平野良&水夏希が語る、さまざまな兄弟の“選択”を描く新企画~兄弟寓話コレクション第一弾『平家!兄弟』 「シリアスとコメディーのコントラストを楽しんで」

2026.7.11
インタビュー
舞台

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「兄と弟」という最も原始的な人間関係を題材に、時代に翻弄されたさまざまな兄弟の“選択”を描いていく、舞台『カインとアベル』兄弟寓話コレクション。シリーズ第1弾となる今回の公演は、平家三兄弟の愛と破滅を描く『平家物語』を題材にした『平家!兄弟』が上演される。宗子こと池禅尼と祇園女御などを演じる水夏希と、平家盛などで出演するとともに本作の演出も務める平野に、本作への意気込みや見どころを聞いた。

――最初に今回の企画を聞いたときのお気持ちを教えてください。

平野:本作のプロデューサーさんとはこれまでにも何度か一緒に作品を作っていますが、今回はこれまでとはガラッと変わった作品です。実は、人生で初めて、女性の方に演出をつけるんですよ。なので、ちょっと緊張しています(笑)。

水:そうなんだ。でも、別に変わらないでしょう? 大丈夫、大丈夫(笑)。

――今回、平野さんは作品制作にも深く関わっていらっしゃるんですか?

平野:なんとなくですが(笑)。基本的にはプロデューサーと作家さんのお二人がどんどん進めてくださっています。

――水さんは今回、紅一点ですが、お話を聞いていかがでしたか?

水:とてもありがたいと思いました。何よりも平野くんの演出が楽しみでしかたないです。これまで共演は何度もありますが、演出をつけてもらうのは初めてなんです。初めて共演したときから、なんてしっかりした人なんだろうと思っていたんですよ。初演出のときも観に行きたくて、「行くね」と言っていたんですが行けなくて……。なので、今から期待しています。

――本作は、カインとアベルの物語を前提にしつつ、『平家物語』を描くという構成がすごく面白い作品ですね。お二人はストーリーについてはどのように感じましたか?

水:カインとアベル兄弟と平家物語を重ねて描くというのはすごく魅力的だと思いますし、三兄弟のキャスティングも面白いなと思いました。だって(あなたは)絶対に長男キャラでしょう? それなのに、今回は次男。持ち味とは違うキャラクター配役になっているというのが面白いです。それから、実話とは違うところもあって、「もしかしたらこんな事もあったかも」と思わせる面白みがあるので、リアリティを持って演じていきたいと思います。

平野:演出作品では、これまではオムニバスの作品ばかりだったんです。しかも、笑える物語が多かったので、オムニバスでもなく、コメディーでもない本作は、初めてのことばかりです。かなり深いところを描いたストーリーなので、真面目に作らなくてはいけないなと思っています。

水:そうですね、笑いがあるという作品ではない。

平野:しかも、今回は全員が二役以上を演じるので、どう切り替えて演じるのか。それから、演じている役が、物語が進むにつれてどう変わっていくのかを見るのも楽しみですね。

――水さんから実話とは違うところもあるというお話がありましたが、役作りをする上では、どのくらい史実を調べるものですか?

平野:僕はあまり調べないですね。脚本の(赤澤)ムックさんが稽古場に来てくださるので、「これは本当はどういうことなんですか?」ってその場で聞きます(笑)。その答えを聞きながら稽古をしています(笑)。

――そうすると、歴史上の人物からイメージして役を作るというよりは、あくまでも脚本から役を作られているんですね。水さんはいかがですか?

水:私は、めちゃくちゃ調べます。今回も調べていますが、宗子(池禅尼)は分からないことが多い人物で、何歳で子どもを産んで、何歳で結婚したのかという、基本的な人格形成も不明なので、どうしようと思っているところです。ただ、時代的にも家を守る女性、その血を守る強さを持った人物ではあるのだろうと考えています。それから、もう一役、祇園女御も演じますが、彼女は子どもを産んだことも忘れてしまっているくらい女として生きている女性なので、その違いをしっかり描けていけたらなと思います。

――平野さんは、ご自身が演じる平家盛という役柄についてどのように考えていますか?

平野:ものすごくまじめで真っすぐな人物です。それゆえに、事件が起こってしまいます。物語の起点となる人物なのですが、今回、演出をしながら出演するので、ムックさんが少し早めに殺してくれるそうです(笑)。

水:史実では、病気で死んだと言われているんですよね?

平野:気が狂ってしまったという話もあるみたいですよ。

水:いろいろな説があるんですね。歴史上の人物を演じるときにいつも思うのですが、書き残した人の視点によって、その人物が善にも悪にもなるというのが、歴史の面白さだなと思います。

――特にこの時代は分からないことも多いですから。

水:だからこそ、ロマンがありますよね。

平野:今回もラストの展開に驚いてもらえると思います。これまでの僕らを知っている人は、「この役を(内藤)大希にやらせるんだ」と意外に感じると思うんですよ。それも面白さのひとつだと思います。以前僕が一緒にやった別の作品では、あの役を演じていたのに、と。

――内藤さんのお芝居も楽しみです。平野さんは、演出面ではどんなことをお考えになっているのですか?

平野:これから打ち合わせをして決めていきたいです。ただ、会話劇なので、派手な演出をするというよりは、ディスカッションを大切にして作り上げていきたいと思います。

水:時代物ですが、それほど装置を組んだりするというわけではないんですよね?

