ミステリーの女王アガサ・クリスティ本人の空白の11日間の謎に迫る! ミュージカル『AGATHA(アガサ)』製作発表会見レポート!
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イギリスを代表する推理小説家で“ミステリーの女王“と呼ばれ、いまも多くの作品が読み継がれ愛され続けているアガサ・クリスティの没後 50 年となる 2026 年、韓国で大人気を博しているミュージカル『AGATHA(アガサ)』が、主演のアガサ役に花總まりを迎えたほか、黒羽麻璃央、渡邉蒼をはじめとする豪華共演キャストにより、7月18日(土)東京よみうり大手町ホールで日本初演の幕を開ける(8月2日(日)まで。のち8月15日(土)、16日(日)愛知・名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール、8月27日(木)~31日(月)大阪・森ノ宮ピロティホール、9月4日(金)~6日(日)福岡・キャナルシティ劇場で上演)。
ミュージカル『AGATHA(アガサ)』は、脚本・作詞ハン・ジアン、作曲ホ・スヨンの韓国実力派クリエイターが集結して制作された作品。アガサ・クリスティが生涯沈黙を守ったと言われる、実際に起きた11日間の失踪事件を、実在の人物と架空の人物を織り交ぜて再構成。2013年の韓国初演以来「小説よりもミステリー」と称され、上演を重ねているミュージカルだ。作品世界のなかで、アガサ晩年の現在(1953年)と過去(1926年)、を行き来しながら、事件の真相に近づいていく、謎が交錯する心理劇の趣強い作品の日本初上演にいま大きな期待が集まっている。
そんな作品の製作発表記者会見が2日都内で開かれ、抽選で選ばれた幸運なオーディエンスも見守るなか、花總まり、黒羽麻璃央、渡邉蒼、上原理生、原田優一、東山光明、内田未来、丸山泰右、保坂知寿の全キャストが登壇。公演への抱負を語った。
会見はまず作品の楽曲披露からスタート。少年時代から好奇心旺盛でアガサのような推理作家になることを夢み、大人になったいま将来を嘱望される推理作家となったが、盗作疑惑に巻き込まれ、精神的に追い詰められているレイモンド役を演じる渡邉蒼が、切々と訴えかけるように歌い始めた「悪夢」が1曲目として披露される。コーラスに 上原理生、原田優一、東山光明、内田未来、丸山泰右、保坂知寿が加わり、レイモンドを追い詰める様が鋭く迫ってくる、作品世界に誘う壮大なオープニングナンバーで、会見場も一気にミュージカル『AGATHA(アガサ)』の世界に染め上げられていく。
そこから軽快な音楽が流れ出して、歌われたのが2 曲目「捜査協力」。失踪したアガサの手掛かりを探すレイモンドに、アガサの私生活の謎に執着し、彼女の周囲を執拗に嗅ぎまわっている記者ポール役の原田優一が捜査協力をもちかけ、アガサの「新作」を心待ちにしている担当編集者ニューマン役の東山光明も加わった三人でのコミカルでアップテンポな楽曲だ。
もちろん個々の役どころの思惑も絡んだスリングさも持ち合わせたナンバーなのだが、会場の手拍子も促した三人のコンビネーションが抜群。早くも場面が出来上がっているのに感心しきりだったが、のちの会見で、この場面はまだ稽古に入っていず、三人がほぼ即興で振りや動きをつけていることが明かされた折には信じ難い気持ちになった。人気、実力を兼ね備えた俳優たちはこれほど自らナンバーの世界観を表現できるのかとただただ驚かされ、逆にこのナンバーが本番でどうなっていくのかの興趣が高まった。
会場のボルテージが一気にあがったところで、またガラリと曲調が変わった3 曲目は「闇の刻印」。アガサに関わる謎の男ロイ役の黒羽麻璃央が、アガサが書き上げた原稿に納得のいかない想いを表現するナンバーで、近年ますます歌唱力を高めている黒羽が、どこか妖しく、ミステリアスに歌いあげるメロディーラインが耳に残った。
その黒羽ロイのソロの最終盤でいよいよアガサ役の花總まりが登場。歌いかける黒羽ロイの視線をひたと受け留め、やがて彼女自身が歌い出すというドラマチックな展開で披露されたのが4 曲目の「夢の中」。アガサが自身の揺れ動く内面が歌われるナンバーで、上空を見つめるように視線をあげて歌い上げる花總の歌声がドラマチックだ。
