糸川耀士郎×新木宏典「すべてが掛け合わさった美しい空間に」 悪童会議 第四回公演 ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場レポート&インタビュー
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ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
悪童会議 第四回公演 ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』が2026年6月27日(土)〜7月5日(日)、東京・シアターHにて上演される。2024年の第二回公演として上演した同作が新たなキャストを迎えて再演するとのことで、始動直後の稽古の様子を取材。ツトム役の糸川耀士郎、黒百合役の新木宏典の対談も併せて稽古場レポートをお届けする。
「悪童会議」とは、演出家・茅野イサムとプロデューサー・中山晴喜による演劇ユニット。横内謙介による不朽の名作戯曲をミュージカル化した本作は、放火魔であるツトム(糸川耀士郎)が小さな幼稚園の廃墟を燃やしたことから古武士・十五(立花裕大)と出会う、ある夜の話が語られる。
稽古場には滑り台、ブランコといった本作おなじみの大道具がすでに置かれている。この日は残念ながら立花と西浜詩織が欠席となったが、演じる際の立ち位置や動作をつけていく“ミザンス稽古”が行われていた。稽古場に足を踏み入れた瞬間から、全力で交わされるセリフの応酬が聞こえてくる。
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
糸川演じるツトムとサヨ(月山鈴音)が、玉野尾(岡 幸二郎)と玉野尾の眷属 修羅(鈴木亜里紗)玉野尾の眷属 畜生(西浜詩織)、玉野尾の眷属 餓鬼(福田真由)、玉野尾の眷属 地獄役(アイザワアイ)と対峙するシーン。不気味でコミカルに笑いを誘いつつも、大胆なミュージカルナンバーを最大級の熱量で提示され、まさに圧巻だった。
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
かねてより『夜曲』への思い入れを公言している茅野からは「このシーンのツトムはどんどん調子に乗っていってほしい」「サヨらしい動きをつけるとしたら、どうしようか?」などと具体的な提案がされ、都度ディスカッションが行われていく。キャストたちも毎回異なる演技プランを自ら披露していたのが印象的だった。特に千代姫(今森愛夏)を伴った乳母役の野口かおるは、あるシーンでコミカルなアレンジを炸裂。白百役の唐橋 充をはじめ、出番前のため稽古を見守っていたゴロウ役の松本 亮まで耐え切れずに笑い出してしまう一幕もあった。
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
コメディとダークファンタジーを絶妙なバランスで描く本作。井阪郁巳演じる虎清、新木演じる黒百合のロマンスも大きな軸となる。視線の動きやしぐさ一つが艶っぽく、儚さと美しさが求められる逢瀬のシーンでは、セリフに込める思いについても丁寧なディスカッションが重ねられていった。
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
終始、途切れることのない演劇への情熱。時折設けられる休憩時間中でさえも、そこかしこでキャスト同士がセリフの確認をしている。あらゆる可能性を見出しては取捨選択していく気の遠くなるような作業ではあるが、カンパニー全員が楽しんでいるようだ。本作に懸けた想いが凝縮された稽古場の空気感から、この夏に届けられるミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』の新たな可能性が垣間見えた。
今作で再びツトム役を演じる糸川と、新キャストとして参加する黒百合役の新木がインタビューに応じてくれた。
ーー稽古序盤ではありますが、現時点での手応えや率直なご感想をお聞かせください。
糸川:演出の茅野さんが『夜曲』という作品に思い入れがあるからこそ、理想値がものすごく高い。初演ももちろん、思い描いたところには到達できたと思うんですが、今度はもっと深いところを目指していらっしゃる。追求するには単純にいくら時間があっても足りない状態です。
新木:ものすごいスピードでのスタートダッシュです。(それは、)再演ということでスタートラインが高いところにあるのはもちろん、初演を引き継いでいる方々が役を一度深めた上で再構築に入られているからこそ。そこに触発されて、プレッシャーを感じながら初参戦の子たちが食らいついていっている。僕自身も、焦りを感じるくらい刺激を受けています。
糸川:今回から参加してくださるキャストの皆さんによる化学反応と、初演からのメンバーの成長が掛け算された『夜曲』が生まれるのがすごく楽しみです。
新木:個人的には、演出の茅野さんは僕が所属する俳優集団「D-BOYS」の舞台を手掛けてくださった、デビュー当時からお世話になっている方。この「悪童会議」では特に楽しくお芝居を作っている姿が見られて、幸せな気分です。信頼を置いているキャストを起用されているイメージがあるので、その方たちに対しては共通言語をもって稽古ができるからこそラグがない。もちろん、新人を導いていく作業もしながら。このカンパニーが初日を迎えた時点での完成形がどうなるのか、今から楽しみですね。
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
ーー糸川さんは2年ぶりに本作へ触れてみて、いかがでしょうか?
糸川:改めて当時の映像を見ると、自分の甘いところに気づかされました。同時に、自分が役者として成長したことも感じています。先日の本読みのときに、全体を通した伏線や感情の動きを前よりも敏感に察知できるようになっているのを実感したんです。セリフ量の多さも、2年前はかなり苦労したことを覚えています。今回も最初は不安があったんですが、何度か読んでスッと入ってきました。まだ2年しか経っていないということもそうですし、茅野さんたちの熱量的に「これはいつか再演があるなと」と予想していたこともあって頭のどこかにずっとセリフや曲が残っていたので。ツトムの長セリフから始まる物語ですし、空間を支配しなければならない。そのスキルは役者として絶対に会得しなければならないものでもあるので、初演のときは特に勉強になった期間でした。
ーー新木さんは初演を劇場で観劇されたとのこと、どんな感想をお持ちでしたか?
