>(アニー役:牧田 花)のWキャストで上演される東京公演は5月11日(月)まで上演。その後8月には、愛媛・大阪・仙台・名古屋をツアー巡演する(公演情報欄参照)。
なお、1986年からスタートし今年41年目を迎えたミュージカル『アニー』は、開幕初日、<チーム・バケツ>が出演した昼の回において、累計入場者数が200万人を突破するという偉業を達成した。ここでは、その前日、報道向けに限定公開されたゲネプロ(総通し稽古)の模様をレポートする(ただし主催側からの要請により第一幕のみ)。この日は、牧田 花がアニーを演じる<チーム・モップ>が出演し、舞台手話通訳付きの形で舞台が披露された。
舞台下手に立っているのが舞台手話通訳の田中結夏。また、写真右下において後頭部が写っているのは指揮者・福田光太郎。
■パワフル×パワフル! 牧田 花のアニーと岡田浩暉のウォーバックス
昨秋、難関のオーディションで2026年公演のアニー役に選ばれた牧田 花(10歳・小学4年生)。同じ時に選ばれたもうひとりのアニー役(Wキャスト)・下山 夏永(10歳・小学4年生)は牧田を「演技がすごくパワフルで、『ここをこうしてくるか!』という表現をする」と評していた。今回の舞台で特に牧田の真骨頂だと感じたのは、クリスマス休暇に、大富豪ウォーバックスの豪邸に招かれるシーンだ。
長期出張から帰邸したウォーバックス(岡田浩暉)は、尊大で、せっかちで、カリカリしており、アニーがいることに気づきもしない。秘書グレース(愛原実花)にアニーを紹介されると、大声で「男の子じゃないじゃないか!」と無神経に驚く(ウォーバックスは、孤児=男の子だと思い込んでいる)。アニーの名前を聞くと、「アニーか! アニー、なんだ!」と苗字を問うが、アニーにはその意味がわからない。アニーは負けないくらいの大声で「アニー!」と返す。
そのあと、少し神妙な面持ちで「男の子じゃなくてごめんなさい」とウォーバックスに伝えるアニー。悪いことを言ってしまったと理解し反省したウォーバックスは、「ベーブ・ルースに会いたいか~?」とおどけながら彼女の機嫌をとる。しかし、世間から隔絶された孤児院で暮らしていたアニーは、実のところ英雄的野球選手ベーブ・ルースのことなど知らなかった……。ただ、ウォーバックスの豪胆さや大声に負けじと、飛び跳ねながら大喜びしてみせるのだ。このように知恵を繰り出し、愛嬌や大人っぽさで攻めてみるなど、随所で繰り出すアニーの様々な技。これを力強く巧みに表現する牧田の演技は見事で、目が離せなかった。
その後、アニー、ウォーバックス、グレースの3人は、ニューヨークの街を歩く。狭い孤児院に閉じ込められ、映画を見たことがないというアニーをロキシー・シアターに連れていくためだ。そこで歌われるのが、ビッグナンバー「♪N.Y.C.」である。
ウォーバックスのリードボーカルで始まるこの曲には、「N.Y.C. お前を語ろう ビッグで うるさくて タフな奴」という歌詞が出てくるのだが、まさにそれこそ、岡田ウォーバックスそのもの! アイスを片手に大はしゃぎで踊り、ジャンプし、圧倒的な声量で存在感をこれでもかと示す。そんな彼のスケールの大きさと豪快さが、ニューヨークという街の象徴として立ち上がってくるのを感じずにはいられなかった。
「♪N.Y.C.」
■孤児院に閉じ込められたハニガンの日常
孤児院で暮らす孤児たちでは、散歩は月に1回、孤児院の周りを行進するだけ。孤児院の中ではこき使われ、食事も冷えて貧相なものだけだ。ただ、孤児院に閉じ込められているのは、院長であるハニガン(須藤理沙)も同じで、外部の人間と接触できる数少ない楽しみとしては、月1回、シーツ交換のバンドルズ(後藤光葵)に会えることくらい(ただし、バンドルズはつれない態度)。須藤ハニガンが苛立たしく歌うソロナンバー「♪Little Girls」の歌詞があらわすように、「恋人もいないのに、子どもだけがいる」状態で、孤児院では子どもたちとバトルし続ける毎日だ。
「♪Little Girls」ハニガンと孤児たち