アガサの夫アーチボルド役の上原理生。彼の秘書でアガサ夫婦を支えるナンシー役の内田未来。アガサ失踪事件を担当するエリック警部役の丸山泰右。そして長年アガサに仕える忠実なメイド・べス役の保坂知寿に、原田、東山もコーラスで加わり、謎めく作品の迷宮が目の前に広がっていった。ピアノの石川花蓮の演奏もオーケストラを彷彿とさせる豊かさで、贅沢な歌唱披露の時間が過ぎていった。
そこから、壇上が会見場に整えられ、再びキャスト全員が呼び込まれて、まずそれぞれの挨拶があった。
花總 皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。アガサ・クリスティ役を演じさせていただく花總まりです。どうぞよろしくお願いいたします。
黒羽 ロイ役を演じさせていただきます。謎です。あまり言うなと言われているので(笑)、謎の男をよろしくお願いいたします。
渡邉 直前まで7 歳の役を演じていたのですが、今回は13歳から40歳まで幅広く演じて参ります。よろしくお願いいたします。
上原 皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。この作品の日本初上演に携われることを心より光栄に思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
原田 本日はありがとうございます。記者のポールという役をやらせていただきます。以前花總さんとはフランス国王と王妃の夫婦を演じさせていただいたんですけど、今回は執拗に追う記者役で、花總さんからは冷たい視線を浴びて寂しい気持ちになっていますが、夫は理生くんに譲りたいと思います。
東山 僕は優一くん以外とは共演が初めての方々ばかりですが、今日は舞台裏から仲良くやっています。結構シリアスな作品ですけれど明るくやっていますので、稽古も楽しみです。
内田 上原さんが演じるアーチボルドの秘書の役を演じさせていただきます。私も出てきてはすぐに帰っていくシーンが多いので、わりと謎が多い役かもしれません。楽しみです。よろしくお願いいたします。
丸山 僕としましては、豪華なみなさんに混ぜていただいているという気持ちで、今日も職場体験というそんな感覚で一日をすごしております。明治座さんを始め選んでいただいた皆様に御恩返しができるように稽古に励んでいきたいと思います。
保坂 私は長年アガサに仕える忠実なメイドを演じさせていただきます。コンパクトなカンパニーですけど、すでに楽しい感じになっています。みんなで一緒に頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
ここから司会、そして記者との質疑応答に引き継がれ、和気藹々とした空気のなかキャストたちが思いを語ってくれた。
──実際にお客様を前に歌った感想をおひとりずつお聞かせください。
黒羽 とにかく「怖かった!」という感想です。製作発表をすることはあっても歌唱披露をする機会はあまりなかったので、すごく貴重な体験をさせていただきました。まずは稽古を頑張って、今歌った曲をまたロイとして歌えたらいいなと思います。
花總 歌唱披露は実際の譜面通りではなく、コンパクトにカットしていて流れが違っているので、体に馴染んでおらず緊張します。でもミュージカルですので、楽曲を皆様に聞いていただき面白そうなだと思っていただけると嬉しいので、みんなで頑張って歌いました。
渡邉 僕は花總さんに「あんまり緊張してなさそうだね」と言われたんですけど、緊張していました。唯一、今回歌った「M1」は立ち稽古が終わっていたのですが、身体表現も含め、演出も振り付けもかなり複合的でエンターテインメントな曲になっています。だから今日は歌一本でやるというのが、心さみしく感じたところがありますので、ぜひ実際に観に来ていただきたいです。もっと面白いものを観ていただけると思います。
