関朋岳×佐川和冴が紡ぐ濃密なアンサンブル。10年の絆と世界への挑戦をのせたデュオ・リサイタルを語る
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ハチャトゥリアン国際コンクール優勝者のヴァイオリニスト関朋岳と、東京音楽コンクール優勝者のピアニスト佐川和冴が2026年6月にHakuju Hall(東京)とフェニックスホール(大阪)でデュオ・リサイタルを開催する。10年近く共演を重ねてきたふたりの俊英に話を訊いた。
10年近く共演を重ねてきたふたりの俊英
――おふたりは、東京音楽大学附属高等学校で同級生だったそうですね。
関:3年間同じクラスでした。
佐川:一学年の人数は80人弱だったと思います。その中で男子の人数は、僕たちの学年では16人ぐらいでした。距離感が近いので、みんなと親しくなりますね。それぞれ専攻は違うけれど、オケの授業以外はほとんど一緒でした。
関:休み時間もサッカーしたりして遊んでいましたね。
――高校時代から共演していたのですか?
関:それが、意外となかったのです。初めて一緒に演奏したのは、高校3年生の頃です。
佐川:あとは、校外学習でふざけて「チャルダーシュ」を一緒に弾くとか(笑)。
関:リサイタルでの共演は、大学に入ってからでした。
――初めてのデュオ・リサイタルのことを覚えていますか?
関:その時も、今回のリサイタルでの演奏するフランクの《ヴァイオリン・ソナタ》と違う番号のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを弾きました。当時、ふたりで渡辺玲子先生のレッスンに通っていました。合わせもたくさんして、1回目のリサイタルに挑みました。それ以来、何度も共演しています。
王道のベートーヴェンから現代曲『スビト』へ。阿吽の呼吸で魅せるこだわりのプログラミング
関朋岳(ヴァイオリン) (C)Shigeto Imura
――関さんと佐川さんは、2026年6月にHakuju Hallとフェニックスホールでリサイタルを開催します。そのプログラムのコンセプトを教えてください。
関:コンセプトは「デュオ」です。密にアンサンブルをするのが目標です。僕たちは、Trio Gokokuji(ピアノトリオ)を結成して活動しています。その時も、最初に取り組んだのはベートーヴェンでした。カルテットでもよく演奏しています。ベートーヴェンは、カルテットにおいても偉大な作曲家。まずベートーヴェンを勉強するのは、室内楽をやる上で土台作りになると思っています。今回、デュオとしての室内楽的な側面を出したいと考えた時、まずベートーヴェンは欠かせないと考えました。
佐川:今回、ベートーヴェンのどのヴァイオリン・ソナタを弾こうかと考えた時、自分たちの“これから”という意味も含め、第1番を取り上げることにしました。曲も素晴らしいですし、アンサンブルとしてもベートーヴェンらしさが詰まった作品だと思います。
関:フランクの《ヴァイオリン・ソナタ》は、僕らが最初に共演した作品ですので、思い入れがあります。今回のデュオ・リサイタルが決まった時、フランクのこのソナタを外すことはできませんでした。
――ルトスワフスキ《スビト》を取り上げた理由を教えてください。
関:僕の強い希望です。この曲には初めて挑戦します。プログラムの他の曲と異なる傾向の創作で、難しい音楽だと思われるかもしれません。掛け合いがとても豊かで、阿吽の呼吸が求められる作品です。
佐川:ベートーヴェンとフランクという王道の作品の間で、雰囲気をガラッと変え、なおかつお客さまに強いインパクトを与える曲を考えていた時、関くんが《スビト》を提案してくれました。
関:僕の中では、佐川くんは現代曲に強いイメージがあります。彼は、センスで弾けるタイプのピアニストです。彼と一緒に弾くことで、この作品の新たな一面を聴いていただけるとの期待も込め、プログラムに入れました。
佐川和冴(ピアノ) (C)tetsuya okukawa
――それから、シューマン《3つのロマンス》作品94も演奏しますね。
関:提案してくれたのは、佐川くんです。
佐川:プログラミングとして、ベートーヴェンからシューマンはドイツものという繋がりを意識しています。
関:あえて前半をしっとりと締めくくりたかったのです。
まず、ベートーヴェンをかっちりと演奏した後、シューマンで穏やかに前半を終わり、休憩を挟んだあと、《スビト》でパシッと始まり、フランクで華やかにプログラムを結ぶ…このような構成を考えて、シューマンを取り上げました。
――Hakuju Hallでは何度か演奏したことがあるそうですね。
関:舞台から客席を見て、綺麗な長方形の印象が強いですね。
佐川:特に、今回はヴァイオリンとのデュオの作品を弾きますので、音がとても伸びやかに響きわたっていくと思います。
――フェニックスホールで演奏されたことはありますか?