平野:そうなんです。

水:演出は何作目ですか?

平野:6作目です。

――演出する楽しさも感じるようになってきましたか?

平野:毎回、違いますから、まだ……。でも、実際にやってみて分かったのは、スタッフの皆さんがプロなので、全部やってくださるということ(笑)。ちょっと「こうしたいな」という希望を伝えるだけで、完璧にやってくださる。なので、僕はただ小言を言っているだけです(笑)。

――今さらだとは思いますが、お互いの印象も教えてください。

水:先ほどもお話しましたが、初めて共演したときの最初の顔合わせでのご挨拶がすごく立派だったんですよ。主役だったのですが、歌も踊りも殺陣も芝居も司会もできる。なんて多才な人なんだろうと。そこから数回ご一緒して、強くて厳しい役が多かったので、そうしたイメージがありましたが、最近、面白いところもあることに気づきました。まだすべてを知り切れていないと思うので、今回の演出も楽しみです。

平野:水さんはパーフェクト・ヒューマンです。ストイックのレベルが違う。俳優は、ストイックな人が多いですが、その中でも群を抜いています。先ほどおっしゃっていた下調べもそうですが、水さんが所作の講習をしてみんなに教えてくださったことがあったんですよ。何事にも隙がないと感じています。敏腕経理みたいな(笑)。「1円たりとも間違わない」という印象です(笑)。

水:そんなふうに見えるんだ(笑)。女性の役をやるようになって15年くらい経ちますが、退団当時、「女は隙だよ。隙があった方が魅力的」と言われたことがあったんですよ。男役のときは、仕草も衣裳の着こなしも、1ミリの隙もないように意識していましたが…やっぱり今でも隙がないんですね(笑)。

平野:でも、そういう役だったのかもしれません。

――内藤さん、そして松田さんの印象もぜひお聞かせください。お二人ともよくご存じの間柄ですよね。

平野:そうですね、僕が演出をしたことのある別の公演でもずっと出てもらっている2人なので。今回、大希は歌わないのは初めてだと思います。

水:え、歌はないんですか?

平野:第二章も含めて、歌う予定はないんですよ。今回は、完全にストレートプレイの予定です。だから、大希が1番不安がっていると思います(笑)。以前に、「長セリフを覚えられないから歌にしてくれ」と言って、セリフが歌になったことがあったんですよ。(その作品では)オレノグラフィティさんが音楽を担当されていて、稽古場にいらっしゃっていたので、その場でお願いして曲を作ってもらってたこともあったくらいです(笑)。

――今回はストレートプレイですが、今後、もしかしたらミュージカルがあるかもしれない?

平野:あるかもしれない。今回はとりあえずストレートです。岳は寺の子ということもあって、浮世離れしているところがあります。どこか違う空気や、不思議な切り口を持っていて。なので、あまりお芝居の指導はしなくなりました。型にとらわれると良さがなくなってしまうんです。大希とは対極ですが、なぜかマッチする二人です。

――水さんから見たお二人は?

水:岳くんが真面目な役を演じているのを見たことがないので、まずはどんなお芝居をするのかが楽しみです。大希くんはほんわかしていて、その存在自体が癒し系だなと思います。

平野:大希はほんわかしているように見えて、柔軟性もあるんですよね。カチンとハマったときに一瞬でその場が変わることがあります。

水:分かります。枠がないというか、自分の中でこうでなくちゃいけないというのがいい意味でない。

平野:だから、役の幅が誰よりも広いんだと思います。

水:それでいて、たまにある面白くて抜けたところがかわいらしいなと思います。

――本公演では二部構成の予定です。第二章は、どのような内容になるのですか?

平野:実はまだ全員が暗中模索中なので、これとはっきりはお伝えできないのですが、お楽しみ要素のあるコーナーになると思います。第一章の本編はかなり重いストーリーなので、朗らかな気持ちで劇場を後にしていただくためにも、楽しんでいただける内容にしたいです。ふざけるとしたらここしかないですから。きちっとした芝居をして窮屈さを感じた岳と大希が、きっと第二章で伸び伸びやってくれると思います。

――楽しみにしています! 最後に改めて公演に向けた意気込みとメッセージをお願いします。

平野:また新たな挑戦になります。まだ始まったばかりで、どういう形になるのかはっきりとお伝えできませんが、歴史の面白さやヒューマンドラマ、お芝居の可能性をいろいろな角度でお見せできたらと思っています。難しくするつもりはないです。老若男女どなたが観ても楽しめる作品にしたいと思っていますので、ぜひ第1弾を見届けていただけたら幸いでございます。

水:皆さん、ご存じの方たちなので、そのノリを楽しみつつ、お芝居はしっかりと作り上げていきたいと思います。今の時代の家族や兄弟の関係ともつながる物語で、共感できる部分がたくさんあると思うので、第一章で泣いて第二章で笑ってという、シリアスとコメディーのコントラストを楽しんでいただけたらと思います。

取材・文=嶋田真己 撮影=岡崎雄昌

公演情報

舞台「カインとアベル」~兄弟寓話コレクション
第一弾『平家!兄弟』
 
<日時>2026年12月10日(木)〜12月13日(日)
<劇場>CBGK!!
<脚本>赤澤ムック
<演出>平野良
<出演>松田岳 平野良 内藤大希 水夏希
 
<料金>全席指定11,000円(税込)
発売日:2026年8月2日(日)AM10:00〜
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