「みんなでまだ旅をしていたい」BRAHMAN結成30周年の終わりは次なる始まりにーー満員御礼の『tour viraha final』で示した生き様と同士への誓い
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BRAHMAN『tour viraha final』 撮影=Tsukasa Miyoshi (Showcase)
『tour viraha final』2026.5.15(FRI)東京 ガーデンシアター
30周年アニバーサリーの序章は2024年11月の横浜BUNTAI『六梵全書』。4時間75曲の超人的記録は当然話題となり、その1年後、幕張メッセで3日間行われた『尽未来祭』も大掛かりなハレの日となった。ただ、本当に注視すべきは、最新アルバム『viraha』のツアーが昨年3月から始まり、このファイナルまでずっと続いてきた事実だろう。ドサ回りの地方公演が逐一話題になることはまずないが、しかしそれはハレに対するケでもない。最初のTOSHI-LOWのMCは、30年ぶんのBRAHMAN史を一言で言い当てていた。
「俺たちは、これしかできねぇ。全力でBRAHMAN始めます!」
1曲目は新作から「charon」。チバユウスケや消えていった数々の命に思いを馳せる歌だ。続く「賽の河原」は震災直後に届いたハードボイルドな楽曲で、まずMAKOTOが今ここで燃え尽きても悔いなしといった暴れっぷりを見せる。さらには4曲目で怒りの鉄拳「雷同」へ。RONZIのビートと〈蹴り上げろ テメエのケツだ〉の歌詞がビンタのような激しさで飛んでくる。
なのに、ずっと嬉しくて楽しかった。これはガーデンシアターに集まった約8千人が同意してくれる言葉だと思っているが、死を思い、生き残った苦しさを歌い、不条理に中指を突き立てる曲が続くのに、会場にはずっと祝祭のムードが漂っていたのだ。自然と巻き起こる手拍子、コーラスパートで突き上がる8千本の拳は、「いま全力で生きてるぜ!」という賛同の声だ。そこには長きに渡って同じものを見てきた同士の、誓いと呼べるくらいの濃密さがある。
よくも悪くもBRAHMANはわかりやすいパンクバンドではない。口コミだけで広まったユースカルチャー「AIR JAM 系」から始まっているのに、隣の兄ちゃん的な親しみやすさがなく、初期はストイックなイメージが強かった。震災以降は一気に被災地支援に動き出し、共に行動せよとバンド仲間やファンたちの背中を押していった。ざっくり書けば「矛盾してない?」と言われそうな言動を、彼らは、TOSHI-LOWは、すべて自分の中にある二律背反だと語り続けてきた。信じたかったから突き放したし、愛があるから怒り狂った。その言説を突き詰めると「生きたいから死を見続けた」という極論になっていく。死を思う歌で「生きてるぜ!」の賛同が起こるのは、だからBRAHMAN のライブにおいてはまったく自然な反応だろう。
涙も出ないほどの絶望を歌っていた初期曲の「SEE OFF」が、今では甲子園の歌としてポピュラリティを持っているのは偶然か。震災によるガレキの街をスクリーンに映し出した「最終章」、続く「Slow Dance」はコロナ期の静粛を題材にした歌だが、時間が経ってみるとそれらは「急に襲ってきた危機に対してどうするか」という意味で同じ人生論を語っていると気付く。ひとつひとつ違う曲のベクトルが、反転し、逆の意味を持ち、結局はひとつしかない人生を語り出す。これが、もしかするとこのバンドの唯一変わらないところかもしれない。
その説得力が燦然と輝くのは「BEYOND THE MOUNTAIN」「知らぬ存ぜぬ」「Ace Of Spades」をメドレーのように叩きつけた中盤。土着の祭囃子を取り入れた初期名曲と、ギリギリまでジャパコアに肉薄した怒号、さらにお馴染みモーターヘッドのカバー。それぞれインスパイア元はしっかりあるのに、楽曲はすべて「ここにBRAHMANあり!」という歓喜の歌として響き渡るのだ。最初に出てきた花札の映像が、次々とルーレットやコインに切り替わり、タイトルどおりスペードのエースが浮かび上がる演出は鳥肌もの。ワールドミュージックやハードコアに憧れていたこのバンドが、30年かけてジャパニーズ・オリジナルとなっている今を象徴するシーンだった。
ハイライトが続く。当時の福島第一原発のリアルな声を映し出す「鼎の問」。生々しい社会性を帯びながら、そこに正義ヅラを持ち込まないところがいい。ただ問う。その問いは自分に返ってくる。膝から崩れ落ちる叫びと共にマイクスタンドをへし折った「ARRIVAL TIME」の孤独と、そのあと情けないくらいの笑顔になって「一番でっかい声で歌ってよ」と客席に語りかけた「今夜」への流れが本当に美しかった。ひとりひとりと、この夜を乗り超えるだけの力を分け合いたい。強い体制批判とささやかな友愛は、それぞれ矛盾なくBRAHMANの器の中に収まっていくのである。
『尽未来祭』のような祭りではないのでゲストは最小限。G-FREAK FACTORYの茂木洋晃を迎えての「最後の少年」、そして細美武士が飛び出した「WASTE」だ。そのあと、余韻溢れるKOHKIのアウトロをバックにTOSHI-LOWは切々と語り続けた。今回のツアーは過去最長だったこと。いつもなら早く終わりたいと思うのに、初めて終わらなければいいと思ったこと。「ツアーがまだまだ続けばいい。みんなでまだ旅をしていたい」の一言は、このツアーだけが主語ではなく、BRAHMANが、という意味にも感じた。そう楽観的に10年後を考えられない年齢になってきたのだ。ツアーが始まる頃には闘病中だったスタッフが、『尽未来祭』を見ることも叶わず先に逝ってしまったというエピソードに胸が詰まる。
ただ、ここでも痛みは反転する。「俺の人生の最後のゴールを切る、その最後の日、テープの向こうに、先にいったあの人も、あいつも、全員並んでてくれる。俺がテープを切った後に、そいつらが寄ってくる。俺たちがいなくなった後の人生どうだった?辛かったか?苦しかったか?悲しかったか?って聞かれる。その時俺はこう言うよ。……順風満帆!」。2024年の『六梵全書』で初めてMV公開されたラストナンバーは、ツアーで鍛えた生演奏のダイナミズム、さらに嵐も雷もマグマも入り乱れるスクリーン演出も含めて、今のBRAHMANのとんでもない生命力を伝えるものになっていた。一人ひとりの燃え滾る命が、バンドという共同表現によって何倍もの力を呼ぶ。反応する客の数だけエネルギーはさらに増幅する。バンドはひとりじゃないからいい、という当たり前の事実に心底ゾクゾクした。完全燃焼の2時間。30周年の終わりは次なる始まりでもある。さぁ、限界は何処だ。
取材・文=石井恵梨子 撮影=Tsukasa Miyoshi (Showcase)
セットリスト
2026.5.15(FRI)@東京 ガーデンシアター
02.賽の河原