浦島坂田船「ここまで積み重ねてきた濃い日々をみんな誇りに思って欲しいです」 春ツアーファイナル・有明アリーナ公演をレポート

18:00
レポート
音楽

浦島坂田船

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浦島坂田船 Spring Tour 2026 ~夜叉~
2026.4.26 有明アリーナ

鬼が出るか、蛇が出るか。夜叉とは人を喰らう鬼神でありながら、仏法を守護する善神でもあるという。このたび有明アリーナで開催された『浦島坂田船 Spring Tour 2026 ~夜叉~』のツアーファイナル公演で彼らが舞台上で繰り広げてみせたのは、鬼神と善神の両面だけには収まりきらぬ多彩な表情だったと言えるだろう。

月光に照らされた浦島坂田船の4人が雅びやかな雰囲気の中、憂いの表情や涙を流す姿をみせていくイメージ映像が場内ビジョンに映し出されたあと、まず今宵の1曲目として歌い出されたのは今年3月に発表された「輪々春廻」。鬼の半面を顔の片側に翳しながら、白を基調に金の柄と黒の縁取りを施した小袖風の装束を纏い、真っ赤な生地に金模様をあしらった帯を締め、白いファーで覆われた外套を羽織って歌い踊る姿は全員が共通しており、この衣装にはメンバーカラーが使われていなかったところが印象的だと感じた。唯一、頭から生えていた黒い角だけは、1本の人もいれば2本の人もいたりして違いがあったように見受けられた。〈何千度も輪廻を辿り 鬼に成り果てたとしても〉という歌詞が、際立って聴こえたのはこの出で立ちのせいも多々あったのではなかろうか。

浦島坂田船

続いての「返り咲」では、これまた4人が揃って赤・白・金で彩られた和扇子を用いながら華麗に舞い踊り、有明アリーナに集ったCREWたちを大熱狂させることに。さらに、モダンなダンスチューン「Trashy」では全員が白地の番傘を用いながらのダイナミックなパフォーマンスと、となりの坂田。と志麻によるクールなラップで我々を魅了した。

かと思うと、和風ボカロ曲のレガシーである「吉原ラメント」では4人が番傘を携えたままトロッコへと乗り込み、場内を周回しながら歌うというCREWお待ちかねのファンサが場内を沸かせた。次いでの「シザーナイフ」では、気付けば全員がトロッコで外套を脱ぎやや軽装となって、スリットから時おり肩をチラ見せする様子がうかがえたことも念のため付記しておこう。

志麻


となりの坂田。


センラ

「有明アリーナ! たどりつきました、浦島坂田船。ツアーファイナルでございます! みなさん僕らのことを待っててくれましたか?」(うらたぬき)

もちろん、ここで浦島坂田船に対して向けられたのはCREWによる割れんばかりの大歓声にほかならない。

「なんかもう、みんなも全部を出し切ってくれてる感じがしますね。今日はこっちも全部を出し切りましょう」(センラ)

「明日のことなんて関係ない。もう喉壊してもいいです(笑)。みなさん、僕らと最高の思い出を作ってくれますか? 楽しんでいきましょう!」(うらたぬき)

そして始められたのはアッパーなパーティチューン「宵」。〈鬼に金棒〉〈鬼にでもなりましょう〉といった歌詞をまじえながら、メンバー全員がラップと歌で盛り上げつつ、途中からはダンサーたちも加勢してくれたことで有明アリーナの場内は、より濃密な熱気を帯びていくことになったのだった。

そのうえ、7曲目の「Ring」では4人が張り出し舞台へと移行。暗転してからの「KISS THE BULLET」では、その最前部で全員が“刀”を手にして殺陣のモーションを取り入れた演舞を披露。ちなみに、ここで彼らが持っていた刀の柄(つか)は緑・紫・赤・黄とメンバーカラーになっていたようだ。

浦島坂田船

うらたぬき


となりの坂田。

刀は「KISS THE BULLET」が歌われた場面でも効果的に使われており、シリアスな曲調とあいまってドラマティックな光景を生み出していたと言っていい。なお、今回のツアーで志麻が公演ごとに異なるセリフを放っていた部分において、この夜の志麻リスたちを筆頭としたCREWたちを激しくメロつかせたのは以下の言葉となる。

「俺から目を離すなよ」(志麻)

その曲タイトルどおりに艶めいた歌詞世界や各人のセリフ回しが映えた「花魁俺嵐コンフュージョン」では、再びメインステージに戻ってダンサーらと共にアリーナクラスのライブならではの見応えあるショーを見せつけてくれたのだが、思えば浦島坂田船は今年でメジャーデビュー10周年でもあるわけで。年々彼らのステージングから貫禄が感じられるようになって来ているのも当然といえば当然、なのかもしれない。