関:ソロで演奏するのは、大阪では初めてです。
佐川:僕は、大阪で演奏したことはあります。フェニックスホールの写真などをSNSなどでよく見ていますが、実際に演奏するのは今回が初めてです。関西の方にも、僕たちのデュオをたくさん聴いていただきたいと思っています。
関:大阪でのこの公演は、今後への大きなステップになると思います。
―――お互いの演奏の魅力を教えてください。
関:佐川くんは、とても良い意味で感性が先行するタイプだと思います。
理論から入るタイプの人もいますけれど、最初に理論の地盤を固めてしまうと、そこから音楽を広げていくのは難しいと思います。ですから、最初から感性の赴くままに何かを表現して、それを外側から整えて綺麗な形にする方が、最終的にはとても大きな音楽が作ることができると思うのです。だから、僕は佐川くんと弾くと、何かを表現したい時に躊躇なくそれを表現できますし、自分が出したアイデアにさらに新たなアイデアを重ねていく作業ができるパートナーです。
佐川:関くんとは何度も共演してきましたが、彼とフル・リサイタルに挑む機会はこれまでとても少なかったですね。今回、久しぶりの共演となります。
高校時代から関くんと演奏してきて思うのは、彼の“間”の取り方です。その休符の表現に惹き込まれます。どんな作品でも、とても大きなフレーズで捉えていて、音色も美しく、それでいて説得力のある音で 僕とラリーをしてくれます。
富士登山から室内楽へ繋がる道。楽器に触れず、朝から晩まで全力で遊ぶふたりの流儀
――それぞれの近況を教えてください。
関:僕の音楽の礎となっているのは、室内楽とオーケストラだと思っています。この夏、カルテットのコンクールを受ける予定です。
8月に28歳になります。「気がついたら30歳になるんだろうな」と、ふたりでよく話しています。勉強できるのは、いまが最後の最後ではないかと考えています。演奏活動の幅を広げながら、まだまだ音楽家として大きくなっていかなければとの思いもありますので、壁を作らず、いろんなものに触れ、真剣に取り組んでいこうとしているところです。
佐川:僕は、まだ学生としてベルリンで勉強を続けています。その中で、何かきっかけを掴もうと必死になっているところです。世界各国から優秀な人たちが勉強するために来ているので、日々の音楽生活はとても刺激的です。もしかしたら、もう数年ドイツにいるかもしれませんが、海外での経験を音楽に反映することができればと思っています。
関:クラシック音楽は、本場で学ぶに越したことはありません。とにかく、世界に挑戦しようと!オーケストラやカルテット、そしてソロの活動にしても世界の舞台で挑戦してみたい…僕たちは今、世界への挑戦を重ねている只中なのです。
――音楽以外で、いまハマっていることはありますか?
佐川:アクティブなことが好きですね。音楽以外でも仲が良くて、合わせの後に何を食べに行くかを相談するのも好きです。
関:音楽家は練習や演奏会に追われ、基本的に休みがありません。だから、僕らは楽器に触れず、朝から晩まで遊ぶ日を設けています。例えば、釣りをしたことなかったら釣りをしよう、富士山へ行ったことがなければ富士山頂まで登ってみようとチャレンジします。
やったことないことをふたりでやってみる…それは室内楽にもつながっている気がします。
――読者の皆様にメッセージをお願いします。
佐川:この記事を見た方は、ぜひ僕たちのデュオ・リサイタルを聴きにいらしてください!
関:僕たちは、一緒に演奏してきて10年近くになります。僕たちのこのアンサンブルは、これからもどんどん広がっていくと思います。ぜひ、僕たちの“いま”を聴いていただければと思います。
取材・文=道下京子
公演情報
■日時:2026年6月2日(火) 19:00〜21:00(開場 18:30)
■会場:Hakuju Hall
■日時:2026年6月20日(土) 14:00〜16:00(開場 13:30)
■会場:あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
佐川和冴(ピアノ)
シューマン:3つのロマンス 作品94
ルトスワフスキ:スビト
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 ほか
※曲目は変更になる場合がございます。