新木:ものすごくバランスの良い作品を観た、という気持ちでした。僕はミュージカル作品を観るときに、お芝居の役割が気になってしまうんです。歌とダンスのブリッジになっていて、物語としての芝居部分の濃さが圧倒的に足りない作品も多いなか、このミュージカル『夜曲~ノクターン~』はお芝居を基本ベースに置いていて、ちゃんと歌も聴かせてくれる。「もうプレイヤーを引退してもいいかな」と思えたくらい、完成された作品を観せてもらいました。歌もダンスもできるのに、それでも役者でいようとしてくれる子たちがいてくれることに安心しちゃったんです。(立花)裕大と(糸川)耀士郎の姿を見たときに、「もう、現場で教えるものはないかな」って。そこまでのことを思えちゃうくらい、素晴らしいものを見せてもらいました。
糸川:今、すごく嬉しいです。新木さんは顔合わせの時も「引退しようと思えるような」とおっしゃっていて。真意を聞いたのが今、初めてだったから……あの、もちろん引退はしないでいただきたいですけど!
新木:あはは(笑)。
糸川:辞めないでいただきたいですけど、そこまで思ってくださったことが嬉しいです。ありがとうございます。
新木:僕自身、ミュージカル『刀剣乱舞』という作品に入らせていただいた頃あたりから、なんとなく次世代や演劇界の未来にどう貢献できるかということを考えていました。同じラインに立っている状態での僕を見て、もし触発されてくれる役者がいたら、その子にすべてを捧げようと思ってます。(初演は、)コロナ禍を経て、プレイヤーだけじゃなく新しい取り組みも考え始めていた頃に出会った作品でした。
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
ーー糸川さんは稽古中、ディレクションを受けている最中も常にツトムとして居る姿が印象的でした。非常にバランス感覚が必要な人物なのではないでしょうか。
糸川:はい。そこが、ツトムを演じていて難しいところなんです。
新木:ツトムは本当に難しいよね。
糸川:おそらく昔ながらの演劇らしい部分でもあるんですが、ツトムは急にスイッチが入るんです。基本的にヲタク気質でコミュニケーションがうまくない。なのに、急にかっこいいことをボケで言ってみちゃう。僕は演じる人物の人生を追って、背景を想像しながら行動原理を理解していくタイプの役作りが染みついてしまっている。だからこそ、ツトムについては真面目に考えれば考えるほどドツボにはまっていくんです。
新木:落差が大きいんだよね。吉本新喜劇を見ているような感じです。その落差をちゃんとエンタメで作っていたんだなっていうのを感じるのがツトムというキャラクターかもです。
糸川:まさに! 茅野さんの思い描いているツトムは、やっぱり六角精児さんが演じられたツトムなんです。もともとツトムというキャラクター自体が、六角さんの当て書きということも教えてくださって。ハチャメチャな感じが、生真面目な考え方をしてしまう僕にとっては難しい。稽古でちゃんと作っていなかければと思っているところです。
ーーこのインタビューを終えた後に、まさに新木さん演じる黒百合が登場するシーンのミザンス稽古に入るとのこと。現時点ではどんなアプローチを考えていらっしゃいますか?
新木:男性を惑わすくらいの魅力がないといけないっていうのは、すごく感じていて……付け焼刃な女方ではダメなんだろうなとは思います。そこのフィクション部分では、リアリティのある表現というよりは、振り切った表現力が必要だと思います。女性っぽいことをすることだけが女性らしさではない。女性に見える表現をやらなきゃいけない。その塩梅がすごく難しくて、まだまだ模索している最中です。
糸川:本読みのとき、虎清と黒百合のシーンが本当に印象的で。新木さんと(井阪)郁巳のお芝居を通じて、これまで自分が気づけなかった二人の繊細さや切なさに気づかされました。お二人がこれからどんなシーンを作るのか、とてもワクワクしています。
ーー最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
新木:僕は2年前に劇場で観て、今回出演させていただくにあたり配信映像も観させていただきました。双方の手段で観劇をしたからこそ実感したことでもありますが、生で観るとさらに意味が見えてくる部分もあります。できることなら、演劇人としては空気感に飲まれる感覚を楽しんでいただきたい。ぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。
糸川:前回から2年が経ち、改めてシーンの意味や伏線、戯曲としての魅力をより俯瞰的に感じています。今回は設計図のある状態で、新たな方々と共に再構築していいものが出来上がるはず。冒頭の屋台崩しなど、芝居や歌も演出も舞台美術もすべてが掛け合わさっている美しい空間がきっと待っていると思います。「演劇とは?」という原点の魅力に、お客様にもぜひ触れていただきたいです。
ミュージカル『夜曲〜ノクターン〜』稽古場より
取材・文・撮影=潮田茗
公演情報
【日程】2026年6月27日(土)〜7月5日(日)
【出演】
前売当日10,000円
パンフレット付 12,000円 来場時に公演パンフレット(販売価格2,000円)引換
U-22 6,000円
オフィシャルHP:https://akudoukaigi.com
お問い合わせ : akudoukaigi@gmail.com