しかしハニガンはニューヨーク市に雇われている。立派な職業としてやっているのだ。そんなハニガンの職場である孤児院に、恋人のリリーを連れて金を無心に来る、無神経な弟・ルースター(赤名竜之介)。しかし彼はポンコツすぎて、リリー(浜崎香帆)からも「役立たず」と罵られる始末。
ハニガン、ルースター、リリーは、『アニー』における「三悪」と呼ばれているが、どう見ても須藤ハニガンと浜崎リリーという両女性陣の気が強すぎて、赤名ルースターには小物感が漂う。ただしこの小物感こそが、こっけいで、可笑しく、絶妙な表現力をかもしているといえるのだ。
(左から)ハニガン、リリー、ルースター
■貧困や孤児を生んだ、1933年という時代
ミュージカル『アニー』の舞台は世界大恐慌直後の1933年、真冬のニューヨークである。アニーが孤児院を抜け出してたどり着くのが、フーバービル(Hoover Ville)。ルーズベルト(過去のSPICE連載での表記は“ローズベルト”)のひとつ前のアメリカ合衆国大統領、ハーバート・フーバーの時代に発生した世界大恐慌によって、仕事や家を失った人々が集まっていたニューヨークの貧民街である。孤児院から脱走し、貧民たちの世話になっていたアニーは、フーバービルに警察の手入れが入ると、住民たちをかばおうとするも、その声は無視される。貧民たちがバラック小屋を取り壊されて逃げ惑う叫び声は、切羽詰まっていて怖さを感じるほどだ。一見、明るいミュージカルである『アニー』は、社会システムの失敗の犠牲者が追いつめられる残酷さを見せつけてくる。
「♪Hoover Ville」を歌唱する、フーバービル貧民窟の失業者たち
『アニー』の幕開けが孤児院から始まることも、貧困や病を救えない失政が失業者や孤児を生むことを象徴している。しかし孤児院で暮らす子どもたちに、「かわいそう」などという、どこか上から目線の同情など、しっくりこないのだ。誰かが何かをすれば誰かが反応する。冒頭から数秒でもう騒がしい。モリー(板橋都杏)が夜中に泣き出し、ペパー(安江杏珠)が苦言を呈したことに、ジュライが「うるさいのはあんた(ペパー)でしょ」と返す。ボクサーばりにパンチで解決しようとするペパーに対し、「ブッ」と吹き出して嘲笑するジュライ(服部來愛)。その小競り合いに小心者のテシー(濱川桃可)は毛布の中で耐えるしかない。この一連を、豪胆なダフィ(後藤久瑠実)が笑い飛ばす。幕開けからアニーが出てくるまで、うるさいカオスである。マイペースを極めたケイト(水川萌絵)だけがグースカ寝ている。
<チーム・モップ>の孤児たち
そんな空気が一変するのは、アニーが歌う「♪Maybe」だ。アニーは、自分の両親が生きていることを、1ミリも疑っていない。アニーが発する希望の香りが、舞台中に満ち満ちて、誰もが聴き入り、眠りにつく。だがそんなひと時は、ハニガンの登場によってぶち壊される。早朝から掃除させられる孤児たちの怒りは、「♪It’s The Hard-Knock Life」から、客席にもバシバシ伝わってくる。「ぬくもりって何だっけ」と怒りを込めて歌うダフィ、窓ふきをヤケクソで行うジュライ。その後、掃除用品を片付ける際、バケツにはまってしまうモリー。ケイトは散歩で死んだネズミを手づかみで拾って皆に自慢しているし、ハニガンじゃなくても、この「Little Girls」は、面倒を見きれないかもしれない。
さて、もう一方の<チーム・バケツ>(アニー役:下山夏永、モリー役:河野愛莉、ケイト役:小林愛佳、テシー役:ジュリアーニ・ジャスミン、ペパー役:福澤果歩、ジュライ役:岡野心愛、ダフィ役:成瀬綾菜)のメンバーたちは、果たしてどんなチームプレイを見せるのだろうか。「メンバーが変わればカラーも変わる」とリリー役の浜崎が初日前会見で言っていたように、きっと彼女たちの個性が新たなうねりを生み出すことだろう。
子どもたちのエネルギーは、『アニー』が持つ大きな魅力だ。ミュージカル『アニー』では、アニー、孤児たちのほか、ダンスキッズも活躍を見せる。最たる見せ場は、前にも触れたビッグナンバー「♪N.Y.C.」。<チーム・モップ>のダンスキッズは、麻生 詩、遠藤央丞、兼古一凜、高梨快都、福山莉子、藤原 葵。この曲ではそれぞれの得意技が繰り出される。<チーム・バケツ>のダンスキッズ(浅野友希、井坂樹里、鈴木杏奈、中島悠斗、半戸真穂、向山佳孝)は、どんな技を繰り出してくるのか。毎年変わる子どもたちの姿が、この作品を新鮮にし続けている。
