広上淳一(指揮)×牛田智大(ピアノ)インタビュー 創立100周年迎えるN響演奏会で共演

2026.7.3
インタビュー
クラシック

画像を全て表示(5件)


2026年に創立100周年を迎えたNHK交響楽団が7月、『NHK交響楽団演奏会 supported by SGC』を青森、栃木(宇都宮)で開催する。本公演には、世界的に活躍する人気指揮者・広上淳一と、ソロ・リサイタルのみならずオーケストラとの共演でも高い評価を得るピアニスト牛田智大を迎える。

演奏プログラム(予定)は、ショパン「ピアノ協奏曲 第1番」とドヴォルザーク「スラブ舞曲 第1集 作品46」。初共演は10年以上前に遡るという縁深い二人に、この度の共演について聞いた。

――お二人は、100周年を迎えるNHK交響楽団の青森公演、宇都宮公演で7月に共演されます。出会いはかなり前に遡るそうですね。

広上:初めて共演したのは結構小さい頃だったよね。かわいい蝶ネクタイをして、“天才少年現る”と話題になった頃のことで! 12歳くらいだった?

牛田:はい、まだミジンコにもなっていないくらいの頃です(笑)。実はピアニストとして最初にいただいたお仕事が、広上先生とのショパンのピアノ協奏曲第2番だったんです。

広上:そうだったの! 故・中村紘子先生がとても才能があるピアニストがいるとおっしゃっていたこともあって、このまま伸びていってほしいなと心の中で思いながら、あれ以降、活躍を見守っていました。その後少し間が空き、また共演の機会が出てきて。

牛田:大学に入った二十歳前後からまた共演させていただくようになりました。

広上:私が教えている東京音楽大学に遊びにおいで、指揮のクラスを見たら楽しいかもしれないよと誘い、私の教え子たちとも交流するようになって。

牛田:そうなんです、広上先生のおかげでお友達もできました!

広上:当時私がしごいていた教え子たちが今や指揮者として活躍するようになっているから、彼らと共演することも増えているでしょう?

牛田:そうですね! この前、沖澤のどかさんとご一緒しました。

広上:沖澤さんは青森市出身だよね。あとやはり教え子の松井慶太くんも青森の八戸市出身です。青森はおいしいものもいっぱいあっていいところですよね。イカが本当においしかった! 冬の寒さは厳しいけど、温泉もあるし。

牛田:私も何回か伺ったことがあります。(最初に伺ったのは)まだ14、5歳の頃でしたが。

――宇都宮のほうで楽しみにしていることは?

広上:熊が出ているというので心配ですが……新しいトラムができたようなのでそれかな!

牛田:私はやっぱり餃子ですね。

――牛田さんが広上さんとの初共演時の思い出で覚えていることはありますか?

牛田:リハーサルの前に打ち合わせがあって、一通り演奏を広上先生に聴いていただく機会がありました。2楽章を弾いた時、“隅田川を散策していていい気分になる時のような、感情が湧き上がってくるようでないといけないよ”とおっしゃったんです。

広上:よく覚えているね! 自分では忘れていたけど(笑)。

牛田:その言葉がきっかけの一つになって、作品を弾いた時、衝動的に内側から湧き上がるものを持つこと、そしてそれを音楽に投影することがすごく大事だと気づけました。

――ショパンのピアノ協奏曲のオーケストレーションについては、指揮者やオーケストラ奏者によっていろいろな意見があると思います。どう捉えていますか?

広上:私はオーケストラのパートはすごく大事だと思っています。確かに人によって、この曲はピアノパートばかり活躍してオーケストラは退屈だとか、おそらくジョークだとは思いますが……そういう短絡的なことを言う人もいます。でも実際、ピアノを支えるオーケストラパートは極めて色彩感に満ち、重厚な響きも聴かれます。ピアノが入る前の4分弱の部分など、私はいつも心を込めて指揮しています。
おもしろいのは、ショパンは優れたピアニストだったから、オーケストレーションが少しくすんだ音だということ。リストやベートーヴェンもそうですね。鍵盤楽器が上手だった作曲家らしいオーケストラの響きというのがあると感じます。

