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市川中車&市川團子の親子共演と人気声優が十三役を演じ分ける『こえかぶ』のコラボ公演 歌舞伎町大歌舞伎『獨道中五十三驛』が開幕

2026.5.7
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舞台

『獨道中五十三驛』舞台写真 撮影:細野晋司

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歌舞伎町大歌舞伎 三代猿之助四十八撰の内『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』が、THEATER MILANO-Zaにて2026年5月3日(日・祝)に開幕した。

本作は四世鶴屋南北の作で、文政十年(1827)に江戸河原崎座で初演。当時、江戸で人気を博していた十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に着想を得て、それとは逆に京都を起点に江戸を目指しながら、五十三次の宿場で物語が展開されていく。永らく上演が途絶えていたが、昭和五十六年(1981)に三代目市川猿之助(二世市川猿翁)が歌舞伎座にて復活上演させた。澤瀉屋(おもだかや)の中でも特に人気が高く、「三代猿之助四十八撰」のひとつに数えられている。

今回の上演は、古典歌舞伎を人気声優陣が語り演じる松竹のオリジナル朗読劇『こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎』とのコラボレーション。京都を起点に江戸を目指しながら、五十三次の宿場で物語が展開され、早替りで演じる道中の人々が魅力の本作だが、京都三条大橋より三十九番目の宿場にあたる池鯉鮒まで、そして掛川より箱根大滝までを『こえかぶ』が担う。第一線で活躍する総勢17名の人気声優が、老若男女問わず全13役を声の技術を駆使して巧みに演じ分ける。

また、本作において屈指の人気を誇る「岡崎無量寺の場」では、十二単をまとって宙を飛ぶ猫の怪を市川中車が初役で勤める。THEATER MILANO-Zaで宙乗りを行うのは初の試み。大詰は、常磐津を用いた舞踊『写書東驛路』。歌舞伎界のホープ市川團子が、お半と長吉、老若男女から雷までの十三役を早替りにて勤める。

オフィシャルレポート(開幕レポートより一部抜粋)

まずは團子による口上が始まった。はつらつとした中にユーモアも織り交ぜた團子の口上により、劇場全体を包んでいた緊張感がほどけて柔らかくなり、作品を楽しみに待つ客席のボルテージも一段階上がったように感じられた。

続いては、声優による朗読で楽しむ歌舞伎「こえかぶ」。この日は置鮎龍太郎が着物に羽織を合わせた和装姿で登場し、まずは京三条大橋より池鯉鮒までの物語が展開された。本作の特徴の一つでもあるのが登場人物の多さ。序幕だけで置鮎は十三役を演じ分けなければならないのだが、そこはさすが声優。この物語の主人公・丹波与八郎、与八郎の父である与惣兵衛、悪党の赤堀親子、与八郎と互いに想い合う重の井姫、百姓の娘・お松と妹のお袖、といった性別も身分も気質も異なる登場人物を次々と声の力で立ち上げていく。この物語の一番の悪党・水右衛門が、与惣兵衛から由留木家の家宝を奪おうとする攻防では、手に汗握る躍動感あふれるやり取りが繰り広げられる。また、八ツ橋村の場面では、貧乏暮らしのカタに女郎屋へ売られることになったお松の、絶望しながらも愛しい民部之助に思いを馳せる切ない気持ちをしっとりと表現した後、妹お袖の呪った恋敵が図らずも自分であることが判明するやいなや一転して取り乱して感情をぶつける激しさを見せるなど、緩急自在な演技で物語を色鮮やかに描き出す。途中、由留木家の家宝を探す与八郎(團子)と重の井姫(笑也)、与八郎の父・与惣兵衛を殺してふたつの家宝を奪った赤堀官太夫、与八郎の家来・奴逸平、江戸へ向かう途中の旅人・弥次郎兵衛と喜多八が舞台上に登場し、家宝のひとつである九重の印を奪い合う様子をだんまり(暗闇の中の探り合いを見せる歌舞伎独自の演出技法)で見せることで、より理解を深めることができた。最終的に九重の印は官太夫が、重の井姫が着ていた十二単は弥次郎兵衛と喜多八の手に渡ってしまうのだが、この十二単は次の二幕目でも登場することになる。

二幕目は、中車の宙乗りが見どころとなる「岡崎無量寺」。中車のアクロバティックな動きは見ごたえ十分。60歳にして初役で挑む中車の気概が伝わってくる。ラストに見せる化け猫姿の中車による宙乗りは、妖怪の不気味さがありながらも、十二単の美しさや猫らしい愛嬌も相まって、なんとも不思議な魅力を振りまきながら高さ12mという歌舞伎座の宙乗りよりもさらに高いところを悠々と飛び去っていき、客席は拍手喝采で見送った。

三幕目は再び置鮎による「こえかぶ」で、掛川より箱根大滝までが展開された。序幕では導入ということもあり、十三役を演じ分けながら物語の筋を伝えることに重きが置かれていたが、一転してこの場面では四役の演じ分けで、人物の感情の流れをじっくりと見せる。父の仇討ちのため赤堀親子を探す与八郎は、赤堀水右衛門によって足を鉄砲で打たれてしまう。歩くことが難しくなった与八郎は重の井姫が曳く車に乗り、箱根で足の療養をしている。そこへ現れた水右衛門は、重の井姫に対して自分の女にならなければ与八郎を殺すと迫り、重の井姫は与八郎の命を助けるために水右衛門のところへ行ってしまう。やがて与八郎のもとへ戻って来た重の井姫だが、どこか様子がおかしく……という場面だ。置鮎の情感たっぷりの演技によって、与八郎を想う重の井姫の献身が切なく胸に迫り、重の井姫に裏切られたと思い込んでいた与八郎が真実を知った瞬間の、悲哀と安堵と感謝の入り混じった複雑な心理が、巧みな声の抑揚に乗って心に響いてくる。静かな緊張感に包まれる客席から、固唾をのんで置鮎の語りに集中して引き込まれている様子が伝わってくる。視覚で情報を得ることが格段に多くなった現代において、声優の声による表現力に耳を澄ませながら己の想像力を働かせることは、人間の根源的な感性を呼び覚ます時間でもあると感じられた。声のみの演技で物語の世界を表現する声優の技を、生で堪能できる贅沢なひと時である。