<チーム・モップ>のダンスキッズ in 「♪N.Y.C.」
■切なさあふれる第一幕のクライマックス
ウォーバックスは、アニーと暮らしていくうちに、すっかり仲良くなる。そしていつしか心が柔らかく、優しくなっていく。アニーを養子にしたいと思うようになったウォーバックスは、その想いを伝えるために、ティファニーのペンダントを用意し、言葉の順番を間違えないように一人で必死に練習する。岡田ウォーバックスは、その独り言さえも相当声が大きいが、そんな不器用さすら、もはや愛おしい。
練習の成果を出そうとするものの、いざアニーを前にすると、自分の身の上話ばかりしてしまい、「何を言ってるんだ、俺は!!!」と自分を叱咤。「ヘルズ・キッチンという貧しい地で生まれ、幼い頃に両親をなくし、お金をたくさん手に入れたけれど、人生を共にする誰かがいなければ、ヘルズ・キッチンにいた頃と何も変わらない」。そう伝え、ようやく養子のことを切り出そうとペンダントをかけてあげようとするその瞬間、アニーから語られたのは「本当のパパとママに会いたい」という願いだった。その切実すぎる正直な言葉は、ウォーバックスだけでなく、そばにいた秘書グレースの心も揺さぶる。愛原グレースの眼からは、本当に涙が溢れていた。
そしてウォーバックスはアニーに約束する。「必ず両親を探し出す」と。必死に元気さを装い、アニーの願いに応えようとする。そして大富豪だからこそ可能な、桁外れの資金と人員を投じての捜索が始まる。ここでウォーバックス邸の皆がアニーを励ますように結託して歌う「You Won’t Be an Orphan for Long」。「草の根分けても きっと探し出す」という歌詞に呼応するような動きをみせる舞台手話通訳の田中結夏も、完全にウォーバックス邸の一員だった。
舞台手話通訳という「あらたな試み」は、昨年から実現したことだ。作品の持つ「誰かの明日を動かす力」は、こうした形でも広がり続けている。ちなみに『アニー』の代表曲「♪Tomorrow」の手話は、アニーが生まれたアメリカの手話をまじえた、この日本のミュージカル『アニー』オリジナルなのだそうだ。
1933年は、前述のフーバービルのように、過去の政治の負の側面が残るが、同時に、ルーズベルト(SPICE連載での表記は“ローズベルト”)による、「あらたな試み」が始まる時期でもある。それがこの作品をつらぬく希望であり、「あらたな試み」こそが、『アニー』の本質なのかもしれない。
「♪Tomorrow」歌唱シーン。犬のサンディ役は、まつり。
丸美屋食品ミュージカル『アニー』は、2026年4月25日(土)~5月11日(月)、東京・新国立劇場 中劇場にて計27回上演予定。上演時間は途中休憩20分を含め、約2時間40分。全編オーケストラによる生演奏で、指揮は福田光太郎が担当する。サンディ役の犬はトリプル・キャスト(家康/白トイプードル♂・おこげ/茶トイプードル♂・まつり/黒MIX♀)、どの犬に当たるかは当日のお楽しみとなる。
取材・文=ヨコウチ会長
写真撮影=安藤光夫 ※転載・転用禁止
公演情報
■会場:新国立劇場 中劇場
■日時:2026年4月25日(土)~5月11日(月)
■料金:
土日祝料金:11,000円(税込)
平日料金:8,500円(税込)
※4歳未満入場不可。1人につき1枚必要。
※舞台手話通訳付き公演あり。
4月27日(月)17時公演:8,500円(税込)
4月29日(水・祝)16時30分公演:11,000円(税込)
詳細は下記【舞台手話通訳付き公演】参照。
■問合せ:キョードー東京 TEL:0570‐550‐799
アニー:下山 夏永/牧田 花(Wキャスト)
ウォーバックス:岡田 浩暉
ハニガン:須藤 理彩
グレース:愛原 実花
ルースター:赤名 竜乃介
リリー:浜崎 香帆
ルーズベルト大統領:ひのあらた
【アニー&孤児たち】(Wキャスト)