浦島坂田船

歳月を経てきての変化という意味では、当初ボカロ曲ばかりで構成されていた浦島坂田船のライブにある時期からオリジナル曲が増えていったのもひとつのポイントで、今回のツアーについては、センラがこのツアーの為に曲と詞を書き下ろしたという「薄紅」が本編中盤にて歌いあげられたことの意義も極めて大きいのではなかろうか。センラが得意とするR&Bテイストを活かしたこの楽曲は、おそらく10年前の彼らであれば持て余していたかもしれないくらいの“オトナっぽさ”をたたえたものであり、今現在の浦島坂田船だからこそ歌いこなすことが出来るものとして成立していたと確信する。

志麻、センラ

とはいえ、浦島坂田船の持つ無邪気さそのものは10年前のデビュー時どころから活動開始当初の13年前と何ら変わらない。またも鬼の半面を用いての歌舞が活かされていた「ダブルフェイス」を経ての幕間映像では、ゆるい空気感を漂わせた中でのボーリング大会が実施され、CREWたちはそのワチャワチャ感に和みを感じることになったはず。

そして、この映像の最後からの、ふと見やればなんとステージにはベッドが2台置かれ、4人がギューギューにひしめきあいながら寝ているではないか。すかさず鳴ったのは目覚まし時計のベルで、次の瞬間に始まったのは「金曜日のおはよう」。ベッドから起き出した4人はジェラピケのモコフワなパジャマを着用していただけでなく、全員がメガネまで着用。歌いながら枕投げならぬクッション投げをしてジャレあいつつ、ミュージカルとコントの中間をいくような光景をそこに作り出してくれていた。

浦島坂田船


うらたぬき

となりの坂田。


センラ

オフステージ的な姿どころか、寝起き状態にも似た浦島坂田船の姿を拝むことが出来たのは「好き!雪!本気マジック」でも同じで、ここでは突然のスケッチブックを使った以心伝心ゲームも開催。“浦島坂田船の代表曲といえば?”という質問に対し、となりの坂田。だけが「ピコエポ」と書くも、志麻、センラ、うらたぬきは「シャウター」と回答して普段の仲睦まじさとは異なる足並みの揃わなさっぷりを派手に発揮していたところも、ある意味での浦島坂田船らしさと言えそうだ(笑)。

浦島坂田船

貴重なパジャマ姿は「ばく」でも堪能することが出来た一方、バンド演奏とダンサーらが場をつないだ“お色直し”を経ての後半戦では4人それぞれのソロ曲、およびツインボーカル曲たちが佳境への入口として待ち受けていた。

「後半戦も楽しんでいきますか! みんな調子どう? 悪くても今日で元気もらってってちょうだいね!」(となりの坂田。)

くすみレッドのワイドパンツ仕様スーツで再登壇したとなりの坂田。は、「ニビイロドロウレ」をハンドマイクにて熱唱。先ほどまでは終始ヘッドセットマイクを使用していた分、このパートではより歌に集中しての表現がとられていたと解釈することが出来る。

「リコレクションエンドロウル」を歌ったのはうらたぬき&センラで、2人はとなりの坂田。と同生地ながら別々にカスタマイズされた衣装で登場。時にはお互いに向き合って、アイコンタクトをとりながら息のあったところを見せつけてくれた。

「カメリア・コンプレックス」を歌った志麻は、襟元や袖口にピアスを彷彿とさせる金属パーツをあしらったワイドパンツ仕様スーツを翻しながら、そのたびに耳元でキラリと光るピアスもそれとなく彼の魅力を引き立てており、ソロシンガーとしての存在感を強くアピールする光景がとても印象的だった。

志麻

うらたぬきはうらたぬきで、彼のキャラを存分に打ち出した「夢中Chu☆パンダ」で歌詞よろしく〈愛されキャラ〉をあらためて明示していて、最年長のリーダーにして最強なキュートぶりで“こたぬき”ならびにCREWたちを悩殺していたのだから凄い。ひとつひとつの仕草、立ち居振る舞いまでがあざとさとは違う自然な愛嬌に満ちていたのだ。

うらたぬき

2015年5月に動画投稿されていた「アリアドネ」を歌ったのは、センラ。11年前とは発声法も歌い回しも明確に進化しているのは当然の話で、ボーカリストとしての練度をここまで高めてきた彼の底力がここでの歌からはしっかりと伝わってきた。今や彼の歌は、センラー以外にとっても味わい深いものになっているのでは。