大詰を迎え、再び團子が口上で登場する。十三役の早替りを勤めることが述べられると、客席からは期待と激励の拍手が送られた。大磯、平塚、藤沢、、、と場面が少しずつ日本橋に近づいていく中、團子は目まぐるしく役を替えていく。扮装を替えて登場するたびに客席からは惜しみない拍手が送られた。扮装だけでなく、仕草や声色、顔つきまで役に合わせて切り替える團子の姿からは誠実な一所懸命さが伝わってきて、その爽やかな奮闘ぶりから目が離せない。

 “ケレン”を取り入れ、歌舞伎の楽しさや華やかさが存分に詰め込まれた本作が、「こえかぶ」とのコラボレーションでより幅広い観客層に受け入れられやすい形での上演となっていることは、澤瀉屋と歌舞伎町大歌舞伎、それぞれの理念を体現しているように感じられた。エンターテイメント性の高い革新的な試みで歌舞伎の新たな可能性を押し広げた三世猿之助の精神を、息子の中車と孫の團子が継承していくことを強く印象付けられると同時に、「コクーン歌舞伎」などで歌舞伎界に一石を投じ続けてきたBunkamuraの変わらぬ姿勢が示された公演でもある。現在まで脈々と受け継がれてきた澤瀉屋の思いが、更なる未来へとつながることに期待するとともに、歌舞伎町大歌舞伎の今後の展開にも注目したい。

※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です

文=久田絢子(THEATER MILANO-Zaより提供)
レポート全文:https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/26_kabuki/topics/11067.html

コメント

置鮎龍太郎

置鮎龍太郎(撮影:細野晋司)

本家歌舞伎のお客様方々に、我々の朗読がどのように映るのか、とても興味深く、舞台上にて演じさせていただきました。
又、市川中車さん、團子さんをはじめとする皆々様の胸を借りて大変貴重な機会に巡り会えた幸せなひと時、これからも大切にして行きたいと思います。

福山潤

福山潤(撮影:細野晋司)

『獨道中五十三驛』初日無事終了致しました!またと無いこの機会を頂けた幸いを噛み締めながら幕が開いた後はもうあっという間の夢の時間でした。
皆様により没入して頂ける一助になっておりましたら幸いです。
いやぁ、楽しかった!!!

細谷佳正

細谷佳正(撮影:松竹株式会社)

舞台上での良い瞬間も、悪い瞬間も経験させて頂きました。
何よりも『悪い瞬間』を経験できたことが本当に良かったです。
和楽器の演奏や、静かながらも焦点を合わせてくださるお客様のエネルギーに助けられ、楽しく、悔しく、台詞を放つことができました。
沢山の気づきが得られたことを、大変感謝しております。
歌舞伎役者の皆様、スタッフの皆様、裏方の皆様。
そして、ご観劇を賜りました皆様、ありがとうございました。

小林裕介

小林裕介(撮影:松竹株式会社)

1回目の公演が終了しました!
生の演奏や音、生の空間でやるとどんどんと欲が湧いて来て、心の赴くままに楽しませてもらいました!そして歌舞伎のパートも拝見させて頂きましたが、まぁとにかくすごい!!自分の中の歌舞伎の概念が覆されましたし、とても勉強になりました!これを糧に更に磨いて、次の公演も頑張りたいです!

公演情報

歌舞伎町大歌舞伎
三代猿之助四十八撰の内『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』

作:四世鶴屋南北
出演:市川中車、市川團子、市川笑也、市川笑三郎、市川寿猿、市川青虎
 
「こえかぶ」出演(日替り・出演日順):
置鮎龍太郎 <5月3日(日・祝)11:00、4日(月・祝)11:00/16:30>
福山潤 <5月3日(日・祝)16:30、10日(日)11:00>
細谷佳正 <5月5日(火・祝)11:00/16:30 >
小林裕介 <5月6日(水・休)11:00、10日(日)16:30>
内田直哉 <5月8日(金)11:00/11日(月)11:00>
櫻井孝宏 <5月9日(土)11:00/16:30>
石谷春貴 <5月12日(火)11:00>
蒼井翔太 <5月13日(水)11:00/16:30、16日(土)16:30>
野島健児 <5月14日(木)11:00、16日(土)11:00>
山口勝平 <5月15日(金)11:00、22日(金)11:00>
速水奨 <5月17日(日)11:00/16:30>
内田夕夜 <5月19日(火)11:00、21日(木)11:00>
東地宏樹 <5月20日(水)11:00/16:30>
関智一 <5月22日(金)16:30、26日(火)11:00>
岡本信彦 <5月23日(土)11:00/16:30>
森久保祥太郎 <5月24日(日)11:00/16:30>
吉野裕行 <5月25日(月)11:00>
 
会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6F)
公演日程:5月3日(日・祝)~5月26日(火)
 
主催:Bunkamura、TSTエンタテイメント、東急
企画・制作:松竹株式会社
製作:Bunkamura
後援:新宿歌舞伎町大歌舞伎祭実行委員会