原田 (2曲目の「捜査協力」では)皆さんに手拍子もしていただきありがたかったですが、実はこの曲もまだ稽古はしてないんです。ちゃんと動いているように見えたかもしれませんが、好き勝手に動いていただけです(会場からどよめきが広がる)。
東山 作品の中では一番コミカルで盛り上がる曲なので楽しみにしていただければと思います。
上原 今回の作品は出演者がこのメンバーだけなんですよね。歌唱披露と言っても今日は普段はあまりしないコーラス担当だったので気楽だなと思っていたら、盛大に歌詞を間違えまして(「本当?」「言わなければいいのに!」などキャストから声があがる)気を抜いてはいけませんね。まだ稽古が始まってそれほど経っていないので、初めて皆様の前でお披露目をするのは緊張するものですね。(記者やオーディエンスが)近いなと思って。本番のホールも(客席が)近いと思うので、よい予行演習になりました。これを糧にしてがんばりたいと思います。
内田 私はそもそも人生で初めての製作発表だったので、皆さんは歌唱披露の後、はけてから「終わった!」という感じでしたが、私は今も心臓がバクバクしていて緊張しています。カメラの方も大勢いて終わってもなお緊張しています。
丸山 恥ずかしながら、(内田さんの)倍の年齢ですが、私も初めてで…。歌詞も間違いました(一同爆笑)。今も心臓がバクバクしていますし、改めて思ったのが、役がない状態で出るというのはやはり僕は怖いので、必死に稽古で役を作ろうと、間違った瞬間にさらに思いました。頑張ります。
保坂 私は稽古場にちょっと遅れて入ったこともあり、稽古を数回しかしていなかったので、まだこのぐらい(「少しだけ」のポーズをすると、原田から「ちょっとわかりづらい」と声があがり笑いが広がる)しか覚えていないんです。さっきリハーサルがあったんですけど、歌詞とは全然関係ない言葉が頭の中を駆け巡ってしまい、今日は戦いながらやらせていただきました。
──お稽古が始まったばかりとのことでお話しづらいかとは思いますが、初めてご覧になるお客様にこの作品の魅力や注目してもらいたいポイントをお話しください。
花總 このお話の根本にあるのは、アガサ・クリスティに実際に起こった、11日間行方不明になり、記憶も少しなかったという出来事がモチーフになっています。作品自身がミステリーですので、謎解きをするような感覚で見ていただけると、(客席と舞台との)一体感が生まれるのではないかなと思います。
黒羽 お客様がなんだ、なんだと考えながら、一冊の推理小説を読んだようなストーリーになっていると思います。アガサを始め誰かに感情移入しながらも、もうひとつ第三の目というかストーリーを推理しながら一緒に楽しんでいただけるのではないかなと。あとはすばらしい楽曲がたくさんありますので、楽しんいただけたらと思います。
渡邉 まずはすごくいい戯曲であると思います。読後感が日本のミュージカルでは感じたことがない感覚でした。僕はすこういう作品がすごく好きで、難解かつ普遍的なテーマが1本通っているというか、クリストファー・ノーランの映画を見た後みたいな感覚でした。特に2幕はやばいですよね。(キャストたちに問いかけ、それぞれが同意)どんどん大変なことになっていくんです。僕らも迷宮に入り込んでいくような感覚で演じないと振り落とされそうな展開になっていくので、お客様も一緒に飛び込んでいき、楽しんでいただけたらと思います。
上原 歌稽古をして、演出とみんなで台本を読み解き、立稽古が始まって、感じているのは本当によくできた作品だなということです。まず、歌稽古から音楽がすごくよくできているなという印象がありましたが、そこから読み合わせもして立ち稽古もしてから歌うとさらにわかる。すごくよくできた作品なので、純粋にまずそれだけでも楽しんでいただけるのではないかと思います。あとは目のつけどころが面白いですね。実際にあった11 日間の失踪という、事実は小説より奇なりという、新しい主題かなと思います。
