現代最高と評される、高田茜が演じる『ジゼル』 マシュー・ボールとの息の合ったパフォーマンスも必見~「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」
-
ポスト -
シェア - 送る
英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ/ロイヤル・バレエ『ジゼル』
ロイヤル・オペラ・ハウスで繰り広げられる、世界最高峰の英国ロイヤル・バレエの舞台を映画館で現地さながらに体感できる「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。新シーズン「2025/26」は2025年12月19日(金)から2026年7月9日(木)までの期間、全9演目が各1週間限定にて全国公開されている。
5月29日(金)からはTOHOシネマズ 日本橋ほかにて、ロマンティック・バレエの名作『ジゼル』が公開される。公開を記念し、舞踊評論家・森菜穂美氏とともに本作の魅力に迫る解説コラムが到着した。
1841年にパリ・オペラ座で生まれて以来、『ジゼル』はロマンティック・バレエの最高峰の作品として世界中で上演され、名だたるバレリーナたちが名演を披露し、数々の伝説を築き上げてきた。1幕の収穫期のドイツの牧歌的な農村を舞台にした悲劇のドラマ、2幕の精霊「ウィリ」が舞い踊る月に照らされた幽玄な超自然的な墓場という二つの異なった世界の対比を描いている。死をも超える愛と赦しを描いた不朽の名作として、今も広く愛されている本作を森氏は、「『ジゼル』はバレエそのものを象徴する作品として知られている」と解説する。
今回ジゼル役を演じた高田茜は、その見事な技術と表現力で絶賛を浴びた。2016年にジゼルを演じてプリンシパルに昇進し、2008年のローザンヌ国際バレエコンクールでも「ジゼルのヴァリエーション」を踊って入賞。そしてロイヤル・バレエへの入団を果たしたこともあり、彼女にとっては特別な思い入れがある役だ。そんな高田の演技について、森氏は「快活で純朴な村娘から、精霊への変化を見せる繊細な表現力と、長くしなやかな手脚で、闇に溶けてしまうような儚さがあり、妖精さながらの跳躍の軽やかさもさることながら、心が壊れていく狂乱の場面の迫真性には、思わず涙し心を奪われてしまう」と熱く語る。2幕で慈愛と崇高さも漂わせ、死してなおも一途にアルブレヒトを愛しぬく姿は、まさに現代最高のジゼルというべき名演として高く評価されている。巨匠ピーター・ライト版の『ジゼル』では、ジゼルの死が他の版でみられるように、失恋のショックによる狂乱で心臓が止まってしまうのではなく、アルブレヒトの剣で自らの胸を刺したことによる自死であるのが最大の特徴。彼女の内なる絶望が公の場に露呈する瞬間は衝撃的である。この重要な「狂乱」の場面は、何世代にもわたってバレリーナたちの試練の場となり、数多くの名演を生み出してきた。高田はジゼルがアルブレヒトとの幸せな日々を回想しながら、正気を失い自らの命を絶ってしまう姿を、リアルかつ痛ましく演じ、観客の涙を誘う。
アルブレヒト役を演じるのは、貴公子役が似合う端正な佇まいと憂いを備え、感情の変化をドラマティックに表現する演劇性も持つマシュー・ボール。高田との息もぴったりで、この二人ならではの美しく感動的なパフォーマンスが印象的だ。精霊となったジゼルの姿は見えなくとも、その気配を感じながら踊る場面は、生死を超えて心を通わせる二人の姿に胸を打たれる。また、ジゼルに横恋慕して、アルブレヒトの正体を暴き、ウィリたちに取り殺される森番のヒラリオンを演じるのは、振付家としても活躍する実力派、ヴァレンティノ・ズケッティ。そしてウィリの女王・ミルタは、新進気鋭のアネット・ブヴォリが演じる。1幕の収穫祭のペザントの踊りでは、6人のソリストの中に日本出身の若手、前田紗江、五十嵐大地が出演。悲劇との対比を作り上げ、多幸感に満ちた踊りで祝祭的な雰囲気を盛り上げている。森氏は「一糸乱れぬ恐ろしくも美しいウィリたちのコール・ド・バレエも大きな見どころです」とコメントしている。
世界のトップダンサーたちが死をも超える愛と赦しの物語をドラマティックに演じる『ジゼル』。いつまでも忘れがたい印象を残す珠玉の名作を、ぜひ映画館の大スクリーンでお楽しみいただきたい。
森菜穂美(舞踊評論家)解説全文は下記↓URLにて閲覧可能です。