山下美月 主演舞台『成瀬は天下を取りに行く』開幕 原作の世界観を再現した圧巻の群像劇 ゲネプロ&記者会見レポ

2026.7.4
レポート
舞台

舞台『成瀬は天下を取りにいく』左から 山下美月、藤野涼子 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

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2026年7月4日(土)、東京・サンシャイン劇場にて、宮島未奈氏による大人気ベストセラー小説の舞台化『成瀬は天下を取りに行く』が幕を開けた。初日公演を前にした劇場には独特の緊張感と期待感が漂っていた。滋賀県大津市・膳所(ぜぜ)を舞台に、我が道を突き進む主人公・成瀬あかりの青春が、生の演劇ならではのエネルギーで舞台上に立体化される。SPICEでは、この夏必見の青春エンターテインメント作品のゲネプロ&囲み取材レポートをお届けする。

■ 囲み取材:

(C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

ゲネプロに先駆けて行われた記者会見には、主演の山下美月をはじめ、藤野涼子、山崎静代(南海キャンディーズ)、ISSEI、天宮良、そして田畑智子が登壇した。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

本作で初めて座長を務める山下美月は、自身が演じる成瀬あかりについて「全く座長感のない座長で申し訳ない」と笑いを誘いつつも、本編では成瀬が軸となって周囲を動かしていくため、真ん中に立ってしっかり頑張りたいと決意を語った。成瀬との共通点については「今のところまだ見つかっていない」としながらも、普段の社会ではできないような行動を舞台上で表現できる楽しさを明かし、観客にその奇想天外さからパワーを受け取ってほしいとアピールした。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

ここで、成瀬の母親役を演じる田畑智子も初日を前にした胸中を吐露。「まず劇場に入ってセット(装置)を見ていただけたら! 素晴らしい出来上がりになっています。特に、滋賀出身の方は感動されるはずです」と、こだわり抜かれた膳所の街並みの再現度に太鼓判を押した。さらに「目まぐるしい転換も含めて、やっていて自分たちも本当に楽しい作品。早く皆様に観ていただきたいです」と、舞台ならではの魅力に言及した。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

成瀬の幼馴染・島崎みゆき役を演じる藤野涼子は、山下との役作りについて、劇中のお笑いコンビ「ゼゼカラ」の漫才シーンに言及。笑いを取りに行くというよりは、2人の関係性の中でクスッと笑える空気感を目指し、稽古の初期段階から2人で自主稽古を重ねてきたという。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

これに対し、近所のクレーマーこと呉間言実(くれまことみ)役で出演するプロの漫才師・山崎静代は、2人の漫才を「高校生の漫才として2人がめちゃくちゃ可愛くてニコニコ観てしまう。堂々とした掛け合いが素晴らしい」と絶賛。一方で、舞台全体の構造については「私たちはセリフの量が本当に多くて大変。そのセリフの多さにも注目してほしいです」と、サブキャラクターたちが担う膨大な台詞量という見どころもアピールした。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

また、西浦航一郎役のISSEIは、演出のG2から「それはモテそうだからやめて」と演技指導が入ったエピソードを明かし、自身のモテオーラを封印したピュアな高校生としてのリアクションや、琵琶湖のクルーズ船「ミシガン」でのデートシーンを見どころに挙げた。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

成瀬の父親役を演じる天宮良は、主役の2人以外が衣装や役柄を目まぐるしく変えて何役も兼ねている舞台構造を「ウォーリーを探せ状態」と表現し、その変装ぶりも見どころであると語った。さらに、「ワールドカップは残念な結果になりましたが、我々成瀬チームは必ず優勝します!」と力強く宣言し、会場を沸かせた。

稽古中の思い出を問われると、豪華な差し入れエピソードで盛り上がりを見せた。山下がお洒落で美味しい甘いものの差し入れを何度も行い現場を華やかにしたことや、山崎から奈良の「祥楽の柿もち(かきもち)」といったこだわりのおかきが差し入れられたことが明かされた。天宮が「一回食べるとやめられなくなる(笑)」と振り返るなど、バラエティ豊かな差し入れの数々が過酷な稽古を支える大きな活力となり、カンパニーの温かいチームワークを育むきっかけになっていたようだ。

■ ゲネプロレポート:

劇場に入ると、まず、田畑も絶賛した舞台美術に目を奪われる。ステージ上には2020年夏の膳所(ぜぜ)のリアルな街並みが再現されている。閉店を控えた「西武大津店」をはじめとするその光景は、まるで小説の挿し絵を見ているかのような雰囲気を醸し出している。この精緻な舞台セット(装置)は、場面ごとに印象的に活用されていく。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