センラ

坂田家と志麻リスたちが狂喜乱舞したのは「ガチ恋者達に捧ぐバラッド ~キミが笑えば地球も回る~」ということになるだろうか。昨年ホストをテーマに開催された、しまさかのホールツアー『【速報】しまさかでバースデーイベントやるってよwww >>9 Last Phrase』を再現するかのような激烈にチャラいパリピモードを炸裂させる2人のステージ運びは実に秀逸で、エンタテインメントの在り方として突き抜けていた。

「ようこそ、CLUB Last Phrase 有明支店へ!」(志麻)

「ご指名いただきまして、ありがとうございます♪」(となりの坂田。)

完全に巨大ホストクラブと化した有明アリーナの場内へ向け、しまさかがこう挨拶したくだりも大変に気が利いて流石。そして、ここからはしばし浦島坂田船としての4人によるトークがCREWたちの消耗した体力を回復させていくことにもなった模様。

となりの坂田。、センラ

MCが明けてからの「SHOW MUST GO ON」以降「神のまにまに」までの流れでは、前半戦に引き続いてトロッコも使用されて浦島坂田船とCREWたちの距離感もますます縮まっていったのは言うまでもない。

しかも、この夜のツアーファイナルでは「truth」をカバーする一幕も挟み込まれ、ここでは振り付けの面でも本家をリスペクトした動きを浦島坂田船がみせていたことに驚くことしきり。単にJ-POPを“歌ってみた”のとは一線を画する、エンターテイナーとしての矜持を感じた。

浦島坂田船


浦島坂田船

本編ラストに歌われたのは今年1月にTVドラマ主題歌として発表された「ラメグラデーション」で、そのあとのアンコールではうらたぬきがMCで発していた言葉が曲タイトルに冠されている「絶景」も聴くことが出来たが、それに続いたセンラが語った言葉もこのツアーファイナルにおいては重要だったと感じる。

「今回のツアーでは僕が“担当”としてセトリを組んだんですけど、僕以外の3人も凄くいろいろ協力してくれたんですよ。ほんまにね。今回のツアーではCREWも俺らもスタッフさんやバンドダンサーたちも、あったかいワンチームなんだっていうことに気付けました。今年は浦島坂田船にとってメジャーデビュー10周年の節目でもありますし、もちろんその前からの歴史もあるんやけど、ここまで積み重ねてきた濃い日々をみんな誇りに思って欲しいです。これからもいろんな楽しいことをやっていくので着いてきてください。いや、着いて来させます! よろしくお願いします!」(センラ)

今日イチの一体感で浦島坂田船とCREWが結びついた「Pathfinders」も至って尊かったが、それ以上につくづく感動的だったのは大トリを飾ったメジャーデビュー10周年記念楽曲「TENTH」であったと断言したい。

途中で感極まった志麻が声を詰まらせた際には、うらたぬきが志麻の肩を抱いて勇気づけ、その様子に気付いたセンラととなりの坂田。も2人のもとに駆け寄り、となりの坂田。まで若干ウルウルしながら全員で最後までこの曲を歌い切って、フィナーレには4人で肩を組んでチーム・浦島坂田船としての力強さを伝えてくれたそのシーン。それは「TENTH」の歌詞にある〈そしてまた 次のCruiseへ!〉というフレーズと重なった。

志麻

今回の『浦島坂田船 Spring Tour 2026 ~夜叉~』で鬼を制し、むしろ仏法を守護する善神であるところの夜叉として昇華した浦島坂田船は、もはや無敵と呼んでも過言ではなかろう。やがて来る夏には『浦島坂田船 SUMMER TOUR 2026 TA1300』という、新しい航路を彼らは進み行く。それが前途洋々たるものになるであろうことは、もう約束されているに違いない。

浦島坂田船


文=杉江由紀
撮影=加藤千絵(CAPS)、堀卓朗(ELENORE)

セットリスト

浦島坂田船 Spring Tour 2026 ~夜叉~
2026.4.26 有明アリーナ

1. 輪々春廻
2. 返り咲
3. Trashy
4. 吉原ラメント
5. シザーナイフ
6. 宵
7. Ring
8. KISS THE BULLET
9. 花魁俺嵐コンフュージョン
10. 薄紅
11. ダブルフェイス
12. 金曜日のおはよう
13. 好き!雪!本気マジック
14. ばく
15. ニビイロドロウレ
16. リコレクションエンドロウル
17. カメリア・コンプレックス
18. 夢中Chu☆パンダ
19. アリアドネ
20. ガチ恋者達に捧ぐバラッド
21. SHOW MUST GO ON
22. ミダリニハルイロ
23. ポーカーフェイク
24. 神のまにまに
25. truth
26. ラメグラデーション
[ENCORE]
27. 絶景
28. Pathfinders
29. TENTH
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