<チーム・バケツ>
◆アニー役:下山 夏永(シモヤマ カエ)
◆モリー役:河野 愛莉(コウノ アイリ)
◆ケイト役:小林 愛佳(コバヤシ マナカ)
◆テシー役:ジュリアーニ・ジャスミン
◆ペパー役:福澤 果歩(フカザワ カホ)
◆ジュライ役:岡野 心愛(オカノ ココア)
◆ダフィ役:成瀬 綾菜(ナルセ リョウナ)
<チーム・モップ>
◆アニー役:牧田 花(マキタ ハナ)
◆モリー役:板橋 都杏(イタバシ トア)
◆ケイト役:水川 萌絵(ミズカワ モエ)
◆テシー役:濱川 桃可(ハマカワ モモカ)
◆ペパー役:安江 杏珠(ヤスエ アンジュ)
◆ジュライ役:服部 來愛(ハットリ クレア)
◆ダフィ役:後藤 久瑠実(ゴトウ クルミ)
【ダンスキッズ】(Wキャスト)
<チーム・バケツ>
浅野 友希(アサノ ユウキ)
井坂 樹里(イサカ ジュリ)
鈴木 杏奈(スズキ アンナ)
中島 悠斗(ナカジマ ユウト)
半戸 真穂(ハンド マホ)
向山 佳孝(ムコヤマ ヨシユキ)
<チーム・モップ>
麻生 詩(アサオ ウタ)
遠藤 央丞(エンドウ オウスケ)
兼古 一凜(カネコ イチカ)
高梨 快都(タカナシ カイト)
福山 莉子(フクヤマ リコ)
藤原 葵(フジワラ アオイ)
【アンサンブル】
鹿志村 篤臣、後藤 光葵、春口 凌芽、半澤 昇、八百亮輔、矢部貴将、岩矢 紗季、江崎 里紗、太田 有美、近藤 萌音
【サンディ(犬)】
家康(イエヤス/白トイプードル♂)
おこげ(オコゲ/茶トイプードル♂)
まつり(マツリ/黒MIX♀)
【スタッフ】
■脚本:トーマス・ミーハン
■作曲:チャールズ・ストラウス
■作詞:マーティン・チャーニン
■翻訳:平田 綾子
■演出:山田 和也
■音楽監督:小澤 時史
■振付・ステージング:広崎 うらん
■歌唱指導:青木 さおり
■美術:二村 周作
■照明:高見 和義
■音響:山本 浩一
■衣裳:朝月 真次郎
■ヘアメイク:川端 富生
■演出助手:小川 美也子 本藤 起久子
■舞台監督:西部 守
■主催・製作:日本テレビ放送網株式会社
■協賛:丸美屋食品工業株式会社
■公式サイト:https://www.ntv.co.jp/annie/
【舞台手話通訳付き公演】
4月27日(月)17時公演:8,500円(税込)
4月29日(水・祝)16時30分公演:11,000円(税込)
舞台手話通訳者が舞台向かって下手側に立ち、台詞・楽曲等を手話でお届けします。
舞台手話通訳者を通して舞台が見やすい「舞台手話通訳対象席」
申し込み受付:キョードー東京受付ページ限定
舞台手話通訳:田中 結夏(となりのきのこ)
手話監修:江副 悟史(株式会社エンタメロード)
コーディネート:株式会社momocan
※サポートが必要なお客様に座っていただけますよう、当日、障がい者手帳のご提示をお願いすることがございます。
※本人様のほか、同伴者様3名までお申し込みいただけます。
※上演時間は途中休憩20分を含め、約2時間40分を予定。
※開場はロビー開場が開演の45分前、本開場が開演の30分前となります。
※チーム・バケツ、チーム・モップのダブルキャスト公演になります。
※出演者、チームは都合により変更の可能性があります。
※4歳未満のお子様のご入場はできません。 はお一人様1枚必要です。
※申し込み後の変更・キャンセルはできませんので、予めご了承ください。
※政府や東京都のガイドラインを遵守して開催し、特別な要請があった場合、公演の変更や中止をさせて頂く場合がございます。
【夏のツアー公演】
愛媛公演
2026年8月2日(日)
愛媛県県民文化会館
大阪公演
2026年8月6日(木)~8月11日(火・祝)
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
仙台公演
2026年8月22日(土)~8月23日(日)
東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
名古屋公演
2026年8月28日(金)~8月30日(日)
愛知県芸術劇場 大ホール