西武ライオンズのユニフォームに身を包んだ山下美月演じる成瀬が口を開くと、客席はまずその佇まいに引き込まれる。特筆すべきは、周囲のサブキャラクターたちのセリフまわしだ。マイペースに佇む成瀬に対し、島崎役の藤野をはじめとする周囲の人物たちが、原作小説の語り口を彷彿とさせるトーンで、場面の状況や複雑な心情を凄まじいセリフ量で紡ぎ出していく。活字がそのまま形を変えて流れてくるかのような、圧倒的な言葉の濁流と説明セリフの応酬はまさに圧巻。役者陣の確かな技術によって、原作の持つ独特の文体とテンポ感が見事に舞台上に再現されている。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

■ 原作の世界観を完全再現した、目まぐるしく変化する圧巻の群像劇

本作は成瀬と島崎の友情を主軸に置きつつも、成瀬の父を演じた天宮が「ウォーリーを探せ」と語った通り、目まぐるしく変化する登場人物たちの群像劇としても非常に高い完成度を誇っている。西浦をはじめ、シーンごとに異なるキャラクターが文字通りの「主役」としてスポットライトを浴びる瞬間があり、それぞれの人生やエピソードがオムニバス形式のように鮮やかに描かれていく。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

出演者たちが衣装や役柄を変え、構造物を動かしながら膳所(ぜぜ)の街の人々をノンストップで表現していく様子は、舞台ならではの躍動感に満ちている。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

そして、成瀬の我が道をゆく強さが周囲を巻き込み変えていく圧倒的な魅力として輝くのは、隣に島崎という唯一無二の理解者がいるからこそだと、物語の結末を見届けることで改めて確信させられる。2人がただ並んで言葉を交わす姿に、客席の誰もが自身のなかに眠る青春のノスタルジーを呼び起こされるはずだ。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

■ 緊迫の生パフォーマンスが引き締める、誰もが虜になる最高の青春ドラマ

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

劇中で成瀬が見せる様々な生パフォーマンスも、単なる見せ場に留まらずドラマを引き締めている点にも注目だ。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

高校生ならではのみずみずしさを見せる「ゼゼカラ」の漫才シーン、一から特訓を重ねたという競技かるたの試合シーンで見せる美しい所作。さらに、成瀬の特技であるけん玉のシーンでは、毎公演ガチの一発勝負として挑む緊張感が劇中の成瀬の状況ともリンクし、客席が息を呑むスリリングな瞬間となっていた。成瀬の母を演じた田畑が語るように、巡り合う人々との縁(えにし)が育む温かな愛情が作品の底に通底しており、最後には胸がじわっと熱くなるドラマに昇華されていた。

舞台『成瀬は天下を取りにいく』 (C)宮島未奈/新潮社 (C)松竹

この舞台は、原作小説のファンはもちろんのこと、この作品を初めて観るという人であっても、幕が降りる頃にはもれなく成瀬あかりの、ひいては大津という街の虜になってしまう力を持っている。生の演劇ならではの強烈なエネルギーで立体化された青春ドラマを、ぜひ劇場で体感してほしい。

東京公演はサンシャイン劇場で7月12日(日)まで、そのあと京都をめぐり、最後は物語の舞台である滋賀・大津市民会館にて千穐楽を迎える。

文=SPICE編集部 塩谷由記枝

公演情報


 
舞台『成瀬は天下を取りにいく』
 
【東京公演】
日程・会場:2026年7月4日(土)~12日(日)サンシャイン劇場 
観劇料(税込):全席指定 13,500円
 
【京都公演】
日程・会場:2026年7月16日(木)~26日(日)南座
観劇料(税込):S席(1、2階) 13,500円 / A席(3階) 8,500円
 
【滋賀公演】
日程・会場:2026年7月28日(火)・29日(水)大津市民会館
観劇料(税込):S席 13,500円 / A席 8,500円
 

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<イープラス貸切公演>
日程:2026年7月22(水)
会場:京都・南座(京都府)
開演:13:00

\独自席種・独自価格・手数料0円/
詳細・お申込は【こちら】から

 
 
原作:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮文庫刊)『成瀬は信じた道をいく』(新潮社刊)
脚本・演出:G2
 
出演:
山下美月
藤野涼子

山崎静代
ISSEI

明星真由美
千賀由紀子
櫻井淳子

小林大介 黒田篤臣
アサヌマ理紗 青山美郷
中川大喜 段 隆作
中村守里

天宮 良
田畑智子
 
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