牛田:弾いていていつも思うのは、特に1番はオーケストラとの絡みがすごくおもしろい曲だということ。交響曲のようにというとちょっと言い過ぎかもしれませんが、それに近い、ピアノとオーケストラが一つの集合体になって響かせられる状態になっていると、とてもおもしろくなるのです。例えば2楽章は、ピアノと弦楽器が反行形になるように書かれているなど、すごく美しい部分がたくさんあります。そういうところもお客さんに気づいてもらえる演奏ができたらと思います。

――後半はドヴォルザークのスラヴ舞曲です。第1集が全部まとめて演奏されるのはあまりない機会ですね。

広上:はい、地方公演では有名なシンフォニーを1曲選ぶことが多いですが、N響さんと相談して、たまにはこういう曲をやってみようということになりました。いろいろな要素が楽しめる“飲茶”みたいな内容です!

――最近のN響について感じることはありますか?

広上:昔からすばらしいオーケストラですが、今はいろいろな意味でますますフレキシブルになって、しかも100周年を迎えるということでのりにのっています。私の教え子もたくさんいますし、年齢層も若くなりました。

牛田:いろいろな演奏や録音を聴いてきた憧れのオーケストラです。子供の頃は、ベテランの大先生がいっぱいいて恐縮してしまう感じだったのが、今となっては友達が入っていたり、私より年下の方もいるくらいなので、単純に気が楽に弾けるようになりました。自分とオーケストラの間にあった線がなくなり、一緒にアンサンブルをしている感覚も強くなりましたね。演奏中、何か仕掛けてみようという気持ちが湧いてきます!
ショパンは自分にとって大事な作曲家。そんなショパンの作品を、広上先生、N響さんと一緒に演奏できる機会は、人生の中でも一つの大事な瞬間になると思います。しっかりと準備をして臨みたいです。

――ところで、子供の頃から現在の牛田さんの変化について、広上さんはどうご覧になっていますか?

広上:小さな頃に才能を開花させてデビューすると、十代の後半から二十代前半という多感な時期に悩むことも多いと思うんです。でも彼は、勉強する場所の選び方やキャリアの積み方を見ても、よく考えながら丁寧に生きてきたんだろうと感じます。すごく共感を持って見ています。

牛田:十代の間はいろいろな出来事があって、正直、ピアノへの熱が消えかけた時期もありました。でももう一回燃やそうと思えたのは、12歳で初めて広上先生と共演した時に得た学びをはじめとするいろいろな刺激があったからです。もう一度燃やしたいと思った時にちゃんと燃えてくれたのは、そこまでにいただいたもの、学んだことがあったからなのだろうと感じています。

広上:まあ、天命なのでしょうね。才能があるがゆえに音楽に没頭してがんばり続けた結果、ふと、他の生き方はなかったのだろうかと思ってしまうことは誰にでもあると思うんです。そんな想いがよぎるほどに時間とエネルギーを一つのことに燃やせるのは、その時点で特別な才能があるということなんですよ。
もうすぐ中堅と言われる年代に入り、日本の音楽界を引っ張る旗手の一人になるでしょう。今回、そんな彼をN響創立100年記念コンサートのソリストに迎えられるのは、最高のことですね!

公演情報

『NHK交響楽団演奏会 supported by SGC』
 
出演 
指揮 広上淳一/ピアノ 牛田智大/管弦楽 NHK交響楽団
 
演奏曲(予定) 
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
ドヴォルザーク:スラブ舞曲第1集 作品46
※公演情報は、曲目・出演者等に変更のある場合がございます。
 
開催日程・会場 
【青森公演】 青森朝日放送開局35周年記念
主催 青森朝日放送 サンライズプロモーション 青森市文化観光振興財団
日時 2026年7月11日(土) 開演17:00(開場16:00)
会場 リンクステーションホール青森
https://sunrisetokyo.com/detail/32729/
 
【栃木公演】
主催 (公財)うつのみや文化創造財団 下野新聞社 サンライズプロモーション
日程 2026年7月12日(日) 開演17:30(開場16:50)
会場 宇都宮市文化会館 大ホール
https://sunrisetokyo.com/detail/32730/
 
特別協賛 SGC
お問合せ サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
  • イープラス
  • 広上淳一
  • 広上淳一(指揮)×牛田智大(ピアノ)インタビュー 創立100周年迎えるN響演奏会で共演