原田 我々は複数の役をメインキャラクター以外にもやっていますので、見終わった後に「この人数でこのミュージカルをやっていたんだ」と思っていただけると嬉しいですね。今、稽古が始まっているんですけど、最初から汗だくでやっておりまして、千穐楽近辺には「まりおくんかな?ゆういちくんかな?」と見間違えるほど、細くなっているんじゃないかと思います(会場の反応を見て)ここ笑っていいところですよ!(笑)
東山 いま優一君がおっしゃったように、本当にこの人数だけで歌も踊りもやって、初めから 4 曲ぐらいは僕らずっと出ているんです。誰がどの役で出ているのかも謎ですし、音が鳴り出したらノンストップで止まらないスリリングな作品だと思います。
内田 緩急がすごく美しい作品だなと私は感じています。華やかなところとミステリー特有の緊張感というか、空気の揺らぎみたいなものを演じていても感じることが多くて、お客様にもそこに引き込まれていただけたらいいなと感じています。
丸山 歌稽古で今回初めましての理生くんと一緒で耳が幸せすぎて、ずっと自分がうまくなったんじゃないかと勘違いしながら稽古をしていまして。これが見どころと伝えていいかわからないのですが(笑)。歌稽古をしていても、作品の普遍性や、作られた方の思いみたいなものが押しつけがましくなく来る感じがいいんですよね。すごく伝えづらいこと言っていますが、その感覚を早く皆さんと共有したいですね。
保坂 コーラスの稽古をしていても、歌稽古していても、とても贅沢な人たちというか、みんなすごい戦力だなと思います。歌の先生がちょっと稽古をつけると一気に変わったりするので、今稽古場でびっくりしています。これからまだ稽古が一か月以上あるので、すごく豊かな作品になるのではないかと思います。あとは、アガサ・クリスティの本を読んだことがなく(予備知識が)ゼロでいらしたとしても、アガサ・クリスティの色とか空気感とかがこの作品には満たされているので、これをきっかけに読んでいただいたり、興味を持っていただけるのではないかなと思います。
作品への興趣が高まる話が続くなか、時間となりフォトセッションへと再びセッティングがチェンジされる。そうした出入りの度に、夫役の上原が花總を自然にエスコートし、見ました?カッコいいですよね?と言いたげに、渡邉がアピールするなど、カンパニーの信頼関係がどんどん育っていることが感じられた。
最後に花總から「 本日はありがとうございました。ミュージカル『AGATHA(アガサ)』7月、8月、9月、東京、愛知、大阪、福岡にこのメンバーで揃って参りますので、ぜひぜひ皆様、期待して見にいらしていただければと思います。また周りの方々にも宣伝していただけますと嬉しいです」との挨拶があり、日本初演の新作ミュージカルへの期待が高まり続ける時間だった。
取材・文・撮影=橘涼香
公演情報
Lyrics and Book by Han jian
Music by Hu suhyun
翻訳:宋 元燮
音楽監督:甲斐正人
歌唱指導:やまぐちあきこ 稽古ピアノ:石川花蓮 演出助手:玉置千砂子 舞台監督:廣田 進
制作:室岡美幸・長浜あかね プロデューサー:鈴木里咲
宣伝写真:永石 勝 宣伝美術:髙橋義徳
黒羽麻璃央 渡邉蒼 上原理生 原田優一 東山光明 内田未来 丸山泰右/保坂知寿
会場:よみうり大手町ホール (〒100-0004東京都千代田区大手町1-7-1)
公演期間:2026年7月18日(土)~8月2日(日)
会場:名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール (〒492-8145愛知県稲沢市正明寺三丁目114番地)
公演期間:2026年8月15日(土)、16日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール (〒540-0003大阪府大阪市中央区森ノ宮中央1-17-5)
公演期間:2026年8月27日(木)~31日(月)
会場:キャナルシティ劇場 (〒812-0018福岡県福岡市博多区住吉1-2-1キャナルシティ博多ノースビル4階)
公演期間:2026年9月4日(金)~6日(日)
公演公式X: @MusicalAGATHAJ